軍事的雑学

トルコ問題解決への決定打になるか?米国、非NATO主要同盟国にウクライナ指定を検討

米国は、ウクライナに対し、非NATO主要同盟国の地位を与える法案を議会に提出したことが確認された。

参考:Конгресс США рассмотрит возможность предоставления Украине статуса союзника вне НАТО

プーチン大統領への強烈なメッセージ「ウクライナの非NATO主要同盟国指定」

駐米ウクライナ大使館は、ウクライナに対し、非NATO主要同盟国(Major non-NATO ally、MNNA)の地位を与える法案が米国議会に提出された事を、大使館公式Facebookで報告した。

#НовинаПосольства У Палаті представників Конгресу США представлено проект закону, що передбачає посилення підтримки…

Embassy of Ukraine in the USA / Посольство України в СШАさんの投稿 2019年5月31日金曜日

非NATO主要同盟国の地位とは、米国が、NATO加盟国に対して軍事・財政面における優遇措置を行っているものと同等の措置を受けられる地位のことで、現在、日本やオーストラリア、イスラエルを始めとする17ヶ国がMNNAの指定を受けている。

出典:public domain アメリカ合衆国(緑)、NATO加盟国(青)MNNA諸国(橙)

主な具体的優遇装置は以下の通りだ。

  1. 武器輸出統制法の適用免除
  2. 国防総省との軍事的な共同プロジェクトに参加可能になる
  3. 劣化ウランを使用した兵器の購入許可
  4. 軍事的な余剰物資の優先的配給
  5. 防衛機器(兵器)の購入やリースに際し米国からの資金援助
  6. 相互軍事訓練

上記以外にも、細かな優遇装置が多く存在する。

ただしMNNAは、指定を受ける国の状況によって意味合いが全く変わってくる。

日本やオーストラリアなど経済的に豊かな国とっては、米国製兵器の輸入に必要な手続きの簡略化で、時間と手続き費用を節約でき、米国にとっては、自国製兵器の販売促進という経済的メリットが有る。

台湾(事実上の指定)やアフガニスタンなどの場合、経済的な利点よりも、米国の安全保障上の都合や政治的な意味合いが強く、米国の資金を使ってでも、その国の防衛力強化を援助するため、MNNA指定を行う事がある。

今回のウクライナへのMNNA指定は、明らかに後者のパターンだ。

恐らくこれは、地中海と黒海を繋ぐ要衝であり、NATO加盟国でもあるトルコに対し、S-400を売りつけることで米国・NATOとトルコの対立を煽り、万が一、トルコがNATOから離脱をするような事になれば、ロシア陣営に引き込もうと画策するプーチン大統領へ、強烈なメッセージになるだろう。

切っても切れないロシアとウクライナの関係

旧ソ連時代からロシアは伝統的、NATO加盟国とのモスクワの間に、物理的な緩衝地帯を設けようとする考えが強い。それがソ連崩壊後、東欧諸国の独立・ロシア離れの影響で、モスクワとNATOとの間にあった緩衝地帯が不安定になってしまった。

特にロシアと接し、黒海艦隊の根拠地セヴァストポリ(クリミア半島)を領有するウクライナは、ロシアにとっては安全保障上、どうしても手放すことの出来ない地域だ。

Attribution: Cmapm /CC BY 3.0 ロシア海軍の黒海艦隊の様子

旧ソ連から独立したウクライナも、ロシアと国境を接する地政学的宿命の為か、親露派による政権が続いた。

2004年のオレンジ革命で親米欧政権が誕生することになるが、直ぐにロシアは、天然ガスの供給価格を引き上げことで親米欧政権への攻撃に出た。結局、親露派の野党から提出された内閣不信任案が可決され、その後実施された選挙で親露派が議席を伸ばし、大統領選挙でも親露派が勝利したことで、ロシアはウクライナへの政治的影響力確保に成功する。

当分は落ち着きを取り戻すかに見えたウクライナ情勢だが、3年後の2013年、親露派政権がEUとの協定調印を見送ったことで、反政府運動に火がつき、再び親露派政権が崩壊、新政権が誕生したことで、ロシアの危機感を再び刺激してしまった。

これがロシアによる、ウクライナのクリミア半島併合に繋がっていくことになる。

その結果、ロシアは黒海艦隊の根拠地(クリミア半島)を直接的な支配地域に置いたことで、黒海への安定的で物理的なアクセスを取り戻した。

トルコとウクライナの交換は現実化するのか?

現在、ロシアは黒海艦隊の再建を進めており、もしプーチン大統領の目論見通り、トルコがNATOを離脱し、ロシア陣営入りすれば、黒海と地中海を繋ぐ「ボスポラス海峡」を手中に収めれば、黒海は完全にロシアの海になり、完璧な緩衝地帯になる。

出典:public domain ボスポラス海峡

今回、米国がウクライナに対し非NATO主要同盟国の地位を与えると言うのは、ロシアと国境を接するウクライナを「間接的」に、米国とNATOの拠点にしてしまおうと言う意味で、ロシアに「トルコから手を引け」という強烈な政治的メッセージだ。

もし、ロシアがトルコから手を退かず、ロシア陣営入りするようなことがあれば、恐らく、今度は「間接的」ではなく、ウクライナのNATO加盟という「直接的」な手段にでてくるのは、火を見るよりも明らかで、もっと直接的な言い方をすれば「トルコ」と「ウクライナ」を交換するという恐ろしいメッセージだ。

このメッセージを受け取ったプーチン大統領は、果たしてトルコをとるのか? ウクライナをとるのか?

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay ウクライナ空軍 Su-27

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 02日

    プーチン閣下「ウクライナの冬の暖房のガスはロシア様が握ってるけど? 値上げしたろか?」

    リンクの記事は読んでないけど、どうせ、外交に決定権の無い下院でそ?
    慰安婦問題も下院は可決してるけど、下院は外交に関与できないから、何らの影響も無いです。

    • 匿名
    • 2019年 8月 31日

    何方を取るか? 両方取るさ! 
    と例の旦那は云うだろう。

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