米国関連

米海兵隊がF-35の調達数削減を行う理由は? 予算不足でパイロットが確保できないため

米海兵隊は今後10年間の部隊編成計画「Force Design 2030」の中で、F-35の調達を130機分削減する理由について明らかにした。

参考:Short On Pilots, Marines Debate Size Of F-35 Fleet

結局は予算捻出のため?間接的にはパイロット不足が原因でF-35の調達数を削減

米海兵隊は先月23日、全ての戦車大隊(主力戦車M1A1エイブラムス)廃止や航空戦力(F-35やMV-22など)調達削減を含む大規模な部隊再編計画を明らかにしたが、なぜ海兵隊がF-35の調達を削減するのか今後10年間の部隊編成計画「Force Design 2030」の中で理由を明らかにした。

海兵隊司令官のデイビット・H・バーガー氏はForce Design 2030の中でF-35の調達を削減する理由に挙げたのは、第5世代戦闘機F-35Bの維持費と運用コストが高価であることと海兵隊の予算規模が十分でないため必要なパイロットを確保することが難しいからだ。

バーガー氏は海兵隊への予算割当が今後劇的に増える可能性は低いと見ており現状の予算規模では、老朽化が進む車両や航空機戦力を維持をするのが精一杯だ。このままでは新しい取り組みを行うための予算を捻出することが難しいため何かを削る必要がある。

出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Joseph Abrego/Released

そこで目を付けたのが調達中の第5世代戦闘機F-35だ。

海兵隊はSTOVL仕様(短距離離陸・垂直着陸)のF-35Bを353機+海軍仕様のF-35Cを67機調達する予定だが、これを計画通り420機調達しても現在の予算規模ではパイロットを十分な人数確保することが難しいため、維持や飛行コストが高価なF-35の調達数をパイロットの確保可能な数に合わせて調整を行い無駄を省くというのが今回のF-35調達数削減の狙いだ。

具体的にF-35BとF-35Cを各何機づつ削減するのは不明だが海兵隊は「Force Design 2030」の中で計130機分の調達をキャンセルすると書かれており、この方針を反映した部隊編成計画の影響は2022会計年度予算から反映され始める。

さらに主力戦車M1A1エイブラムスの廃止についてはForce Design 2030の中で、イラクのアンバル州では役に立ったが太平洋上の小さな島では全く実用性がなく海兵隊が将来対処しなければならない課題に戦車の能力は「不向きだ」と結論付けた。

関連記事:米海兵隊が戦車を廃止したい理由は? 世界中に無人機と精密誘導兵器が氾濫したため

ただし、今回示された海兵隊の部隊編成計画「Force Design 2030」について米メディアは、廃止や削減の影響を受けるジェネラル・ダイナミクス(エイブラムスの保守や改良を担当)やロッキード・マーティン(F-35の開発製造を担当)が黙っているわけがなく国防総省内の関係者や同企業の工場を抱える州選出の議員たちも動き出すだろうと指摘しているが、バーガー氏は「戦車は都市部での戦闘に使用するには最高だが、海兵隊が将来遭遇する可能性が高い戦場環境を考えたこともない人間はForce Design 2030で示した内容を理解するのは難しいだろう」と述べている。

今後10年間の部隊編成計画「Force Design 2030」がそのまま実行に移されるのかは未だ未知数だが、多くの利害関係が絡む計画なので大きな波紋を呼ぶことだけは間違いない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Anne K. Henry/Released

露メディア、第5世代戦闘機「Su-57」が米国のF-22やF-35より優れている理由前のページ

新型コロナ関連:米海軍、議会が英雄だと賞賛した空母「ルーズベルト」の艦長を解任次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    バイデン政権、ウクライナへのサイバー攻撃はロシア軍による犯行と発表

    ホワイトハウスは18日(現地時間)午後、ウクライナ国防省や銀行に対する…

  2. 米国関連

    米空軍、US-2の運用経験や教訓を学ぶため特殊作戦コマンド副司令を日本へ派遣

    MC-130Jに着陸装置を内蔵したフロートを取り付け水陸両用機として利…

  3. 米国関連

    米メディア、何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?

    フォーブスやフォーリン・ポリシーに安全保障分野の記事を寄稿しているマイ…

  4. 米国関連

    バイデン大統領、空爆がフーシ派の脅威を阻止できていないと認める

    バイデン政権は「紅海の安全」を取り戻すため空爆を実行したものの、一向に…

  5. 米国関連

    米軍がウクライナから学んだ重要な教訓、戦いにおける人間の重要性

    米ディフェンスメディアのBreakingDefenseは11日、米軍の…

  6. 米国関連

    さよならアリス! 戦闘機「F-35」稼働率低下の原因「ALIS」システム廃止へ

    ロッキード・マーティンは14日、問題の多いF-35物流情報システム「A…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 02日

    何処の軍隊も予算不足と人員の充足率の低下に悩まされています。米海兵隊も例外では無いと言う事でしょうか。元々が海外基地の守備と橋頭堡のいち早い確保が主任務だったように思います。
    それが中小国を軽く凌駕する程の軍備を備えているので、流石の米国でも支えきれなくなって来たのでしょうね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 02日

    戦車が要らないとは、太平洋戦争の戦訓を忘れたな。

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    流石のアメリカも5つの軍をこのまま維持する事が厳しくなってきたのだろう。

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    420機って数エグいな

      • 匿名
      • 2020年 4月 03日

      元々がそんなに必要あるのかとも思えますね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 03日

    C型のスコードロンって今までのように空母に派遣されるのかな

      • 全てF-35B
      • 2020年 4月 03日

      その予定です。
      海軍はF-35Cが好きではないようなので、どうなることやら。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP