欧州関連

グリペン好きなブルガリア大統領、署名したF-16V導入契約を拒否

ブルガリア政府が承認した総額12.5億ドル(約1,354億円)のF-16C/D block70/72(通称:V仕様)導入契約について、ブルガリアの大統領、ルメン・ラデフ氏が拒否権を発動し契約に承認を与えなかった。

参考:Bulgaria’s president walks away from $1.26 billion deal for F-16 jets

署名まで行ったF-16導入契約を拒否するブルガリア大統領

昨年、ブルガリア政府は、老朽化したソ連製戦闘機のMig-29を更新するための戦闘機として、F-16C/D block70/72(通称:V仕様)を選定し、米国に対し売却を要請していた。

これに対し6月2日、米国務省は、8機のF-16Vと、搭載兵器(AIM-9やAIM120など空対空ミサイルや数種類の精密誘導爆弾)やシュミレーター、スペアパーツ、保守サービスなど関連機器を、総額16.73億ドル(約1,811億円)で売却する要求を承認した。

出典:pixabay MIG-29(ポーランド空軍機)

米国が承認した16.73億ドルという契約金額は、ブルガリア議会がMig-29を更新するために承認していた予算の上限を超えており、ブルガリア政府は米政府に対し、F-16Vの導入に必要な契約の総額を12億ドル以内に収めること要求し、最終的に総額12.5億ドル(約1,354億円)、当初の価格から4億ドル(約430億円)以上の割引を受けて契約が合意に至った。

それでも、1機あたりの導入費用(機体単価ではない)は、約1.5億ドル(約162億円)と非常に高額だ。

この契約について、ブルガリアのルメン・ラデフ大統領は、拒否権を発動し契約に承認を与えず、議会に再審議するよう差し戻した。ラデフ大統領は、この契約は法的手続きを省略したため、価格、保証、納期、違約金など、幾つかの重要な項目が不明確のままだとし、承認を与えなかった理由について説明を行った。

空軍パイロット出身のラデフ大統領は元々、スウェーデンのグリペンのような価格の安い戦闘機が好みで、一度はグリペン導入が決定していたが、決定に絡む汚職問題で白紙に戻り、Mig-29の後継機選定のやり直しの結果、選ばれたのが米国のF-16Vだった。

ラデフ大統領が並べた理由は最もらしいが、結局の所、高価なF-16が気にいらない、グリペンの方が好みというのが最大の原因かもしれない。

出典:public domain グリペン

このグリペン好きめ。

ブルガリアの与党、ヨーロッパ発展のためのブルガリア市民(GERB)は、総額12.5億ドル(約1,354億円)の契約を支持しているので、議会で大統領の拒否権をひっくり返すために必要な議会の過半数(121議席)確保は、連立パートナーの統一愛国者の議席を加えれば一応可能(両党合わせて122議席)だ。

しかし、野党の切り崩し工作により、反対票を投じる与党議員が数人でも出れば、既にブルガリアの国防大臣が調印まで済ませてある契約が失効することになり、元々遅れていたMig-29更新用の戦闘機調達が、さらに遅れることになる事は誰の目にも明らかだ。

この痺れるような状況で行われる投票は26日の金曜日に行われる。

果たして、F-16Vは、ブルガリアの空に舞い上がる事が出来るのか、管理人としては注目せざるを得ない。

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

日本、AN/APG-82搭載したF-15Jへ国産「AAM-4B」搭載検討前のページ

2021年12月に初飛行予定、順調過ぎる米空軍「B-21 レイダー」の開発次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    ドイツ、極超音速兵器迎撃に対応した仏主導の防空システム開発に参加

    ドイツはフランスが主導する宇宙ベースのセンサー網構築と迎撃ミサイルの開…

  2. 欧州関連

    兵士の逃亡に悩むウクライナ軍、原因は約束した交代が守られていないため

    米POLITICOは「急増する軍紀違反を罰則の強化で解決する取り組みは…

  3. 欧州関連

    仏国防相、ウクライナ向けに155mm自走砲を78門生産すると表明

    フランスのルコルニュ国防相はLe Parisien紙とのインタビューの…

  4. 欧州関連

    ゼレンスキー大統領、ロシア資産の売却益を含む資金で武器生産を行う

    ゼレンスキー大統領は「明日重要なニュースがある」と述べていたが、30日…

  5. 欧州関連

    ウクライナ危機の中、親ロシア議員とジャーナリストが生番組で取っ組み合い

    ウクライナの生放送番組でジャーナリストが親ロシア政党の政治家を殴り、押…

  6. 欧州関連

    英空軍参謀総長が語る将来の戦力構造、無人化技術が量と質のトレードオフを終焉させる

    英空軍参謀総長を務めるマイク・ウィグストン大将は米メディアの取材に応じ…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 25日

    このグリペン好きめ

    誉め言葉ですねw

    5
    • 匿名
    • 2019年 7月 26日

    俺だってブルガリア大統領に負けないぐらい、グリペン好きだよ。

    「このグリペン好きめ」
        ↑
    いいなー、言われたいなー、罵倒されたいなー。

    5
    • 匿名
    • 2019年 7月 26日

    日本人は契約は守らなければならないって頑張るけど
    なんか世界的にはこんなしょうもない理由で契約破棄しちゃうんだな…
    そりゃ韓国なんぞにしてやられるわけだわ
    もっと適当に自己主張していかんとならんね

    2
      • 匿名
      • 2019年 7月 26日

      真っ当な契約担当であれば、「大統領承認が為された場合に契約は有効になる」と入れるだけです。

      契約なんて約束が紙の上に落ちているだけ。日本の場合は約束が明らかに古かったり不備がある(相手に守る気がない・不履行)のに改訂の努力(破棄を含む)をしないこと。憲法もそのうちの一つですね。
      一生懸命契約を守るのはアメリカでも欧州でも当然のことです。

      1
    • 匿名
    • 2019年 7月 27日

    大統領閣下。趣味が合いますね!

    2
    • 匿名
    • 2019年 9月 21日

    ✕ シュミレータ
    ○ シミュレータ

    1
    • 白髪鬼
    • 2022年 9月 07日

    私もランニングコストの安いグリペンの方が、身の丈に合ってて良いと思いますけどねぇ。無理に高価ば機体を導入しても、運用に金かかって満足に飛行できないような状況になれば本末転倒です。すぐ近くに良い反面教師いるし。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
PAGE TOP