軍事的雑学

欧米を後追いか?独自性か?日本の次世代戦闘機「F-3」開発が進まない理由

航空自衛隊が運用しているF-2戦闘機の後継機問題で防衛省は、F-3とも呼ばれている「将来戦闘機開発計画(以下便宜上、F-3開発計画と記載)」の2020年度予算への開発費計上を見送る可能性が高いと報道されている。

参考:宙に浮く「F2」後継機゙…開発経費計上は見送りの公算

欧米を後追いするのか?独自の道を選択するのか?

F-3開発計画の開発費計上見送りの原因は、要求性能が防衛省内でもまとまっていない為とされている。

2010年に防衛省は「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」を公表し、i3 FIGHTERという概念を披露した。

i3 FIGHTERは、高いステルス性を実現した機体で、ステルス機探知のための各種センサー技術の開発、早期警戒機や索敵用無人機とネットワークで繋がり戦闘効率を向上させるというもので、これまで日本は、ステルス技術、新型のAESAレーダー、最大推力15トン以上のXF9-1、実物大の試験用ウェポンベイなど、F-3開発に必要な技術を個別に開発してきた。

出典:航空自衛隊

F-3開発に掛かる莫大な予算の問題や、単独開発した場合のリスクから、F-22の機体をベースにF-35のアビオニクスを搭載した案などを検討していると噂されているが、9年前に披露されたi3 FIGHTER以来、次世代の戦闘機について、概念やコンセプトを具体的に示していない。

欧州では、英国の「テンペスト」、フランスとドイツが共同開発する「FCAS」が発表され、第6世代戦闘機の概念が披露された。

欧州が定義する第6世代戦闘機は、高速なネットワークに接続され、偵察や情報収集にとどまらず、直接、戦闘任務への参加も可能な、複数の無人機との連携・制御を主張している。

米国でも、空軍と海軍が別々の次世代戦闘機の研究を進めており、第6世代戦闘機について欧州とは異なる考え方を見せている。

米国の第6世代戦闘機にも、欧州と同じく高速なネットワークや無人機活用が含まれているが、空軍の「FX」は、現在開発中のステルス爆撃機「B-21」を護衛するための長距離飛行が可能で、敵の空域へ侵攻し、敵防空網を貫通できる高度なステルス戦闘機を、海軍の「F/A-XX」は、空母艦隊を敵の攻撃機や、巡航ミサイルなどから守るための迎撃性能に特化したステルス迎撃機の研究を進めている。

無人機についても、空軍では低コストのステルス無人戦闘機「XQ-58 ヴァルキリー」の試作機が初飛行を行い、海軍では3機のF/A-18E/Fによって、103機もの小型無人機を展開・運用テストを行うなど、欧州より具体的なテストや研究が進んでいる。

これは無人機という機材面の開発だけではなく、その無人機をどの様に運用するのか、戦術面での開発も進んでいるという意味だ。

F-35を開発したロッキード・マーティンは「第5世代機から第6世代機へは、第4世代機から第5世代機にかけて見られたような“大きな飛躍”が起こる可能性は低く、第6世代機は第5世代機へは“進化の延長線上”程度になる可能性が高い」という認識で、アップグレードを行えばF-35も第6世代戦闘機の領域に到達すると考えている。

補足:ロッキード・マーティンが言及した第6世代戦闘機とは、欧州の「テンペスト」や「FCAS」を指したもので、欧州の第6世代戦闘機は、第5世代戦闘機の延長線上のものだと、遠回しに批判しているとも解釈できる。

このように欧米を中心に研究・開発が進む第6世代戦闘機から、日本の第6世代戦闘機と目されるF-3は取り残されつつある。

特に問題なのは、第6世代戦闘機の必須条件になりつつある「無人機」との連携・活用度合いだ。

出典:public domain XQ-58ヴァルキリー

日本は、索敵用無人機とネットワークで繋がり戦闘効率を向上させるという程度に留まってるが、欧米では「自律飛行が可能」な、武装した無人機(もしくは無人戦闘機)と、第6世代戦闘機が任務に就くことを想定しており、もはや次元が違う。

日本でも遠隔操作による無人機の研究が行われているかもしれないが、自律飛行が可能な無人機については手付かず、もしくは研究初期段階だと予想される。

F-3の要求性能が防衛省内でもまとまっていないというのは、恐らく、欧米の第6世代戦闘機に要求性能を合わせるべきなのか、F-3の開発だけでなく「自律飛行が可能」で武装可能な無人機まで開発すれば、F-2戦闘機の退役までに間に合わないので、i3 FIGHTERの概念通りにいくのか迷っているのだろう。

出典:ボーイング

F-3だけを開発し、例えば米国からステルス無人戦闘機「XQ-58 ヴァルキリー」や、ボーイングがオーストラリアと開発中のステルス無人戦闘機「ロイヤル・ウィングマン」を購入して使えばいいという意見もあるだろうが、日本が開発するシステムに組み込む=統合させてくれるのかは未知数だ。

システムに統合するということは、XQ-58 ヴァルキリーや、ロイヤル・ウィングマンのデーターを開示し提供しろというもので、韓国が開発している戦闘機「KFX」は、米国製の空対空ミサイルの搭載を予定していたが、米国側が「KFX」に空対空ミサイルを統合するためのデーター提供を拒否したため、AIM-120や、AIM-9などの米国製ミサイルの運用が出来ない。

日本の自衛隊は、建前上、他国の支配空域で活動することはなく、要撃機として第6世代戦闘機を開発するのだから、無人機との連携は不要という考え方もあるが、中国が無人機を従えた航空戦力を充実させてくれば、有人機の数においても劣勢な日本にとって、その差を埋めるのは不可能になってくる。

欧米を後追いするのか、独自の道を選択するのか、どちらが正しいかは分からないが、行く道を決めなければ話は始まらない。

防衛省は、単独開発か共同開発かは別にしても、いい加減、F-3の概念を策定すべきだ。

 

※アイキャッチ画像の出典: 防衛装備庁 / CC BY 4.0 X-2初飛行

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    だから航空宇宙産業後進国の日本には最初から無理な話なんだって何度言わせれば(ry そんなもんに税金使うなら年金を充実させる方に投入しろ!

      • 匿名
      • 2019年 6月 27日

      はいはい

      • 匿名
      • 2019年 6月 27日

      老害サヨクに税金使っても科学技術は進歩しない。若者を惹きつける産業も生まれない。自分が払ってきた額以上の年金を要求し、足りなければ税金で補填しろと主張する老害は無視すべきだ。

        • 匿名
        • 2019年 6月 27日

        アホらし
        ジェット戦闘機なんか眺めて喜んでる層はカタログミリヲタな子供部屋おじさんに絶滅危惧種のプラモデルおじさん、モラル欠如のカメラおじさんじゃねーかw

        生まれた瞬間から不景気で老後の心配が絶えず伸し掛かってる若者世代からすれば、こんなガラクタに税金使うのは「犯罪行為」以外に呼び様がないわ!
        日々投資や預金に追われてる若者達を舐めるなよ?

          • 匿名
          • 2019年 6月 28日

          老害サヨクの観念論だな。若者は就職機会と賃金上昇、景気拡大を望んでる。年金なんかより今の生活なんだよ。現役労働者から搾取して自分の年金を増やそうとする老人は社会の害悪。

      • 匿名
      • 2019年 6月 27日

      年金を無くせば費用増えるよなぁ

      • 匿名
      • 2019年 6月 27日

      一つ言えることは、これから死にゆくのが確定しており将来性が無く投資する価値がない老人の年金に莫大な予算を使うべきではなく、伸びる可能性が高く将来性がある航空産業への投資に税金を使うべきだということです。
      もちろん年金を無くせと言っているのではありません。社会保障も安全保障も等しく大事でありどちらへも予算をバランスよく配分することが必要であることは承知しています。
      しかし、どちらが重要かといえば安全保障保障なのです。昨今の日本周辺の安全保障環境の大幅な変化に対応する為にも防衛費はGDP比2%にまで上げるべきです。そして、特に自国の開発経験が少ない戦闘機開発にこそ予算をつぎ込むべきだと考えます。とはいえ開発が上手くいかず税金が無駄になるということがないようによく方針を検討した上で開発を進めて欲しいと思います。

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    ボーイングの写真が別次元感満載でかっこよすぎる。

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    ミサイルを基準にすれば判り易いのかな?
    F-3はミサイル網の一部、メインは対艦ミサイル、制空、正規は目指してないからね。
     日本独自のミサイルの早期の搭載(開発後、配備を早くできる)
    今後のミサイルが視界外+軌道制御で行くなら、無人機の目的は敵陣での誘導(最終段での誘導で精度を上げる)、無人機での攻撃がメインでは無い。って感じでは? 

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    ぶっちゃけ迷ってる間に第5世代のF-22相当のF-3開発してF-2の代替にした上で
    将来のF-35の代替見据えたF-4で無人機との連携すればいいと思うけどね
    F-22欲しがってグダグダした挙げ句F-4の寿命待ったなしになって
    ギリギリF-35に滑り込んだF-Xのような綱渡りにはなって欲しくないなぁ…

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    苛立ちは分かりますが、少し危機感を煽り過ぎな記事ではないでしょうか?
    防衛省が検討するのは、第6世代の要件ではなく、日本を防衛するために最適な戦闘機は何かなわけでしょう?
    それは無人機どうのではなく、今後整備されるいずも+F-35や水陸両用団との連携、島嶼地域の防衛体制、哨戒艦部隊の立ち上げ、その他これからの防衛計画においてどういう役割を果たすのかということです。
    その防衛体制の再構築が急激に進んでいる最中なのに、むしろ安易にこれがF-3の要求仕様です、なんて出されたほうがむしろ困ります、ちゃんと考えたのかと。
    そしてそんなことは想定積みだから、i3ファイターの構想を受けた技術開発はどんな仕様になっても変更はないというXF9のような鉄板部分からやっているわけです。

      • 匿名
      • 2019年 6月 28日

      イライラ顔真っ赤長文で草

    • 匿名
    • 2019年 6月 28日

    もし仮に仮想敵国が攻めて来たらたとえ後ろ盾にアメリカが居るとしても迎撃は厳しいでしょたとえ時間が掛かるとしても先にF-3を開発して将来的に無人戦闘機運用出来る様にするべき。

    • 匿名
    • 2019年 6月 28日

    相変わらず次期戦闘機についてはネガティブな情報を信じたがる傾向がある
    防衛関係の発表を追っていくと報道は数ヶ月遅れの内容なのが分かるし、怪しい話もよく出す
    過去基準の見方では最近現実に置いてきぼりです

    • 匿名
    • 2019年 7月 11日

    少なくともスクランブル発進にステルス機能は要らないなぁ。
    アメリカの空軍海軍みたいに適材適所で個別に開発すれば?
    コア部分は共通で、あとは外観から何から似ても似つかないヒコーキでもいいじゃないか。

    • まぁ
    • 2019年 8月 18日

    そろそろ仕様を決めろという話には大賛成。
    極論だが、運用、即2線級になったとしても形はもう決める時期だろ。粘りすぎじゃないか。

    • ???
    • 2019年 11月 02日

    国産次期主力戦闘機が気になるのはそりゃあ私も同じ。
    でもねえ、今や領空侵犯するソ連の戦闘機に対する一対一の戦いを挑んだ要撃機F104の時代、20世紀とは違うのだ。
    実際どういう具体的な危機を想定して対処するべきかを決めかねてるのでは。
    尖閣諸島をいきなり不法占拠され、出動したら仮想敵中国の航空兵力がウンカのように押し寄せる無人戦闘機や自爆ドローンの集団だったら。
    多目標ミサイルの開発のほうが優先課題なのか。
    あるいはギリギリで中国に対峙している時いきなり後から襲ってくるのが日本と戦争したがってる、元間接的同盟国だったら。
    ××の後継機選定なんて課題じゃ解決しないかも知れない。
    国家理念無きトランプアメリカが単なる武器商人化してるもんなあ。

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