軍事的雑学

軍事的雑学|米海軍流コスト削減方法?「退役空母」を再利用して「新空母エンタープライズ」建造!

2012年に退役した、世界初の原子力空母「エンタープライズ」が、未だに米国の空母を支えているという、興味深い記事を見つけた。

参考:Parts From The Retired USS Enterprise Are Keeping Her Successors Ready For Combat

空母エンタープライズを潰して、空母エンタープライズを建造する?

1960年に進水した、世界初の原子力空母「エンタープライズ」は、米海軍の戦闘艦として最長の就役期間を記録し、およそ半世紀の間、米海軍の象徴として世界中の海に君臨し続けた伝説の空母だ。

当初、原子力空母「ジェラルド・R・フォード」が就役(予定では2015年に就役するはずだったが、艤装工事やテストが遅れ2017年まで就役がずれ込んだ)するまで、現役として空母戦力の一翼を担う予定だったが、方針の転換により2012年に退役した。

現在は、ニューポート・ニューズ造船所で、解体の時を待ちながら、ニミッツ級空母のため、各種部品や、装置のリサイクルを行っている。

エンタープライズが装備していた、20トンの錨の1つは、ニミッツ級空母「エイブラハム・リンカーン」が再利用している。このような錨の再利用は珍しくなく、1993年に退役した通常動力の空母「フォレスタル」の錨は、ニミッツ級空母「ハリー・S・トルーマン」が再利用している。

また、空母「リンカーン」には、空母「エンタープライズ」で使用されていた蒸気式カタパルトの一部を、転用し再利用している。残りの蒸気式カタパルトのパーツは、現在、ニューポート・ニューズ造船所にドック入りしている、空母「ジョージ・ワシントン」の補修に使用される予定だ。

出典:Public Domain CVN-80「エンタープライズ」完成予想イラスト

さらに、エンタープライズが装備していた、巨大な5つのスクリューは取り外され保管し、解体される船体から回収される鋼鉄6万トンと、アルミ1500トンは再利用に回され、2027年に就役予定の、空母ジェラルド・R・フォード級3番艦、CVN-80「エンタープライズ」に利用される予定だ。

先代の「エンタープライズ」に使用されていたスクリューや、船体の素材が、再び新しい「エンタープライズ」に使用され、世界の海を疾走するとは、何とも粋な計らいと感じてしまう。

 

米国でさえも、もはや空母だけに大金をかける事ができない

一方で、冷静な見方をすれば、巨額の軍事費をもつ米軍でさえ、このような配慮をしてコストを圧縮しなければならないほど、予算がギリギリとい話かもしれない。

実は、トランプ大統領は、予算の掛かる空母「ハリー・S・トルーマン」の核燃料交換を中止し、早期退役させることを計画していた。

出典:Public Domain クレタ島沖に停泊する空母「ハリー・S・トルーマン」

空母「ハリー・S・トルーマン」は、1996年に進水したばかりで、艦齢はたった23年だ。

当然、議会も海軍も猛反対だ。計画にない空母の早期退役などを行えば、米海軍の空母戦力は低下し、現在11隻の空母を運用するため、巨額の費用をかけ整備されてきた航空機材や人員が中に浮いてしまう。

それでも、半世紀も戦い続けた空母「エンタープライズ」に比べ、非常に若い艦にも関わらず、早期退役を考えなければならのは結局の所、核燃料交換に掛かる費用が高価という点と、無人機や、極超音速兵器など、ますます多様化する兵器に対応するため、新兵器の研究開発費に多くの予算を回す必要があり、過去のように、空母と原潜にだけ多くの予算を掛けることが難しくなっているのだろう。

余談だが、先日、トランプ大統領自身が、空母「ハリー・S・トルーマン」の早期退役計画を白紙撤回したため、米海軍の空母戦力低下という自体は避けられた。

このように、少しでも再利用できるものは利用し、コストを削減しようという努力の結果が、退役した「エンタープライズ」を再利用し、新しい「エンタープライズ」を建造するという話の裏側だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain 空母「エンタープライズ」

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 5月 10日

    燃料交換は船体を切り開いてやる大掛かりな作業なので、ニミッツ級の何隻かは予算不足で延期されてます。
    なもんで、ジェラルドRフォード級や最近の原子力潜水艦は船体寿命(おおむね30年から50年間)まで燃料交換しないで済む原子炉+燃料を搭載するのが主流です。

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