欧州関連

英空母で米海兵隊のF-35B運用!英海軍、米国との空母共同使用=「クロスデッキ化」推進

英海軍の艦隊司令官であるジェリー・キッド副提督(中将相当)は、英米はもはや相互運用について話し合っているのではなく、これまで見たことがない次元の統合(英米両軍)について話し合っていると述べた。

参考:UK, US Enter New Era: ‘Unprecedented’ Carrier-Sharing Plan

これまでに見たことがない次元の統合=空母の共同使用「Cross Deck」

米海兵隊は2021年、英海軍の空母「クイーン・エリザベス」に米海兵隊所属のF-35B分遣隊を派遣することになっている。

これは、米海兵隊のスティーブン・R・ラダー中将が今年の5月、メリーランド州で開催された会議の場で「海兵隊のF-35Bと英海軍の空母を組み合わせた共同軍事作戦は、素晴らしい方法になる」と発言したことに基づいたもので、このような空母の共同使用は「Cross Deck(クロスデッキ)」と呼ばれている。

出典:Dave Jenkins – InfoGibraltar, File:HMS Queen Elizabeth in Gibraltar – 2018 / Dave Jenkins / CC BY 2.0 クイーン・エリザベス級空母

英海軍の艦隊司令官であるジェリー・キッド副提督(中将相当)は「英米はもはや相互運用について話し合っているのではなく、これまでに見たことがない次元の統合(英米両軍)について話し合っている」と述べ、このような統合はこれまで「前例」がなく、このような統合を実現できる2つの国の組み合わせは英米以外にないと話した。

要するに英陸軍と米陸軍はすでに20年間、中東地域で協力を続けてきた実績があり、この協力関係を海にも持ち込もうとしているのだ。

例えば現在、南シナ海で行われている「航行の自由作戦」などに、英米が別々に空母を派遣するよりも英空母「クイーン・エリザベス」に米海兵隊のF-35Bを搭載して作戦を実施すれば、英米は政治的・軍事的意思を中国に対して同時に示すことが出来る。

中東地域で不測の事態が発生した場合、もし英空母「クイーン・エリザベス」がアラビア海に展開していれば、米国はF-35Bを派遣するだけで事態への介入が行えるようになり、これは英米双方にとって利益がある妙案だ。

英国にとっては、クイーン・エリザベス級空母2隻分のF-35Bを用意する必要がなくなり、米国にとっては空母不足解消の助けになるだろう。

キッド副提督は「このような統合を実現できる2つの国の組み合わせは英米以外にない」と話したが、もう一つだけ可能性のある組み合わせがある。

それは「日米」だ。

出典:海上自衛隊 護衛艦いずも

日本の空母「いずも型護衛艦」は当面、米海兵隊から派遣されたF-35Bを受け入れることになっている。

日本は空母化された「いずも型護衛艦」で運用するためのSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)型戦闘機として、ステルス戦闘機「F-35B」導入を決定したが、これから米国政府を通じFMS(対外有償軍事援助)方式で調達した場合、約5年程度(恐らく2025年頃)の時間がかかるため、いずも型護衛艦の空母化が先行する形になる。

いずも型護衛艦の空母化工事は、5年に1度実施される艦艇の定期検査を活用して行われ、いずもは2020年度に、かがは2022年度に空母化工事が行われる予定で、日本は空母化した「いずも型護衛艦」に航空自衛隊のF-35Bを受け入れる前に、米海兵隊から運用ノウハウを習得するため米国に協力を要請したのだろう。

その結果が、米海兵隊のによる空母「いずも」の先行利用だ。

このような話を海外では、日米が正式に「クロスデッキ」関係を結んだと報じており、日米両国も、新たな次元の統合(自衛隊と米軍の一体運用)について話し合っているのかもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Nathan T. Beard/Released

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 11月 03日

    甲板の耐熱コートは勿論としても、スキージャンプかカタパルトなしには運用できないとしたら、どっちを追加装備するんだろう

      • 匿名
      • 2019年 11月 03日

      技術開発や工事の手間を考えるとスキージャンプが妥当だと思う

      • 全てF-35B
      • 2019年 11月 03日

      現状では、どちらも装備不可。
      無くても運用できるが、あればF-35Bの発艦重量か増やせるという事。
      ヘリの同時発着艦数が減るので、良し悪し。

      • 匿名
      • 2019年 11月 03日

      どちらも要りませんよ
      無くても発艦できるので

      寧ろ空中給油機の方が問題では

      • 匿名
      • 2019年 11月 03日

      スキージャンプ

      • oominoomi
      • 2019年 11月 04日

      いずも型の甲板長って、意外にもワスプ級やアメリカ級と10m位しか変わりません。
      速力は8ktほど上だから、合成風力を入れると充分にF-35Bを運用出来るでしょう。
      ただ甲板が前すぼまりだから、矩形に拡大した方が良いかも知れませんね。

      • 匿名
      • 2019年 11月 04日

      いずも型とほぼ同サイズのワスプ級、アメリカ級強襲揚陸艦はスキージャンプ台もカタパルトも無しでF-35BをSTOVL運用可能ですから、耐熱飛行甲板があれば問題ないでしょう。
      ペナルティは離着陸の燃料消費増加に伴う航続距離短縮とペイロードですが、この辺りは空中給油で補完できますから、オスプレイの給油ポッド実現まではKC-767などにがんばってもらうしかないですね。

      カタパルトについてはF-35Cと同様に降着装置の強化が必要なので、地上離着陸のF-35Aと同じ降着装置を使うF-35Bでは降着装置の強化が必要になります

    • 匿名
    • 2019年 11月 03日

    庇を貸して母屋を取られる。甲板を貸して母艦を取られる。

    • 匿名
    • 2019年 11月 04日

    今振り返るとクロスデッキの為の空母化だった感、ない?
    いずも型建造まで遡ると陰謀論?

    • 匿名
    • 2019年 11月 05日

    まあ、お金とか能力の面では何も問題ないけど、政治的なハードルが高杉君だろう>日米

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