軍事的雑学

ステルス戦闘機「F-35」は怖くない?ロシアに「ステルス」による航空支配は通用しない

ロシア(旧ソ連)は過去、米国と軍事競争を行った結果、国の経済が滅んだ教訓を活かし米国が誘導する「ステルス開発競争」に便乗せず、独自の戦略で挑み、米国のステルス機による航空支配を破壊しようとしている。

他国に干渉する軍事力を必要としない国にとって、過度な航空機のステルス化は必要か?

米国の航空支配の基本は航空機のステルス化によって達成されるものだと主張し、自らも莫大な予算を「ステルス」技術開発に投資、F-22やF-35、B-2、B-21、MQ-25A、次世代機戦闘機開発などステルス航空機を次々と開発し、世界中の国にも「ステルス」という戦術を浸透させることで、金の掛かる「ステルス」技術開発競争を誘発させてきた。

F-117やF-22開発当時は冷戦末期であり、旧ソ連をステルス開発競争に巻き込み経済を疲弊させる目的もあったかもしれないが、冷戦終結後の軍事力縮小時代を経ても米国は、この金の掛かるステルス戦略を維持し続けた。

ソ連崩壊の混乱期を切り抜け何とか経済を立て直したロシアでも、ステルス技術の研究は行っているものの、航空機や艦船の全面的(極端)なステルス化は行わず、別の角度から米国に挑戦している。

ロシアが最近、量産を始めた防空システム「S-500 プロメテウス」の驚異的な長距離迎撃能力や、迎撃が難しい極超音速空対空ミサイル「R-37M」の運用によって、米国やNATOなどは航空戦術の見直しを迫られている。

Author:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシアの空対空ミサイルR-37

ロシアが開発した新型の防空ミサイル「S-500 プロメテウス」は、S-400の性能向上版だと言われていたこともあるが、姿を現したS-500は完全に「新型」の防空ミサイルで、西側の弾道ミサイル迎撃に特化した「サード・システム」に相当するが、S-500は弾道ミサイルの迎撃はもちろん、極超音速巡航ミサイルの迎撃、低軌道上の衛星迎撃、高価な大型軍用機を最大600km離れたところから迎撃できる。

ロシアの極超音速空対空ミサイル「R-37M」は、米海軍のF-14が運用していたAIM-54 フィニックスばりの大型空対空ミサイルで、最高速度はマッハ6.0、使い捨てのロケットブースターと連結し発射すれば、射程を300kmから400km程度まで延長することも可能という代物で、戦闘機に搭載し運用した場合、脅威を与える範囲は1,000kmを超える。

このような長い射程距離を活かした、高価な大型軍用機迎撃能力は、米国やNATOなど西側空軍の航空戦術に深刻な影響を与える可能性がある。

出典:public domain

S-500やR-37Mが狙うのは戦闘機や爆撃機などではなく、前線よりも後方に位置し、大型で高価な非ステルスの「早期管制警戒機」や「空中給油機」など、前線の航空戦力を支える基盤となる部分だ。

もしロシアの長距離迎撃能力の影響で「早期管制警戒機」や「空中給油機」が後方に下がることになれば、空中給油を前提に設計された西側の戦闘機にとって「致命的」なほど作戦効率が下がるだろう。

なぜなら第4世代機はともかく、ステルス性能維持のため、機体内燃料タンクのみで活動する第5世代機「F-35」にとって、空中給油機が後方の下がれば、それだけF-35の作戦半径が後方に後退することを意味するからだ。

第5世代機も機外に増槽を携行することで航続距離を伸ばすことは可能だが、もし上記の理由で増槽を携行を「強要」されることになれば、ロシアのS-500やR-37Mは第5世代機のステルス性能を台無しにするという目標を達成したことになる。

さらにロシアはF-35を無力化するために、必ずしも空中戦で破壊する必要性がないことに気づく。

F-35が離陸してしまう前に、破壊してしまえばいいのだ。

ロシアは、この発想を実現させるため、マッハ10で飛翔し、地上の固定目標や、水上を移動する目標を攻撃することができ、航空機に搭載可能な極超音速ミサイル「KH-47M2 Kinzhal(キンジャル)」を開発し運用を始めた。

出典:kremlin.ru / CC BY 4.0

このミサイルの射程は少なくとも1,000km以上と言われており、MiG-31K(最大1発搭載可能)で運用した場合は2,000km以上、Tu-22M3(最大4発搭載可能)で運用した場合は3,000km以上の攻撃範囲を持ち、さらにマッハ10.0以上、時速12,240km以上で飛翔することが可能で母機から発射後、数秒から十数秒で目標に到達する。

ロシアのMiG-31Kと極超音速ミサイル「KH-47M2」の組み合わせは、米国やNATO加盟国が調達を進める「F-35に対する回答」だと報じられており、このミサイルで攻撃すれば開戦から数分以内に、F-35を含む航空機が配備されたNATOの航空基地を破壊可能で、恐らく、NATOはF-35を含む航空機を緊急離陸させて空に退避させる時間的余裕はなく、地上で破壊されるだろう。

さらに、このミサイルは洋上に展開する米海軍の空母を攻撃するのに理想的だ。

米海軍の空母に配備されるF-35CやF-35Bが発艦してしまう前に、空母もろとも海の藻屑にしてしまえば、どんなにステルス性能に優れていても意味がなく、特にF-35シリーズに共通する、メンテンス問題は、F-35を空へ送り出すに地上(艦上)での整備に多くの時間を必要とするため、このような短時間での攻撃に対して脆弱だ。

出典:public domain

足の短い第5世代機の弱点を狙った空中給油機の長距離迎撃、ステルス性能を発揮できない離陸前を狙った極超音速ミサイル、本当によく考えられたステルス機の攻略方法だ。

このシステムが非西側諸国に輸出されれば、米国や容易に接近できなくなり、軍事力による影響を行使できなくなる。

本当に関心してしまうほど、よく出来ている「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦法だ。

もし米国が、航空支配の基本は航空機のステルス化によって達成されるという主張を押し通すなら、次世代の第6世代機は機内燃料タンクを増やす必要に迫られ機体は大型化するだろうし、空中給油機や早期管制警戒機、輸送機まで全てをステルス機化する必要があり、そのためのコスト負担は莫大なものになるだろう。

米国のように他国に干渉する軍事力を必要としない国にとって、過度な航空機のステルス化は必要なのか?根本的な問題を突きつけられているのかもしれない。

 

※アイキャッチの出典:pingvin57 / stock.adobe.com

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    対艦ミサイルは、極超音速ミサイルのよいアプリケーションだというのはわかるんですが、巡航ミサイルに使える極超音速ミサイルというのはVaporware臭すぎです。

      • oominoomi
      • 2019年 8月 21日

      最大射程3000kmを使うならマッハ10で約15分大気圏内を巡航する事になります。
      これだけの時間、2000℃に達する空力加熱に耐え、プラズマ雲の中からレーダーホーミングを行うなどかなりSFチックです。
      チタン合金の上に耐熱タイルを貼ってか、特殊な炭素繊維素材を使ってか、よしんばそれを成し遂げたとしてもとてつもなく高価なミサイルになるでしょう。
      かなり眉唾な話だと思います。

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    敵の嫌がる事をするロシア
    日本も見習いたいね
    「嫌がる事はしません」と言った元首相は無能

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    21世紀はロシアに振り回されたアメリカが国体を崩壊させられる時代になる
    嘗てレーガン政権が軍拡という手段でソヴィエト連邦を崩壊させた様に

      •  
      • 2019年 8月 21日

      対米GDP8%で勝てるんですか、凄い予言ですね

      • 匿名
      • 2019年 8月 21日

      残念ながら経済規模が段違いですぜ。

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    開発の決まったF-3は、大き目のウェポンベイと南西諸島方面を見据えた長航続距離を兼ね備え、且つ過度の大型化を避けた機体となる模様ですから、一つの回答となりえるのでは無いでしょうか?

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    ステルス機の厄介なところはレーダー誘導のミサイルは命中しないってところで、短距離赤外線誘導ミサイルなら撃墜できるがその有効射程まで近づく前に母機が落とされてしまう。
    最終段階まで地上のレーダーで誘導すれば地対空ミサイルは命中は期待できるが、イージス艦のレーダーのように100以上の目標を処理する能力は持っていない。
    複数のステルス能力の低い無人機を同伴させれば最初に無人機が落とされ、その後は地対空ミサイルは再装填が必要になるから余裕で地上のミサイル部隊を潰せる。

      • 匿名
      • 2019年 8月 21日

      対レーダーミサイルからミサイルサイトを守るのは難しいですし対空網殺しにステルス機を使わなくてもいいのでは?

    • 匿名
    • 2019年 8月 21日

    極音速ミサイルはもっと小型化され飽和攻撃が可能なほどの「量」も兼ね揃えたなら、アメリカの戦略を曲げさせる力も持つでしょう。結局のところ単純な物量こそ力であり、それを生み出す経済力こそが軍事力の根源であるというのが不変の真理であると思います。

    最近の北朝鮮のミサイル発射で、軍事面ではロシアが強い影響力を持っていることが露になっていますが、それであっても現状を一切変更できていないのがその証明です。

      • 匿名
      • 2019年 8月 21日

      ウクライナ方面は結構現状変更されまくってると思うが
      逆に言うなら、あちら側を決着の付かない泥沼化させて予算人員資源を無限に磨り潰させる(ベトナム・アフガンの如く)のが、我が国の取るべき最適戦略な訳だけどね

        • 匿名
        • 2019年 8月 22日

        クリミア問題に極音速ミサイルは関係ないし、こうしたミサイル開発より数年前の話。現職のゼレンスキー大統領はロシア側ではありません。極東に軍事力を集めさせないというのは確かに正攻法ですね。

      • oominoomi
      • 2019年 8月 21日

      「経済力こそが軍事力の根源」ということについては全く同感です。
      アメリカのGDPはロシアの10倍以上、しかもこの数年のアメリカの経済成長率はロシア2倍程度であり、さらに経済力の差が拡大しています。
      この現状を見ると、当面ロシアがアメリカに戦略の根本的な見直しを迫る事が出来るとは思いませんし、実際のところアメリカが動揺している気配は見られません。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    管理人さん、興味深い記事をありがとうございます。

    F-35が地上に駐機している間に攻撃する戦法は1つの戦術としてありですが、地上攻撃用に発射されるミサイルはレーダーで追跡・記録されるでしょうから、発射国への反撃の根拠になるでしょう。
    開戦直後というのがポイントですね。
    爆発したミサイルの部品、爆薬の成分からも生産者の特定ができるようです。

    海上艦艇、潜水艦と同様に機の所在を明かさないといった方向性になるのでしょうか。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    これ程負け犬のプロパガンダという言葉しか浮かばない記事は無いですねぇw

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      そもそもF-22やF-35の5世代機はステルス性を維持して長時間飛ぶために4世代機に比べて機内燃料がかなり増えていて、通常の任務なら増槽を付けた4世代機と遜色ない距離を飛べる。

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