ロシア関連

ロシア、約34億円の格安ステルス戦闘機「Su-57」を当面輸出しない

ロシアのステルス戦闘機「Su-57」は、当分の間、輸出されることはないと、ユーリー・ボリソフ副首相がメディアの取材に対して明らかにした。

参考:Россия будет продавать новые истребители Су-57 за границу

Su-35が売れているのに、Su-57を売りに出す意味がない

ロシアのユーリー・ボリソフ副首相は、第5世代戦闘機「Su-57」が輸出へ向けて計画が動いているが、これはロシアが採用した後の話で、Su-35が上手く行っているのに、自らその市場を衰退させる理由がないと話した。続けて「ロシアがSu-57を採用する前に、決して輸出許可を発行することはない」と付け加えた。

数週間前、ロシア政府はSu-57の輸出を承認する文書にサインしたと報じられていたし、今年の11月、ドバイで開催される航空ショーで、正式に輸出仕様のSu-57を発表するかもしれないと、英国のジェーンズが報道したが、どうやらSu-57の輸出は、無条件では無さそうだ。

Attribution: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 SU-35S

今回の発言は、ロシアで航空機で最も売れている第4++世代戦闘機の「Su-35」の顧客を、第5世代戦闘機の「Su-57」が奪わないようにするため、当分の間は、Su-57の輸出を制限するという意味だと受け取れる。

現在、世界中で購入可能なテルス戦闘機は、米国の「F-35」か、ロシアの「Su-57」しかなく、政治的に米国からF-35が導入できない国とって、Su-57が唯一の選択肢になる。

プーチン大統領は、最近の会議で、76機のSu-57を約26億3000万ドル(約2900億円)で調達すると話し、Su-57のあまりの安さ(1機あたり約34億円)に世界中を驚かせた。

第4世代戦闘機並な価格で、第5世代戦闘機が購入できると言うのだから、ロシアのSu-57に興味を持つ国は多いはずだ。

但し、約34億円というSu-57の価格には、研究開発費が上乗せされたておらず、単純な製造コストのみを反映させた価格という分析もあり、ロシアは、Su-57の機体価格を安く見せることで、Su-57の優位性をアピールし、実際に輸出する際には、当然必要になる搭載兵器、パイロットのトレーニングやメンテナンス、消耗品などに、研究開発費を載せて回収しようとしている可能性が高い。

恐らくロシアは、Su-57は「輸出不可能」ではないと匂わせ、驚くような低価格で顧客を焚き付けておいて、ロシアの経済的・政治的ニーズを満たす国にのみ、Su-57の輸出を許可し、それが不可能な国は、Su-35で対応すると言うような手法を取るのではないだろうか?

ロシア外交にとっても、軍需ビジネス的にも、切り札になりうる「Su-57」を、当然、安売りする気はないだろう。

ロシアは釣った魚にまで餌を与えるだろうか?

トルコは、ロシアからS-400導入のため、米国からF-35の供給を停止される事態に陥っているが、もし米国がF-35を供給しないなら、ロシアからSu-57を導入すると息巻いている。

出典:public domain F-35A

当然、ロシアはトルコに「米国に捨てられてもロシアがステルス戦闘機を供給できる」と言って煽るだろうが、実際にトルコが米国に捨てられれば、ロシアはトルコにSu-57を売る必要がない。

トルコは、ロシアが約束を破ったとしても、米国陣営に戻ることが不可能だからだ。

そうなれば、トルコはロシアにとって打ち出の小槌だ。

何かと理由をつけて、まずはSu-35を購入しろと言ってきても、もはやトルコに選択肢はない。

ロシアが、トルコにいい顔をするのは、米国や欧州からも兵器を購入できるという「選択肢」をもっているからで、S-400導入で米国や欧州との関係が悪化すれば、それまで仏のような顔をしていたロシアが、その本性を表すかもしれない。

釣った魚にまで餌を与えるほど、プーチン大統領は甘くないだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Attribution: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 Su-57

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 11日

    SU57てSU35の丸味を取り少し角張らせただけのような… あまりステルスってもないように見える→ インテークエンジンが直線だもの。F22や35は途中でグネっている。直吸から直管排気でないとパワーが出ない的な。 フルモデルチェンジでなく、マイナーチェンジだから安い→だからステルスれていない→だから外に出して調べられるとヤバい→だからだから売らない!

    1
    • 匿名
    • 2019年 6月 12日

    兵器販売方法としてはごく真っ当なやり方かと
    オーストラリアに売ったフランスの潜水艦だって後からグダグダになってもオージーにもはや選択肢はない
    フランスは濡れ手に粟で設けつつ潜水艦ノウハウのもゲットと美味しいとこ食いまくり
    こういう手練手管が使えないと兵器産業なんぞ維持できないんだろうな…日本にゃ無理だ

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