軍事的雑学

たった34億円でSu-57が購入可能?ロシア製ステルス戦闘機が「激安」な3つの理由

ロシアは、76機のSu-57を調達するための予算が約26億3000万ドル(約2900億円)だと言って、世界中を驚かせている。

参考:ロシア最新鋭スホイ57戦闘機が安すぎると疑問

Su-57の1機あたりの価格は3400万ドル(34億円)?

プーチン大統領は、最近の会議で、Su-57を76機調達する方針だと述べ、「20%のコスト削減がこの計画を可能にした」と言葉を続けた。

76機のSu-57を、約26億3000万ドル(約2900億円)で調達するということは、1機あたりの価格は、たった3400万ドル(34億円)という計算で、多くの軍事専門家が口を揃えて「安すぎる」と言っている。

Attribution: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 

当初、16機のSu-57を調達するための予算だった約26億ドルと同じ額で、76機のSu-57を調達できというのは完全にミステリアスだ。

この疑問に、Military Watchが、興味深い分析をおこなっていて、Su-57の価格が安いのには3つの理由があるようだ。

Su-57の価格には研究開発費が上乗せされていない?

1つ目は、Su-57の価格には、Su-57の研究開発費が上乗せされたておらず、単純な製造コストのみが価格に反映されているので、戦闘機の標準的な価格からかけ離れた3400万ドル(34億円)という値がついたのではないかと予想している。

2つ目は、開発環境の差だ。米国のステルス戦闘機F-22は、当初750機の発注を見込み、海軍からも500機を超える受注を期待していたので、1000機を超える受注があれば、1機あたり3500万ドル程度まで価格を下げることが可能だとソロバンを弾いていた。

しかし、度重なる計画遅延、冷戦終結による存在意義の消滅等で、調達数が187機まで減らされ、期待した追加受注や輸出の話も頓挫し、2011年にはラインを閉鎖した。

出典:pixabay

ロッキード・マーティンは、たった187機のF-22から、莫大な開発費を回収しなければならなくなり、1機あたり約4億ドル(約450億円)という馬鹿げた価格を要求することになったが、もし開発費の上乗せが無かった場合でも、1機あたりの製造コストは約1億5000万ドルだった。

結局、これは、米国という人件費も、原材料費も、右肩上がりで増えていく高コストな開発環境で、まだF-117の開発経験しかなかったステルス機という未知の戦闘機を、1960年と同じ発想(コスト削減という発想がない)で作った事が原因だ。

たとえ1000機量産していても、1機あたり3500万ドルを達成できたのかは、F-35の価格の推移を考えると非常に怪しい。

ロシアの場合、米国に比べて生活水準が低いので、開発に携わる技術者や、戦闘機製造に携わる労働者など、西側に比べて、非常に割安な環境で戦闘機を開発しているため、Su-57の価格を抑える要因になってる可能性がある。

プーチン大統領による自作自演の価格設定

3つ目は、Su-57を製造する統一航空機製造会社に対し、利益率を減らすよう説得したのがプーチン大統領だったことだ。

補足:統一航空機製造会社とは、2006年に国内の航空企業、スホーイ、ミグ、イリューシン、ツポレフなどを統合して作られた国策企業だ。2019年にスホーイ、ミグを合併し統合することが決まっているため、今後の戦闘機の名称がどうなるのか、非常に興味深い。

プーチン大統領が「20%のコスト削減がこの計画を可能にした」と話したように、Su-57は当初価格からの20%の値下げを実現したが、値下げを受け入れた統一航空機製造会社は、ロシア政府が株式を91%以上保有する、ある意味、国策企業に近い存在なので、プーチン大統領の「説得」という「命令」に逆らう事は事実上、不可能だ。

但し、Su-57に投資された研究開発費回収を諦めたわけではない。

AESA式シーカーを備えた空対空ミサイル「K-77M」や、空対空極超音速ミサイル「R-37M」など、Su-57に搭載される兵器と機体をパッケージ購入すれば、1機あたりの価格は5000万ドルを超えるだろうし、パイロットのトレーニングや、スペアパーツ、予備のエンジンなど、Su-57導入のための初期インフラを整える費用まで含めれば、価格はもっと高くなる。

ロシアは、Su-57の機体価格を安く見せることで、ロシア製戦闘機の優位性をアピールし、実際に海外の顧客へSu-57を輸出する際には、当然必要になる搭載兵器や、パイロットのトレーニング、メンテナンスに必要な消耗品などに、研究開発費を載せて回収しようとしている可能性が高い。

以上のことから、Su-57の価格は、プーチン大統領による政治的な意味合いが非常に強い、自作自演の設定と言えるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Attribution: Dmitry Zherdin / CC BY-SA 3.0

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 5月 21日

    機体の裏側にちゃんとMade in chinaと書いてあるだろ。つまりそういうことだ。

    • 名無し
    • 2019年 5月 21日

    たしか、換気ダクトが真っすぐエンジン接続されている事から思ったほどステルス性が低いから価格を安く設定したんじゃない?

    • 匿名
    • 2019年 5月 21日

    初期価格を安くして買わせた後、維持費やパーツ料金で金を取るいつものロシアのやり方

    • 匿名
    • 2019年 5月 22日

    これがロシアのやり方と言って非難してるけどアメリカよりはマシなんじゃないか?

      • 匿名
      • 2019年 5月 22日

      別に非難の意図を持って書いてないけどな。そういうやり方って書いただけで

    • 匿名
    • 2019年 5月 22日

    まともな電子産業もない国が作ったみてくれだけのステルス機

    • 匿名
    • 2019年 5月 29日

    ロシア流というより日本でもお馴染みの
    プリンター商法でしょう?
    本体買ったら消耗品は必ず必要なので
    その消耗品が馬鹿高いだけの事
    見た目の安さに釣られる馬鹿はどこにもいる
    日本人にも多いと思うぞwww

      • 匿名
      • 2019年 12月 18日

      全く同じ意見があったw

    • 匿名
    • 2019年 6月 27日

    ようはこういうyこと↓
    ロシアのGDPは購買力平価だと400兆円ある。フランスとイギリスの300兆円を軽く超えてて、ドイツの440兆円と近い。日本は560兆円。
    ドルベースだとルーブル暴落の影響でロシアのGDPは過小評価されてしまう。
    ロシアのGDPを2008年のドルルーブルレートでドル換算GDPを計算すると360兆円になる 。

    • 匿名
    • 2019年 8月 10日

    ロシア(コメルサント)
    34億円とかメーカーも国防省も大統領も言ってない
    価格のソースくらい調べろ

    • シャア専用アムロ
    • 2019年 9月 29日

    なんかサンプルをつかませて、価格を上げる悪徳商法っぽい。

    • 匿名
    • 2019年 12月 18日

    なんかソフバンとか携帯会社みたいな売り方ですね
    もしくは家庭用プリンターの補充インクでボッタクリ商法

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