軍事的雑学

NATOにとっては悪夢? ロシア、次世代防空システム「S-500 プロメテウス」量産へ

ロシアはシリアで実施していた次世代防空システム「S-500 プロメテウス」のフィールドテストが完了し、今年中にもS-500の量産と運用を開始する予定だと報じている。

補足:Russia Claims Its New S-500 System Can Shoot Down An F-35

ロシアの防空システム「S-500 プロメテウス」量産が開始寸前で西側に緊張が走る

ロシアメディアは、シリアで実施していた次世代防空システム「S-500 プロメテウス」のフィールドテストが完了したので、今年中にもS-500の量産が始まると報じている。

ロシアはシリアにあるフメイミム空軍基地にロシア軍を駐屯させており、ここに開発中の兵器を持ち込んで実戦テストを実施していると言われている。ロシアの第5世代戦闘機SU-57も同地でのテストを実施しており、防空システム「S-500」も量産前にシリアに持ち込まれテストを実施していたと複数の情報源が明らかにしているが、ロシア政府はこれを否定している。

次世代防空システム「S-500」は戦略的な脅威に対処するために設計されたS-400とは全く別の種類の防空システムで、S-400を置き換える存在ではなく互いに補完しあう形で運用される予定だ。

防空システム「S-500」は最大600km~800kmの範囲で作動し、システム自体の応答速度がS-400も向上しているのが特徴で、大陸間弾道ミサイルや極超音速ミサイル、マッハ5.0以上で空中を飛行するあらゆる脅威を迎撃することが可能だと言われており、低軌道で地球の周りを周回する衛星や宇宙船も迎撃できるらしい。

補足:S-500は脅威の探知からミサイル発射にかかる時間が3秒~4秒と言われており、S-400よりも6秒ほど短縮されている。

さらに米国製のステルス戦闘機に対しても有効な迎撃が出来ると言われており、S-400と組わせて提供させる多重防空層は強力なロシア版「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」を作り出すことになる。

ロシアのS-500量産が始まり運用が開始されれば、最も影響を受けるのは米国と欧州だ。

欧州の中にあるロシア領「カリーニングラード」やウクライナから奪ったクリミア半島にS-500を配備されると、冷戦終結後にNATOへ加盟した東欧諸国(バルト三国、ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア等)、ドイツ、ギリシャ、トルコまでがS-500の監視下に入り、ドイツ上空や黒海に面した周辺諸国上空を飛行する航空機を迎撃できるようになるためNATOにとっては非常に厄介な問題となる。

カリーニングラードやクリミア半島に配備したS-500は、特に早期警戒機や空中給油機、輸送機など大型で価値の高い航空機を狙っており、空中給油機がS-500の脅威範囲から後退することになればF-16、F/A-18、F-35、グリペン、ラファールなどの航続距離が比較的短い戦闘機は攻撃範囲が短くなり、早期警戒機の不在は戦闘効率の低下に繋がる。

もちろん前線に物資を届けるための戦術輸送機も活動範囲が制限されるため、既存の兵站システムも見直さなければならない。

出典:Public Domain 早期警戒管制機 E-3

NATOはS-500の脅威に晒される早期警戒管制機「E-3 セントリー」を2035年までに廃止し、E-3のような大型の早期警戒管制機でなく全く新しいプラットフォームで置き換える計画を発表、米国も早期警戒管制機の早期退役を検討中で、ネットワーク化された戦闘機や無人機による疑似的な「早期警戒管制網」へ移行することを考えている。

補足:米空軍はF-35や無人機をネットワークで繋ぎ、収拾した情報を高高度を飛行するU-2で中継、後方の司令部に伝達することで疑似的な「早期警戒管制網」構築実験を行っており、ロシアのS-500によってE-3のような大型の早期警戒管制機が役に立たなくなることを見越しているのかもしれない。

もし、このS-500が中国に輸出されれば日本も無関係でいられなくなる。

日本は現在、E-3に匹敵する大型の早期警戒管制機「E-767」と米海軍が空母で運用している早期警戒機「E-2」を運用中だが、中国がS-500を入手し杭州辺りに配備すれば東シナ海が影響下に入るため、日本も安価な無人機による早期警戒管制網の構築を行ったほうが良いのかもしれない。

 

※アイキャッチの出典:maxoidos / stock.adobe.com

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コメント

    •  
    • 2020年 2月 03日

    最近のロシアの新しい兵器の名前は中二病過ぎる
    自分を大きく見せたいやつは、実質は大した事は無いという事
    まあ名前の事は置いといても、新兵器一つでアメリカに大逆転!などいう事は起こり得ないのに、
    ここ数年の「奇跡の新兵器!」というプロパガンダのラッシュは
    心理的によっぽど追い込まれてるのだろうか
    戦争末期の日本を連想させるレベル

      • WSO
      • 2020年 2月 05日

      オライオン「・・・」
      ポセイドン「・・・」
      ミーティア「・・・」
      グリペン「・・・」

    • 匿名
    • 2020年 2月 03日

    結局ECCMで対応するんじゃないかな。

    • 匿名
    • 2020年 2月 03日

    クリミアをパクられたときに対応何もできなかったのがなあ
    なんかしらできなかったものかしらん

    • 匿名
    • 2020年 2月 03日

    どんぶり勘定だが、地上配備のレーダーでは500km先だと高度24km以上を飛ぶ航空機しか見つけられんのでは

      • 匿名
      • 2020年 2月 04日

      別にミサイル発射機直近のレーダーから見通せる意味なんて無いじゃん。
      戦闘機やら前線レーダーやらが緯度経度を指示して、500km後方から撃ち込むだけでしょ。
      視野外に撃ち込むなんて、砲兵がナポレオンの時代からやってること。
      むしろミサイル側のレーダーの性能が良ければ、大気圏外からルックダウンでよく探せる可能性すら有る。

        • 匿名
        • 2020年 2月 04日

        >戦闘機やら前線レーダーやら

        緯度経度はモノの例えだろうからまぁいいとして、その場合前線の戦闘機やレーダーが脅威なのであってミサイル自体が1000Km先から飛んでくるかはどうでもいいよね?
        この射程1000Kmが脅威になる為にはロシア軍の前線は遥か彼方数百キロ先にあってロシア軍の気配も何も無い空域が狙われるって状況になければならない。
        ロシア軍の前線が目の前にあるならば味方を攻撃するミサイルがその前線から放たれようが1000Km先からはるばる飛んで来ようが意味に違いは無い。
        つまり1000Kmの射程を生かす為にはその距離を直接見通して目標を探知できなきゃその超長射程の意味が無いんだ。
        それに発射されたミサイルが1000Km移動するのに平均速度マッハ3としても軽く20分近くはかかるんだよ?
        高速で3次元移動する物体に当たるとは到底思えないけどねぇ・・・。

    • 匿名
    • 2020年 2月 03日

    こんな強力な電波発してたらすぐに攻撃されそうだがどうなんでしょ

      • 匿名
      • 2020年 2月 04日

      確かに。
      そこんところどう解決してるんでしょうね。
      そもそもこう言うなんでも出来ます的な兵器って…。

    • 匿名
    • 2020年 2月 04日

    ミサイルの時代は終わりつつあります。

      • WSO
      • 2020年 2月 05日

      対空・対地・対艦などの各種巡航/弾道ミサイルが長射程化・極超音速化や挙句の果てに不規則蛇行飛行能力まで持ちつつあり、戦時において自軍の軍事衛星・空母・軍事用大型機などが高価値目標として喪失・損耗するリスクが急激に高まりつつある現代にようこそ。ミサイルの進化がまさに今、世界の軍事ドクトリンや兵器体系に影響を及ぼしつつあります。

    • 匿名
    • 2020年 2月 04日

    矛盾は常に……
    遠方まで見通せる強力なレーダーなら電波の発信元が簡単にバレ、紛争時には真っ先に狙われる…
    各所に小規模なレーダーを配置し回線で繋いでカバーするからレーダーサイトの1つや2つ… というなら回線を遮断されれば機能しなくなる…
    レーダーによる探知を元にミサイル発射なら… それなりの対処法はありそう……
    闇雲に撃って 後はミサイル搭載の探知能力で ではないだろうから……

    • Saeba
    • 2020年 2月 04日

    適当に射ちっぱなしで 後はミサイル搭載の探知能力で ではないだろうから……

    ミサイル自体が移動式でも、遠方まで見通せる強力なレーダーのサイトが叩かれると… ?……

    ネットで多数のレーダーサイトを繋いで、1つや2つ潰されても… だとネットの強度次第で無力化も… ?…

    飛翔速度や航続距離で厄介は厄介なのだろうが、あまりに遠方から射てば補足され易くなるのだし……

    どんなものなのだろう……

      • WSO
      • 2020年 2月 05日

      ミサイルも車両移動式、同時に、その管制を行う対空レーダーも車両搭載で移動式ですがな。で、基本的に軍隊の防空レーダー間のデータのやり取りってのは軍内部専用のスタンドアローンの光ケーブルだとかで連接されていてWWWの一般ネットには繋げちゃいないかと。

    • 匿名
    • 2020年 2月 04日

    (ノ∀`)σ ショウバイジョウズダネー
    F-35発見したかもー、今は輸出しないよー、って感じで期待値を高めておいて、S-500を補完できるお安いS-400を販売、で将来の輸出に備えて囲い込みも完了っと。

    • WSO
    • 2020年 2月 05日

    いやコレ、兵器としては単なる野戦防空の車両式SAMシステムでしかないでしょ?高性能のようですが、その基本に立ち返れば無効化もハードキル・ソフトキルの両面で何もできないわけでもない。それと、欧州地図に単純に700kmかそこらの円を描いてそれでどうこう言ったりAWACSに絡めて語るのはちょっと違うのでは?せいぜい、彼我のランドウォー(陸戦兵器&航空機)における防空能力としては地球の丸み込みでざっくり領域半径100kmとかその程度では?まぁそれでもその覆域内がほぼ完全に敵の聖域化される点は重大だとは思いますが。問題は射高のほうで、軍事衛星も捕捉・撃破可能な点ですかね、それってはまさしくロシアのハイブリッド・ウォー・ドクトリンの教科書通りですよね…。

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