軍事的雑学

欧州に逃げ場はない? ロシア、極超音速兵器が欧州全体を射程圏内に収める

ポーランドメディアは、ロシアが開発した極超音速ミサイル「KH-47M2 Kinzhal(キンジャール)」の影響はポーランドだけでなく、欧州の大部分にも致命的な影響を及ぼすと警告している。

参考:Rosjanie przetestowali „hipersoniczny” Kindżał [KOMENTARZ]

対策の実現は早くて10年後?極超音速兵器の「無双状態」は暫く続く

ロシアが開発した極超音速ミサイル「KH-47M2 Kinzhal(キンジャール)」は、目標までの飛翔コースを変更できる(操縦できる)ため迎撃が困難な短距離弾道ミサイル「9K720 イスカンデル」をベースに開発されたと言われており、少なくとも1,000km以上の射程を持ち、最高速度はマッハ10に到達するとまで言われている。

このような規格外の性能も問題だが、このミサイルの最も警戒すべき部分は「航空機に搭載され運用する」という点で、地上配備型の「9K720 イスカンデル」よりも凶悪な存在だ。

地上配備型の「9K720 イスカンデル」なら事前配備される地点の予想がつき、影響を受ける範囲も限定される(ロシア領内からイスカンデルの射程距離分の範囲)ため「KH-47M2 キンジャール」に比べれば、まだマシだと言える。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 Tu-22M3

しかし「KH-47M2 キンジャール」は、車両に搭載され運用される地上配備型の「9K720 イスカンデル」とは異なり、特別に改造された戦闘機「MiG-31K」や爆撃機「Tu-22M3」に搭載して運用するため、自由に射点を移動することができ、母機が飛行する分だけ攻撃範囲が延長=より遠くの目標を攻撃範囲に収める事が出来る。

航空機に搭載することで、前線から離れた場所に分散配備すれば生存性も向上するだろうし、一体何処を狙っているのか予想することも困難だ。

出典:erllre / stock.adobe.com

仮に、ロシアの飛地領であるカリーニングラード州や、ウクライナから事実上強奪したクリミア半島、ロシア寄りのベラルーシーにある基地から「KH-47M2 キンジャール」を搭載した戦闘機「MiG-31K」が出撃した場合、スペインとポルトガル以外の欧州諸国が影響を受けることになる。

この中には物流を支える空港や港湾施設、NATOや米国の軍事施設が多数含まれており、このような施設を破壊されれば事実上、欧州外からの増援をシャットダウンされてしまう。

現時点では、航空機から発射した「KH-47M2 キンジャール」を迎撃することは非常に難しいため、発射される前に航空機ごと撃ち落としてしまうほうが簡単かもしれないが、MiG-31Kは最高高度2万メートルまで上昇してから「KH-47M2 キンジャール」を発射するため、これを高高度で迎撃するというのも簡単な話ではない。

ポーランドメディアは、このような脅威を検出し捕捉できるシステムの導入や、対抗できる新しい攻撃システムの開発、インフラストラクチャの強化をNATO全体で取り組む必要があると警告しているが、最も直接的な対策である「迎撃」や「防空システム」については触れていない。

将来、技術が発展すれば、極超音速で複雑な軌道を飛翔する物体の迎撃も可能になるかもしれないが、当分の間は「KH-47M2 キンジャール」が使用されるような局面が来ないことを祈るか、同じような兵器を開発するしか手がないのに、極超音速兵器の開発で欧米はロシアや中国よりも遅れており、これを巻き返すだけでも簡単なことではない。

米国も従来のミサイル防衛を見直し、新たに極超音速兵器にも対応できる「統合防空ミサイル防衛」を掲げ、宇宙空間にセンサーを配備する計画を進めるらしいが、これが実用化されるのは早くても2030年代になる。

以上のことから、極超音速兵器の「無双状態」は暫く続くことになるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典: kremlin.ru / CC BY 4.0

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