トランプ大統領がウクライナにトマホークを提供するのかどうか不明だが、ATACMS提供やF-16提供で学んだ「1つの兵器システムだけで戦争全体の流れは変わらない」という教訓を思い出す必要があり、米国が提供できるトマホークの数も無限ではないため過剰な期待は厳禁だ。
参考:Oshkosh Defense Introduces the Family of Multi-Mission Autonomous Vehicles (FMAV) at AUSA 2025
X-MAVをウクライナに送るにはシステム統合や検証作業に時間がかかるという意味で、F-16を短期間で戦力化できると勝手に期待したのと同じ
Financial Timesは12日「トランプ大統領はプーチン大統領とのアラスカ会談を表向き成功だったと評価したが、実際には何の進展もなかったためプーチン大統領への失望を深め『より深刻な攻撃を支持する方向』に転換した」「米国の諜報機関はウクライナが策定した目標、攻撃ルート、高度、タイミングについて助言を与えている」「具体的には目標を守る防空システムの配置や脆弱性に関する情報を提供している」「そのためウクライナ軍の自爆型無人機はロシアの防空システムを迂回できるようになった」と指摘。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Jonathan Sunderman/Released
取材に応じた米当局者も「ウクライナ軍の自爆型無人機による攻撃はロシア経済の基盤を直接攻撃して弱体化させた」「このアプローチはプーチン大統領に和平交渉を迫るための手段だ」と言及し、トランプ大統領も最近「トマホーク提供についてロシアと話をするかもしれない」「私はロシアに『この戦争を解決しないのならウクライナにトマホークを送る』と言うだろう」と述べているが、本当にトマホークをウクライナに供給するのかどうかは不明だ。
さらにトマホークが戦争に与える影響についてもATACMSやF-16の時と同じ、つまり「もしトマホークが供給されればウクライナ軍の長距離攻撃能力は強化されるものの、それでも1つの兵器システムだけで戦争全体の流れは変わらない」と主要メディアや専門家は繰り返し説明しているのに、一部のメディアやSNS上では「トマホークが戦争の流れを変える」と過剰に持て囃しており、仮にトマホーク提供が実現しても「過剰な期待」に応えられるほどの効果は見込めない。

出典:ロッキード・マーティン LRASM
そもそもトマホークは米海軍の対中戦略においてLRASMと共に「重要な長距離攻撃手段」に位置づけられているが、2023年の発注数は137発、2024年は購入資金が戦術ミサイルとして一括計上されたため調達数は不明、2025年に計上された資金の大半はトマホークの再認証作業やBlockIVからBlockVへのアップグレード作業に費やされ、2026年のトマホーク関連資金は僅か2.6億ドル(全額がBlockVの新規調達に費やされても80発前後)しかなく、ウクライナに送れるトマホークの数など容易に想像できる。
もっと問題なのはウクライナにトマホークを送っても「どうやって運用するのか」という点で、米軍は2019年まで中距離核戦力全廃条約の制限を受けてトマホークの地上発射用ランチャーを保有しておらず、最近になってMK.41を流用したTyphon Weapon Systemを取得したばかりだが、まだ指揮統制システムとランチャー4基で構成された一式を1セットしか保有していないと言われており、フィリピン展開でも重量が重すぎて機動や展開地が制限される問題が判明したためシステム全体の小型化を検討しているらしい。

出典:Oshkosh
要するにTyphon Weapon Systemは試験導入の域を脱していないため積極的な調達が始まっておらず、そのためOshkoshがAUSAのイベントで発表したFMAVファミリーを構成するX-MAV(トマホーク4発を搭載可能)に注目が集まっているものの、Oshkoshが発表したFMAVファミリーは陸軍が取り組んでいるCommon Autonomous Multi-Domain Launcherへの提案に過ぎず、まだ競争入札すら始まっていないためX-MAVの能力は検証も実証されていない、つまりX-MAVをウクライナに送るにはシステム統合や検証作業に時間がかかるという意味で「F-16を短期間で戦力化できる」と勝手に期待したのと同じだ。
トランプ大統領がトマホーク提供を決断した場合、最も現実的なのは1セットしかないTyphon Weapon Systemをウクライナに送ることで、恐らくトマホークの提供数も限られるため丁度いいのかもしれないが、少量のトマホークがもたらす効果は政治的意味が強く、実際の長距離攻撃で継続的な戦果を担保するのは量と持続性が確立されているFP-1やフラミンゴミサイルだろう。

出典:Lockheed Martin
逆にトランプ大統領がトマホークの大量提供に踏み切ると「ランチャーをどうするのか」という問題よりも、スイスと同じように「オーストラリアと日本が発注したトマホークの納品が怪しくなる」と覚悟したほうが良い。
追記:この手の話題になると確実に「西側メディアやオールドメディアが」という批判が多くなるが、ATACMSの時も、F-16の時も、今回のトマホークに関する報道でも「1つの兵器システムだけで戦争全体の流れは変わらない」と主要メディアや専門家は警告しており、恐らく「西側メディアやオールドメディアが」という批判の殆どは空想上の産物に過ぎず、メディアが大本営発表を垂れ流すといった批判もYouTuberの「ロシアボコボコ」のイメージに影響を受けすぎているのではないかと思っている。

出典:forbesのスクリーンショット
ウクライナ軍の報道官にすら記事内容を否定されたとある方とNewsweek以外の主要メディアが報道するウクライナ関連の記事は「大本営発表を垂れ流す」と言うほど酷くないし、個人的によく参考にさせてもらっているし、逆にロシア国営メディアの「酷い大本営発表」に誰も言及しないのか不思議でならない。
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※アイキャッチ画像の出典:U. S. Navy photo by Petty Officer 1st Class Stephen J. Zeller, fire controlman/Released





















ボカシを突き破る斧先生のご尊顔が強すぎますね
ボカシを突き破るとある方とNewsweekと とある 方と乗り物大好きなメディアの4種類かな・・・うん
乗り物大好きなメディアは信頼できるでしょう。著名な軍事ライターの人も寄稿しているくらいだし。
乗り物の記事なんて斧先生と同じレベルでしょ
皮肉では…?
あ、もしかして元自でヘンテコ記事を書く谷族が生息してる方のことだと勘違いしてる?
違う違う、こっちが言ってるのは竹内先生や関先生が寄稿してる方。広告の量はひどいけど記事の中身は真っ当で良質、貴重な日本語ミリタリー情報源。
あ、あと稲葉先生を忘れちゃいけない。
この人はJディフェンスニュースや海外有名軍事サイトのNaval Newsにも寄稿している日本で一二を争うレベルの実績ある人なのはここにいる人なら誰もがわかるはず。
モザイク貫通率が野獣先輩並に高すぎる
これは気鋭のSF作家の方ですかね?
スクショの大先生、ニューズウィークでの記事契約が切れたようですね…
追記です。
ウクライナに関して、興味深い内容があったので、御興味のある方がいらっしゃれば。
オデーサ市長のウクライナ国籍が剥奪されたようで、国籍がないと在職できないでしょうから市長退任することになるのかなと。
ゼレンスキー大統領が、意中の人物を市長代理に任命することで、最前線に比較的近い・重要都市オデーサの統制を強めることに繋がりそうですね(今までどうだったのかも気になるところです)。
(2025年10月14日 ゼレンシキー宇大統領、ロシア国籍を保有する人物からウクライナ国籍を剥奪 オデーサ市長等=関係者 ウクラインフォルム)
「NATOのミサイル配備を阻止する為の戦争のせいでNATOのミサイルがウクライナ軍に配備される」という矛盾を強調する象徴的な意味合いが強いと思います。
この話の馬鹿馬鹿しさに気付かない人は居ないでしょう。戦争をしてる意味自体が無い。トマホーク配備を止める為に停戦するって方がまだ理屈が通ってる。
「NATOのミサイル配備を阻止する為」なんてお題目を本気で真に受けてる人なんてほとんどおらんでしょう。
「ロシア人/ロシア語話者の保護」も同様。
お題目だからこそ事実と矛盾するんでしょう。内外共にそのお題目で説明してるからこそ、馬鹿馬鹿しさが際立つわけです。
実際、ウクライナは自力でミサイルを開発してますし、ソレで攻撃してます。ロシアが容認出来ないのは反露政権自体です。
まあそりゃあ親露で西側の軍事技術を持っている=流してくれる相手ならロシアも歓迎でしょうが…
戦争をしている意味がないわけではないと思います。要するに反共戦争で逆に共産主義勢力が敵国の支援で強大になったとして、それが戦争をやめる理由になるか?むしろ徹底的にする以外ない、という状態です。
まあ歴史の戦争がそうやって泥沼になっていったのも事実ですが。
そもそもタイフォンそのものがアメリカの太平洋防衛戦略の一角を担う予定なのに全く配備数が足りてない代物なのでそれをウクライナに回されるだけで日本は安全保障上困る立場なんですよね……
時短のためにウクライナ人がアメリカの艦船や施設を借りてトマホークを発射しよう。
ロシア国営メディアに誰も触れないのは、ロシアの情報を肯定して居る訳では無くて相手にしてなかったり若しくは自分達西側の方が正義とか真実を尊重すると言う意識があるからでは?それにロシアは国営だし我々は民営だから尚更だと思う。まああと考えられるのは、YouTubeとか見てるとゆっくりの動画や某ウクライナ教授動画が結構な頻度で流れてくるからそれに不快に思ったり印象に残ったりするからでは?
流れてくるって再生しなければいいだけでは?
単に情報量の差じゃないですかね。ロシア国営メディアの報道なんて日本国内ではあまり流れないし、ロシア国防省発表をわざわざ見に行く人もあまりいないでしょうし。
視聴する側としては情報量が圧倒的に多い西側メディアの報道の方がより粗が目立ってしまうのでは?
トマホークの政治的・戦略的意味はデカいと思う。アメリカが巡航ミサイルを提供した実績となるわけで、西側がそれだけ介入の度合いを深めるということ。これでウクライナはEC諸国から巡航ミサイルを買いやすくなったのだから。アメリカが音頭を取るとロシアとしても核の脅迫をやりにくくなるだろうし。
撃てれば最悪何でも良いし、比較的安全な地域から発射出来るだろうかホークとかブークみたいなウクライナオジリナルの剥き出しトマホークランチャーを期待してる
>Newsweek以外の主要メディアが報道するウクライナ関連の記事は「大本営発表を垂れ流す」と言うほど酷くない
おそらく23年の反攻作戦あたりの「成功したらこうなる」で盛り上がったときのイメージのまま更新されてない人が多そうです
それにプラスして、今は逆に「ロシアの攻撃が成功してる」のに同じように盛り上がってない=偏向してるということで乗算されてる感じに思える
なんかもう「またか」という感想しかない
最初はレオパルド2戦車がゲームチェンジャーだとかなんとか言って持て囃し、それが通じなくなってドローンが活躍するとドローンが戦争を決定するとか言い出し、挙句の果てにはトマホークミサイルでロシアを屈服させられる、か……
本当にいい加減にしろと言いたい
ではフライング・タイガース方式で米軍の飛行隊と機甲部隊を人員設備ごと貸してもらうべきかな?
そんなメリットアメリカにないだろ……
ロシアに譲歩する方がメリットないだろ
選択肢としちゃロシアに譲るか、ウクライナを勝利させるしかないだろうが
後者の方がいい 前者の場合アメリカにも不都合が大きい
アメリカに不都合が大きい選択肢を取るとは思えない
「どちらに賭けるか」と「そこに米国兵士の命をベットするか」は全然別の話かと…
散々フライングタイガースとかやってたようなアメリカが今更そんなことを気にするか?
トランプ支持の右派も米軍を外国を守るために使うのは否定的ですよ
ロシア国営系は当事者な上元々政治的報道局なので…言うまでもないと言うかそういう物というか。これはウクライナも同じですし世の戦時の官に近い報道局のあり方ですね。
例に挙がったところや守護者とかはともかく、さほどひどくないが的もいていないのをオールドメディアと酷評する人は、そのメディアの主要顧客=大衆よりもその問題に関心があって、情報が足りない、情報はコントロールされてる、と思うからでしょう。
「ゲームチェンジャー」論はおいておくとして、トマホーク供与の本誌素敵な問題点は、事実上アメリカ供与の長距離兵器でロシア領内の攻撃を明確に認めるという事であり、単純な支援とは異なる政治的問題になることでしょう
なるかな?
ウクライナに長距離攻撃可能な兵器がなかったころならともかく、ウクライナ自国でかなり長射程兵器を作って運用してる今はそう大きな影響もアメリカの心的抵抗も少なそうに思える(ロシアは米ロの問題として扱うとは思うけど誰も取り合わないんじゃないか)
はっきり言って、今更設計の古い亜音速の巡航ミサイルを何十発もらったところで、ロシアにとってどうということはないし、戦争の帰趨には影響ない、むしろ報復攻撃がはかどるだけとしか思えん。
米露関係の政治的な問題が深刻になるだけだな
ロシアは米ロの問題として扱うとは思うけど誰も取り合わないだろ
報復攻撃なんか口だけじゃアメリカからは相手にされないよ
M72LAW1万発の方がウクライナは喜びそう。
もしくは155mm砲弾1万発。
それも一ヶ月とたたずに使い果たしそう。
数が使えない兵器に意味ないでしょ。
>もしくは155mm砲弾1万発。
>それも一ヶ月とたたずに使い果たしそう。
そりゃもう確実に消費します。本来なら一日分の消費量でしょう。僅か500t以下ですよ。
西側が全力生産で月30万発が供給出来ない事実に愕然とします。
そしてアメリカでは155mm砲弾の工場で爆発事故が起こり19人が『行方不明』だとか···
虎の子のタイフォンシステムをウクライナに供与するとは私には思えないんですが···実戦での評価を測るにはリスクが大きすぎやしませんかね?
トマホークの地上発射型プラットフォームが現状タイフォンシステムくらいしかないという話で、もちろんここの管理人氏も本当に供与するとは思っていないでしょうね。
タイフォンは「Mk.41 VLS + レーダーシステム」で急拵えのシステムとは思ってましたが、実際に試用するとやはり課題が出てくるのですね。
実運用に足りる仕様になるまでは提供されても象徴的な扱いとなりそうです。