軍事的雑学

元々は大量量産モデル? モンキーモデルと呼ばれる兵器の意味と現状

俗に言う「モンキーモデル」と呼ばれる兵器はどこで生まれて、どの様な意味を持っているのか意外と知られていない。

モンキーモデルとは非共産国だが親ソ連寄りの国に供給されていた兵器を指す言葉

そもそも「モンキーモデル」という言葉は英国に亡命した元ソ連軍参謀本部情報総局(GRU)諜報員のウラジーミル・ボグダーノヴィチ・レズン氏が1982年に出版した「Inside the Soviet Army(ヴィクトル・スヴォーロフ名義)」の中で初めてモンキーモデルと呼ばれるソ連製兵器の存在を明かしたのが原点で、もともとは戦時中に大量生産するため性能を抑えて設計を簡素したものを指す言葉だった。

しかしソ連は戦後もオリジナルモデルとスペックを簡素化したモンキーモデルを製造して前者を自国と共産主義同盟国(ワルシャワ条約機構+ベトナムとキューバ)向けに、後者を非共産国だが親ソ連寄りの国に供給してモンキーモデルが西側諸国の手に渡った際、誤ったソ連製兵器のスペックを掴ませることで利益を得ようとしていたらしい。

例えばモンキーモデルの代表例と言われる親ソ連寄りの国に供給した主力戦車T-72はオリジナルのものよりも射撃統制システムや装甲の性能が低スペックで、主砲の125mm滑腔砲「3VBM17」はオリジナルの3VBM15よりも傾斜装甲に対する貫通力が劣っており、イラク軍は湾岸戦争時にモンキーモデルのT-72で米国のM1エイブラムスや英国のチャレンジャー1と交戦して一方的に撃破されしてまう。

出典:Rob Schleiffert / CC BY-SA 2.0 MiG-23のモンキーモデルも親ソ連寄りの国に多数輸出された

この時の戦いぶりが余りに酷かったためソ連製(ロシア製)兵器の評価を落としてしまい、現在のロシアは輸出用向けにモンキーモデルの製造は行なっておらずオリジナルモデルを供給していると言われている。

さらに武器の供給国が多様化したことや購入国の武器導入プロセスが透明化して複数の競合機種と比較されることが多くなったため、極端にオリジナルモデルよりも低スペックなダウングレードモデルでは競争の激しい海外市場で勝ち残るのが難しくなっておりオリジナルモデルをそのまま供給するか、仮にダウングレードを施すとしても極端な調整を行うことは少ない。

逆に自国も採用していない新しい技術や装備を第3国に輸出するケース(ある意味テストベッド的な意図かもしれないが)も珍しくなくないため大雑把に言えば、もはや技術は「隠す」ものではなく積極的に海外市場で換金して再投資することで防衛産業の基盤と雇用の維持を図りながら技術開発を繰り返すことで優位性を維持する方向にシフトしているのだろう。

勿論、保守やスペアパーツ供給で導入装備の生殺与奪を握るのは言うまでもないが・・・

因みに日本では第3国への武器輸出の際に意図的に性能を下げた兵器のことを一括に「モンキーモデル」と呼んでいるが、海外では親ソ連寄りの国に供給していた兵器のみを指す言葉として「モンキーモデル」を用いているため武器輸出の際に意図的に性能を下げた兵器は「ダウングレード」と言う言葉を使用するのが通りが良い。

補足:日本ではモンキーモデル=意図的に性能を下げた兵器のこととして意味が通じるので間違っているという意味ではない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain 湾岸戦争時に使用したイラク軍のT-72

米国、ロシア製防空システムを放棄しないトルコに制裁発動前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    アメリカが革命前のイランにトムキャット売った時、議会から米軍と同じスペックのを売るのはダメだと言われて
    オリジナルより0.1パーセントぐらい性能を低くしたコンピューターを搭載したんだっけ
    日本がF-15の国内ライセンス生産の時も渡された図面に所々意味不明な数字や数式が書かれてたそうな

    14
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      昔Twitterで見かけた話(つまりソースはTwitter!)なんだけど、
      F-15を再現したフライトシムで空自のPはなかなかの再現度(無論リップサービスの可能性アリ)とコメントしたのに対し米空軍のPはエンジンパワーがクソと言ったとかなんとか・・・

      10
    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    いささか疑問あり、冷戦後に東ドイツからフィンランドに流れたT72を解体したところ、砲塔装甲が複合装甲どころか、ゴム板と鉄板を幾重にも重ねた粗雑な代物で、とても西側戦車と対峙できる性能でなかったのが映像つきで公開されてる
    このロシアの説明よりもさらにモンキーの細かい区別が存在するのか、あるいは実はロシア本国のT72すら実態はトンデモ兵器ではないのかと疑われる

    12
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      同じ東側とはいえ憎きドイツの片割れだから、心から信用せずモンキーモデルですらない粗悪品(頭数をそろえるだけ)を押し付けたのでは
      あるいはWW3が開戦したら前線のドイツは核で一掃される前提だったとか

      10
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      戦闘機と対空ミサイルはまともだったんで、戦車は全力であれだった可能性も。

      米とサウジの関係みたいに、周辺国との力関係を変えないためにダウングレードしたF-15S、状況が変わりSAに変更的な発想で考えても、最前線にポンコツは置かないだろうな。

      4
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      拘束セラミック系以外だと、そんなのでもアリかと。
      衝撃インピーダンスが不連続で、その中に高強度の素材を挟む形態とか。
      特にそれなりに傾斜を持たせて上記形態にしとけば、HEATやAPFSDS対して性能を稼げるみたいです。
      ただし容積効率は悪いですし、
      高品質なセラミックバルクと高強度のケースを採用した拘束セラミック装甲と比較すると、見劣りする様ですけど。

      2
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      まあそれでも車体で言えば200mm圧の70°傾斜で均質圧延鋼400mm以上の防御力があるからM60、レオパルト1、チーフテンと比べたら遥かに高い防御力があるんだけどね
      M1、レオパルト2、チャレンジャーと比べると残念だけど、それ以前の西側戦車ならボコボコよ

      1
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      それは粗雑な代物じゃなくて、APFSDSに対抗するために開発された次世代のREFLECTING PLATE装甲。
      対APFSDS用としてはむしろ従来型のシリカを用いるセラミック装甲よりも強固で、Kontakt-1/Kontakt-5との組み合わせで登場時期を考えれば頭がおかしいくらいに強烈。
      リンク

      もっと言うと、ゴム板と鉄板を幾重にも重ねた装甲は西側でも普通で、いわゆるチョバムアーマーも似たような構成。
      M1もチャレンジャー1もLeopard2の初期型も大体同じような装甲といわれている。
      リンク

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    酷使様が「モンキーモデルの兵器を輸出すれば良い」だとか頭の悪い事を抜かしているのを時々見かけるが
    米国やロシアですらそんな事をしないこの時代に、禄に輸出実績も無く日本製兵器自体の信頼もないのに、よくそんな勘違いが出来るものだなと毎回感心する

    18
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      輸出入の実績はともかく信頼という単語を上げるのは大体どんな人間か判断できる。特段劣っているというデータもないのに、よくそんな勘違いが出来るものだなと毎回感心する。

      21
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      他人が上げた記事を読んで初めて知った知識をもって自分の気に入らない人を貶すとか小学生かな?
      知ってたなら過去に突っ込み入れてるはずだからねぇ…
      これからはモンキーモデルなんか無ぇよと言い続けるんだろうなと思うと笑えてくる

      11
        • 匿名
        • 2020年 12月 15日

        必ずしも日本が必要とするフルスペックがいる戦場、国家ばかりでもないからだと思いますけどね。例えば戦車の姿勢制御のスタビライザー? だっけ高さを変える奴。あれ日本以外でつけてる戦車はあまり見ない。なら外して整備性や補給を向上させた方がいい。多分免震に関わってくるから砲の命中率とか下がるけど、走って硬くて砲ぎ撃てて必ず動けばいい。ってラインは存在する。スーパーカブみたいな戦車、戦闘機は需要必ずある。エンジン等でコア部品共通化出来れば量産効果も期待出来る。廉価品はありな選択肢だと思うけどなぁ。

        11
          • 匿名
          • 2020年 12月 15日

          日本以外ではスウェーデンにかつて付いてましたよ
          駆逐戦車的な運用をする国に有効だがそういう国はたいてい防衛戦争しかしない
          侵略戦争の危険が身近にあって工業力のある国が日本とスウェーデンくらいしかなかった

          3
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      最近のあらしは手が込んでますな。

      21
    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    湾岸戦争は悪い所が露呈した戦争だった。砲弾もモンキーモデルなのだから真面目に戦った兵士が可哀想なレベル。
    T-72の名が地に落ちた故に、同系の改良型とも言える戦車がT-90となっているのも有名な話
    ソ連崩壊の韓国へ輸出されたT-80Uが本国仕様であったし、競争がある商売では嘘つけなくなるよな

    10
      • 匿名
      • 2020年 12月 15日

      アメリカやフランスは購入国の要望に沿って、意図的にダウングレードした兵器を売ったりしているので、日本が兵器を輸出するとしたら、ちゃんと購入国の要望を聞いてやらないといけないね。
      モンキーモデルをただ輸出するのはソ連と同じ(ソ連は自国の兵器を他国に購入させるくらい権力があったが。)

      3
        • 匿名
        • 2020年 12月 15日

        いやソ連はモンキーモデルを無理に買わせている訳じゃないぞ
        ただ「最新兵器を安く売って」なんてふざけた事言う国には、”値段相応の”クオリティのものを納めたってだけ
        インドみたいにちゃんとお金払う国には同等の物を輸出してるしな

        まあソ連製兵器を欲しがる国は金欠だったり無茶苦茶を言う独裁政権が多かったから、結果として低クオリティ兵器が目立っちゃったってのはある

        13
          • 匿名
          • 2020年 12月 15日

          ソ連の場合は兵器輸出先(その時点での友好国が)が政変などで敵になったときに、
          速やかに制圧できるようにダウングレード版を兵器を輸出したという話があるから、
          ソ連時代だといくら金積んだところでダウングレード版しか輸出してくれなかったよ。

          湾岸戦争の結果と、新生ロシアが金欠過ぎてなりふりかまってられなくなった結果、
          本国仕様で輸出し始めただけだし。
          (今は今で、中国とか言う商売敵がいて別の事情でダウングレードできなくなってるけど)

          7
          • 匿名
          • 2020年 12月 16日

          >インドみたいにちゃんとお金払う国には同等の物を輸出してるしな

          インドの場合は、記事にあるテストベッド的位置付けでないかな?
          その後に本国に還元されるケースとかあるし。

        • 匿名
        • 2020年 12月 15日

        日本では国内勢力(社会党:当時)からの要求でF-4EJからは空中給油能力が取り除かれ、F-15Jからは地上攻撃能力がオミットされました

          • 匿名
          • 2020年 12月 15日

          はあ?
          空自のF-15Jは地上攻撃能力をオミットされていないぞ(その証拠に、比較的最近の航空祭で訓練用の500ポンド爆弾を搭載した状態のF-15Jが展示された事がある)
          逆にF-4EJは導入時に空中給油能力だけで無く地上攻撃能力(厳密には爆撃用コンピュータ)もオミットされたが、後にF-4EJ改へ改修された時に地上・対艦攻撃能力は復活している

          9
            • 匿名
            • 2020年 12月 16日

            F-15Jは、TEWSを提供して貰えなかったので、J/TEWS﹙J/ALQ-8 + J/APR-4 + AN/ALE-45J で構成﹚を代用で使っていたかと。

          • 匿名
          • 2020年 12月 16日

          ↑の指摘に加えて、
          そもそもそれ「買い手側からの要求」なんで全然別の話ですよ。

          3
    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    知らなかった―。
    大変勉強になりました。
    ありがとうございました。

    4
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      F-15JというかF-15Cの対地攻撃能力は必要最小限のものでしかなく、F-4EJ改よりも劣っていると言われていました。まぁ、自国と同じ仕様を輸出する国なんてないでしょう。ちなみにF-15JはTEWS(AN/ALR-56、AN/ALQ-128、AN/ALQ-135)の供与が認められず、国産の戦術電子戦装置が搭載されています。話は変わりますがトルコに輸出されたレオパルド2も、シリア内戦で簡単に対戦車ミサイルで撃破されていることから、装甲などがダウングレードされているんじゃないかと思います。

    • タクメイ
    • 2020年 12月 15日

    管理人さんも鬼滅読んでるのかな?
    いきなり生殺与奪の権でてきたから少し親近感湧いたw
    いつも記事ありがとうございます。

      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      これはマジなの?ネタなの?

      8
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      その言葉は別に鬼滅由来じゃない定期
      そもそも「の権」が付いてないだろうが幻覚みえてんぞ

      5
      • 匿名
      • 2020年 12月 20日

      鬼滅で日本語のお勉強ですか…

    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    昔、タクシーの運ちゃんに聞いた話。
    「自衛隊の人が言うには、米軍と同じもののはずがやっぱり性能が違う、そうな」そうだろうと思っていた。

    わざと性能を落とすというよりもB級品のパーツを寄せ集めて組んでるんじゃないかと、当時は思ってた。実は今も思ってる。工業製品の制御主体がLSI半導体になり、どんどん大規模化し、ASICに移っていったことにより、その手の選別ができなくなったって言うのが現状じゃないのかな。

    オリジナルの性能を直接比較できるところとできないところでも扱いは違いそうな気はする。見比べてわかるようなものは相応の値差があるんじゃないかな。

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      デジタル系なら、clkを落とすことで処理能力落とすのは、比較的要因かと思います。
      無線とかのように、周波数変えると改設計で大変な箇所は、また別でしょうが。

    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    売る方も、買う方も、それぞれの事情がある。売る方が予めスペック示して販売すれば、
    それをMMとは言わないだろう。買う方が納得して買うなら、それもMMとは言わないだろう。

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 15日

    我が国の買わされてる兵器、モンキーなのかね
    不要な機能を省いてもモンキーとは呼ばないだろうが、米軍より安からぬ購入価格を見ると、とんでもない騙しをかまされてる心配がある

    1
      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      それならダウングレードしてF-22を問題なく売ってもらえたのでは
      ラインの維持などで輸出したがってた人達もいたわけで

      1
        • 匿名
        • 2020年 12月 16日

        アメリカ「やっべF22日本に輸出なんかしたらあいつらの技術無断使用したのバレちゃう…議会が反対してるってことにしとこ」

      • 匿名
      • 2020年 12月 16日

      戦車の装甲をただの鉄にする、というレベルのあからさま過ぎるなことはもうやってないだろうけど、
      今どきのハイテク兵器はソフトウェアレベルである程度の機能制限はかけてきてるだろうし、
      あとバックドアが仕込まれてる可能性は大きい。
      一説には、F-35は同盟国に輸出した機体も米国防省が現在地や装備の状態などをすべて把握できる仕様になってると言われてるし。

      2
    • 匿名
    • 2020年 12月 16日

    砲のスペックの違いというのがよくわかりませんでした。装弾も違うということでしょうか。

    • 匿名
    • 2020年 12月 16日

    松本零士の「幻影800」を思い出す話です

    • 匿名
    • 2020年 12月 16日

    アメリカでも、F-15Eの輸出版であるサウジのF-15S、シンガポールのF-15SGなど火器管制レーダーの機能・性能をダウングレードしたケースがあります。
    F-15SはF-15SAにアップグレードして本来の性能を獲得予定です。
    逆にイスラエルみたいに魔改造しまくりのケースもあるので、輸出国の思惑次第ですね。

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