軍事的雑学

方向性を示せるか?日本、次期戦闘機「F-3」の要求性能が定まらない理由

日本政府は、2020年度の予算案にF-2戦闘機の後継機開発費を含める方向で最終調整を行っていると報道がでた。

参考:F2後継戦闘機、「事項要求」で開発費計上へ

開発費の予算計上先送りから一転して、4ヶ月間の延長線に入る

今年6月、F-2戦闘機の後継機となる次期戦闘機「F-3」の要求性能が防衛省内でも、まとまっていないため2020年度予算への開発費計上が見送りになるという報道が流れたが、8月21日、読売新聞が報じた内容によれば、F-2戦闘機の後継機開発費を2020年度予算案に計上する方向で最終調整に入ったと言う。

ただし現時点で開発費の要求額がまとまらないため、概算要求の時点では「事項要求」として盛り込むに留め、年末の予算編成まで時間を稼ぎ、その間に次期戦闘機「F-3」の要求性能をまとめて、要求予算額を算出するという。

補足:内閣府の説明によれば「事項要求」とは、概算要求時に内容等が決定していない事項について、金額を示さずに要求し、予算編成過程において、その内容が明らかになった際に追加要求するものらしい。

今回の報道でハッキリしたのは、 第6世代機といわれるF-2戦闘機の後継機、次期戦闘機「F-3」に、防衛省はどのような性能を要求すればよいのか決めかねている=第6世代機の実像が定まっていないと言うことだろう。

これは防衛省が悪いというわけではなく、戦闘機の開発が複雑になりすぎたという点と、未だ定まっていない第6世代機の定義を決めろと言われても、非常に難しい=大きく方向性を外した場合、数兆円と言われる開発費が無駄になるというリスクを恐れているためだ。

出典:防衛省 「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」

これまで防衛省が具体的に「将来の戦闘機」についての見解を示したのは、9年前の2010年に発表した「i3 FIGHTER」しかない。

この時、次世代技術で開発するレーダーでステルス機を早期発見するカウンターステルスや、早期警戒機やセンサーを搭載したUAV(無人航空機)とネットワークを構築することで、自機だけでは捕捉できないより遠方の目標に対する攻撃能力や、指向性エネルギー兵器(所謂、レーザー兵器)によって実現する瞬間撃破・外部センサー連帯を「将来の戦闘機」が備える能力に挙げたが、この9年で第6世代機を取り巻く環境は大きく変わってしまった。

欧州では、実際に第6世代戦闘機の開発がスタートし、米国でもF-35に第6世代戦闘機相当まで性能をアップグレードするという話や、空軍と海軍が別々に第6世代機の研究を進めている。

個別の技術を挙げればキリがないので、大まかに第6世代機を言い表せば「ネットワーク中心」の戦いを実現できる性能をもった第5世代以上のステルス性能(恐らく長波に対応したステルス性能)をもった戦闘機のことで、戦闘行為も半自律的(将来的には完全自律的に)にこなせる低価格な無人機を従え、第5世代機のようにあまりにも高価になりすぎないことが挙げられる。

日本は次世代機のコンセプトや目指す方向性を示せるか?

第6世代戦闘機「テンペスト」を主導する英国では最近、マッハ5.0以上で飛行が可能な「極超音速機」開発に着手し「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」が1つになった、全く新しい仕組みを持つ「サーブル・エンジン」を元に超極音推進システムの開発を行い、その過程で得た技術で「タイフーン」に搭載されているエンジン「EJ-200」を改良し、極音速化させることも選択肢の一つだと語っている。

これは当然、第6世代戦闘機「テンペスト」の極超音速での飛行実現につながる技術開発だが、実際にこの開発が成功するのかどうかは別問題・・・

出典: JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 パリ航空ショーで発表されたダッソーFCASのモックアップ

フランスとドイツが主導する第6世代戦闘機「FCAS」は、今の所コンセプト的な面で、独自色=突飛さがなく、手堅くまとまっている感があるが、逆を言えば第5世代機の延長線上に一番近い機体だと言える。

米国では、空軍と海軍が別々の第6世代機を研究している。

米空軍は最近、次世代の航空支配(Next-Generation Air Dominance:NGAD)において、まったく新しい航空機は必要ないと言い出した。

要約すると、米空軍が考えている次世代航空支配プログラムは、プラットフォーム=次世代戦闘機の開発という単純なプログラムではなく、次世代の航空支配プログラムは、ネットワークに接続されたシステムの全体を意味し、航空支配を確保するためには、より多くのもが必要になり、それは陸海空に宇宙やサイバースペース間で、全ての情報が共有されることが含まれると言及している。

出典:AIRMAN/Future of Fusionのキャプチャ

一方の米海軍は、空軍とは全く違うこと言い出した。

米海軍は、次期戦闘機「F/A-XX」開発を海軍単独で開発を進める理由として、米空軍と異なる優先目標が不必要なコスト負担を発生させるためだと話しており、異なる優先目標とは米空軍が掲げる「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」な能力=高度なステルス性能という意味だ。

海軍は「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」な任務は空軍に丸投げするか、リスクの少ない巡航ミサイルで対応することを考えており、空軍と共同開発を行えば余計な能力に、余計なコストを支払うことに繋がるため、単独開発の道を選んだというのが米海軍の主張だ。

出典:public domain

そしてF-22やF-35といった第5世代機を開発したロッキード・マーティンは、最終的にF-35が高度なネットワック機能を備えた第6世代戦闘機までアップグレードされるだろうと話している。

パリ航空ショーで第6世代戦闘機が注目を集めている事についてロッキード・マーティンは「第5世代機から第6世代機へは、第4世代機から第5世代機にかけて見られたような“大きな飛躍”が起こる可能性は低く、第6世代機は第5世代機へは“進化の延長線上”程度になる可能性が高い」と指摘し、F-35はアップグレードを行うことで、第6世代戦闘機に到達することを目指していると話した。

これは第4世代機から第5世代機への“大きな飛躍”の一つに形状制御技術を用いた「ステルス」の実用化があって、第4世代機から第5世代機へのアップグレードが不可能だが、第5世代機のF-35は、搭載された電子装置のアップグレードを行えば、高度なネットワック機能や、無人機制御、F-35自体の無人機化など、第6世代戦闘機が獲得する能力の追加が可能で、F-35は第6世代機への進化が可能と言う意味だ。

8月末日が期限の概算要求までに要求性能がまとまらず、これを12月末の予算編成まで期限を延長することで、2020年度開発費計上の可能性を残した形だが、残された時間はたったの4ヶ月しかない。

恐らく最大の問題は、個別の技術や予算よりも、次世代機(第6世代機)のコンセプトや目指す方向性を勇気を持って示せるかだ。

もし、大きく外せば批判の的になるのは目に見えているため、海外の開発計画に便乗してしまおうという気持ちも分からないでもないが、ここは失敗を恐れずに、ぜひ挑戦してみてほしい。

 

※アイキャッチ画像の出典: 防衛装備庁 / CC BY 4.0 X-2初飛行

関連記事

  1. 軍事的雑学

    軍事的雑学|海上自衛隊 そうりゅう型潜水艦「しょうりゅう」引渡式・自衛艦旗授与式を見てみよう

    今回は、川崎重工業神戸工場で、そうりゅう型潜水艦の10番艦「しょうりゅ…

  2. 軍事的雑学

    軍事的雑学|空中空母の先駆け!B-36爆撃機に搭載された戦闘機XF-85“ゴブリン”!

    今回は完全に管理人の趣味全開のテーマです。XF-85“ゴブリン”につい…

  3. 軍事的雑学

    ドイツ軍の敵は「装備」も「予算」も与えないドイツ政府か?

    飛べない飛行機、動かない艦船、足りない戦闘車両など、ドイツ政府は自国軍…

  4. 軍事的雑学

    軍事的雑学|日本が導入する「イージス・アショア」って何だ?

    米国が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の日本への売…

  5. 軍事的雑学

    もはや第4世代機より安いF-35A、15億円のコスト削減で約82億円実現!

    ロッキード・マーティンは、国防総省とロット12~14まで、478機のF…

  6. 軍事的雑学

    高額な導入費用の謎、F-16はコスパに優れた戦闘機というのは幻想か?

    最新型のF-16の機体価格については諸説あるのだが、block70/7…

コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    政治的な問題を考慮すれば、アメリカ海軍が目指す物と似たようなものにするのが無難でしょうね。アメリカ空軍のように他国の領空に侵攻する能力を重視すると現状では叩かれるでしょう。

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      その通りなんだけど、空自はアメリカ空軍準拠だからなぁ

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    技術・人材共に航空宇宙産業後進国の日本じゃムリムリ
    無駄金なんざ使わずに大人しく社会福祉費へ全額回しなさい
    団塊世代以降の年金問題はもはや待ったなしだよ?

      • 匿名
      • 2019年 8月 22日

      頭悪いコメント書くなよw

      • 匿名
      • 2019年 8月 22日

      社会福祉なんかに回したらそれこそその金をを受け取る人間がいなくなるぞ

      • 匿名
      • 2019年 8月 22日

      馬鹿の一つ覚えのような投稿を繰り返すのは病気の可能性がありますよ

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      技術が足りないから予算を別方面に回せって論理破綻してるだろ。予算は必要だからつけるもんで、無理なら出費を減らすもの。福祉だろうがなんだろうが他で余った予算を使える枠なんてありませんよ。お里が知れますよ。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    とりあえず、管理人さんはこちらをご覧になった方がいいのではないでしょうか 
    link

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    どうしてもまとまらないならとりあえず機体容積のデカイF-35を目指すといいんでないかね?
    将来的にアップグレードが必要になるのはコンピュータとミサイルだろうし
    ミサイルが大型化しても搭載できるウェポンベイと追加のコンピュータを積めるスペースと発電機
    これだけあればどうとでもなりそうな気がする
    機裁レーザーや無人子機統制でも結局必要なのはスペースだ

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    >技術・人材共に航空宇宙産業後進国の日本じゃムリムリ
    >無駄金なんざ使わずに大人しく社会福祉費へ全額回しなさい
    >団塊世代以降の年金問題はもはや待ったなしだよ?

    まじめにテーマに沿ったコメントを書いて下さい。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    準備不足の老人のほんの僅かな余生より、日本を守る未来へ投資してほしい。

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      ほう
      老人たちを見殺しにして作る戦闘機がそんなに「尊い」のかね?

      プラモや写真に夢中なカタログこどおじミリオタ衆の社会問題に対するあまりの意識の低さには絶望するしか無いわ

      世間一般には到底受け入れられない価値観なのが唯一の救い

        • 匿名
        • 2019年 8月 24日

        絶望してていいから。もう来るな。

    • 匿名
    • 2019年 8月 22日

    結局は海上でのマルチロール機が欲しいわけだし保守的な第五世代機でいいと思うけどね

    • q
    • 2019年 8月 22日

    韓国のやり方が一番正しかったりして
    今の日本に最先端の戦闘機開発出来るだけの技術は無いと思うから

    第4世代か4.5世代の戦闘機を開発する方が良いと思う

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      手抜き整備と自国製不良部品で事故続発。アメリカへのライセンス使用料もケチってる&ブラックBOX無断解放ばれてる韓国軍の何を見習えと。信用を失ったらどうなるかは『他山の石』として覚えておこう。

      日本はF2時代から次期支援戦闘機の開発を独自でやりたいと言う思惑が有るけど、アメリカがしょっちゅう首を突っ込んで来る。日本は海洋国なのでエンジンが一基トラブっても帰ってこれる『双発機』が欲しいのに、売れ筋の『単発機』F16を改造したモデルを日米貿易摩擦の解消も入れた強引なプロジェクト参加で得た一部を他のF16モデルチェンジに合わせていれていますね。

      • 匿名
      • 2019年 8月 23日

      >韓国のやり方が一番正しかったりして
      全ての技術をクレクレして設計図まで引いてもらい輸入した部品を組み立てるのが正解?なのか?

      今の日本は殆どの要素技術を開発済み、もうプラモデルの箱っが目の前にあって後は組み立てるだけのような状況にある、困難は何もない。
      F-3を完成したら戦闘機に関しても世界の最先端に躍り出るぞ、それがマズイことなのか。。

      • 匿名
      • 2019年 8月 24日

      無駄金になるだけです
      そもそも第4・5世代機なんて今更必要がないですし

    • 匿名
    • 2019年 8月 23日

    素人考えだがステルスより汎用性拡張性に優れた設計がいいと思う、この先ステルスって光学的な物が実現されない限り重要では無くなると思う、
    レーザーレーダーの発達や軍事衛星の増加高性能化で、光学識別能力が現行のレーダーと範囲や精度が同程度に成るのもそんなに未来じゃないだろう、
    視認→迷彩等視認妨害→レーダー→電波吸収等ステルスと来ているが、本格的なステルス機が登場して約40年、
    そろそろ次を見るべきかなと。
    (新発想の高性能空対空防衛装置とか、ちょっとアニメチックな発想だが。)

    • 匿名
    • 2019年 8月 23日

    手抜き整備と自国製不良部品で事故続発。アメリカへのライセンス使用料もケチってる&ブラックBOX無断解放ばれてる韓国軍の何を見習えと。信用を失ったらどうなるかは『他山の石』として覚えておこう。

    日本はF2時代から次期支援戦闘機の開発を独自でやりたいと言う思惑が有るけど、アメリカがしょっちゅう首を突っ込んで来る。日本は海洋国なのでエンジンが一基トラブっても帰ってこれる『双発機』が欲しいのに、売れ筋の『単発機』F16を改造したモデルを日米貿易摩擦の解消も入れた強引なプロジェクト参加で得た一部を他のF16モデルチェンジに合わせていれていますね。

    • 匿名
    • 2019年 8月 23日

    次期戦闘機開発最大のネックは
    ①高額すぎる開発費、開発後に陳腐化と他国が追随し対策される
    ②10年後見据えた開発計画。しかし10年後の世界情勢と戦略がどうなるかは不透明
    一国だけで賄える金額じゃあ無いですね。ロシアのSu57みたいにSu27の延長モデルでも、中国のパクりステルス機モドキでも開発費はアメリカのF22に比べたら安いがそれでも高額すぎる。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

最近の記事

関連コンテンツ

PAGE TOP