米国関連

米海軍が第6世代戦闘機「F/A-XX」に求めるのは、ステルス化したF-14トムキャット

米海軍が現在、直面している深刻な問題は、ジェラルド・R・フォード級空母が上手く機能しないことでも、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦の主砲弾が調達中止になったことでもない。2006年にF-14 トムキャットが退役したことで、空母に搭載できる専用の制空戦闘機が無くなったことだ。

海軍がF/A-XXに求めているのは、ステルス化したF-14トムキャット?

近年、ロシアのSu-30SM、Su-35S、Su-57や、中国のJ-11、J-15、J-20の出現で、米海軍の空母は危機に直面している。これは米海軍が主力としているF/A-18E/Fにとって深刻な脅威で、今後配備が進むF-35Cにとっても脅威の度合いは変わらない。

Attribution: Dmitry Terekhov / CC BY-SA 2.0 Su-35

1991年に冷戦が終結し、もはや米海軍の空母に正面から挑んでくる敵など存在しなくなったため、米海軍はF-14を退役させ、その後は純粋な制空戦闘機ではないF/A-18が後を引き継いだ。

これは制空任務よりも、対地攻撃を優先した結果で、その思想はF-35Cにも影響を及ぼした。

海軍が現在、導入を進めるF-35Cはステルス性を犠牲にしない場合、空対空ミサイルAIM-120が2発しか搭載できず、AIM-120が6発搭載出来るようになる「ブロック5」へのアップグレードを急ぐべきだという指摘があるほどだ。

出典:public domain 「ニミッツ」に着艦したF-35C

米海軍の空母に搭載されるF/A-18E/Fや、F-35Cは、どちらかと言えば「攻撃機」としての性格が強く、ロシアや中国がもつ強力な戦闘機に対抗できるほどの「戦闘機」ではないという意味で、F-14退役以来、長らく放置してきた「制空任務」に適した戦闘機を、米海軍は早急に開発し配備する必要がある。

現在、米海軍が次世代戦闘機F/A-XX開発計画を米空軍と共同で行わないのは、このあたりに理由がありそうだ。

米海軍は、F/A-XX開発を海軍単独で開発を進める理由として、米空軍と異なる優先目標が不必要なコスト負担を発生させるためだと、メリーランド州ナショナル・ハーバーで開催された、海上航空宇宙カンファレンスで語っている。

空軍が開発中の次世代戦闘機「F-X」は、F-22ラプターを更新するための戦闘機で、「敵空域を貫通」し「奥深くまで侵攻可能」な戦闘機として開発されているが、これは海軍にとって必要のない能力で、F-Xは、この能力を獲得するためコストが必要だが、海軍にとって余計な能力に、余計なコストを支払いたくない。

出典:public domain AIM-54を発射するF-14

恐らく、米海軍が思い描くF/A-XXの主任務は、空母艦隊に接近しようとする敵の航空戦力から守る事ができる制空任務、もっと具体的に言えば、長射程のAIM-54フェニックスを運用してF-14が実現していた「艦隊防空」能力の再獲得を目指しているのだろう。

ここまでくれば、F/A-XXがどの様な戦闘機になるのか見えてくる。

F/A-XXに要求されるのは、遠距離でステルス戦闘機を含む敵航空機・巡航ミサイルなどを探知でき、複数の目標と同時交戦する能力と、ステルス性を犠牲にしない形で、長射程の空対空ミサイルを最低でも6発以上はウェポンベイに搭載できることだ。

空対空ミサイルを長射程化するには、AIM-120のサイズでは既に限界が来ている。

出典:public domain  F-16の翼端に搭載されるAIM-120

その証拠に、中国やロシアの長距離空対空ミサイルは射程が300kmに到達しているのに、AIM-120の最新型は180km止まりで、これは、米空軍がAIM-7の後継としてAIM-120を開発する際、AIM-9専用ランチャーにも中距離空対空ミサイルが搭載出来るよう、AIM-7よりも軽量化とサイズを制限したためAIM-120の、これ以上の長射程化が困難になっている。

射程300km以上の空対空ミサイルを開発するには、ミサイル本体の大きさを大型化するしかなく、そうなればF-22や、F-35のウェポンベイに収めることは、まず不可能なので空軍との共同開発は不可能だ。

結局、海軍は長射程の空対空ミサイルも独自に開発する必要がある。

以上のことから、F/A-XXは、究極的なステルス機である必要がなく、非常に防御的で、純粋な戦闘機として開発される可能性が高いが、「F(Fighter)/A(Attack)」と名がついているので、限定的な攻撃機としての対地・対艦攻撃能力を備えるのかもしれない。

海軍がF/A-XXに求めているのは、ステルス化した「F-14 トムキャット」かもしれない。

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    F-14は肥大化した戦闘爆撃機のF-111を国防長官から押し付けられそうになった海軍がF-111の主要パーツを使いつつ艦隊防衛機として仕上げた機体ですからね。
    設計からテストも先行量産型を複数機生産して並行テストするクック・クレイギー方式だったため、ミサイルを撃った自機がそのミサイルに撃墜されるとかネタには事欠かないです。

    空軍のF-16を押し付けられそうになった時も軽量戦闘機計画で競合したYF-17を採用してF/A-18に仕立ててますし、海軍が求める能力=発言力=予算ということでしょう

    • 匿名
    • 2019年 6月 22日

    本文は読んでないが、ハイビジの14は世界一かっこいいのは間違いない。

    1
      • 匿名
      • 2019年 12月 26日

      読んで書けよ お前の日記帳じゃねーんだよ

      9
    • 匿名
    • 2019年 6月 23日

    そもそも米海軍は長AAMキャリアー大好きですからね
    イージス艦が大量配備された現在でも、やはり艦隊外周上空から長AAMを撃ち下ろすのが最善なのか
    海面からは水平線限られてるし、SAM打ち上げるのもアレなんでしょう

    1
      • 匿名
      • 2020年 8月 08日

      F14とAIM54による艦隊防空が事実上不可能だったからイージスシステムを開発したのですよ
      そろそろ海軍プロパガンダを信じるの辞めましょうよ

    • 匿名
    • 2019年 6月 25日

    海軍はF15をベースに開発するという情報もある
    F14は格好良いがメンテナンスが面倒で整備費用が高いといわれていた
    F15のライン復活と延命も兼ねるF15海軍仕様機が実現すれば次期戦闘機の導入に時間稼げるし多くの国に喜ばれそう
    F15SEなのかは不明

    • P・J・THOMAS
    • 2019年 7月 04日

    となれば海軍仕様のF-15はさしずめF-15Nシーイーグルの復活だな

    1
    • 匿名
    • 2019年 12月 26日

    米海軍の空母に搭載されるF/A-18E/Fや、F-35Cは、どちらかと言えば「攻撃機」としての性格が強く、ロシアや中国がもつ強力な戦闘機に対抗できるほどの「戦闘機」ではないという意味で、F-14退役以来、長らく放置してきた「制空任務」に適した戦闘機を、米海軍は早急に開発し配備する必要がある。

    その通り。F-35はステルスでアウトレンジからの先制攻撃の有利性に特化しており空間戦闘能力は高くない。
    懐に入れらた発見された後の戦いでは間違いなく不利。
    ましてロシアが開発費がかさんで米国とやりあうには不利なステルス開発戦争に乗らない方針だというなら尚更、制空任務に適した戦闘機が必要だろう

    • 匿名
    • 2020年 4月 13日

    トムキャット、グラマン、ステルス、大型双発機…なるほど、主翼を畳めるYF-23ということか。

    • 匿名
    • 2020年 4月 14日

    F-14が絡むと急に論理的思考を放棄し始める連中が湧いて出てくる不思議
    いつまで男の子のロマンに浸っているのやら

    2
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