軍事的雑学

軍事的雑学|金欠ドイツ軍が大ピンチ!攻撃機「トーネード」の維持費に約1兆円が必要

ドイツ軍の迷走が止まらない。現在、トーネードの後継機選定を行っているが、実際に新型機が導入されるまで、トーネードの運用延長のために、1兆円を超える費用が必要になることが分かった。

参考:Exclusive: Germany sees 8.86 billion euro cost to operate Tornado jets to 2030

トーネードを10年運用する費用があれば、F-35を80機以上導入できる

ドイツ空軍は、運用中の攻撃機「トーネード」93機を、2030年まで運用するには、約88.6億ユーロ(約1兆1000億円)が必要になると報告した。費用の内訳は、1983年に導入されたトーネードの機体維持のために56.4億ユーロ、旧式化した部品交換のために16.2億ユーロ、保守部品調達のために15.8億ユーロ等だ。

トーネードを、あと10年運用するために1機あたり、9500万ユーロ(約120億円)が必要な計算だ。これは新たな航空機を導入する方が遥かに安上がりな事を示している。

現在、ドイツはトーネードの後継機選定において、F-35を候補から除外し、ユーローファイター・タイフーン(以下、タイフーン)と、F/A-18E/Fの2機種に候補に絞った。

F-35が候補から外れたのは、ライフルコストが高価だと言う理由(他にも、ブラックボックスの塊なのを嫌ったという説もある)のためだ。欧州航空産業界からは、タイフーンもしくは、両機種を同時採用することを期待されているが、ドイツはどちらか1機種に絞り込むつもりだ。

出典:pixabay

しかし、F-35を候補から外したことで大きな問題が浮上してきた。

ドイツはNATO加盟国として、ニュークリア・シェアリングの義務を果たす必要がある。

ニュークリア・シェアリングとは:
核兵器の共有という北大西洋条約機構(NATO)の核抑止における政策上の概念である。NATOが核兵器を行使する際、独自の核兵器をもたない加盟国が計画に参加すること、および、特に、加盟国が自国内において核兵器を使用するために自国の軍隊を提供することが含まれている。

ドイツは、ニュークリア・シェアリングによって提供される核兵器の運搬義務を果たさなければならず、現在その任務はトーネードが担っている。その後継機として、既に同じ義務を抱えているオランダや、ベルギー、イタリアがF-35を採用したのは、NATOがF-35の核兵器の運搬能力について承認済みな為だ。

導入から35年以上経過したトーネードは、直ぐにでも退役たせなければ、その運用に莫大な費用がかさむ。最もベストな方法は、核兵器の運搬能力が承認済みのF-35導入だ。最近のS-400導入問題で、キャンセル間近のトルコ向けF-35(100機)を取得してしまえば、納期も短くなっていただろう。

出典:pixabay

問題は、候補に残ったタイフーンとF/A-18E/Fだ。

タイフーンは、そもそも核兵器の運搬能力がないので、新たな費用を掛けて核兵器の運搬能力を付与し、NATOの承認を受けなければ、ニュークリア・シェアリングの義務を果たせない。

F/A-18E/Fは、米軍の戦術核兵器「B61」の運搬能力を持っているが、NATOでの使用国がなく、これも新たに承認を受けなければならない。

要するに、ドイツはライフルコストが高価だと言う理由=コストを問題にしてF-35を蹴ったが、トーネードを一番早く退役に持ち込める唯一の選択肢だったことに目を向けようとしない。しかも、トーネードの寿命を10年延長するための費用88.6億ユーロもあれば、F-35が80機以上調達できるだろう。

もしトルコが米国と決別すれば、ドイツはF-35Aを今年中からでも受け取れる(すでにトルコ向けのF-35 2機が完成しているが引き渡されずにいる)と言うのはオーバーだが、既に発注済みのトルコ向け100機は、生産計画に組み込まれているため、米国ですら水面下で、この浮いた100機の引き取り手を探している。

恐らく、発注してから、一番早く受け取れるのはF-35なのは間違いない。

タイフーンやF/A-18E/Fは、これから発注し、実際に受け取れるのは、恐らく5年以上は掛かるだろう。

出典:pixabay

タイフーンの生産ラインは現在、中東諸国向けの製造で埋まっている。F/A-18E/Fの製造ラインは、米海軍からの新規発注分と、オーストラリア向けのEA-18Gで、当分の間は埋まってる。ドイツの機種決定の決定が遅れれば遅れるほど、トーネードの莫大な運用コストは膨らみ続ける。

融通が利かないことで有名なドイツだけに、仏独共同開発「FCASプログラム」で開発される第6世代戦闘機まで、更新を先延ばすのではないかという噂もあるが、これが完成するのは2040年頃で、そもそも、ユーローファイターの置き換えを目的とした計画だ。

しかも、2040年までトーネードを維持するためには、170億ユーロもの維持費を負担する必要があり、もはや狂気の選択肢だと言える。

 

ほうきの柄を黒いペンキで塗って代用したほど金欠なドイツ軍

ドイツは、NATOや米国から国防費を上げろ(GDP比2%が目標)と執拗に言われ続けているが、メリケル首相は頑なに拒んでいる。これはロシアによるクリミア併合を受け、NATO全体として防衛費の引き上げ、要するに軍事力強化を決定したにも関わらず、ドイツだけが従っていない形だ。

現在のドイツ軍は、東西ドイツの統一後に訪れた冷戦の終了と、新生ロシアが停滞している間に訪れた平和な時代に軍縮が行き過ぎ、いざ防衛費を引き上げようとしても、マーストリヒト条約の規定を厳格に遵守し過ぎるドイツ特有の頑固さの為か、上手く機能しているとは言い難い。

Attribution: Bundeswehr-Fotos / CC BY 2.0 ドイツ陸軍のレオパルト2A5

予算がなさすぎて、保守パーツのストックがなく、タイフーンの稼働率が一時的に10%台に落ち、メディアから「ルフトバッフェの惨状」と叩かれるほどだ。この問題は空軍だけではなく、陸軍や海軍でも同じだ。有名なドイツの戦車「レオパルド2」も予算不足で、半分以上が動かない。数年前には保守部品のせいで、海軍が保有していた6隻全ての潜水艦が稼働できなくなったと言う。

極めつけは、2014年のNATO演習においてドイツ陸軍は、装甲車に搭載する機銃が足りず、ほうきの柄を黒いペンキで塗って代用したという伝説まで生まれた。

もはや精強なドイツ軍を期待するのは、夢を見るのと同じなのかもしれない。

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 4月 18日

    ロシアも昔の力はないとは言え、ドイツどーすんだろ。
    まぁ、ある意味賢いとも言えるけど。軍需産業無くすとやっぱり大変だね。

    • 匿名
    • 2019年 4月 18日

    ここまで酷いとは流石に思ってなかったw
    ポーランドの方がNATOにとって役に立っていますね

    • 匿名
    • 2019年 4月 18日

    ドイツの国防費は日本とほぼ同水準、兵員は自衛隊より少ない(自衛隊22.5万人、ドイツ軍18万人)
    ドイツは日本の様に仮想敵国の脅威にさらされ、正面装備を増強せざるを得ない状況では全く無く、
    むしろ逆に冷戦終結以来四半世紀ずっと軍縮傾向。(ここ数年はロシアの脅威で再軍拡の掛け声も出て来たが、実態はまだ)

    これで何でそんなに可動率ボロボロとか金欠になってるのか、本当に謎なんだけど・・

      • 匿名
      • 2019年 4月 19日

      定数決めてそれに見合った予算割り振ってれば維持できるけど
      予算削減した翌年に更に削減て繰り返してたらどれだけ規模小さくしても維持できないかと?
      蓮舫が毎年事業仕分けやってるようなもんと考えたらゾッとするね

        • 匿名
        • 2019年 4月 19日

        日本の防衛費も小泉政権から民主党政権までずっと漸減だったけど、
        自衛隊はドイツ軍の様な事にはならなかったと思うけど

      • 匿名
      • 2019年 4月 19日

      予備費的なのをカットしてて、予備部品が無い(足りないみたいね)
      トルネードには別の問題もあります(敵味方識別装置が旧式でNATO軍、アメリカ軍と共同作戦ができません、改修したけどコクピットの表示が輝度MAXで使えないなど)
      つうか、ドイツ軍全体に問題山積みでお笑いドイツ軍状態
      ユーロファイターは翼端の機体制御ポッドの製造会社が買収されて、新しい会社軍の認証手続きが遅れてて絶対的な部品不足状態(冷却液漏れで加熱して壊れまくってる)、潜水艦は定期点検+故障+ドッッグ不足で稼働率=ゼロ、1隻は有名なスクリューシャフトの偏心で完全放置状態、陸軍の戦車も部品不足で稼働率が30%以下だとか、海軍は昔からバルト海って内海専門(第2世界大戦の戦艦は特殊、空母も持ったことが無い)で現在はフリゲートまでしかもってないのに、海外派兵、それも対テロに特化した艦艇を作ってる(1隻が完成、2隻が建造中、4隻を計画)・・・ミサル無し、対ミサイル防御無し、200人?の作戦兵士を載せられる、高度なソフトで省力化・・・テロさんの兵器が強化されてる、ソフトがクソで動かない などなど

      あ、徴兵制を止めて志願制にしたんですね。
      トランプ大統領はEUがコミットしてる防衛費(対GDPで2%、2024年までに実現)が実現されないとNATO軍から撤退するって言ってますねえ。
      有言実行の漢だからやるでしょうね。

    • 匿名
    • 2019年 4月 19日

    ドイツの国防費ってそもそも減ってるのか?
    せいぜい横ばいだろ。人員は減っている、装備はどんどん減らしてる。
    それで金欠ってやっぱ分からないね。緩みがあるとしてそれだけでここまで状況が悪くなるものか。
    やっぱり分からない・・

    • 匿名
    • 2019年 5月 05日

    頑固な面は日本とそっくりだな。自滅する点もそっくりだけど。

    • 匿名
    • 2019年 10月 18日

    アホか。
    トーネードの運用費でF-35買ったら、F-35の運用費はどこから持って来るんだよ。

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