軍事的雑学

軍事的雑学|敵魚雷を魚雷で撃つ?潜水艦の未来に革命を起こす『魚雷迎撃用魚雷』が開発中!

米海軍が、向かってくる魚雷を、小型魚雷で迎撃するため本腰を入れたようです。

参考:U.S. Navy Looking To Arm Its Subs With Tiny Torpedoes That Intercept Incoming Torpedoes

魚雷迎撃用魚雷の未来は、まだ始まったばかり

2020年度の予算要求の中に、米海軍が開発した潜水艦戦術制御システム「AN/BYG-1」継続開発のための予算を要求している。このAN/BYG-1に、新しく組み込まれる「Anti-Torpedo Torpedo Compact Rapid Attack Weapons program (ATT CRAW)」が、魚雷攻撃を防ぐためのシステムだ。

音響誘導(アクティブ/パッシブ型)魚雷で攻撃を受けた場合、魚雷に搭載された誘導手段を妨害(ノイズ発生機や音響デコイ等)方式で対応するのが効果的だが、ウェイクホーミング(航跡追尾)魚雷に対しては効果がなく、これに対抗するための方法として、魚雷を魚雷で迎撃する方法が研究されている。

この魚雷迎撃用魚雷を実用化するにあたって、最大の障害になっているのは、脅威となる魚雷を探知し効果的な迎撃を行うには、あまりにも対応時間が短すぎるという点。しかも最近のウェイクホーミング魚雷(ロシアの53シリーズの最新型)は、魚雷迎撃用魚雷の対策として、誘導の最終段階になると目標まで直線で進むのではなく、不規則なジグザク航行になり、魚雷迎撃用魚雷での迎撃を一層困難にさせている。

出典:public domain ニミッツ級航空母艦

この様な問題のために、米海軍が水上艦の対魚雷防衛の為に開発中だった、対魚雷迎撃防衛システム(ATTDS)の開発を打ち切った。このシステムは、ニミッツ級原子力空母にテスト用の対魚雷迎撃防衛システムを搭載し、繰り返し試験を行ってきたが、結局、実用レベルに達していないと判断され、全て撤去した。

この失敗は、魚雷迎撃用魚雷の未来を決定づけるものではない。

4月5日に、ドイツのATLAS ELEKTRONIK社が、魚雷迎撃用魚雷「SeaSpider」の海上試験に成功したことを発表した。

魚雷迎撃用魚雷「SeaSpider」とは、水上艦や潜水艦に対する魚雷攻撃に対抗する世界初の魚雷迎撃専用の魚雷だ。これは、あらゆる種類誘導方式、あらゆる推進方式の魚雷に対応し、米海軍が開発していたものと同じく、目標への直接衝突による撃破か、近接信管を使用した爆発エネルギーによって破壊するハードキル方式だ。

このように、魚雷迎撃用魚雷の未来は、まだ始まったばかりで、米海軍も魚雷迎撃用魚雷を諦めたわけではない。

 

小型魚雷は潜水艦の運用に革命を起こすかもしれない

今回、新たに予算要求を行ったATT CRAWシステムで使用される、対魚雷迎撃用の小型魚雷は、米海軍が標準で使用しているMk48(21インチ)に比べ、非常に小型で、およそMk48が1本搭載するためのスペースに4本は搭載できる。

そのため、対魚雷迎撃用の小型魚雷を、多目的に使用するため検討が行われている。

出典:public domain ロサンゼルス級原子力潜水艦の魚雷発射管室

米海軍は、攻撃型潜水艦に搭載できる魚雷(ハープーンなどの攻撃兵器等)の本数に問題を抱えてきた。ロサンゼルス級攻撃型潜水艦の場合、発射管に予め装填された4発の魚雷と、弾薬庫に保管されてある22発の魚雷が全てだ。7000tの巨体にたった26発分の攻撃兵器しか搭載できない。

次級のシーウルフ級攻撃型潜水艦では、この問題を解決するため60発もの攻撃兵器が搭載できるようになった。これで米海軍が抱えていた潜水艦の攻撃力不足が解決をしたように見えたが、シーウルフ級は冷戦終了の影響もあり、余りにも高価、余りにも高性能過ぎるという理由のため、たった3隻の建造で打ち切られた。

次級のバージニア級攻撃型潜水艦では、シーウルフ級よりも要求性能を下げ、調達性を重視した設計のため、攻撃兵器の搭載量が40発程度まで少なくなってしまった。

出典:public domain バージニア級原子力潜水艦

ロサンゼルス級の26発に比べれば、バージニア級の40発は十分な量に見えるが、近い将来、水中・海上では、小型の無人艦・無人潜水艇が群れをなして行動するようになるだろう。このような小型艦にMk48で対応すれば、潜水艦の弾薬庫は直ぐに空になるだろう。

もし、Mk48の半分だけでも、対魚雷迎撃用の小型魚雷に積み替えれば、Mk48が20発、小型魚雷が40発も搭載できる。さらにノイズ発生機や音響デコイを搭載しているスペースにも搭載する事が可能だ。そうなれば、将来、小型の無人艦・無人潜水艇が多数出現しても、十分対応できる。

もはや巨大なMk48で大型艦を一撃で撃沈するという戦闘様式は時代に合わなくなってきた。戦艦や巡洋艦などの大型艦は姿を消し、大型空母を保有する国は限られている。しかも艦艇を攻撃する手段は多様化し、魚雷以外にも水上艦を攻撃する手段は豊富だ。

その上、潜水艦に与えられる任務も多様化し、もはや、潜水艦が巡航ミサイルで陸上の目標を攻撃することなど珍しくもない。

そして今度は、多数の有人・無人艦と同時に交戦する未来がやってくる。

シーウルフ級のように箱自体を大きくする手もあるが、既存の潜水艦を未来の戦闘環境に適応させるのに、対魚雷迎撃用の小型魚雷の有効活用が、潜水艦の運用に革命を起こすかもしれない。

日本もこの流れに乗り遅れることなく、原潜に比べ船体の小さな海上自衛隊の潜水艦用に、対魚雷迎撃用を兼ねた小型魚雷の開発を行ってはどうだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:pixabay

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