ロシア製地対空ミサイル「S-400」導入を強行するトルコについて、トルコ系ニュースサイト“Ahval News”が、トルコがS-400導入を断念する条件について報じている。
参考:Turkey will end purchase of S-400 if U.S. lets it attack Syrian Kurds
1000万人ものクルド人を国内に抱えるトルコの懸念
Ahval Newsによれば、シリアのクルド人勢力に対する攻撃を黙認するなら、トルコはS-400導入を断念すると報じた。
補足:トルコのS-400導入問題とは、NATOの一員のトルコが、ロシア製防空ミサイルを導入すると言い出したこと。トルコはF-35Aを100機導入予定で、もし導入したS-400で、米国から導入したF-35Aを探知すれば、その情報がロシアに渡りF-35対策がとられる可能性がある問題のこと。
この要求を理解するためには、クルド人についてトルコと米国がどの様に関わり合いがあるのか理解する必要がある。
トルコが要求したシリアのクルド人勢力は、米国に協力してシリア国内のイスラム国家掃討戦に協力し、米国もシリア国内へ、地上軍を派兵し駐屯してきた。
国内に1300万人前後のクルド人を抱えるトルコにとって、テロ組織であると同時に、30年以上トルコ国内でクルド人自治に為に戦った「クルディスタン労働者党(PKK)」を、せっかくシリア北部へ追い出したのに、そのPKKの息がかかっているクルド人勢力を支援する米国が邪魔で仕方がない。
補足:クルディスタン労働者党(PKK)とは、クルド人の独立国家建設を目指す武装組織。旧称はクルド人民会議(KONGRA-GEL)。同組織は2002年4月にクルド労働者党(PKK)からクルディスタン自由民主会議(KADEK)に改称し、さらに2003年11月15日に現名称となった。これらの改称はテロリスト集団認定を法的に回避することが目的だったといわれている。トルコではこれを踏まえ、PKK/KONGRA-GELと併記する。
要するに、シリアのクルド人勢力が勢いを盛り返し、国内のクルド人と結びつけば、再び国内のクルド人分離・独立運動に火がつくことを懸念しているのだ。
そのため、米国に何度もシリアからの撤退を要求してきたが、IS掃討作戦のため拒否されてきた。

出典:pixabay
しかし昨年12月、トランプ大統領がIS掃討が完了間近で、掃討が完了すれば駐留している米軍を撤退させると発表した。
恐らく、トルコのエルドアン大統領は小躍りしたことだろう。
それにも関わらず、ISの壊滅を確認し、勝利を宣言した後も、シリアに駐留している米軍を撤退しようとせず、最終的に、米軍本体を撤退させても、200人規模の「平和維持部隊」を駐留させ続けることになった。
トランプ大統領としては、シリアから米軍が完全に撤退すれば、トルコがシリア内のクルド人を越境攻撃しかねないと見て、IS掃討に協力してくれたシアリ国内のクルド人保護のため、米軍の一部を残すことにした。

出典:pixabay トランプ大統領
もし、これを見捨てれば、中東地域で数少ない親イスラエル勢力を失うだけでなく、第二のアルカイダを誕生させる温床になりかねないと判断したのだろう。
S-400問題には、米国もトルコも引き下がれない事情がある
当然、トルコとしては面白くない。
シリアのクルド人勢力は米軍の保護があるため手が出せず、もし1991年の様に飛行禁止区域を設定されれば、イラクの二の舞になりかねない。
補足:1991年の様に飛行禁止区域とは、1991年の湾岸戦争時、多国籍軍側についた、イラク北部のクルド人勢力を保護するために、飛行禁止区域を設定した。そのためイラク北部のクルド人勢力は事実上、バース党の支配から抜け出し、独立に近い自治を手に入れた。※飛行禁止区域を設定した根拠は、少数民族クルド人の保護を求める国連安保理決議688号だが、この決議には飛行禁止空域の規定は含まれておらず、実質、米国がクルド人を対イラク戦に利用するための口実だと言われている。
さらに、トルコ国内の1000万人を超えるクルド人が、同じことを要求しはじめれば、トルコにとって悪夢以外のなにものでもない。
今回、S-400導入断念と引き換えに、シリアのクルド人勢力に対する攻撃を黙認=保護するのを止めろと言い出したのには、このような背景がある。

出典:pixabay 同時多発テロ事件の跡地 通称:グラウンドゼロ
米国としても、一時的な戦争の道具として利用したクルド人を、簡単に使い捨てれば、強烈なしっぺ返しを食らうことを「9.11同時多発テロ」で学んだはずなので、恐らくこの条件を受け入れるとは思えない。
一方のトルコとしても、国内の体制問題から引き下がる事ができない。
果たして、トランプ大統領は、クルド人保護を優先するのか?それとも、NATO体制におけるトルコの重要性をとるのか?
非常に難しい判断を下すことになるだろう。
※アイキャッチ画像の出典:Public Domain
クルド関係は、
アメリカにとっては扱い辛いが、あのあたりの国に干渉できる手段なのか。
アメリカの主張が変わらず、トルコが変化ですか。
アメリカが呑むわけがない条件。
話し合いの格好を取り繕うために言うだけ言ってみた感じ。
アメリカが突っぱねたところにロシアが援助しようとしだして国内が分裂してぐだぐだになってしまう気がする
事の始めはトルコによるS400導入な事をかんがみると、アメリカが素直に要求を飲むとは思えません。これが許されるなら自作自演的な綱渡り外交が許されることになりますから。とはいえトルコの要求を全部蹴ることこも考えづらい。S400導入断念、F35配備継続、トルコ国内のPKK弾圧と越境攻撃に目をつむることぐらいで手打ちじゃないですかね
アメリカにとっては、これでトルコにF35を売るとクルド人の弾圧に使われる懸念が顕在化したことになり
ますます売りにくくなった。
仮にトルコ側がこの条件を交渉に持ち出していたとしても政府自ら表に出すわけがない
秘密裏の条件としてなら飲めたものを表に出してしまえば外面的にアメリカが受け入れる余地は完全に無くなる
つまりこれはリークでもなんでもなくメディアが勝手に言ってるだけだな