軍事的雑学

2019年ミリタリーニュース10選、米空軍の次世代戦闘機「デジタル・センチュリーシリーズ」構想

早いもので2019年も、あと数日で終わりを迎えるが、今回は航空万能論的に最も印象に残ったミリタリーニュースを10本選び、1つづつ振り返っていく第2回目だ。

欧州の第6世代機と米国の次世代戦闘機はゴールが異なる

米空軍は次世代航空支配プログラム「Next-Generation Air Dominance(NGAD)」を研究中で、F-22やF-35などの第5世代戦闘機(以降、第5世代機)の先を見据えた計画で、俗に言う「第6世代戦闘機(以降、第6世代機)」を研究しているものと考えられていたが、どうやら欧州で開発が進められている第6世代機とは異なるゴールを目指し動き出した。

出典:Pixabay F-22 ラプター

第5世代機の条件に挙げられているのは、敵レーダーに対する低観測性(いわゆるステルス性能)と、アフターバナーなしで超音速巡航を可能にする大出力のエンジンを備えていることだったが、第6世代機の条件については、まだ定まっていないのが実情だ。

一応、欧州では第6世代機と銘打って戦闘機の開発が進められており、第5世代機よりも優れたステルス性能を備え、ネットーワーク化した戦闘に対応し、無人機の群れを制御できる能力を持ち、指向性エネルギー兵器を搭載(=大電力を発電可能という意味)した戦闘機が第6世代機だと定義している。

出典:Public Domain F-35A

米国のロッキード・マーティンは、現行の第5世代機と欧州が開発中の第6世代機との間には、第4世代機と第5世代機とを隔てるほどの大きな「ブレイクスルー」は起こらず、第5世代機のF-35をアップグレードすることで十分事足りると考えており、2020年代に予定されている「ブロック4」へのアップグレードで十分対応可能だというスタンスだ。

補足:ブロック4へのアップグレードには、Tech Refresh 3と呼ばれる電子機器のリフレッシュが含まれており、F-35の頭脳として各種センサー、電子戦、通信、誘導制御、操縦席およびヘルメットディスプレイのデータを処理するための新型の次世代統合コアプロセッサ(ICP)を採用することで情報処理能力は25倍向上し、将来のソフトウェア追加やアップグレードを行う際のマージンを確保する予定だ。

要するに米国では、欧州の第6世代機を第5世代の延長線上にある存在だとしか見なしておらず、第6世代機と銘打っているのはマーケティング上の修飾語だと言っているに等しい。

米空軍が検討中の次世代戦闘機構想「デジタル・センチュリーシリーズ」

では、米国が考えている次世代戦闘機(米国では第6世代機と呼んでいない)とは、一体どのようなものなのか?

出典:米空軍研究所 次世代戦闘機コンセプトアート

米空軍は次世代航空支配プログラムで開発する戦闘機について「全く新しい戦闘機は必要ない」と考えてる。

これはF-22が登場し、それ以前の戦闘機を「第4世代機」と一括にしてしまったような「革新的」な「象徴的」な戦闘機は必要ないという意味で、第6世代機の定義についても開発中のステルス爆撃機「B-21」が、ステルス無人戦闘機「XQ-58Aヴァルキリー」と連携して戦闘を進めていく姿こそが、真の意味で「第6世代機」のあるべき姿なのかもしれないと語っていたが、2019年後半、さらに興味深い構想が持ち上がってきた。

米空軍は、用途が被る機種の開発を絞り、革新的な機能をアレもコレもと詰め込んだ結果、開発期間は10年を越え量産機が登場するころには状況が変化してしまい、変化した状況に対応するため再び機能や性能をアップグレードするため再び長い時間が必要になるという状況は、中国が台頭しロシアが復活した情勢下では受け入れがたいと考えている。

要するにF-22やF-35のような戦闘機開発では、役に立たないと言う意味だ。

さらに軍用機開発のコストが上昇し、開発機種が絞られた結果、2000年に入って米国で開発された戦闘機はF-35しかなく、米国に敵対する勢力にとってはF-35だけを研究し対抗措置を講じれば良いという、非常に分かりやすい状況なのも見過ごせない。

そこで米空軍は、1950年代に革新的な戦闘機が次々と登場した状況を再現するため「デジタル・センチュリーシリーズ」という構想を練っている。

出典:Public Domain センチュリーシリーズの1つF-102 デルタダガー

オリジナルのセンチュリーシリーズとは、1950年代に登場したF-100スーパーセイバー、F-101 ヴードゥー、F-102 デルタダガー、F-104 スターファイター、F-105 サンダーチーフ、F-106 デルタダートを指す言葉で、それぞれ異なるコンセプトを持った戦闘機達だった。

しかし、センチュリーシリーズに属する戦闘機達が「成功」したかといえば首を傾げたくなるが、米空軍が求めているのは戦闘機として「成功」するのか「失敗」するのかではなく、異なるコンセプトを持つ戦闘機を複数同時に登場させることで、敵の対応力を飽和させることを狙っており、この構想の最も重要な点は戦闘機の開発・量産サイクルを5年以内に短縮することだ。

要するに、デジタル・センチュリーシリーズ構想は戦闘機の開発過程に「ブレイクスルー」を起こすことを狙っているのだ。

ただ、複雑化の一途を辿る戦闘機開発と量産を5年以内で完了させることが、本当にできるのかについては疑問の声も多いが、米空軍は戦闘機の基本構成を共通化し、デジタルエンジニアリングを活用することで試作機や飛行試験を極限まで省略できることに期待していると言う。

あくまで「デジタル・センチュリーシリーズ」は構想段階であり、本当にこのような話を実行に移すのかについては良くわからないが、少なくとも欧州の第6世代機とは全く発想が異なることだけは確かだ。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Heather R. Redman

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    デジタル・センチュリー構想はハッキリ言って「絵に描いた餅」に終わるとしか思えないのだけどね。
    まず、今日の様に戦闘機の開発が複雑化した背景には「複数の戦闘機を開発していたのでは、費用と予算ばかり喰って必要な数が揃えられないので、単一の多任務戦闘機を作るしかない」と言う問題意識があって、それに沿って開発されたのがF-35。
    ところがF-35は多任務に加えて、陸戦・艦戦・STOVL機を単一の原型から開発すると言う「日本の家電機器並みの機能全部盛り」をやってしまい、当初の開発目的だったはずの「単一の多任務戦闘機」では無くなってしまった。
    その反動から「開発方針を元に戻せ!(但し、半世紀位前に)」と言う声を具体化したのがデジタル・センチュリー構想なのだろうけれど、幾ら戦闘機の基本構成を共通化してデジタルエンジニアリングを活用しても試作機や飛行試験を省略する事は不可能だろうね。
    事実、此処の以前の記事でも取り上げられていたけど、米原子力空母「ジェラルド・R・フォード」は、新型兵器用エレベーターの試験を省略したせいで、未だにエレベーターの不具合が直っていないそうじゃない?(フォードの場合は他にも不具合テンコ盛りだけど)

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    欧州の第6世代機・・・
    FACS(ドイツ・フランス)、イギリスのタイフーンも新しいエンジンの開発が聞こえてこないのは何故だろう?
    日本(XF9-1)、アメリカの次期エンジン開発では赤外線探査対策で最も外側にフレッシュ・エアーを流して温度を下げてる。

    • 匿名
    • 2019年 12月 29日

    センチュリーシリーズの時代ってカンブリア紀の生物大爆発の時に似ている気がする、ジェットエンジンが実用化されいろんな形の飛行機が出現した。
    カンブリア紀では今では考えられないような形をした生物が発生し時間とともに今の形に収束してきた、同じようにF-22のようなステルス機のデザインになってきた。

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