軍事的雑学

ステルス処理されたキャノピー不足が原因? 米軍、F-35の稼働率「80%達成」ならず

7月16日、上院軍事委員会で開かれた公聴会で、次期国防長官に指名されたマイク・エスパー氏は、F-35のミッション達成率を80%まで引き上げるという目標を達成する事ができないと明らかにした。

参考:F-35 Won’t Hit 80% Readiness, Cites Stealth Parts

F-35のミッション達成率に影響を耐えるキャノピー供給不足問題

前国防長官のジェームズ・マティス氏は2018年、空軍と海軍に対しF-16、F/A-18、F-22、F-35のミッション達成率を2019年9月末までに、80%にまで引き上げるよう命じたが、最近、次期国防長官に指名されたマイク・エスパー氏は、2019年9月末までにF-35のミッション達成率を80%まで引き上げるという目標について、F-35を構成する部品供給問題が原因で「期待できない」と語った。

部品供給問題の中でも特に、ミッション達成率引き上げの足を引っ張っているのは、F-35のキャノピー(天蓋:コックピットを覆う透明なカバー)の供給不足だ。

コックピット内部へのレーダー波進入を防ぎ、ステルス性を維持するために、F-35のキャノピーには「特別なコーティング」が施されているが、この「特別なコーティング」処理工程が安定せず、必要な量のキャノピー供給が困難な状況だ。

出典:US Air Force / Ronald Bradshaw

このキャノピーを製造しているロッキード・マーティンによれば、コーティング処理の失敗率は予想を超える多さで、同社だけの製造では、キャノピーの供給量を満たすのは難しいと明らかにし、米国会計検査院(GAO)はキャノピー製造企業を新たに増やすか、キャノピーの設計変更を検討しけなければならないと指摘している。

他にも、F-35のミッション達成率引き上げを妨げる要因に、スペアパーツの供給不足問題がある。

米国会計検査院(GAO)が4月にまとめた報告書によれば、F-35のスペアパーツ供給不足の問題は、壊れたパーツを修理する能力が限られいることが原因で、目標では60~90日程度で壊れたパーツの修理を行い、再びスペアパーツの在庫に戻すことになっているが、実際にその倍以上、平均180日程度の時間がかかっており、その結果、スペアパーツの供給が不足しているという事態を招いている。

さらに、S-400導入によるトルコ企業のF-35サプライチェーンからの追放も、F-35のミッション達成率引き上げに、少なからず影響を及ぼすだろう。

トルコは、このままS-400導入を継続すれば、2020年3月末までに、トルコ企業が担当していた約900品目に及ぶF-35のパーツ製造権利を失うことになり、米国はトルコ生産分のパーツ製造を米国に移すため5~6億ドルの費用が見込まれている。

出典:public domain

問題は、トルコ企業が担当していた約900品目のパーツの内、コックピットに使用されている大型ディスプレイや降着装置など約400品目は、トルコ企業のみが製造・供給を行っているため、米国に生産を移したとしても、一時的にパーツが不足する可能性は否定できない。

しかし、F-35プログラムの担当者によれば、最近のF-35は平均60%以上のミッション達成率を維持し、一部では70%以上のミッション達成率を維持している部隊もあると説明し、F-35のミッション達成率の引き上げは目標の80%に未だ届いていないが、スペアパーツの円滑な供給へ向けて、着実に改善が進んでいると見るべきだろう。

付け加えるなら、ミッション達成率を80%まで引き上げることを要求されたF-16、F/A-18、F-22、F-35の内、目標を達成できそうなのは空軍のF-16のみで、海軍のF/A-18は目標達成に近づいているとは言っているが達成したとは言っておらず、F22については目標達成自体を既に諦めている。

出典:pixabay / skeeze

恐らく、4機種の中でF-22のミッション達成率を引き上げるのが一番困難かもしれない。

その原因は、F-22は量産機の数が少なく「規模の経済」によるコスト削減が作用せず、スペアパーツの入手、定期的なオーバーホール、手間の掛かるステルス素材で構成された機体の維持、7~8年ほどの耐久性を持つステルス塗料の寿命が切れかかっているため再塗装が必要など、他の機種に比べてコストがかかるため、潤沢な予算措置でも行わない限り、一向にミッション達成率が上らない。

極めつけは、ハリケーン・マイケルが直撃したティンダル空軍基地のF-22が損傷(4機大破、10機以上が小破)し、F-22のミッション達成率を下げる要因になっている。

現在、F-22のミッション達成率は50%前後と言われており、フルミッション達成率はさらに低いだろう。

状況の異なる他機種との比較が正しいのかはわからないが、「最近のF-35は平均60%以上のミッション達成率」が正しいのなら、F-35の状況は、少なくとも「絶望」するほどの状況からは「脱出」できたと言えるだろう。

但し、キャノピー供給不足が、F-35のミッション達成率にも影響を及ぼすほど深刻化しているため、今後も注視しなければならない。

 

※アイキャッチ画像の出典:US Air Force / Senior Airman Alexander Cook

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 7月 19日

    トルコからの引上げ分の一部を日本に回してくれりゃいいのにな
    国内生産のために準備してたメーカーとかもあるし多少は対応できる案件もありそうなもんだが?
    まあトランプなら全部国産に戻せって言うか

    • 匿名
    • 2019年 7月 19日

    生産数の2割もキャノピー壊してるのか…

    • 匿名
    • 2019年 7月 19日

    どのみち戦闘機のステルス化率を上げていくなら避けては通れない道ですから、遠からず解消されるでしょう。しかしアメリカでこの状況ならロシアや中国は言わずもがなですね。

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