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護衛艦「まや」も搭載可能? 米海軍、極超音速ミサイル「SM-6 Block IB」2024年迄に実用化

イージスシステムを搭載した護衛艦「まや」は3月19日、ジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場から海上自衛隊へ引き渡され正式に就役した。

参考:護衛艦「まや」の引渡式・自衛艦旗授与式について

まや型護衛艦が搭載する艦対空ミサイル「SM-6」の改良型は極超音速ミサイルへ進化?

まや型護衛艦は協調的エンゲージメント送信セット「AN/USG-2」や「NIFC-CA FTS」を備えており海自艦艇として初めて「共同交戦能力(CEC)」を獲得、さらに同艦は最新の艦対空ミサイル「SM-6(後日装備)」を搭載するなど、こんごう型護衛艦やあたご型護衛艦とは一線を画する性能を秘めている。

出典:海上自衛隊

まや型護衛艦の共同交戦能力については就役直後なので、多くのメディアが取り上げ説明していると思うので割愛し、当ブログは「SM-6(RIM-174 Standard ERAM)」に注目したい。

このSM-6と呼ばれる艦対空ミサイルは、空対空ミサイル「AIM-120AMRAAM」に使用されているアクティブシーカーと協調的エンゲージメント機能を「SM-2ER BlockIV」に搭載したもので、目標の近くまで誘導さえしてやれば搭載しているアクティブシーカーが作動し独自に目標を捕捉して終末誘導を行うため、イルミネータの負担が減り同時交戦目標数に余裕(増える)が生まれると言われている。

さらにSM-6は共同交戦能力に対応しているため早期警戒機E-2Dを連携すればイルミネータの電波が届かない水平線/地平線の下に位置する目標と「リモート交戦(EOR)」を行うことも可能で、弾道弾迎撃ミサイル「SM-3」を補助する形でターミナル・フェイズ(終末段階)段階での弾道弾迎撃も、水上艦(※1)や地上目標(※2)への攻撃に使用できるという多彩な才能を持ち合わせている。

補足:※1)2016年1月にSM-6は対艦攻撃能力を実証するため退役したオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートに向けて発射され撃沈すること成功した。※2)SM-6にGPSを組み込むことで地上目標の攻撃に使用できるようにしたが、SM-6の価格が巡航ミサイル「トマホーク」等の他の対地攻撃兵器よりも高価なためGPS組み込むはオプション扱いになった。

因みにSM-6 Block IAの調達価格は様々な説があるが、米海軍は2026年までに1,800発のSM-6 Block IAを約64億ドル(約7,200億円)で調達する予定だと報じられているため1発あたりの調達価格は約4億円となる。

出典:U.S. Navy photo アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」から発射されるSM-6

ようやく前置きが終わったので本題に入る。

米海軍は現在SM-6 Block IAの能力向上型としてBlock IBを開発中で、主な改良点はSM-6の極超音速(マッハ5.0以上)化と射程距離(300km以上)の延長だ。

参考:Navy To Supersize Its Ultra Versatile SM-6 Missile For Even Longer Range And Higher Speed

そのためSM-6本体下部に取る付ける13.5インチ(34cm)のブーストロケットをSM-3と同じ21インチ(53cm)に変更、ロケットモーターの改良や極超音速飛行時の摩擦熱に耐えられるミサイル先端部分の開発を行っており、2024年までに初期能力を獲得する予定らしい。

もしこれが実用化されれば航空機や巡航ミサイルとの交戦時にノーエスケープゾーン(回避不能域)が拡大するため非常に効果的で、さらにロシアとの極超音速ミサイルギャップ(極超音速対艦・対地ミサイル実用化の遅れ)を埋める有効な手段になるかもしれないため注目される部分だ。

ただSM-6を極超音速化しても、開発期間が短いためロシアの極超音速対艦ミサイル「3M22ジルコン」にようにマッハ9.0で作動するといった驚異的な極超音速化は難しいだろう。

それでも本命の極超音速兵器が実用化されるまでの繋ぎとして、ロシアとの極超音速ミサイルギャップを少しでも埋めるためには有用な存在であることに変わりはなく、もしかしたら日本のまや型護衛艦がSM-6 Block IB=極超音速ミサイルを搭載する日がくるかもしれない。

 

出典:U.S. Navy photo アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」から発射されるSM-6

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 3月 21日

    数一杯用意するために誘導弾の開発と生産は日本でやろうよ

    1
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