軍事的雑学

完成するのか?金をドブに捨てるのか? 対AWACSキラーを無力化する米空軍の新技術

米空軍が開発中の「Advanced Battle Management System(ABMS)」は対AWACSキラーと言われる露中の超長距離空対空ミサイルを無力化する可能性があるのだが、どうも雲行きが怪しい。

参考:What’s Wrong With the Air Force’s ‘Connect Everything’ Project

米空軍のアドバンスバトル・マネージメントシステムは果たして完成するのか?それとも大金をドブに捨てることになるのか?

米空軍が開発している「アドバンスバトル・マネージメントシステム(Advanced Battle Management System:ABMS)」とは陸海空の戦力に加え宇宙空間に配備された軍事衛星までが接続されるクラウドベースの戦闘管理システムで、個々のセンサーが収集した情報を瞬時に統合することで戦場の状況認識力を拡大させるのが目的だ。

出典:Public Domain 早期警戒管制機 E-3

もっと簡単に言うなら、早期警戒管制機「E-3 セントリー」が搭載している大型レーダーの役割を分散させることで抗堪性を高め、収集した情報をネットワークを通じて統合して活用すると考えれば良いだろう。

このABMSは米空軍にとって戦闘のネットワーク化を実現させるための土台になる重要なプログラムで、ロシアや中国が実用化を進める対AWACS用超長距離空対空ミサイルへの回答だ。実際、米空軍はABMSが完成すればE-3やE-8と置き換えることを予定しているらしい。

出典:Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 ロシアの空対空ミサイルR-37

この話を鵜呑みにすれば近い将来、対AWACSキラーと言われるロシアや中国の超長距離空対空ミサイルは存在意義を大方失うことになり対米空軍に対する戦略を練り直さなければならなくなるだろう。

だがABMSの開発はとても上手く言っているとは言えない。

米国の政府説明責任局(日本の会計検査院に相当)は16日、米空軍が進めている「Advanced Battle Management System」プログラムは開発にどれだけ予算が必要になるのか、サービスが上手く統合され機能するのか「誰にも分からない」と強烈に批判する報告書を公開した。

ABMS開発を受注している企業の関係者は「米空軍はABMSのコンセプトを実用化するのに何を構築すれば良いのか、どのような技術が必要になるのか、データはどのようにあるべきなのか、異なるプラットホーム間の相互運用性をどのように確保するのか、開発のゴールはどこなのか、無いも分かっていない」と指摘するほど米空軍はABMSの開発をコントロール出来ておらず、もっと辛辣に言えばABMS開発はソフトウェアの開発であり発注者である米空軍の担当者は理解できずコンセプトだけ作って逃亡したのだ。

さらに米空軍はABMS開発を小さく分割して発注するという不可解なアプローチを採用して数ヶ月おきにデモを行いながら開発を進めており、建前上は複数の企業を短期間で何度も競わせることでイノベーションを高めると説明しているが、米空軍側の誰が契約や開発要件を決定して誰がデモを評価するのか明確になっておらずABMSの効率的な開発を妨げる可能性があると政府説明責任局に警告されている。

結局、政府説明責任局はABMS開発について米空軍は何も分かっておらず、詳細な計画や開発コストの見積もり提出を義務付けられている国防総省の「主要な防衛獲得プログラム」に指定されれば困ったことになるため、それを回避する手段として契約を分割し1つの契約額を小さくみせることで「主要な防衛獲得プログラム」指定を回避しただけに過ぎないと糾弾したいのだろう。

出典:public domain 爆撃機 B-1B ランサー

米空軍は2021会計年度にABMS開発の予算として約3億ドル(約320億円)を要求しており、将来的には爆撃機B-1Bや攻撃機A-10などを早期退役(※1)させて浮いた予算の一部をABMS開発に突っ込むことを予定している。

※1補足:米空軍は爆撃機B-1Bランサーを17機、攻撃機A-10サンダーボルトIIを44機を退役させ、無人偵察機RQ-4は最新のBlock40のみを残し旧型の24機と3機の無人戦域通信中継機EQ-4を退役させる。空中給油機KC-135を13機、KC-10を16機退役させる代わりにKC-46Aを15機調達して穴埋めし、無人偵察機MQ-9リーパーは10機削減、輸送機C-130Hは24機を退役させる予定。但し、議会の許可が下りていないため実際に実現するかは未知数
関連記事:米空軍、正式に「B-1Bランサー」や「A-10サンダーボルトII」など7機種の退役計画を発表

政府説明責任局は米空軍に対して、指摘した問題を早急に解決しなければ320億ドル(約3兆4,000億円)をドブに捨てた陸軍の「未来戦闘システム」の二の舞になると警告している。

ABMSのコンセプトだけ聞けば明るい未来が見えるのだが、どうもドロ舟のような気がしてならない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. John Winn

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    米空軍が日本のHPMに興味を示した理由はこれかね
    新早期警戒システムの開発が難航しそうだからとりあえず既存AWACSを狙う敵ミサイルを安価かつ大量、高速に無力化できる装備を調達しようと

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    もういっそスタンドアローンでかつ圧倒的な質を持った戦闘機なり艦艇を開発した方が安上がりなんじゃないだろうか

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    話を聞く限り、ABMSは“IT業界のサグラダファミリア”と揶揄されたみずほ銀行の勘定系システムの刷新と統合プロジェクトを遥かに上回る難事業と言って良いと思う。
    因みに、みずほ銀行のプロジェクトは2019年7月に完成したが、それまでに19年の歳月と推定4000億円以上の開発費を要したとされており、その期間中に2度の大規模なシステム障害(2002年4月と2011年3月。2度目は東日本大震災に伴う義援金の大量振り込み処理の結果)を起こし、システム刷新に伴うATMの停止を何度もやっているのでご記憶の方も多いと思うが、ABMSはそれよりも遥かに困難な事をやろうとしているとしか思えない。
    個人的な意見だが、米空軍の担当者に日経BPから出ている『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』を読ませたら、ABMSをあっさり中止させるかもね(苦笑)。

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    普通に偽データが紛れ込んで存在しない目標にミサイルが大量に叩き込まれる未来が見える

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    米海軍にはウェイン・マイヤーという優れたプログラム・マネージャーがいたのでイージスシステムを完成できましたが、今の超大規模開発を率いることができるビジョナリストやマネージャーは中々出ないでしょうね。
    IT屋なら規模を分割して複雑度を下げたり段階的に開発することで方向性を修正しながら順次リリースするなどの手段はよく使われますが、軍事システムは複雑度が高すぎるので不向きなのかもしれません

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    アメリカさんが手こずってるのなら、
    EU、イギリスのE-3、E737を廃止して・・・ってのは画餅にもほどがあるってことかな?

    • 匿名
    • 2020年 4月 19日

    まだきちんとした代替え案が無いのにE737レーダー管制機を廃止を決定するのは話が早くないか?
    E737のような大型レーダー管制機からE2のような小型の機種を量産して、
    相互連携ネットワーク化するのはどうなんだろう?
    E2だったら空母艦載機として運用出来て便利だし、自衛隊も運用しているから、自衛隊でも似たような構想は出来る
    現に相互連携ネットワーク化出来る機種はF35とレーダー管制機だけだから
    他の戦闘機をバージョンアップするか新規製造しないといけないから予算と時間がきついと思う

      • 匿名
      • 2020年 4月 19日


      E737って豪州、UKと
      韓国(仕様は上の2国とは違うらしい)だけが採用
      アメリカ空軍は採用してないけど?
      日本はE-3とほぼ同等のE767

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