米国関連

兵士にとっては地獄?米海軍、早期警戒機「E-2D」に空中給油用プローブを装着

米海軍は、空中給油が受けられるよう燃料補充用のプローブを装着した、最初の早期警戒機「E-2D」アドバンスド・ホークアイを受けとった。

参考:US Navy takes first E-2D with refueling probe

米海軍が早期警戒機「E-2D」に空中給油プローブを取り付けた理由

米海軍が空母で運用するために開発された「E-2」は早期警戒機としては小型、17.5mしかない全長はF/A-18ホーネットとほぼ同じで、この機体に5人(パイロットを含む)もの人間が乗り込み、この狭い機内で平均4時間(最大6時間)のミッションをこなさなければならない。

この機体に米海軍は遂に、空中給油プローブを装着してしまったのだ。

無給油での最大滞空時間は6時間で、離陸のための滑走距離に制限のない陸上基地から離陸する場合は、追加の燃料を携行することができ最大8時間まで滞空することができるが、先程も述べたように非常に狭い機内で、これ以上の、長時間に及ぶミッションを行えと命令されれば、流石の兵士たちもストライキを起こすかもしれない。

米海軍のE-2には一応、生理的現象を処理するための機材が搭載されてはいるが、信頼性に欠けると言う理由でこれを使用せず、多くの兵士が「おむつ」を履いてミッションに従事していると言われているが、日本のE-2Dには、ユニット式トイレや、食事や飲み物を暖められるギャレーが追加装備されている。

これは欧米人と日本人の体格差や、機体重量増加をあまり気になくてい陸上運用だからこそ可能だったのかもしれない。

出典:Public Domain E-2C内でのレーダー運用

どちらにせよ、空中給油を受けて10時間を超えるミッションになった場合、果たして「1枚のおむつ」で事足りるのか非常に疑問で、仮にお腹の調子が良くない日などは、もはや目も当てられない惨劇が待ち受けているかもしれないと言うのは、決して、大げさでは無い気がするのは管理人だけだろうか?

と、ここまでは冗談半分で面白おかしく書いてみたが、ここからは、なぜ米海軍がE-2Dに空中給油プローブを装着したのか真面目に考察してみる。

単純に空中給油を受けるということは、航続距離の延長=滞空時間の延長だと考えるのが自然だが、E-2Dは艦載機であり、空母の短い飛行甲板からカタパルトを利用して発艦するため、発艦時の機体重量制限が存在する。

恐らくだが、これ以上、E-2Dへの改良は空母発艦時の重量制限に引っかかる可能性があるので、発艦時の機体内燃料を減らすことで、新たな改良を受け入れる「重量的な余裕」を生み出すため、空中給油プローブを取り付けたのではないだろうか?

要するに、改良を行い重量が重くなっても、燃料を減らし機体重量を制限内に調整することで空母からの発艦を可能にし、空中給油で機体内燃料タンクを燃料で満たしてしまえば問題ないという意味だ。

世界の軍隊の中で、兵士の命を一番重要視している米軍が、生理的現象の限界を超える過酷なミッションを日常的に強制し、搭乗員を汚物まみれにするため空中給油プローブを取り付けたとは、到底考えられないので、今以上(最大6時間)の長時間ミッションは、まずありえないだろう。

しかし、どうしても早期警戒機「E-2D」の稼働時間を延長したいと望むなら、米海軍は早急に早期警戒機の「無人機化」を検討するべきだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Nikita Custer

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 9月 15日

    早期警戒機の無人化はできても収集する情報の密度を考えると大容量のデータリンクが必要なので、電磁波妨害攻撃に弱くなりますね。
    GPSジャマーも実用化された状況では自律行動可能な早期警戒機が必要になるでしょうし、人手で解析しているところも自動化が必要でしょう。

    機械のペイロードを最大限活用するなら自律行動可能な完全無人機になりますが、高電波妨害空間では稼働率に影響しそうなので、貴ページのように有人・無人両対応の機体にして装備重量が増えた分は空中給油で対応、ということも考えられます。

    • 匿名
    • 2019年 9月 15日

    機外に噴出して爆撃機と化したE/B-2爆誕か

    1
    • 匿名
    • 2019年 9月 15日

    長時間任務といえば爆撃機搭乗員は30時間以上の任務が普通にあるようですね。
    E-2Dと違って仮眠シートや簡易トイレがあるようですが。
    B-52は5人搭乗だから交代の余裕もあるけど、B-2に至っては2人という……考えただけで辛い。
    軍医調合の薬物で集中力を保つとか、もうちょっと次元が違いすぎて笑うしかありませんな。

    • 匿名
    • 2019年 9月 15日

    前も後ろも管刺してから飛べばいいのに
    新しい扉開いちゃうけど

    • 匿名
    • 2019年 9月 16日

    空母からの離発着に加えて、空中給油を強いられているだけでも、十分ストレスMAXな気がしますね。

    • 匿名
    • 2019年 9月 18日

    そもそも空中給油機をどうするのか

    陸上から発信させるのでは結局陸上機の航続距離に制限される場所でしか無理で空母と艦載機の意味がない
    でも艦載すると結局空母のリソースを奪ってしまう
    無人空中給油機もキャンセルされ、有人の専門の艦載給油機もない
    かといって戦闘機やらヘリでは増槽をつけても燃料は限られるし、これも本来の任務ができなくなる

      • 匿名
      • 2019年 9月 24日

      艦載型の無人機空中給油機MQ-25スティングレイはボーイングが主契約取って最近初飛行しました。
      艦載無人攻撃機のX-47Bは無線クラッキングや自律した攻撃判断は国際法など課題が多く断念してますね。

      今のところ空中給油機を代替できるのは給油ポッドを取り付けたF/A-18E/Fのみで艦載型空中給油機のKA-6Dや給油ポッド装置可能なS-3などの機体は退役してます。

      将来的にはC-2グレイハウンド後継機のCMV-22Bに給油ポッドを取り付けたものと前述のMQ-25で給油ポッド装着スーパーホーネットの空中給油ミッション負荷を下げる予定ですが、最低でも数年はスパホに頑張ってもらうしかない状況です。

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