軍事的雑学

戦わずして自滅? 米海軍、艦艇のメンテナンス遅延で失った時間は2万7,000日以上

米海軍は議会に、艦艇に提供するメンテナンスが遅れている原因について分析を行い、180日以内に報告書を提出しなければならなくなった。

参考:US Navy to dive deep into its maintenance woes

ニューポートニューズ造船所が攻撃を受ければ米海軍の戦争継続能力は消滅?

米海軍の駆逐艦は昨年、メンテナンスを受けた約7割の艦がスケジュール通り港を離れる事が出来ず、新たにメンテナンスを受けるため帰ってきた艦は、修理施設が空くまで港に係留され無意味な時間を過ごしている。

議会は2014年以降、メンテナンスの遅れによって失った時間の合計は2万7,000日以上に達し、1年あたり5,400日以上、これを300隻で割った場合、1隻あたり18日以上の時間を「予定外」に無駄にしたという意味だ。

出典:public domain アーレイ・バーク級駆逐艦「オスカー・オースチン」

これは海軍が持つ艦船修理廠や、民間の造船業界が提供できるメンテナンス能力が限られている(追いついていない)という問題と、艦艇の平均年齢が上昇し、定期的なメンテナンスに要求される作業量が増え、おまけに老朽化した艦艇は不測のトラブルを起こしやすく、このような要因が重なって遅延が起こっていると言われている。

もう一つは、冷戦終結後に海軍が縮小されたが、作戦に要求される艦艇の出動要請は減ることがなかったため運用サイクルが早まり、艦は減ったのに1艦あたりのメンテナンス需要が増えた結果、海軍が縮小に合わせて縮小した米国の造船業界では捌ききれなくなったのだ。

さらに深刻なのは10万トン前後の大型空母に対するメンテナンスだ。

出典:public domain 乾ドッグに横たわる空母「ハリー・S・トルーマン」

ニミッツ級空母は最も新しい「ジョージ・H・W・ブッシュ」だと艦齢は13年だが、もっとも古い「ニミッツ」だと艦齢は47年に達し、全体的に老朽化が進んでいるため、こちらもメンテナンスの遅れが発生している。

空母のメンテナンス問題が深刻なのは、空母のメンテンナンスを行える施設がニューポートニューズ造船所しかなく、もし予定が遅れれば全空母のメンテナンススケジュールに影響が出るためだ。

これまで米海軍もメンテナンス遅延問題の解消に取り組んで来たが、結局、問題を完全に解決するには予算を増やすしかなと言われており、直接議会が問題解消に出てきても結果は変わらないという見方が強く、あまり期待はできそうにない。

 

因みに、ロシアはニューポートニューズ造船所とリマ陸軍戦車工場(全米唯一、M1エイブラムス戦車を再生している)を破壊さえすれば、米国の戦争継続能力をへし折る事ができると言っている。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Michael H. Lehman

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    要は、1980年代に当時のレーガン大統領が対ソ連戦略の一環としてぶち上げた「海軍600隻計画」が事の発端だと思う。
    この計画は実現しなかったとは言え、米海軍の予算に無理な負担を与えた挙句、冷戦終結でタガが外れて極端な軍縮へと走った結果、海軍艦艇への支援能力が必要以上に削られて、約30年後に破綻したと言うのが、この話の流れだろう。
    こうなったら、国防戦略を根本的に再検討(それも「中国、ロシアと今後敵対すべきか否か?」と言うレベルからの見直し)するしか打つ手は無いのだけど、大統領選が来年だし、マトモな議論が出来るのかな?
    最も、国防上重要な生産・整備設備が国内に一か所しかないと言うのは、米国以外でもよくある話だけどね。

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    「因みに、ロシアはニューポートニューズ造船所とリマ陸軍戦車工場(全米唯一、M1エイブラムス戦車を再生している)を破壊さえすれば、米国の戦争継続能力をへし折る事ができると言っている。」

    もちろんこんなことをすれば虎の尾を踏むようなもので、既存の戦力を全力で投射されて戦争継続云々の話ではなくなるでしょうけど。現代の兵器の能力であれば、防衛目的だけのために拠点を複数に増やしたところで的が増えるだけでしょう。予算面だけでなく、人材面や機密上の問題も大きいのかもしれません。

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    商船の建造か中国等に流れ、米国内の多くの造船所が廃れてしまい、
    造船も、メンテも極一部の米海軍お抱えの造船所でしか行えなくなっていることと、
    さらに成果主義の行き過ぎで、造船所含め製造現場の技術継承がなされず、新たな技術者が育たず、新造もメンテも計画通り行かなくなってる点もあるかと。

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    >因みに、ロシアは
    自分たちはもっと酷いでそ…… (  ̄_ ̄)

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    産業の空洞化が効いている。
    造船業も中国、韓国、日本で殆どを占める。
    戦車も新規生産をしていない。
    あらゆる意味で、厳しい状況だろう。
    航空機と無人兵器に頼るしかないか。

    • 匿名
    • 2019年 12月 22日

    アメリカでコレ、ロシアがあのザマ、将来の中国はどれ程の惨状を見せるのだろうか?
    規模も予算もあんまり変わらなかった海自でも、更新キツいからね(上記よりは確実にマシだが)

    • oominoomi
    • 2019年 12月 22日

    今年の春、初めて米軍艦(DDG69 Milius)の整備が横須賀海軍施設外の民間施設(三菱重工業 本牧工場)で行われることがニュースになっていました。
    ソースは朝日新聞とあって批判的なトーンでしたが、艦船造修能力に余裕のある日本など同盟国がメンテナンスを行えばwinwinでしょう。
    「先進国に友達が多い」ことこそ中国やロシアに対するアメリカのアドバンテージだと、トランプ大統領が早く気づいてくれるといいんですが。

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