軍事的雑学

韓国も豪州もスペインも検討中、デメリットも多い「F-35B」が魅力的なのは何故か?

先日の16日、防衛省は空母に改造した「いずも型護衛艦」で運用する短距離離陸・垂直着陸型の戦闘機として、米海兵隊向け「F-35B」を選定したことを発表した。

大型空母を持たない国とってF-35Bが魅力的に映るのは何故か?

日本が新しく導入することになった海兵隊向けのF-35Bは、基本的に自力で短距離で離陸し、垂直に着陸できる仕組み(STOVL)が機体内に組み込まれているため、空軍向けのF-35Aのように大きな滑走路や、海軍向けのF-35Cのように、カタパルトやアレスティング・ワイヤー等の補助装置を必要しない上、最大速度やステルス性能といった基本的性能はF-35Aと変わらない。

このように言えば、非常に万能に見えるF-35Bも、STOVL能力を成立させるために犠牲にした部分がある。

出典:public domain

F-35Bはリフトファンを搭載しているため、F-35A/Cよりも機体内容量=機体内燃料タンクが少なく航続距離も短くなっており、兵器搭載量もF-35A/Cより15%ほど少ない。さらに排気ノズルを折り曲げて下方に向けることが出来るF-35B専用エンジン「F135-PW-600」を搭載しているため、メンテナンス性は空軍や海軍向けよりも悪いだろう。

機体への荷重制限も空軍向けのA型(最大9G)に比べ、F-35Bは7Gまでと制約が大きく、F-35Bを運用する基地や艦船は、滑走路や飛行甲板をF-35Bの排熱に耐えられるよう改修する必要があり、価格もF-35Aと比べて約2,100万ドル(約22億円)ほど高価だ。

ただ、このようなデメリットがあっても、米海軍のような大型空母を持たない国とってF-35Bが魅力的に映るのは何故か?

現在、F-35Bを導入中もしくは導入を決定した国、導入を検討している国は以下の通りだ。

導入予定数、もしくは検討されている導入数
米国 353機(海兵隊)
英国 138機(空軍)
イタリア 30~60機(空軍/海軍)
日本 42機(航空自衛隊)
韓国 20機の導入を検討中
トルコ 導入を検討中だったがF-35プログラムから追放された
スペイン AV-8B ハリアーIIの交換用として検討中
豪州 日本のF-35B導入によってF-35B導入議論が再燃中

軽空母としても運用可能で、スキージャンプ台を備えた強襲揚陸艦「アナドル」を建造したが、ロシア製防空システム「S-400」導入を強行したためF-35プログラムから追放され、肝心のF-35B調達が事実上、不可能になったトルコを除くと、7ヶ国で導入中もしくは導入決定、導入を検討中だ。

出典:public domain 空母ハリー・S・トルーマンの飛行甲板。

F-35Bを運用する軽空母や強襲揚陸艦は、固定翼機を運用する大型空母と比べると、早期警戒機や電子攻撃機、輸送機などの支援航空戦力の運用が出来ず「戦闘効率」という点では劣るが、逆に大型空母は極超音速ミサイルや対艦弾道ミサイルなどに狙われれば、最悪の場合「高価」で「大規模な戦力(搭載されている艦載機が多い)」を一度に失う可能性があり、複数の軽空母や強襲揚陸艦に航空戦力を分散配置したほうが生存性が高いとも言え、中国と対峙している米海軍にとって、有望な戦術になるかもしれない。

米空軍は冷戦終結後、多くの基地を整理・統合し航空戦力を集中配備してきたが、中国による攻撃(特にグアム基地)を警戒し、再び航空戦力の分散配置を進めているのとよく似ている。

米国以外の国にとってF-35Bの存在は、運用する軽空母や強襲揚陸艦は、まさに憧れでしかなかった海上からの火力投射戦力=空母保有のハードルを劇的に下げくれた、しかも第5世代機の基準を満たしているという、非常に都合がよい戦闘機だ。

すでに「ハリアー」を導入した国が後継機として検討したり、新しく軽空母もしくは強襲揚陸艦とF-35Bの組わせによる海上からの火力投射戦力保有を検討する国が、今後も新しく出てくるかもしれないが、問題は米国が売ってくれるかどうかだ。

そもそも購入可能な第5世代機は、世界中を探しても米国のF-35か、ロシアのSU-57Eしかなく、軽空母もしくは強襲揚陸艦で運用可能なSTOVLタイプとなるとF-35Bしか選択肢がない。

結局、技術・費用的な面から見た空母保有のハードルは下がっても、政治的になハードは下がっておらず、実際に購入できる(米国が販売を許可する)国は非常に限られるため、Lightning Carrierが米国以外に普及するかといえば、NOといわざるを得ない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Brennan Priest

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コメント

    • ハリアーの代替が必要
    • 2019年 8月 28日

    艦載機を運用できる母艦を持てる国は凡そアメリカ側の国なので、導入する国は増えるだろう。
    どちらかといえば、売ってもらえるかというより、資金が有るかいうことだろう。
    インドもトルコも、今後の政治状況の変化で販売してもらえるかもしれない。
    絶対に不可なのは、中国やロシアくらいだろう。

    • 匿名
    • 2019年 8月 28日

    F35Bは部品点数も多い上、垂直離着陸機能など盛り込みすぎで機体単価だけでなくメンテナンス費用も嵩む。
    軽空母クラスで搭載可能な戦闘機として候補に上がるのはいいけどエンジンが『単発』だとエンジントラブル=ロストに繋がる。
    海軍機は『双発』が良いですよね。

    • 匿名
    • 2019年 8月 28日

    ハリアー運用してた国は大体イギリスかアメリカと友好関係にあるので、価格さえ合えばリプレースとして希望するでしょうね。

    公表スペック上はハリアーと比較して航続距離が3割落ちますが、地上型のF-35Aは増槽なしでスペックの倍の4000km飛べるとの話もあるので、離着陸に燃料を食うF-35Bでももう少し伸びるかもしれないですし、ビーストモードでハリアー並みのRCSを許容する、という選択肢もあるでしょう。

    空中給油機は高価なので、強襲揚陸艦や軽空母から離着陸可能な給油ポッドを備えた機体が出てくれば、F-35B採用国の軍事バランスを大きく変える機体になりそうです。
    今のところ、V-22の空中給油ポッドが検討されていますが、生産ラインの問題がありますね。
    ボーイングは胴体部改修と新造ができる新工場を8月に開設しましたが、主翼周りを担当するベル側も対応できるのかがポイントになりそうです

    • 匿名
    • 2019年 8月 29日

    日本に魔改造させてくんねぇかな。

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