カナダは英国に続きEUとの戦略的防衛・安全保障パートナーシップに署名、カナダ国営放送は「これは不確実な米国の依存や影響を減らすための第一歩だ」と、Politicoも「これはカナダの安全保障分野から米国を遠ざけることが目的だ」と報じ、カナダは欧州再軍備計画への参加に大きく近づいた。
参考:Canada signs deal deepening European defence and security partnership
参考:Canada signs defense pact with EU
最大の焦点は欧州再軍備計画に基づくSAFE計画=1,500億ユーロの融資にカナダがアクセスできるようにすること
カナダのカーニー首相も9日「カナダは冷戦時代から今日まで国際舞台で支配的な役割を果たしてきた米国と肩を並べてきたが、もはや米国の優位性は過去のものになった。現在の米国は覇権的地位を金銭獲得のため利用し始めており、米国市場へのアクセスに料金を課し、集団安全保障への相対的な貢献度も減らしつつある。世界は重大な転換点に差し掛かっており、カナダは自らの道を切り開く時が来た」と述べて「カナダ軍と装備品への投資、カナダ軍の能力向上、防衛産業の基盤強化、パートナーシップの多様化に資金を追加投資して2025会計年度内に2.0%を達成する」と発表。

出典:Mark Carney
さらに「追加投資の目的は国内の防衛産業を強化することで国防投資の3/4を米防衛産業に支払わなくて済むようにすることだ」「カナダ国内の製造業とサプライチェーンを優先する」「カナダ軍への武器供給は欧州再軍備計画に参加することで『信頼できる欧州のパートナー』によって多様化されるだろう」「カナダの国益に叶う場合にのみ米国とのパートナーシップを活用する」と述べ、欧州再軍備計画=ReArm Europe Planへの参加を予告していたが、カナダは英国に続きEUとの戦略的防衛・安全保障パートナーシップに署名したと23日に発表した。
このパートナーシップによって欧州再軍備計画の構成要素、各国の再軍備を後押しする1,500億ユーロの融資=Security Action for Europe計画に対する参加への道が開かれ、カナダは英国に続きEUとSAFE計画参加に関する二ヶ国協定について協議を始める予定だ。

出典:Photo by Sgt. Timothy Massey
欧州諸国にとってSAFE計画は「米国製システムを選択する理由の1つ=対外軍事融資基金」の代わりになる可能性が高く、カナダはSAFE計画に参加することで「有利な条件での資金調達」「欧州諸国が実施する共同調達への参加」「欧州再軍備計画、SAFE計画、共同調達へのカナダ企業参入」を確保でき、カナダ国営放送のCBCは「パートナーシップの締結によってカナダと欧州はより一層接近した」「カナダが欧州再軍備計画へ参加する道も開かれた」「これは不確実な米国の依存や影響を減らすための第一歩だ」「SAFE計画を通じて欧州諸国と防衛装備品を共同調達するのにも役立つ」と報じている。
Politicoも「このパートナーシップの目的はカナダの安全保障分野から米国を遠ざけることにある」「最大の焦点は欧州再軍備計画に基づくSAFE計画=1,500億ユーロの融資にカナダがアクセスできるようにすること」と報じており、同時に欧州企業も「カナダが予定している新型潜水艦、航空機、艦艇、戦闘車輌、大砲、海中と北極圏を監視するため新型レーダー、ドローン、センサーへの投資」で有利な立場を手にいれるはずだ。

出典:TKMS
因みに米防衛産業は欧州再軍備計画やSAFE計画に「域外サプライヤー」としての立場でしか関与できないため、1,500億ユーロの融資にフルアクセスするためにはEU域内で提携してくれる欧州企業を見つけるか、EU域内に拠点を置く欧州企業を買収するか、EU域内に現地法人を設立するしかなく、米防衛産業企業は欧州市場で生き残るため「完成した武器を買え」から「一緒にやろう」に立場を変更して必死の売り込みを行っている。
トランプ政権は欧州への財政支援プログラム=対外軍事融資基金の割り当て枠を大幅に減額したため、ポーランドのディフェンスメディア=Defence24は「米国製の武器システムは購入のための資金調達メカニズムが欠如しているため、ポーランドにとって優先事項ではなくなるかもしれない」と指摘しており、米防衛産業企業が欧州で生き残る最もシンプルな方法は「提携して欧州企業に技術移転を行い生産拠点を確保し、SAFE計画の対象として購入のための資金調達メカニズムを提供すること」で、どちらか一方が欠けても欧州市場から追い出されることになるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:EU





















戦力整備に力を入れ始めたのは大変結構なことだけど、どこで何をするのか
をハッキリさせないと意味不明な調達計画をやってしまう。
例えばカナダが潜水艦を買って何をするのか?
通常動力型潜水艦は非対称戦にも出番がある使い潰しの効く兵器とは言えない。
大国同士のホンモノの海戦じゃないと中々出番は無い。
じゃあ例えばロシアとそういう戦闘をすることを想定しているのか?
確かにNATOがロシアと戦うことになった際は潜水艦があった方がいいだろう。
でもカナダに本当にその事態を想定したシナリオがあって調達計画を建ててる
訳じゃないと思う。
NATOにはロシアと戦えるだけの潜水艦が一応あるし、さらに強化する必要が
あるとして特にカナダに埋めてもらう蓋然性は無い。
カナダがやってるのは何となく強い海軍を作ろう、だから潜水艦も欲しい、
みたいな気楽なノリに見える。
要するに戦略がないんだよね、アメリカに依存しないって言ってみてもアメリカの
周辺国でしかないという事実は変わらないし、じゃあその中で何を脅威と想定して
どう戦うのかがカナダ自身で良く分かってないように思う。
カナダ政府や軍が、投稿主のような部外者に戦略を説明する必要は無い。
だから、投稿主が知らないだけでカナダに戦略が無いとは断言できないハズだ。
いや、北極海でロシアに睨み効かせるんなら潜水艦しかなくない?
現状米国以外に北極海に進出できる西側としてはカナダしかないんだから、そこに疑問は持たなかったな
カナダはNATOに入ってるのがデカいよね
防衛協力の敷居がそもそも低い
トランプの米国ファーストが米軍事産業の枷になってるのは間違いないようだが、産業界からの反発とかはどう対処するんだろうね
ゴリ押しで対処できる規模では無いと思うが
軍需産業どころか米国の産業界にダメージのある政策してるんやで。
トランプが気にするのは株価と国債利率と支持者の声だけじゃないかな…
我が国もEU市場で一儲けできないものかしらん
米国に併合とまで言われたカナダの立場じゃ例え一時的な世迷言と分かってても「もうEU頼ります」って言うしかないが、ぶっちゃけ日本視点じゃEUの方がよっぽど信頼ならない相手なので……
(単純にEUがアジアに関わるメリットがあまり無い、加盟国多すぎて意思決定が曖昧、俺ルールゴリ押してくる、そもそも日本が望む生産力が足りてない…etc)