カナダ陸軍は長距離精密攻撃能力を取得するため多連装ロケットシステムを24輌、間接射撃を近代化するため自走砲を80輌~100輌、120mm迫撃砲搭載車輌を最大99輌、81mm迫撃砲搭載車輌を最大85輌調達する予定で、この調達において非米国製システムが重要になるかもしれない。
参考:Future Artillery 2025: Canada takes layered approach to fires modernisation
どちらに転がっても不思議はないが、とにかくカナダにとって重要なのは「非米国製システム」という点だろう
カナダのカーニー首相は選挙期間中「我々は主権に対する米国の脅威に備えなければならない。米国は我々の土地、資源、水、そして我々の国を狙っているのだ。彼らは我々を支配するためカナダを壊そうとしている。そうさせないためには現実を認識し、もっと努力する必要が、この新たな現実に対応した計画が必要だ」「自由党が政権を獲得すれば2030年までに(GDPに占める国防支出の割合)2%を達成する」と述べ、選挙公約の中でも新型潜水艦、大型砕氷船、無人航空機、水中無人機、カナダ製の空中早期警戒機、自走砲、地上配備型防空システムの取得に言及。
さらにカナダメディアのOttawa Citizenは「トランプ政権の脅威にも関わらずカナダ軍はHIMARS購入を希望している」「匿名の関係者は『カナダ軍上層部は米国の脅威とリスクを軽視している』と述べた」と、国営放送も「韓国が200億加ドル以上の防衛装備品に関する取引を提案してきた」と報じ、米国のディフェンスメディアも「カナダとの不透明な関係が続く中でカナダ市場へのアクセスを失うのではない」と心配していたが、遂にカナダ軍が投射火力の近代化に関する概要を公開した。
ロンドンで開催されたFuture Artillery 2025でカナダ軍は「射程100km以上の長距離精密攻撃と最大射程50kmまでの間接射撃に関する近代化の要件」を明かし、長距離精密攻撃については「今後6ヶ月以内に多連装ロケットシステム(24輌)調達に関する決定が下される見込み」と、最大射程50kmまでの間接射撃については「155mm榴弾砲を搭載した自走砲を80輌~100輌、120mm迫撃砲を搭載した戦闘支援車輌を最大99輌、81mm迫撃砲を搭載した軽戦術車輌を最大85輌、弾薬、支援、射撃統制システム、インフラ、訓練を含むパッケージを求めている」と述べている。

出典:U.S. Army Photo by Sgt. Cody Nelson Switchblade600の発射準備
徘徊型弾薬の調達についても「Switchblade300/600を予定している」と明かし、これは2025年2月に当時のブレア国防相が「Operation ReassuranceとNATOの東欧方面強化への継続的なコミットメントを支援するため、Switchblade300/600を取得しラトビアに配備する契約(6,700万ドル)を締結した」と発言していることに関連し、さらに砲兵部隊の強化についても「大砲の数を1個大隊あたり8門から18門に増強し、榴弾砲の口径を39口径から52口径に変更し、これに使用する弾薬についても国内供給を求めている」と述べた。
要するにカナダ軍は多連装ロケットシステムを取得することで長距離精密攻撃能力を獲得し、牽引式の榴弾砲=M777や旧式の81mm迫撃砲=L16を自走化、榴弾砲は52口径に変更、迫撃砲は81mmに加えて120mmを追加し、特に155mm榴弾砲の数を約3倍に引き上げるという意味で、徘徊型弾薬についてはOperation Reassuranceの一環としてラトビアに駐留している部隊向けにSwitchblade300/600を調達したものの、対米関係の不透明さや徘徊型弾薬には多くの選択肢があるため、今後もSwitchblade300/600を継続調達するは不明だ。

出典:Hanwha Aerospace
カーニー首相は「7月1日までに欧州再軍備計画への正式参加に署名し、武器や弾薬の米国依存を削減する第一歩を踏み出したい」「国防支出1ドルにつき75セントも米国に支払うのは懸命ではない」と述べ、最近の対米関係に対する世論を加味すれば、これらの装備品を米防衛産業から取得する可能性は限りなく低い。
そのため参加する欧州再軍備計画を活用して欧州諸国との共同調達か、技術移転と現地生産に積極的な韓国かのどちらかになるはずで、カナダは自国と欧州での運用を考えているため欧州調達の可能性が高いと思われるものの、韓国製の多連装ロケットシステムや自走砲はNATO加盟国の一部も導入し、K9についてはポーランドとの共同生産分があるので欧州再軍備計画の調達対象に含まれる可能性もあり、どちらに転がっても不思議はないが、とにかくカナダにとって重要なのは「非米国製システム」という点だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Public domain
カナダが、さらに本気なのであれば、大西洋を越えて独力で運ぶ能力も大事とになります。
カナダ海軍は貧弱ですから、海軍大増強にも踏み切っていくのかな?と少し注目しています。
日本目線で考えれば、日本は冷戦終結により重要性が低下した中で、経済的脅威として風当たりが強くなりましたからね。
アメリカが、NATO諸国・他国とギスギスすれば、日米関係は安定しているため日本の重要性が相対的に上がっていくのかなと遠目に見ています。
陸地つながりは長い間友好国だったアメリカなので陸軍が弱いのはわかりますが、海軍、空軍も…は駄目でしょう。
どれだけアメリカにおんぶ抱っこだったのかですよね。
そんなにアメリカとすぐに別れようとしなくても、陸軍はとりあえず置いておいて、空海じゃないのか…
海軍の輸送能力まで手が回るんですかね…
まさに仰る通りで、カナダどこまでやる気なんでしょうかね…
対中国において、日本=中国が天秤にかけられて、欧州諸国の行動に苦渋を舐めることが続いてきました。
アメリカ=カナダが天秤にかけられたら時に、100%カナダをとると言い切れる国が、(長い目で見て)どの程度あるのかなというのも少し気になっています。
カナダの気持ちは分かるのですが、(長くない)老人相手なうえに中間選挙次第なわけでから、程々で上手くやって欲しいなと。
ほんとそうですよね。トランプ大統領相手なら噛みついても後任に「トランプ大統領だったから」と言ったら許してもらえそうな気がします…
国内向けにポーズだけ取って、軍再編は北極挟んだ対ロ用に空海軍に注力したほうが良さそう。
…太平洋側に日本と海軍用ドック整備しませんか(笑)
それ素晴らしいですね。
カナダさん、日本のもがみ型・潜水艦、是非買いましょう!
>>大砲の数を1個大隊あたり8門から18門に増強し
カナダ砲兵貧弱すぎんか…?1個中隊4門で、2個中隊で1大隊ってコト?んなアホな。これまでどれだけ軍備をサボってきたんだ。
砲数倍増って喧伝してるけど、1大隊18門っていたって普通でしょ。1中隊6門で、3個中隊で1大隊って極々標準的な砲兵大隊ですよ。自衛隊も韓国軍もそうですし。
1個砲兵小隊あたり3門、2個小隊で1個中隊、3個中隊で1個連隊って編成と出てきますね
つまり1個旅団ごとに18門で、これはアメリカの旅団戦闘団と同じ砲戦力だと思います
というか現状カナダに砲兵大隊の編成はないようですが、新設予定の定数からさらに倍増させるということなんでしょうかね?
陸自よりトータルで見た装備の内容は酷いって話もあるから・・。ドイツ連邦軍と同じでこれからまともにして行くって話でしょう、長年のツケを払う時が来ただけで将来を見据えた素晴らしい装備を導入してもらいたい物。
サボってきた←日本の27倍の面積で人口は4000万人と関東地方以下、GDPは東京都とどっこいどっこい
国力にしたら充分頑張ってる方でしょう
52口径長の155mm榴弾砲はどうするのかな。
米国はM109の更新に失敗し続けているし、米国製は該当なしかな。
英国はスウェーデン/ドイツ製となりそうだし。
とすると、フランス、ドイツ、スウェーデン、ウクライナ?製から選ぶのかな。
自走榴弾砲なら、世界が認めた韓国の K9があるじゃないか。
全くの想像になりますが。
”7月1日までに欧州再軍備計画への正式参加に署名し、”
と記事の中にあるので。
これは、欧州製品を優先するのでは?、と予想します。
既に調達されたものは甥は除いて。
欧州が何を考えているか、様子は見ないといけませんが。
非米国製を選択とあるが、カナダ陸軍は今までも米国製以外の兵器いろいろ使ってたし特筆すべき話か?って感じなんだが…
予算と納期と戦力化支援能力を考えればドローン以外は韓国に発注するのが現実的ですね
ドローンはウクライナ設計のシステムをライセンス生産するのがよろしいでしょう
カナダは独立維持の為に中国製兵器を買う事があるかもしれない。と言うか2%では足りないでしょう
このタイミングで陸軍近代化のニュースが来るとアメリカを仮想敵国化するつもりかと思っちゃうわ
迫撃砲だけど、24式を売り込めないかな?
迫撃砲本体も欧州製(フランス製)だし、良い感じに競争できる気もするんだけど。