カナダのカーニー首相は対米関係の悪化を受けて「F-35A購入見直し」を指示し、カナダ国防省も「2025年夏までに見直しが完了する」と述べていたが、カナダ会計検査院は10日「F-35A導入コストが190億加ドルから277億加ドルに増加している」と報告して注目を集めている。
参考:2025 Spring Reports of the Auditor General of Canada
参考:F-35 program facing skyrocketing costs, pilot shortage and infrastructure deficit: AG report
参考:Statement by the Minister of National Defence in response to the Auditor General of Canada’s report on Delivering Canada’s Future Fighter Jet Capability
今回の会計検査は「F-35A購入見直し」を直接的を狙ったものではないが、プログラムコストの大幅な上昇はF-35A導入に対するネガティブなイメージを強化する
カナダのカーニー首相は対米関係の悪化を受けて「F-35A購入見直し」を指示し、10日に「防衛と安全保障上の優先事項」を発表した中でも「我々が法的に購入を約束しているのは最初の16機のみだ」と強調、Defense Newsの取材にカナダ国防省の報道官も「F-35A購入見直しは依然して進行中だ」「この見直しは2025年夏までに完了する予定だ」と回答していたが、カナダ会計検査院は10日に発表した会計検査報告書の中で「F-35A導入計画が大幅なコスト超過に直面している」と指摘して注目を集めている。

出典:2025 Spring Reports of the Auditor General of Canada
カナダは2022年3月「CF-18A/B後継機選定プログラム=FFCPの勝者にLockheed MartinのF-35Aを選定した」と発表、同年12月に88機の調達契約を締結して「FFCPのプログラムコストは190億加ドルだ」と発表していたが、会計検査院は「2022年に発表されたプログラムコストは2019年に収集された古いデータに基づいて策定されたもので、インフレ率の上昇、為替レートの変動、世界的な防衛装備品に対する需要増など最新のデータに基づくと機体の取得コストが大幅に上昇しており、プログラムコストは190億加ドルから277億加ドルに増加した」と指摘。
さらに「FFCPの構成要素として定義された範囲には完全運用状態を達成するな要素が幾つか抜けている」「関連要素には将来戦闘機のための基地整備計画が含まれているが後継機選定前に開始されていたため、勝者が選定されると想定以上のインフラ整備が必要になると判明してコストが増加した」「FFCPのプログラムコストには必要な全ての武器調達が含まれていない」「完全運用状態を達成するため必要な武器の一部のみを調達する計画だった」「そのため完全運用状態を達成するには277億加ドルとは別に55億加ドルが必要になる」と指摘し、国防省はF-35A導入に関する全ての計画を策定できていないと結論付けている。

出典:2025 Spring Reports of the Auditor General of Canada
但し、会計検査院はコスト増加の原因に「2022年12月時点で全ての情報を入手する困難さ」「FFCPとは直接関係がない外部要因によるコスト上昇」などを挙げているため、国防省が意図的に「見積もり額を小さく見せようとした」というわけではなく、今回の会計検査も定期的に行われているものなので「F-35A購入見直し」を直接的を狙ったものではないが、プログラムコストの大幅な上昇はF-35A導入に対するネガティブなイメージを強化し、対米関係の悪化を受けて国内で高まる「F-35A導入を拒否する声」をさらに増幅させるかもしれない。
因みに現在の為替レートで計算するとFFCPのプログラムコストは2兆円から2.9兆円に、完全運用状態を達成するための全要素を加えると3.5兆円になり、導入から運用期間を終えて廃棄までにかかる全費用を88機で割ると1機あたりのライフサイクルコストは397億円になり、機体価格が100億円と仮定すると関連費用297億円となるため「戦闘機導入には機体価格の2倍~3倍の費用がかかる」という大雑把な常識の範囲内収まる格好だが、完全運用状態の定義は導入国によって異なるためライフサイクルコストも一律ではないことに注意する必要がある。
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※アイキャッチ画像の出典:2025 Spring Reports of the Auditor General of Canada
F-35は、なんだかよく分からない事になってますね。
ロッキードマーチンが、A4サイズ1枚・A3サイズ1枚くらいで、導入国の国民が一目で分かるようなものを出すべきと思います。
アメリカの威光でやってるだけで、納期・品質をまもとに担保できてないわけですから、製造業として杜撰なのではないかなと思う面があります。
たかだかA3にまとめられる程単純な物ではないと思いますけどね。どの位の頻度で更新して提示するんですか?それともその時の目安だけで良いんですか?
インフレとか為替レートなんて月レベルでも相応の変動するし、中国のレアアース輸出制限や原油高や半導体不足のような降って湧いた要因とかも考慮しながら価格提示しろってのは無理でしょう。
何もしないよりはマシですよ。
超大手企業が、月次売上を出すような時代なんですから、1製品は大げさなものでもありません。
インフレは消費者物価指数、為替は期中のドル表記・降って湧いた要因を注記にまとめるなんかよくある話しです。
むしろ、インフレや為替で説明できる範囲ならば簡単なので、ロッキードにとっては非常にポジティブです。
F35製造遅延の間に、代替機の整備コストがなどが上昇するわけですから、F353単体だけで見るならば甘いくらいと思いますよ。
そもそもカナダにF-35なんていらないだろう…いつ使うの?って話で。
実戦を見る限り制空権を決定するのは戦闘機の空中戦ではなく
SAMの配置なので、防空だけ考えるなら戦闘機は不要。
敵地に侵攻する、つまり敵SAMを積極的に排除する必要がある戦力投射
においてのみ戦闘機の必要性が出てくる…もちろんSAM対戦闘機の勝負は
大分戦闘機側に分が悪いので圧倒的格上が格下にやる作戦になる。
もちろんカナダにそんな可能性はないのでF-35なんていらない。
すっごい悲しい事実をお伝えしよう。カナダ軍に地上配備型のSAMはない。NATOに拠出したラトビア派遣部隊にスウェーデン製のMANPADSがあるだけです。
2012年までは対戦車/対空兼用のADATS短SAMがありましたけど、それが引退して以来カナダ軍は地上配備型の防空システムを持ってません。
ステルス不要論の次は戦闘機不要論ですか…
防衛側は戦場を選べず、地上SAMでは展開力に限界があるし、展開力のある洋上SAMは隠れる場所がなくどうしてもユニットが大きくなり対艦ミサイルや魚雷(あるいはそれらに近いUA/S/UV)に実質的に脆弱になります(100発に1発の迎撃漏れでも被害が甚大なので)。
それらの攻撃を遠ざけるためにはAEW機やMPA等の支援が必要で、それらの護衛には戦闘機が必要になります。
国土が狭くSAMと対空センサーを配置し易い台湾の特異な選択を一般化するのは無理があるでしょう。
というか何でわざわざ「航空万能論」で無理筋な「戦闘機不要論」を強引に主張するのか理解に苦しみますが…
題5、6世代機のお値段比較を見てみたいですね。
GCAPはおいくらになるのかしら、まあ100億円は超えるんでしょうけど。
確か、試算だとGCAPは機体単価は200億円は超えるとなってましたね。F-22も機体単価165億円前後、導入費一機あたり500億円近くとかなり高かったですが。
「試算」と呼べるほど根拠に基づいた数字ってありましたっけ?
せいぜいF-22やF-35からの雑な(というより結論ありきの)「類推」くらいしかないよーな。
てかエアフレームに関してはCFRTPメインだと仮定すると前例がなくて類推すら困難なので外野の出してくる数字にほぼ意味はないと思いますね。
米国の威光をバックにロッキードが殿様商売しすぎましたかね
F-35Aを止める場合は代用は何になるんだろ?
ユーロファイターかラファール辺り?
コストだけならF-16Vか、F-15EXもありなのかな
コスト的にはグリペン割とありだと思います。どうせ10年位したら熱が冷めてるでしょうし
グリペンは宗主国英国の影響も強いが米国との影響も強いから
米国にいや消さしている現在だとラファールにいった方が安全とは考えそう。
これいつだかの記事に書いた記憶があるけど、インフレとか為替考慮するとロッキード・マーティンは割と順調に維持費削減出来てたはず
カナダはライフルコストを甘く見ているところあるので今更そんなこと言ってるの?みたいな面もあるよね。
最近のライフルはそんなにお高いのかあるいは今時そんなに山ほどライフルを買うのか…