北米/南米関連

カナダメディアの戦場レポ、ロシア軍は無人機から隠れるのが上手くなった

激しい戦いが続くバフムートへの立ち入りが許可されたカナダのCBCは「市民生活が失われた街を救うためウクライナ軍が奮闘している」と報じており、取材に応じた兵士は「戦いを通じてロシア軍の戦い方が進化している」と証言した。

参考:In Ukraine’s ‘fortress,’ soldiers struggle to save a city almost empty of life

敵の変化に素早く対応していく柔軟性こそが戦場で生き残るカギなのだろう

ゼレンスキー大統領が「要塞だ」と表現するウクライナ東部のバフムートは石炭が豊富で7万人以上が暮らしていた地方都市で、戦闘が激しくなると殆どの住民が数百km離れたドニプロ市に逃げ出してしまったが、現在も街から離れることを拒否する住民(戦前の1%以下=700人以下)が残っているらしい。

出典:Сухопутні війська ЗС України バフムートに残る民間人

カナダのCBCはバフムートで戦うウクライナ国家親衛隊への取材が許可され、この兵士達は「川の向こう側は敵の砲撃で完全な廃墟になり焼け野原になった。ロシア軍は戦術を変更して戦車や装甲車輌の支援なしで攻撃を仕掛けてくることが多くなっており、以前は20人規模のグループで陣地を強襲してきたが現在の攻撃方法は全く異なる。ロシア軍は戦力を5人程度の小グループに分散することで無人機の監視から隠れるのが上手くなり、闇夜を利用して静かに忍び寄って陣地を奪おうとしてくる」と述べている。

さらにロシア軍は大砲の照準調整も大幅に改善してきたたためCBCは「ウクライナ人にとって不吉な兆候だ」と指摘しているが、取材に応じた兵士は「連中も戦闘を通じて学習しているので我々も対抗する方法を学び、敵を打ち負かす方法を見つけることが非常に重要だ」と述べており、敵の変化に素早く対応していく柔軟性こそが戦場で生き残るカギなのだろう。

出典:Сухопутні війська ЗС України 英国で基本的な応急措置を学ぶウクライナ人兵士

この兵士は「カナダが教えてくれた救急医療技術が戦線維持に大きく役立っている。戦場で負傷した兵士を適切な技術で治療できたため多くの命を救えたと断言できる。ロシア側には同じ技術がないので血の海につながった。ロシア軍は負傷した兵士を死に追いやるだけで狂気の沙汰としか言いようがない」とも述べており、元特殊部隊の司令官も「カナダや西側諸国が実施してくれた訓練は戦場で負傷者の命を救うの役立っているが、これはウクライナ人のモチベーションを高めるのにも一役買っている」と言及しているのが興味深い。

関連記事:ロシア軍が国境付近に航空戦力を集結中、ウクライナへの防空システム供給が急務
関連記事:露軍元大佐、ウクライナとの戦争をクレムリンは成り行きと偶然に任せている

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України バフムートで戦うウクライナ軍兵士

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コメント

    • TA
    • 2023年 2月 15日

    米軍が人命救助に力を入れているのは伊達や見栄えなどではなく組織の維持に絶対必要なのが分かってるからだろうな
    求心力が瞬時に溶けてしまう

    64
    •  
    • 2023年 2月 15日

    暗視機能のあるドローン普及が必要なのかな?
    冬の戦地でどこまで効果があるかわからないけども、春に向けてその価値は上がっていくかもね

    8
      • 名無し三等兵
      • 2023年 2月 16日

      既に市販品でも暗視カメラを搭載したドローンあります。
      ただどれだけ搭載カメラの性能を上げたところで、こんなのは
      果てしないイタチごっこになるだけです。

      1
    • もり
    • 2023年 2月 15日

    柔軟性、自衛隊が最も苦手とする言葉です

    コンバットメディック、自衛隊が30年遅れてる分野です

    43
      • ネコ歩き
      • 2023年 2月 15日

      かなり前ですが、陸自普通科が米陸軍から対ゲリコマ市街戦の指導を受ける様子がTV番組で紹介されたことがありました。
      交戦中のシチュエーションで陸自指揮官(恐らく小隊長)が拳を突き上げて号令をかけ、米軍教官から部隊をも危険に晒す自殺行為だと指摘されてましたね。陸自の指揮マニュアルは演習用なのだなと暗澹たる気分になったのを覚えています。
      現在は米軍の指導や国債共同訓練参加で改善されていることを願うばかりですが。

      38
        • 774rr
        • 2023年 2月 16日

        ??
        指導を受けられたなら 実戦でやらかす前で良かったねにならへんか。。。?

        12
        • NHG
        • 2023年 2月 16日

        実は海保の特殊部隊も同じだった

        海外の特殊部隊員「君たち、なんで突入と同時に撃たれたか分かる?」
        海保の特殊部隊員「・・・?」
        海外の特殊部隊員「肩の無線使わず大声出すからだよ」

        って言われてて見てるこっちが恥ずかしくなった
        陸自の負傷者の救命訓練も去年あたりから実践的なものになったそうなので、いざ有事となった場合に被害を最小にできる組織になっていてほしいところ

        10
        • kitty
        • 2023年 2月 16日

        警察でもSATの初殉職が後方支援の隊員が流れ弾の拳銃弾で…というのが、当時お気の毒とは思いながらも「アイエエナンデ?!」と思いました。

        • 2023年 2月 16日

        TVで流されたのなら演出では?
        かなり前というのがどれくらい前かは知りませんが、陸自は冷戦時の仮想敵はソ連だったんですから、そんなステレオタイプな旧日本軍な事は無いかと。
        大戦時ですら万歳突撃なんて玉砕時くらいしかやってませんよ。

          • もり
          • 2023年 2月 16日

          ついこの間まで地雷は踏んで確認しか出来ない部隊だらけ(つーか今でも)なのが陸自なんだよなぁ…
          演習の為の技能しか磨いてない部隊が殆どなので
          かの連隊長の本は面白いぞ

          3
          • nachteule
          • 2023年 2月 17日

           正直な所、上に立つ人間次第で内容が変わっちゃうんで今の自衛隊がどうなっているかわかんないけど、演習時なんて死亡判定されたやつが何時間か後に復活出来るんでそれを前提に命を投げ捨てるような任務遂行するからメチャクチャなんだよな。平時に訓練しないで実戦でうまく行くなら誰も苦労せんわ。

           もちろん理由はあって死亡したままだと貴重な訓練を経験出来ないのはおかしいだろうって話だが、それが何で復活前提の特攻になるのかが分からん。

           実際に実戦想定した訓練してないからタクティカルライトは闇夜に提灯とか、特別秀でた技能を持つやつがいるから高価な装備は必要ない(そいつが抜けたら大きな戦力減)とか言って隊員全体を戦闘力向上させる意欲が無いのには戦慄さえ覚える。

           装備だけあらかた変更された旧軍と言っても言い過ぎじゃないと思う。

          1
  1. コンバットメディックか…
    自衛隊は個人装備こそ最近では良くなったけどNHKの番組では法整備が全く無くて助かる命も助からない可能性があるから、有事の時は超法規的措置をすることを匂わせてたけど大丈夫なのかな?おまけに自衛隊は周波数とか超法規的措置を取らないの戦えない問題が多すぎるような気がするんだけど…

    19
      • ネコ歩き
      • 2023年 2月 16日

      防衛省は部外有識者による「第一線救護における適確な救命に関する検討会」の検討報告(平成28年)を受け、有事の際に医師に代わり緊急救命行為を行える「第一線救護衛生員」の養成課程を設けています。
      現時点では有事限定の超法規的資格のようですが、準看護師と救急救命士の資格を取得する必要があるようです。
      整備規模等詳細は知りません。

      7
        • kitty
        • 2023年 2月 16日

        >準看護師と救急救命士の資格を取得する必要

        自衛隊には准看護師学校がありますが、その出身者が最前線に出るかどうかは疑問…。
        生食輸液・昇圧剤注射くらいは、西側水準の衛生兵養成課程程度の資格でやらせるべきなんでしょうが、検討会の報告でも自衛隊には3年制の学校を出た者以外に有資格者がいないというのが問題と書いてありましたが、なにか改善したんでしょうかねえ。

        1
          • ネコ歩き
          • 2023年 2月 16日

          防衛白書に簡単にですが解説されてます。
          例えば令和2年度版ですと、
          第Ⅳ部>第4章>第2節 衛生機能の強化
          >➎ 戦傷医療対処能力の向上
          >(略)
          >第一線救護能力の向上については、准看護師かつ救急救命士の資格を有する隊員が、第一線において負傷した隊員を自衛隊病院などに後送される前の現場において専門的な救護処置(6)を実施できるようにするため、平成29(2017)年度から当該資格を有する隊員に対して、必要な知識・技能を身につけさせるための教育・訓練を実施している。また、この教育訓練課程を修了した隊員を第一線救護衛生員として指定し、部隊へ配置するとともに、令和元(2019)年度から第一線救護衛生員に対して、救護処置に必要な知識・技能を維持するための教育・訓練を開始した。
          >(略)
          >(6)負傷により気道閉塞や緊張性気胸の症状などとなった者に対する救護処置や、痛みを緩和するための鎮痛剤の投与などの処置

          法救急救命士も気道閉塞や緊張性気胸等の緊急救命処置は医師の監督状況下でないと法制上実施できません。平時には第一線救護衛生員も原則これに従うはずです。
          有事下の最前線では医官の指示を仰いでいられない状況を考慮し、第一線救護衛生員の独自判断による緊急救命処置を超法規的に認めるのだと思います。

            • kitty
            • 2023年 2月 16日

            私が危惧しているのは、そういう「前線」のレベルではなくて、本当に銃弾が頭上を飛び交っているような「状況」に貴重な「准看護師かつ救急救命士の資格を有する隊員」を出すとは思えないと言うことなんですよ。
            欧米の部隊では、まず該当する部隊の兵士の能力がある前提の人間に数十週の訓練で衛生科の限定された能力を付与しています。
            もちろん、自衛隊にも准看護師資格とレンジャー資格を両方持ってるような超人もいるでしょうけど、極めて例外でしょう。

            5
              • ネコ歩き
              • 2023年 2月 16日

              基本的に、自衛隊看護師は配属後定期的に射撃訓練と戦闘訓練を受けています。第一線救護衛生員も当然受けているものと思います。
              技官看護師は有事や災害派遣時にも部隊に同行することはない後方勤務(自衛隊病院、駐屯地医務室等)で、射撃等の訓練はありません。

              前線での活動を想定した一期生集合訓練中の画像(個人ブログでしたので割愛)がありましたが、戦傷者は普通科隊員により最前線からやや後方の小屋に’(引きずって)搬送され、そこで第一線救護衛生員が救急処置を行っていました。
              自衛隊も色々考えているようですよ。

                • ネコ歩き
                • 2023年 2月 16日

                (訂正)
                自衛隊看護師→自衛官看護師

                自衛隊看護師は自衛官看護師と技官看護師の総称です。

                • kitty
                • 2023年 2月 17日

                おそらく想定しているものに相違はないと思うのですが、あくまで「米国海兵隊はコックまでライフル射手だ」程度の話だと思うのです。

                >戦傷者は普通科隊員により最前線からやや後方の小屋に’(引きずって)搬送され、そこで第一線救護衛生員が救急処置を行っていました。

                想定している戦場がやはり防衛戦なんですね…。

                1
  2. コンバットメディックか…
    自衛隊は個人装備こそ最近では良くなったけどNHKの番組では法整備が全く無くて助かる命も助からない可能性があるから、有事の時は超法規的措置をすることを匂わせてたけど大丈夫なのかな?おまけに自衛隊は周波数とか超法規的措置を取らないの戦えない問題が多すぎるような気がするんだけど…

    • あああ
    • 2023年 2月 16日

    戦勝国の核保有国が格下の隣国相手にいつぞやかの旧帝国陸軍みたいな事してんの草だけど、航空優勢無しで陸戦重装備が消耗して塹壕戦にもつれ込んだ所に無人機視察の常態化が加わると旧軍っぽいので大正解になっちゃうんやろね。
    必ず格上相手が想定で夜間徒歩接敵でしか攻撃できない本邦の普通科を全く笑えないけど一切着剣しないの銃弾薬こそは潤沢だからかね。これが本邦みたく攻撃繰り返す弾薬は無いって着剣し始めたら本当の最後なのでは。いやモチベ的に着剣=投降かな。

    5
    • ミリ猫
    • 2023年 2月 16日

    今日のウクライナプラウダ紙によれば
    レズニコフ国防大臣は留任が決まったそうです。 

    ただでさえ汚職公務員のパージで人手が足りないところに
    レズニコフ氏のような有能な官僚の罷免はありえないと思っていました。

    確かにウクライナもロシア同様、汚職がはびこっていましたが、
    それを認めて公表し、改善しようとしている姿勢は評価できると思います。

    9
      • 名無しさん
      • 2023年 2月 16日

      報道を見る限りではレズニコフ大臣が汚職に関わっていた証拠はなかったですからね。
      責任問題だったのだと思いますが、平時なら兎も角、有事に有能な人間を失うのは痛手です。
      彼の立場を守れるほどにはゼレンスキー大統領の求心力を維持できていることもわかり、ひとまずは胸をなでおろす結果になったようです。

      13
  3. 本ブログ昨年10月頃の「動員されたロシア人に配られるマニュアル、不思議な記述がいっぱい」という記事で流出した動員兵向けマニュアルが紹介されてましたが、コメント欄で
    「小集団でも4~6歩間隔で一列ずつ移動すれば、偵察用ドローンのオペレーターの興味を引き、砲撃が行われることは間違いない。このような被弾を避けるために、アフガニスタンのムジャヒディンは最大100〜150メートルの間隔で2人組で移動した。二人組は分隊や小隊ほど目立たず、砲兵の目標としてはあまり興味がない。」
    という記述もあると指摘してくれた方が居たのを思い出しました。
    (「指揮官はGPSや予備バッテリー、双眼鏡や暗視装置を自腹で買え」などの破茶滅茶な部分のほうが悪目立ちしてましたが)
    「ドローンのある戦場では可能な限りバラけろ」というのは今では新兵でも知っている「戦場の常識」になってそうです。

    11
      • 暇人28万号
      • 2023年 2月 16日

      イスラム過激派側の対ドローンマニュアルが、距離を空けて行動しろとか、必ず出入り口は2ヶ所以上確保して行動しろ、緊急時はガラス片を撒いて赤外線を誤魔化せみたいなタフなアナログ対応が書いてあって似たものを感じますな

      5
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