北米/南米関連

カナダ空軍の戦闘機「CF-18A/B」後継機選定に再び遅れ、ボーイング脱落の危機?

カナダが進めている戦闘機CF-18A/B(F/A-18A/B)の後継機選定プログラムはボーイングを切って先に進むのか、再び延期して結論を先送りするのかの岐路に立たされる。

もう時間が残されていない?カナダの戦闘機CF-18A/Bの後継機選定問題

現カナダ首相で自由党党首であるトルドー氏がF-35A導入撤回を掲げ選挙に勝利した結果、カナダ空軍の戦闘機CF-18A/B後継機問題は白紙化され迷走が続いていたが、昨年7月にカナダ政府が戦闘機CF-18A/B後継機選定プログラムに関する提案依頼書(RFP)を発行したことで後継機種選定プログラムがようやく動き出したかに見えた。

同プログラムがスケジュール通り進んでいれば今年3月末までに参加希望企業から提案書類を受け取り、正式に後継機種の選定が開始されていたのだが一向に開始される気配がない。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Kaysee Lohmann

当初、カナダ空軍の戦闘機CF-18A/B後継機にロッキード・マーティンのF-35A、ボーイングのF/A-18E/F、エアバスのタイフーン、ダッソーのラファール、サーブのグリペンEが名乗りを挙げたが、カナダ政府が発行した提案依頼書を見たエアバスとダッソーは「この選定プログラムは不公平過ぎる(※1)」と言って即座に撤退を決定してしまった。

※1補足:カナダは米国と共同でNORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)を運用をしているためCF-18A/Bの後継機は米軍の戦闘管理システムにアクセスする能力が求められており、タイフーンやラファールがこれに対応するには少なくない手間と費用が必要になる。逆にF-35AやF/A-18E/Fには追加作業が発生しないため後継機種選定の基準が米国製戦闘機に有利なように出来ていると言う意味だ。因みに

結局、CF-18A/B後継機選定プログラムはF-35A、F/A-18E/F、グリペンEの3機種で争われることになったのだが、残念ながら同プログラムのスケジュールは最初から破綻している。

予定では今年3月末までにカナダ政府は提案書類を受け取って正式に後継機の選定作業に取り掛かる予定だったのだが、グリペンEを提案するサーブが3月末までに提案書類の準備が間に合わないと言い出し6月末に提出期限を延長することになったのだが、今後は新型コロナウイルス(COVID-19)対応で手一杯のボーイングが6月末に間に合わないと言い出したため再び提出期限を延長するのか、ボーイングを切るのか注目されている。

出典:Public Domain F-35A

因みにロッキード・マーティンとサーブは6月末の提出期限に「間に合う」と言っているのでボーイングを切り捨てても後継機選定プログラムは成立するが、今回の後継機選定基準は著しく米軍採用機有利に出来ているため、F/A-18E/Fが脱落すれば事実上F-35A勝利が確定してしまう。

しかしカナダも新型コロナウイルスの影響を受けているため6月末に全ての提案書が揃っても選定作業が進められなければ意味がなく、もしかしたらボーイングの要請に基づいて提出期限を再延期するかもしれない。

ただ提出期限の延期を繰り返せば結論も先送りさせることになるため、1982年~1988年に調達され運用期間が30年を超えたCF-18A/Bの維持が更に難しくなる。すでに同機の保守部品を新規に入手することは困難なので、カナダはCF-18A/Bの運用を維持するためオーストラリア空軍が退役させるF/A-18A/Bを部品取りの名目で23機取得する予定だ。

すでに運用の限界に達しているCF-18A/Bを早く退役させるためにも後継機選定作業を急がなければならないのに、再びここで躓けばCF-18A/Bの方が先にリングアウトしてしまうかもしれない。

そうなれば一体誰が北米の空を守るのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain カナダ空軍のCF-18A

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    カナダなら双発望みそうだけど選択肢がな・・・
    何だかんだでF35が無難だとは思うが

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    カナダは米国製は採用しないよ。

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    スパホは生産が終ってしまうしグリペンだとNORADとの接続が云々となるので現実的にF-35しかないけど、そうなるとF-35開発参加国に名を連ねながらこれを卓袱台返ししたトルドー首相の面子は丸潰れでもう一悶着起きないわけにはいかないだろう。
    豪海軍の潜水艦共々傍で見てる分には楽しい話題だねw

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      F-35を選ばないとF-35部品の国内生産が取り上げられ航空産業が大打撃を被るのでそもそもそれ以外の選択肢はなかったのにな
      カナダ空軍がトルドーに振り回されただけで終わりそう

      1
    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    双発で同じように双尾翼の機体なのにF/A18はF-14に比べて、どうにもデザインにまとまりがない気がする。

      • 匿名
      • 2020年 5月 02日

      強引に巨大化させたせいですかねぇ。
      実物見たとき結構巨大なのでびっくりした記憶が…。

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    素直にFA-18E/F/Gを買えば良いだけ。
    迷うことはない。

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    ドイツがFA-18E/Fを買うや買わんやと言い出してるので、便乗でスパホ買うのでもいいのでない?そんなにF-35が嫌なのなら、特段高性能でなきゃ嫌だとも言うまい

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    「北米関連」とは別枠で「米国関連」が在るから、「北米関連」は実質カナダが対象なのかな?

    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    せっかくのチャンスなんだから書類死ぬ気で間に合わせろよボーイング

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    >そうなれば一体誰が北米の空を守るのだろうか?
    米軍だろうねぇ…
    ドイツもそうだけど左派政権でさしあたっての驚異がない国ってほんと呑気だよな
    防空に大穴空こうがお構い無しで軍備引っ掻き回しやがる

      • 匿名
      • 2020年 5月 03日

      スイスも中々。国民投票で白紙化させたし

    • 匿名
    • 2020年 5月 03日

    トランプも選挙戦で「F-35計画は制御不能に陥っている。1月20日の大統領就任後は防衛予算を数十億ドル削減する」つって当選したけどな。
    右派が公約ひっくり返しても責められないのに左派がひっくり返したらお花畑のクソ小学生扱いされるのは酷だね。

    • 匿名
    • 2020年 5月 04日

    F-35開発パートナーであり、ウクライナ東部やクリミア半島でカナダ対岸のロシアが暴れ始めました。
    紆余曲折があったにしろ、現状をかんがみるに本来は迷うような話ではないだろうにな。

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