北米/南米関連

カナダ潜水艦受注を巡るドイツと韓国の戦い、月曜日に入札結果を発表

カナダ国営放送のCBCは5日「カーニー首相がドイツ企業と韓国企業が争う潜水艦選定の結果を月曜日に発表するだろう」と報じ、潜水艦12隻の調達を含むライフサイクルコストが約1,000億加ドル=約11兆円に達する大型契約をTKMSとHanwhaのどちらが受注するのか注目が集まっている。

参考:Submarine showdown: Carney poised to choose Canada’s next submarine fleet

今週は防衛産業界にとって間違いなく忙しい1週間になるだろう

カナダのブレア国防相(当時)は2024年7月「最大12隻の通常動力型潜水艦の取得手続きを正式に開始した」「正式な情報提供依頼書(RFI)を秋に発行する」と発言し、待望のRFIが9月に発行され「魚雷、対艦ミサイル、陸上攻撃用の長距離攻撃兵器搭載」「契約締結は2028年」「1番艦引き渡しは2035年」「海外建造=完成品の輸入」「サポート、訓練、インフラ分野へのカナダ企業参入=技術移転」を要求していることが判明し、カーニー首相は昨年8月「潜水艦入札のShort List=最終選考リストをドイツと韓国に絞った」「公正で透明な競争に尽力する」と発表。

出典:Hanwha Ocean

カナダ国営放送のCBCも入札の評価割合について「カナダが最も重視しているのは潜水艦12隻導入後の維持管理だ」「入札評価の割合は維持管理パッケージ=50%、潜水艦の能力=20%、企業の財務状況=15%、オフセットの内容=15%だ」と言及し、防衛投資庁のジェームズ・ルーク氏も「今回の調達はカナダ防衛産業を最大限活用して質の高い雇用を創出し、経済成長を促進しつつ、カナダに大きな経済的利益をもたらすものでなければならないと言及してきた」と述べ、潜水艦入札に関する最終提案は2026年3月頃に提出されたが、カナダは提案されたオフセットの内容を強化するよう両国に要求。

カナダメディアや韓国メディアはオフセット内容の強化について「カナダは米国との関税問題で国内の自動車産業基盤を拡充したいと考えている」「カナダは潜水艦調達の一環として韓国とドイツに自動車生産の約束を求めた」「カナダは韓国に現代自動車の生産拠点設立を、ドイツにフォルクスワーゲンのカナダ拠点で自動車生産を強化するよう要請した」「スティーブン・フー国防調達担当大臣は最も多くのカナダ人雇用を創出する潜水艦を入札で選ぶだろうと繰り返し述べている」と報じていた。

出典:TEAM 212CD

ドイツはノルウェーと共同でType 212CD(約2,800トン)を提案し、両国向けの生産枠の一部をカナダ向けに割り当てることで2036年までに4隻の引き渡し(残り8隻は順次引き渡し)を確約、納期と共に重要なウェイトを占めるオフセットについては大西洋側と太平洋側に潜水艦の整備拠点設置、魚雷製造工場の設立、極超音速ミサイル開発、二酸化炭素回収施設の設立、マニトバ州チャーチル港に構築する液化天然ガスの輸出拠点への投資などを提案し、カナダへの経済効果は約860億加ドルと試算され、数万〜数十万の雇用創出が見込まれている。

韓国はKSS-III Batch-II(約3,600トン)を提案し、2032年までに1番艦を、2035年までに4隻の引き渡しを、残り7隻は年1隻のペースで引き渡すと確約、さらにオフセットとしてオンタリオ州最大の鋼鉄メーカー=アルゴマ・スチールへの計3.45億加ドルの投資、潜水艦関連サブシステムの現地生産や技術移転、五大湖地域最大のオンタリオ造船所とモホーク大学への造船技術(設計・生産計画、品質管理、スマート造船システム)移転、造船専門家訓練センターの設立、AI、次世代LEO衛星通信、電子光学・赤外線センサーなどの共同開発を提案し、カナダへの経済効果は約940億加ドルと試算され、年1.5万人〜2.2万人の雇用創出が見込まれている。

韓国メディアもドイツメディアも「自国が入札に勝利する」と信じてやまないが、カナダ国営放送のCBCは5日「カーニー首相がドイツ企業と韓国企業が受注を争う潜水艦選定の憶測に終止符を打つため、月曜日に選定結果の発表を行うとの見方が強まっている」「ハリファックスでの発表が差し迫る中、この件に関して自由党政権は異例なほど口を閉ざして秘密主義を貫いている」「首相はNATO首脳会議のためトルコのアンカラに向かっている」「同会議においてルッテ事務総長は同盟諸国に対して国防費の基準を満たす計画だけでなく、実際の軍事能力を提示することを求めていると明言している」と報じた。

“国防・外交関係者や防衛産業筋によると、カーニー首相は首脳会議へ向かう途中にハリファックスに立ち寄り、ドイツのTKMSと韓国のハンファオーシャンのどちらを優先交渉権者とするか発表する予定だという。海軍は12隻の潜水艦調達を模索しており、調達コストは240億加ドルに上る可能性がある。一部の試算によれば潜水艦の維持・サポート費用を含めるとライフサイクルコストは1,000億加ドルを優に超える可能性があるという。ドイツ案のカナダ国内総生産に対する波及効果は860億加ドルと、韓国案は940億加ドルと予想している”

出典:TEAM 212CD

“カーニー首相は「両者の潜水艦はいずれも海軍の要求事項を満たしており、どちらの案を選択するかの決定は経済パッケージと、この取引が生み出す長期的な地政学的・戦略的パートナーシップや同盟関係の両方にかかっている」と述べている。ドイツはNATOの同盟国としての地位や関係性を強調し、韓国は今回の取引について「カナダがインド太平洋地域への関与と投資を拡大することにどれほど本気であるかを示す試金石」とみなしており、ドイツが強調するNATOの関係性に対抗するため「我々が保有する能力をカナダと共有して国際的な安定と平和に貢献できることは、朝鮮戦争時に助けてくれたカナダに対する恩返しだ」と表明している”

“老朽化したヴィクトリア級潜水艦の稼働率は低く、カーニー首相には「一刻も早く新しい潜水艦を調達しなければならない」というプレッシャーにも晒されており、韓国は2035年までに4隻の潜水艦の引き渡しを約束し、ドイツ側は2036年までに4隻の潜水艦納入が可能だとアピールしている。カナダが最終的に潜水艦12隻すべてを導入するかは確信が持てないが、米国がNATOの危機対応計画から自国の潜水艦を撤退させる可能性が高まる中、今回の決定は極めて重要だ”

出典:TEAM 212CD

防衛産業界にとってカナダの潜水艦選定結果の発表は間違いなく大きな話題となり、7日に始まるNATO首脳会談でもE-3の後継機を一度決定したE-7からGlobalEyeに変更することが正式発表される見込みで、それ以外にも各加盟国が国防費を3.5%もしくは国防関連支出を総額5.0%に引き上げる具体的な道筋を示すと期待されており、今週は防衛産業界(や防衛関係株に投資している人々)にとって間違いなく忙しい1週間になるだろう。

ちなみにカナダはNATO基準のGDP比2.0%の国防費を昨年達成し、2020年代末までに国防支出をGDP比4.0%まで引き上げると公言している。カナダのGDPは2030年までに3.6兆〜3.8兆加ドル規模に到達すると予測されているため、2030年に国防支出がGDP比4.0%に到達すると約1,400億加ドル〜1,500億加ドル=16兆円~17兆円規模となり、現在の日本が支出している防衛費(NATO基準で1.6%~1.7%)を大きく凌駕する。

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※アイキャッチ画像の出典:TKMS

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コメント

  • コメント (6)

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    • 無印
    • 2026年 7月 06日

    ヴィクトリア級の余裕が無い、って割に就役が早くて2035年なのか…
    どっかに決まったら、繋ぎに決まった国から中古の潜水艦を導入するかレンタルも考えた方も良いんじゃないか?

    0
    • たむごん
    • 2026年 7月 06日

    日本目線だと、潜水艦が当たり前のように保有してきたわけですが。

    潜水艦という兵器が、強力な抑止力・防衛力があることを、大型契約の金額からも改めて考えてしまいますね。

    8
    • YF
    • 2026年 7月 06日

    日本はカナダと防衛装備品に関する協定を結んでるしGCAPのオブザーバー参加があるかもしれない国ですからね。今回の潜水艦受注、ドイツを選んで欧州との関係強化を進めるのか、韓国を選んで太平洋・東アジアとの関係強化を進めるのか日本としてもどちらを選択するか注目ですね。

    1
    • 名無し
    • 2026年 7月 06日

    カナダは自動車産業の投資を求めたけど両国の回答は自動車産業の強化はなかってことでいいのかな?
    現実的には潜水艦のシステム開発や部品製造でお茶を濁すしかないよね
    そりゃ韓国もドイツも厳しいしカナダはどうするんだろうね?

    • HEAT信奉者
    • 2026年 7月 06日

    EU、NATOの結び付きを重視するならドイツ一択
    ではあるが…

    2
    • 58式素人
    • 2026年 7月 06日

    「カナダがインド太平洋地域への関与と投資を拡大することに
    どれほど本気であるかを示す試金石」
    なんだか、かなりの”上から目線” と思えます。
    聞かされた側は、いい気持ちにはなれないでしょうね。きっと。

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