28日に投票が行われたカナダの総選挙で自由党が勝利し、カーニー党首は「米国との古い関係は終わった」「これは悲劇だが我々の新たな現実だ」と述べ、約束していた「安全保障や貿易関係の大幅な見直し」を実行に移す可能性が高く、F-35A導入見直し議論も本格化するかもしれない。
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カーニー政権は安全保障や貿易関係を大幅に見直す計画を実行に移す可能性が高く、F-35A導入見直し議論も本格化するかもしれない
カナダのトルドー政権=自由党は2023年頃から支持率で保守党に逆転され、トランプ大統領の2期目政権が誕生すると米国の不確実性、カナダ合併発言、関税問題に直面し、自由党内からも国民に不人気なトルドー政権に対して「国の課題に十分対応出来ていない」「10月に予定されている総選挙前に退陣すべき」と批判されてしまい、今年1月「この国は次の選挙で真の選択が必要だ」「私が党内対立の原因になっているなら最良の選択肢ではないということだ」「正式な手続きで次期党首が決まれば党首と首相を辞任する」と発表。

出典:Justin Trudeau / CC BY 3.0
一般的にトルドー政権の崩壊原因は「トランプ大統領の脅迫に対する対応方針の不一致」だと言われており、後任党首に選出されたカーニー氏は曖昧な態度を止め「もはや米国は信頼できるパートナーでないのは明らかで安全保障や貿易関係を大幅に見直す」と公言、トランプ大統領の脅迫により愛国心が高まった世論も取り込み、25ポイントも差があった支持率を逆転させることに成功し、4月28日に前倒しされた総選挙期間に突入。
トランプ大統領は投票日の28日「もしカナダが51番目の州になれば税金は半分になり、軍事力も無料で世界最高レベルまで強化され、自動車、鋼鉄、アルミニウム、木材、エネルギーなどのビジネスも関税と税金がゼロで4倍になる。だから関税や税金を0に出来る人物をゼロにできる人物を選んで下さい。そうすればカナダは米国の愛すべき51番目の州となるだろう。もう人為的に引かれた国境線は必要ない」とSNSに投稿し、露骨な国内選挙への干渉を試みたものの、自由党は保守党を抑えて与党の座を維持することに成功(単独での過半数には達していない模様)した。
Let’s bring it home.
Vote for Change today. Vote Conservative.
Find where to vote here: https://t.co/IY42CBtmjU pic.twitter.com/v7SyGyQGL1
— Pierre Poilievre (@PierrePoilievre) April 28, 2025
保守党が世論から見放された理由は「大きく変わってしまったカナダを取り巻く状況への対応」にあり、ポワリエーヴル党首は「自由党に対する大きなリードを危険に晒さない」という無難な計画に固執し、何年も繰り返し主張してきた陳腐なアイデアや削減を繰り返すばかりで、カーニー氏登場で支持率が逆転すると大慌てで「新しい計画」を発表したものの、アナリストや産業界関係者は「1~2週間でまとめられた薄い内容」「過去の方針と比べて圧倒的にボリューム不足」「保守党の政策は減税主体で投資への説明が不十分」「ポワリエーヴル党首はAI分野の成長と米国の脅威に無関心で真剣な計画とは思えない」と辛辣に批判している。
カーニー党首は総選挙での勝利後「着実に進められてきた統合を土台とする米国との古い関係は終わった」「米国を中心とする開かれた貿易システム、第二次大戦以降にカナダが頼ってきたシステム、完璧ではないもののカナダの繁栄を支えてきたシステムは終わった」「これは悲劇だが我々の新たな現実だ」「米国の裏切りの衝撃は乗り越えたが今回の教訓を決して忘れてはならない」「今後数ヶ月間は困難な時期となり犠牲が必要となる」と述べ、安全保障や貿易関係を大幅に見直す計画を実行に移す可能性が高く、F-35A導入見直し議論も本格化するかもしれない。

出典:左 WHITE HOUSE / 右 Taylor Budowich
トランプ大統領や共和党は昨年の大統領選挙の際、バイデン政権や民主党に有利に働く海外政権の訪米や発言に噛みついて批判していたが、カナダに対する投票日前の発言について何を思うのだろうか?大国として当然の権利とでも思っているのだろうか?
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※アイキャッチ画像の出典:Mark Carney
BBCの記述より
『カナダ選挙管理当局によると、開票率99%の時点で、自由党が168議席を獲得する見通し。保守党は144議席を確保したとみられている。
ケベック州だけで候補者を擁立しているブロック・ケベコワ(ケベック連合)が23議席、新民主党(NDP)が7議席、緑の党が1議席』
『カーニー氏は選挙戦などで、トランプ氏に立ち向かうことを約束し、現在進行中の貿易戦争に勝利し、カナダ経済を維持することが最大の使命だと述べた。
また、環境の持続可能性などの問題を掲げて選挙運動を行ったほか、就任初週に炭素税を廃止し、パイプライン建設の推進を約束するなど、トルドー氏よりも穏健なアプローチを取った。
さらに、合成麻薬フェンタニルや移民がカナダからのアメリカに流入しているとするトランプ氏の懸念をふまえ、「国境を守る」と宣言。そのほか、連邦政府の規模の制限や、カナダ国内の貿易の自由化を約束した』
現実的な政策とトランプへの反発が追い風になった感じか。
トランプとの対決姿勢と言いつつ、政策の中身がトランプめいてるのは、そこはかとないプロレスを感じているが(普通こんな政策とったらカナダの小トランプ扱いされてメディアに叩かれるだろうに…)、何かこのままアメリカとの関係を見直して、結果的に原潜とか空母持ち出したら少し楽しいかもしれん。
CF-18の機体寿命から言って、急がないといけないから、70機近くはF-35Aを買わないと仕方ないだろうな。
GCAPに来るにしても、供給見込みが立たないと何とも言えないだろう。
そもそもカナダはグリペンを買うと言い始めてるし、今後はアメリカも仮想敵国になる。
F-35Aを新品で発注しても戦闘システム完成・検証・実装まで考えてまだ数年かかるし、第五世代ステルス戦闘機も戦えないのなら意味はないし、急を要した発注でも他の選択肢より強いアドバンテージではないだろう。
米国にとって、当面は”併合”は無理なのでしょうね。
どんな相互関係になるのかな。
例えば、欧州で、ドイツの隣にフランスが居るような状態かな。
国力の差から見て、言い過ぎかな、とは思いますが。
よその記事を読んでいると。
”これは、カナダの自殺だ!”とするものもあります。
その記事によると、カナダ自由党は、”ミンス”な存在なのだとか。
潜水艦にせよ、F3にせよ、暫くの間、関らない方が良いのかな?。
「大国当然の権利…」仰る危機感は当然です。わけてもアメリカは「米国の当然の権利」と捉えていそうでもあります。トランプ(特に二期目)で判り易く顕在化・可視化されているだけで、あからさまか、隠然と圧力や工作をかけるかの差。それだけ「唯一の超大作」「一極支配」という病理は致命的・不可逆的に世界を蝕んでしまった…。自分にとって異常な平行世界線に生きている様に苦痛だった四半世紀、何故あんな「真の虐○者」「世界平和破壊の真犯人」に、日本を筆頭とする“西側”は唯々諾々と従い、支持し、貢ぎ、手を貸していたのか逆に不思議な位です。反主流的トランプの行動に異を唱える白人国家による陣営崩壊なので意図的に看過されているのでしょうが(“権威主義国家”やグローバルサウスに接近又は利する形のアジア・中東での動きなら、瞬間的に謀略や攻撃で消滅させられた可能性大で)故に致命的且つ不可逆的な傷となるレベルまで進行する確率も上昇中。東側陣営とソ連崩壊後の東独やキューバ、それこそ北朝鮮の様にならない為にも、日本は世界の人達に愛されるアニメ・ゲームを産み出し続ける必要が更に切実化するかも知れません。少なくともキューバの葉巻や音楽以上に愛されるモノを。但し、おかしな話でしょうが「陰謀論」に則れば、逆にそうした事態は起こりませんので御安心を。此れしきの事でソ連如きの二の舞いになるタマではありません。
御免なさい。唯一の超大作→唯一の超大国!文字変換ソフトの陰謀だあ!普通、唯一と来れば“国”ですよね!?…言い訳は止めて、重ねてお詫び申し上げます。
要はアメリカが名実共に中国あるいはロシアと同レベルの国になった……もしくは可視化されたという話。日米関係は中国とミャンマー、ロシアとベラルーシの関係と同じようなものと考えれば大きな齟齬は無いと思われます
トランプ大統領もなかなか刺激的すぎる発言だったし、仕方のない結果かと
とはいえ、今のカナダ与党政権はリベラル色が強すぎるからアメリカと反りが合わないのは当然だったし
これでカナダのマの付くお薬蔓延もさらに進むんだろうか…
軍事的には、カナダもかなりぐだぐだだったけど、アメリカと明確に敵対したらさらにグダグダになりそう…
グリペンのエンジンに、ロールスロイスのエンジン(EJ200)を採用してアメリカのくびきから解き放されようという話が出てるそうだけど
簡単にいく話ではなく、様々な改修(作り直しまではいかないがかなり弄るレベルらしい)やら、
単発用エンジンとして考慮されていないので、単発用に使えることを証明する試験などが必要なんだとか…
当面は無理そう
自由党政権と言っても、トルドー路線を変更してかなり「穏健な」政策への転換を余儀なくされてるのが時代の変化だな…
2024年までなら環境規制を撤廃しようものなら、BBCも米メディアも攻撃してきた だろうに、反トランプ色を鮮明にしているからなのか、これが「穏健なアプローチ」扱いされるのは何と言うか。
トランプはトランプで十分怖いが、やっぱりリベラル政権間でエコーチェンバーな政策を繰り返していた昔よりはトランプvsリベラル諸国で殴り合ってる今のが遥かに健全じゃないかなと思うんだな。
たしかに仰る通りですね。
NYT・CNNの記事を、時事通信などの通信社、朝日新聞・毎日新聞などが引用。
『アメリカでは』日本で主語を大きく報道して、日本人はテレビマスコミを信じる割合が異常値ですから、勘違いするのが有名だなと…
自由党は大差をひっくり返しましたが、自由党・保守党どちらも議席数を伸ばしていて興味深い結果ですね。
ガワは、自由党ですが政策がどのようにしていくのか、過半数が獲得できていないため注目したいと思います。
どう思ってるか、に対してはヴァンス副大統領の発言通りじゃないですかね?
「トランプ政権との」ではなくてあくまでも「米国との」なんですよね。
これが非常に興味深いです。
表に出ている材料だけでは「トランプ政権」と対立姿勢を強めたとしても、「米国」との対立関係にはまだ行かないのではと思いますが、どうもそうではない。
カーニー氏も、そしてカナダ国民もです。
元々こうなる土壌があったのでは無いかと思うのでカナダに詳しい人がいたらそのあたりどうなのか教えて貰いたい気がします。