Saabのヨハンソン最高経営者は「カナダは最短3年でグリペンを受け取れる」と言及し、スウェーデンのジョンソン国防相も「単独で急速な需要拡大には対応できない」「ウクライナへの大規模な移転に備えて新たなパートナーを探している」と述べ、カナダにグリペンの共同生産を働きかけた。
参考:Saab says Canada’s air force could have Gripen fighter jets in as little as 3 years
参考:Swedish defence minister pushes for Canada to buy Gripen fighter jets
参考:With royal push, Sweden pitches Canada on economic benefits of buying Gripen
参考:No Gripes with Gripen: Canada’s fighter-jet rethink opens the door to a better deal | Letters to the Editor
F-35A導入見直しは戦闘機の性能や軍事的合理性に基づく見直しではなく「加米関係を含む政治的・外交的な観点」によるものなので、戦闘機のスペック次元では語られていない
トランプ政権のカナダ併合発言や関税問題の影響を受けて加米関係は大幅に悪化し、カーニー首相は「防衛と安全保障上の優先事項」に関する演説の中で「米国の優位性は過去のもの」「現在の米国は覇権的地位を金銭獲得のため利用している」「安全保障分野への追加投資は国内産業を強化して米防衛産業への支払いを少なくすること」「カナダは欧州再軍備計画に参加する」と発言し、F-35A導入見直しを指示した。

出典:Public Domain CF-18A/B
カナダ政府は2022年3月「CF-18A/B後継機プログラムの優先交渉者にLockheed Martinを選択した」と発表し、2023年1月にLockheed MartinとF-35A取得に関する契約を締結したが、両者は88機分の契約ではなく16機分の契約しか締結しておらず、カーニー首相が指示したF-35A導入見直しは「このままF-35A導入を継続するのか、それとも残り72機を別の戦闘機調達に変更するのかを検討しろ」という意味で、後者の選択肢に浮上しているのはCF-18A/B後継機プログラムで最終候補に残っていたグリペンEだ。
スウェーデンはグリペンEを含む防衛装備品をカナダに売り込むため国王夫妻、政府関係者、企業関係者で構成した代表団を派遣中で、Saabのヨハンソン最高経営者は加国営放送=CBCに対して「カナダ政府が戦闘機2機種の並行調達を選択すれば、グリペン初号機はF-35Aがカナダ国内の基地に到着する2028年頃までに取得できるだろう」「生産状況に左右されるもののグリペン初号機は概ね3年~5年で出荷できる」「グリペン生産の拡大に伴ってカナダ国内でも最大9,000人~10,000人の雇用が生まれる」と言及。
ジョンソン国防相も「グリペンに対する急激な需要増にスウェーデン単独では対応できない」「我々はウクライナへの大規模なグリペン移転に備えて新たなパートナーを探している」「カナダの航空電子産業が擁する熟練した労働力はグリペンの生産拡大にとって最適なパートナーだ」と語り、カナダのジョリー産業相はSaabとスウェーデン政府が提案する優遇措置(カナダ国内で雇用創出、Bombardierを含むカナダ企業との提携拡大、完全な技術移転)について本当に興味深いと評価している。
Breaking Defenseも「スウェーデン代表団はF-35Aの代替戦闘機としてグリペンを売り込むだけではなく、(カナダ需要を含まない)グリペンの共同生産、GlobalEyeやA26型潜水艦の導入の可能性も働きかけた」と報じたが、カナダがグリペンを採用しなくても生産拡大のパートナーになれるという意味ではなく、ヨハンソン最高経営者は「カナダから発注がないのに新たな施設を建設したり、技術移転を行うは割に合わない」と述べているため、海外需要に対する共同生産はカナダのグリペン採用が前提の話だ。

出典:EU
欧州は米国からの武器調達と完全に決別することはないものの、購入する武器の大部分に対して現地生産を要求する可能性が高く、中長期的には米国依存を引き下げるため欧州域内から調達を増やす見込みで、カナダもEU主導の欧州再軍備計画に参加するため防衛協定に署名しており、Saabやスウェーデンとの関係強化は安全保障面だけでなくカナダ産業界にとってもメリットが見込めるため魅力的な提案だろう。
因みにF-35A導入見直しは戦闘機の性能や軍事的合理性に基づく見直しではなく「加米関係を含む政治的・外交的な観点」によるものなので、F-35Aやグリペンのスペック次元では語られていない。

出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Zeeshan Naeem
追記:カナダメディアのOttawa Citizenは20日「対米交渉が行き詰まっているためカナダでのグリペン生産は非常に魅力的だ」「我々はCUSMA協定と3.8万人分の自動車関連雇用を失う可能性が高い」「そのためカーニー首相は失われる雇用を補う方法を見つけなければならない」「スウェーデンの申し出は自動車産業の雇用を航空産業の雇用に置き換え、停滞する航空産業を活性化させるかもしれない」「この取り組みには新たな資金が必要ない」「F-35A取得に投資するはずだった資金を付け替えるだけで主権とNATOとの関係が強化できる」「そして米国への依存度も引き下げることもできるのだ」と指摘した。
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※アイキャッチ画像の出典:SAAB





















日本のf35をウクライナに寄付しましょう
カナダと共同生産ってウクライナのグリペン購入がポシャってもSAABはほとんど痛みがない提案と理解していいんですかね?
ウクライナの話は100機以上購入したい供与を巡る具体的な条件や費用、引き渡しの時期はまだ決まっていない何も無い空手形みたいのような物です。資金確保が将来がどうなるかも分からない戦時中の国との大型契約を現時点で業績に織込んでいる企業なんて無いでしょう。
少なくとも72機の戦闘機調達需要が有るなら工場建設は十分可能です、その半分ほどの導入数であるブラジルで工場を作り部品の80%を作っているんですから人件費や材料あらゆる物の値段が上がっていようが投資する価値はあるでしょう。ただし、大規模な工場を作る最低ラインは40機以上とかはあるでしょうね。それ以下なら最低限維持出来るレベルの向上で終わる可能性が高い。
グリペンの航続距離とかはこの際問題ではなく、運用して本当に問題なら給油機(欧州製)を増やして対応したら良い、という事かな?
対空任務ならそれほど問題にならないのでは。
カナダ北部なら「高速道路よりはなんぼかマシな前線基地」くらい必要ならどうとでも用意できるだろうし。
カナダ北部って自然環境が厳しいから、基地に適した土地はそんなになさそうな気が
(文明的な意味で)何もないところが多いので、基地建設をしようとするとかなり大変そう
予算的にも厳しいかも
それならばなおのことグリペンの方が良さそうですね。
米製機は基本的に鏡面のような滑走路、手厚い整備を前提としているイメージですので…。
だから「『高速道路よりなんぼかマシな前線』基地」なんです。
グリペンが降りれれば及第点、燃料入れて離陸できれば満点。地形的にも大きく広く開けてる必要すらなくて、細長く1㎞程度フラットなら十分ですから涸れた元河川敷とかで良い訳です。
谷底は谷に沿って風が収束するため小型の航空機にとっては意外に降ろしやすくフィヨルドシェルターを運用してきたスウェーデンは当然そうした山がち地形の知見と運用経験を有しており、カナダがグリペンを導入するなら機体と共に提供されるでしょう。
弾かれた?ので簡単に。
まともな基地は難しくてもグリペンが降りて給油して飛ぶだけの簡易基地やそれを有事に急造するための倉庫兼ねたシェルターなら何とでもなる、という話です。
何とでもなる…かなぁ
周囲、日本で言えば北海道的なスケールで、本当に何にもないですよ?
そんなところまで、機材や資材運び込んで、設営作業って、資金的にも人材的にも労力的にも本当に大変ですよ?
自然の厳しさも本当にすごいところですし
人が住んでいないというのは伊達ではないですよ?
「『必要なら』どうとでもなる」は有事の話で簡単だ、という意味ではありません。
とはいえアラート基地を気候に加えてロシアの攻撃から耐えて維持し続けるのに比べればグリペン数機が降りて飛べる程度の簡易基地を急増できる様な地形と資材機材を確保しておく方がハードルは低いと思いますけどね。
産業育成、雇用問題は大きいからなぁ
同時に受け入れてしまえば、後戻りできない
対米関係に感情的になってるカナダの現政権ならあっさり受け入れそうな気もするなぁ
雇用増大による支持率確保も期待できるし
問題は、ぐりペンを選択することに対して現場がどう受け取るかだけど…
将来的にアメリカ以外のファイブアイズはGCAP導入の可能性が出てきたかな
それなりの数作らないと追加で工場作れないのなら欲しがる国に生産工場ごと売っちゃうのはアリなのだと思います。買う方は利益は出なくても欲しいだけ作れる(スペアパーツ等も)のは相手の都合で機体寿命が左右されにくくて良いのでは。
我が国にも輸出できる4.5++世代機があればなぁーと思わずにはおれません
ところでGCAPは高額機体になりそうなので中規模空軍国への輸出は大丈夫なんでしょうかね
最低限これぐらいはという機数は必要になるでしょうから
無人機でカバーするんですかねー
GEエアロスペースが権利を持つF414エンジンのライセンスがアメリカから許可が出る前提ですが、ほとんどの部品はヨーロッパの会社が権利を持つので、特許関係以外はほぼクリアになっていると考えて良いでしょうね。
一方で現代の戦闘機システムはデータリンクの問題など「グリペンE/Fで要件を満たすのか」が非常に怪しいところもあるので、「北米大陸の防衛」という観点ではまだまだ詰めるところがありそうです。
エンジンの件で調べてたら「GEのティッカーシンボル(=株式証券コード)」を継承しているのがGEエアロスペースで、医療関係のGEヘルスケアと電気・エネルギー系のGEベルノバに企業体を分離・それぞれ上場していてコングロマリットではなくなっていた、とか「本業とか祖業って何?」と思いました。
エネルギー系はガスタービン関係でまだつながりはありそうですけどね。>GE
GCAPのチャンスが?
違う大陸に製造整備拠点ができることそのものの利点が、仮想敵と陸上での距離が近い国家ではより大きかろう。日本と韓国は距離が近いが密接に連携してどちらも同時に叩かないと挟み撃ちにされるか、ひたすら後方から補給される一方と戦い続けるという不毛な戦いになるという圧力を中国にかけておかないと普通に各個撃破されておわる。