北米/南米関連

カナダ空軍の次期ジェット練習機調達、M-346導入に向けて協議を開始

カナダ空軍は後継機を調達しないまま2024年3月にHawkを退役させ、暫定的に米国とイタリアでの訓練に依存していたが、カーニー首相はG7出席中にイタリアのメローニ首相と会談し「カナダのレオナルド製M-346導入に向けた交渉を開始した」と発表した。

参考:Prime Minister Carney meets with Prime Minister of Italy Giorgia Meloni
参考:Canada enters talks with Italy on buying advanced trainer jets
参考:Canada opens negotiations on M-346 trainer aircraft
参考:Europe facing ‘Catch-22’ over US weapon sales, top Polish general warns

カナダはHawk退役と同時に後継訓練プログラム構想を発表していたが、M-346を選択してイタリアと交渉を開始

カナダ空軍の戦闘機パイロット訓練パイプライン=NATO Flying Training in Canada(NFTC)は「T-6を使用した基本飛行訓練=Basic Flying Training」「T-6とHawkを使用した高等飛行訓練=Advanced Flying Training」「Hawkを使用した戦闘機導入訓練=Fighter Lead-In Training」「CF-18を使用した戦闘機運用訓練=Fighter Operational Training」の4段階に分かれていたが、後継機を調達しないまま2024年3月にHawkを退役したためNFTCは中断され、Hawkを使用したFLITについては暫定的なBridge FLITに移行した。

出典:Government of Canada

Bridge FLITは米シェパード空軍基地/第80飛行訓練航空団でT-38を使用したEuro-NATO統合ジェットパイロット訓練=Euro-NATO Joint Jet Pilot Training(ENJJPT)と、伊デチモマンヌ空軍基地でM-346を使用した国際飛行訓練学校=International Flight Training School(IFTS)に分かれ、米国かイタリアでFLIT課程を終了させてからカナダ国内でCF-18を使用した最終訓練を実施しており、Hawk退役と後継機調達をリンクさせなかったのは「レガシーホーネットからF-35Aへの移行において『第5世代戦闘機に相応しい練習機は何なのか?』という問いに結論が出ていなかったから」と言われている。

今から思えばバイデン政権時代にレガシーホーネットの後継機選定でF-35A導入を決め、安定した対米関係に基づいて米空軍のT-7A導入=米空軍の戦闘機パイロット訓練パイプラインを「そのまま移植したい」と考えていたのかもしれないが、2025年にトランプ大統領がホワイトハウスに復帰して対米関係が大きく様変わりし、F-35A導入も見直し中(グリペンEとF-35Aの混合で対米依存を引き下げる方向が有力視されている)で、カナダを取り巻く環境がこれだけ激変するとT-7A導入の可能性は奇跡に近い。

カナダはHawk退役と同時に後継訓練プログラム構想=Future Fighter Lead-In Training(FFLIT)を発表していたが、G7出席中のカーニー首相はイタリアのメローニ首相と会談した結果に関するプレスリリースの中で「カナダとイタリアは防衛・安全保障分野でますます緊密な関係を築いている」「こうした背景から両首脳はカナダのレオナルド製M-346導入に向けた交渉を開始した」「イタリアの航空宇宙・防衛分野における専門知識を活用する合意により、カナダ空軍は最新鋭の装備を用いた訓練を実施し、独自の訓練能力を構築することが可能となる」と発表。

カーニー首相はM-346導入交渉について「今年2月に発表した防衛産業戦略が実際に機能している実例で、我々は国内生産と信頼できる同盟国との連携戦略=BUILD(国内生産の構築)、PARTNER(パートナーとの連携)、BUY(国内生産の構築もパートナーとの連携も不可能な場合の直接購入)の枠組みのアプローチを採用している」と指摘し、出来るだけ米国製システムを避ける意図を明確にしている。

出典:Ministerstwo Obrony Narodowej

ちなみに、NATO加盟国の中で最も米国製システム導入に積極的なポーランドのカミシュ副首相兼国防相は「F-35Aの追加取得」を示唆したが、ポーランド軍のピョートル・ブワジェウシュ中将(NATO・EU軍事委員会に派遣されているポーランド代表)も「米国製システム導入への不満」を公の場で口にしており、ポーランドでも米国製システムに対する政治的な立場と軍人の評価は分かれているらしい。

“欧州諸国が米国に「このシステムを購入したい」と伝えると「わかりました」「ただし納入は2029〜2030年になります」「その納期すら遅れる可能性があります」と言われる。だから欧州諸国は欧州製であれ、他の地域であれ、市場から何が調達できるのか調べ始めた。もう米企業が得意とするような「過剰なまでに高性能で高価なソリューション」は求めておらず、欧州諸国は「より手頃な価格や迅速な納入が可能な必要十分な性能を備えたソリューション」を探している”

出典:16 Dywizja Zmechanizowana

“ポーランドは米国製システムを強く信頼しているし、(既存のシステムへの)統合も容易だが、納入が長い上に国内での維持・修理・オーバーホール(MRO)能力を制限してくるため、我々を代替システムの取得に向かわせたのだ。そして我々が選んだのは韓国製だ。その理由は我々が必要としていたものを、これほど短期間で納入できるのは韓国の防衛産業だけだったからだ。もちろん、我々は米国を含む複数の選択肢に打診したが、残念なことに納期が相当先だった。我々はどうしてもこのタイミングで何かを手に入れる必要があったし、韓国は現地での修理能力を制限せず、積極的にMRO拠点を欧州域内に立ち上げている”

この件について戦略国際問題研究所(CSIS)のトム・カラコ氏は「我々がこれから目にすることになるのは『同盟国に米国システムをより多く買ってほしいという政権の明確な要望』と『備蓄を補充するために自国を最優先しなければならない必要性』との間で生じる避けられない緊張関係だ」と述べており、ブワジェウシュ中将の発言を取り上げたBreaking Defenseも複数のアナリストの発言を引用して「米国製システムの購入から離脱するという大きな変化の兆しはまだ見られないが、同盟国の納入順位を後回しにする決定が各国に代替案を模索させる契機となり得る」と指摘している。

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※アイキャッチ画像の出典:Leonardo

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コメント

  • コメント (9)

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    • 無印
    • 2026年 6月 17日

    「そこそこの性能と値段で、納期が確実」
    これは兵器じゃなくても重要じゃね、指名買いならともかく

    24
      • ドゥ素人
      • 2026年 6月 17日

      平和な時代ならともかく、今の不確実性の高い時代だと、高性能でも「無い(いつになるか分からない)」のと、そこそこでも「有る(納期確実)」の方が良いという判断ですよね。

      17
        • 匿名希望係
        • 2026年 6月 17日

        F-15とF-22ぐらいの差があるなら考えないでもないけどね>納期が遅い

        2
          • ドゥ素人
          • 2026年 6月 17日

          私も昔はそう思ってましたけど、戦闘機単体同士の性能差ももちろん重要なんですが、結局はレーダーや早期警戒、対空ミサイル、無人機などの総合力も近年は利いているのかなと感じています。

          13
    • u
    • 2026年 6月 17日

    カナダ空軍がF35の運用を継続するにしてもM346の導入は妥当なところ。M346をグリペンの訓練システムに統合する作業が残っているがそれはそんなに難しい事では無いし。カナダ空軍の規模からするとカナダ仕様のM346には軽攻撃機としての運用能力が求められると思うので、組み込まれるウェポンシステムが気になるところです

    11
      • 匿名希望係
      • 2026年 6月 17日

      125に載せ替えてさらなる軽戦闘機任務に従事したりして

    • YF
    • 2026年 6月 17日

    日本もT-4の後継機待ったなしと言われてしばらく経ちますが中々続報ないですよね。アメリカの練習機選定の迷走の影響なんでしょうけど。GCAPを考えるなら本命はM-346なんでしょうけど、もしかしたらT-X(三菱案)を考えてる可能性もあるかもしれないですね。

    14
    • TOW
    • 2026年 6月 17日

    脱アメリカ化が進みそうですね。

    2
    • 朴秀
    • 2026年 6月 17日

    グリペン入れるなら複座型グリペンでもいいかも

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