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国を変えたい、カナダの防衛スタートアップ企業が無人戦闘機を開発中

元アンドゥリルのエリオット・ペンス氏は祖国カナダの防衛ニーズに対する緊急性を危惧して防衛スタートアップ企業=ドミニオン・ダイナミクスを2025年6月に設立し、カナダ空軍の独自要件を満たす自律型協調プラットフォーム(ACP)開発を進めており「とにかく国の現状を変えたい」と訴えた。

参考:Meet the man turning Canada’s defence procurement upside down
参考:Ottawa company looks to build drones to fly with F-35s
参考:Canada’s next generation of airpower won’t come from a single aircraft
参考:Dominion Dynamics awaits military procurement reform after successful Arctic deployment of sensor tech
参考:Ottawa Startup Shaping Canada’s First Autonomous Combat Aircraft

ドミニオンも軍事上の問題ではなく生産上の問題を解決して、カナダ産業界がもつ潜在的な能力を統合できれば面白いことになる

カナダの防衛スタートアップ企業=ドミニオン・ダイナミクスは2025年6月に設立されたばかりだが、カナダ空軍の独自要件(北極圏まで飛行可能な数千マイルの飛行能力、未舗装の短い滑走路からの運用能力、大量の武器を運搬するためのペイロード能力など)を満たす自律型協調プラットフォーム(Autonomous Collaborative Platform=ACP)開発を進めており、今年3月にはACPのコンセプトイメージを公開して注目を集めている。

ドミニオンを設立したのはアンドゥリルでグローバル事業をゼロから構築したエリオット・ペンス氏で、2022年にアンドゥリルを離れて20年間暮らした米国からカナダに戻り、政府の助成金(5,000万加ドル)に加え、カナダ最大級の独立系ベンチャーキャピタル=ジョージアンからも2,100万加ドルの資金調達に成功し、ドミニオンで成長戦略責任者を務めるロバート・ウェイ氏も「18ヶ月以内にACPの小型プロトタイプを完成させる予定だ」と明かし、6月から設計作業を終えた小型プロトタイプの製造を開始するらしい。

ペンス氏は2025年5月、カナダで毎年開催される防衛見本市=CANSECで「伝統的な防衛企業が従来型の装備品しか売り込んでいない」「カナダの防衛能力開発に対する緊急性に対応してない」と感じ、ノルマンディー上陸作戦81周年記念日の2025年6月6日にドミニオン・ダイナミクスを設立、ジョージアンの主要投資家であるマーガレット・ウー氏もドミニオンについて「カナダと同盟国が自国の利益を守る方法を根本的に再構築するチームだ」「ベンチャー投資の本質はいかに迅速に何かを成し遂げられるかという点にある」「投資対象に選ぶのは基本的に少し変わり者でせっかちな人だ」と述べている。

カナダメディアも「従来の防衛装備品調達モデルは極めて時間がかかるだけでなく官僚的だ。昨年の内部監査によれば大半の装備品調達には10年以上の歳月を要することが判明している。高額な装備品を巡って政治的対立が生じた場合はさらに時間がかかる。技術の進歩があまりにも急速な現代において現在の装備品調達ペースは許容し得るものではない」と報じ、ドミニオンを以下のように評した。

“ウクライナ軍が現在どのような戦い方をしているか考えてみてほしい。空ではドローンの大群を、地上では無人車両を駆使しており、両軍が可能な限り迅速に技術のアップグレードを続けている。もう官僚的なプロセスが完了するまで10年も待つようなやり方は容認できない。ドミニオンは政府からの契約(資金供給)を待つのではなくベンチャーキャピタルを活用して装備品を開発し、それを政府が買い上げることに賭けている。自己資本を投じることでスピードとイノベーションをもたらす新たな調達モデルを導入しようとしているのだ”

“ドミニオンは現在、カナダ軍の作戦半径を拡大し、将来的にはミサイル迎撃の可能性も秘めた単独運用または戦闘機との連携で運用可能な自律型協調プラットフォーム、広大で過酷な北極圏向けに設計された通信技術のオーラネットを開発している。オーラネットは携帯電話の電波が届かず衛星通信も途切れがちな環境下で孤立状態にある兵士たちが相互に、そしてカナダ南部の司令部と電子的にリンクできるようにするメッシュ通信ネットワークだ”

“さらにペンス氏主催のブレインストーミングに参加したクイーンズ大学やトロント大学の学生の発想から生まれたエコー開発にも取り組んでいる。エコーはヘリコプターから投下可能なアイススパイクで、氷にねじ込まれたエコーはパッシブ・ソナーを用いて氷下の海中を監視するシステムだ。エコーは外国からの脅威に対して脆弱性が高いと見なされている広大な北方地域での監視能力向上を目的に設計されている”

“カナダは米国製装備品に依存してきた結果、システムインテグレーションの経験が決定的に欠けており、ドミニオンは最終的にカナダの中小企業が製造したコンポーネントを組み立て、潜水艦であれ、航空機であれ、無人機であれ、軍が必要とするあらゆるものを単一プラットフォームに統合し、大規模な防衛プロジェクトを一元管理できる企業に成長することを目指している。ペンス氏は「カナダを除くすべてのNATO加盟国にはシステムインテグレーターが存在する。それこそが今の我々に不可欠なものなのだ。そうでなければカナダ企業は外国のプラットフォームに組み込まれるだけの下請け的存在になってしまう」という”

“カーニー首相もカナダ北方の軍事的プレゼンス拡大に向けた大規模投資計画(約350億加ドル)を発表した直後、ペンス氏と直接会談して将来の戦争のあり方、単に海外技術を導入するだけでなく自ら新技術を創出する防衛産業をいかに構築すべきかについて幅広い議論を交わした。ペンス氏は「ビジネスを成功させて別荘を手に入れるためにここにいるわけではない。ムスコカ(カナダの高級リゾート地)で過ごすような戯れには関心がない。とにかく国を変えたい。それだけだ。そのために私は全力で挑むつもりである」という”

AviationWeekも「カナダの産業基盤には大型航空機メーカー、小型ターボファンエンジンメーカー、ミッションシステムサプライヤー、自律システム開発企業など国内でACPを開発するために必要なあらゆる要素が揃っているが、今のところそのような開発に着手した企業は存在しない」と指摘し、構成技術が揃っていても単一プラットフォームに統合するシステムインテグレーターの不在を「ドミニオンが変えようとしている」と報じ、ACPはカナダ軍の要件を満たすため大型機になる可能性が高く「エンジン供給についてはP&Wカナダを含む複数のエンジンメーカーと協議中だ」と報じた。

ペンス氏はアンドゥリルの成功体験「時間を浪費しないため自社資金でプロトタイプを開発してアイデアを素早く形にする」「デュアルユース技術を積極的に採用したオープンアーキテクチャでシステムを構成する」「ソフトウェア定義型でシステムを構築する」をカナダに持ち込む可能性が高く、さらにドミニオンには「この国(の硬直した官僚的で無駄の多い装備品調達モデル)を変える」という使命感まであり、政府や投資家もペンス氏やドミニオンに期待しているためきっかけさえあれば化ける可能性がある。

出典:Jake Paul

アンドゥリルも2017年に設立した当時「シリコンバレーのスピードとAI・ロボティクス技術を国防分野に持ち込み、伝統的な防衛産業の非効率を打破する」「国防プライムの地位を独占している非効率な防衛企業に取って代わる」という壮大な目標を掲げていたが、たった9年でアンドゥリルの企業価値はロッキード・マーティンの約半分の約600億ドル=9.5兆円以上まで高まり、宣言通り国防プライムの一角を占める地位まで上り詰めた。

アンドゥリルは第6世代戦闘機のような「他社には真似の出来ない最先端の軍事技術」を開発しているのではなく、複雑な設計、防衛産業に特化したサプライチェーン、高度な専門労働者、手作業による製造手法で構築された拡張性の乏しい精巧なシステムを否定して「シンプルな設計、調達先が複数存在する商用サプライチェーン、増員が容易な平均的労働者、特殊工具や専用設計の治具を必要としないハイパースケールを前提にした製造手法で構築された拡張性の高い汎用システム」によるキネティックマスの達成を目指している。

出典:Anduril

つまり、デュアルユース技術や商用部品を素早く統合し、3Dプリンティング技術など新しい生産技術を素早く活用し「如何に量という質を安く、早く、大量に生産するかという生産上の仕組み」を追求しているだけで、アンドゥリルのパーマー・ラッキー氏も「我々が解決しようとしているのは軍事上の問題ではなく生産上の問題だ」と述べており、もちろん「他社には真似の出来ない最先端の軍事技術」とは補完関係なので「高性能な軍用規格の兵器システムが不要になる」と言う意味ではないが、たった9年で企業価値が約600億ドルまで膨らんだことは「非効率を打破した防衛装備供給の需要」がどれだけ膨大かを物語っている。

ペンス氏が率いるドミニオンもアンドゥリルのように軍事上の問題ではなく生産上の問題を解決して、カナダ産業界がもつ潜在的な能力を統合できれば面白いことになるだろうし、そうなることを個人的にも大いに期待したい。

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※アイキャッチ画像の出典:Dominion Dynamics

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コメント

  • コメント (9)

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    • たむごん
    • 2026年 5月 30日

    卒アンドゥリルの優秀な方が、魅力的なスタートアップを展開しているのは興味深い話しですね。

    シリコンバレーは、卒Paypal・卒Googleなどの優秀な方が、ドンドン起業して魅力的なサービスを展開していった歴史があります。

    『非常に参入障壁が高く・新規参入が難しい分野』防衛分野その特性があるわけですが、様々な新規参入の兆しがあることは非常に興味深く今後の展開に期待したいですね。

    5
    • 匿名希望係
    • 2026年 5月 30日

    カナダがあるとしたらケベックでの内乱かアラスカが落とされての防衛戦かアメリカとの戦争による防衛戦のどれかになりそうだな>国防
    NATOの義務としての参戦の場合でもEU系のライセンス生産の方が多分効率よさそうではある

    • のー
    • 2026年 5月 30日

    ・ロイター日本のニュース
    [防衛テックに若者流入 AI人材、地政学リスクは「自分事」]
    日本でも色々と動き出してるようで、エンジニアの血が騒ぎますな。
    若くないけど。。。

    15
    • 58式素人
    • 2026年 5月 30日

    日本も開発を始めた方が良いのでは?。
    先の記事でも書きましたが、大型機の護衛機として初めてみては?。
    新たに機体を開発すると時間がかかるので、既存のASM-2をベースに大型化しては?。
    出来れば、空中給油装置を追加して、発進はP-1などの翼下に2機ほど懸架しては?。
    センサーはEO/IRを基本にして。機体の両側に04式AAMを計2発携行して。
    誘導も、はじめはFPV(ラジコン?(笑))で良いので。後にAIを追加する形で。
    とは言っても普段の自動操縦装置はつけてもらって。最後の回収はパラシュートで。
    そ言うすれば、母機とのシステム統合を当面は回避できるだろうし。
    そうすると、母機にパイロットを追加で乗務してもらわないといけないけれど。
    ミサイルベースであれば、最悪、デコイ扱いしても良いのかな?。
    などと、色々と妄想したりします。

    3
    • せい
    • 2026年 5月 30日

    いっちゃなんだが、ドローンとかUAVって何年も研究して開発するって類の物では無いもんなぁ
    勿論水中で長時間活動する無人潜水艦や戦闘機に随伴するCCAは別だけど、自爆型ドローンなんかはとにかく量産して現場で使い易くカスタムする、自動小銃に近いポジションに思う
    開発のノウハウを鍛えた一人者が、出遅れ気味のカナダでどう産業界に関わっていくのか、日本にとっても注目しないわけにはいかない話だ

    6
    • kitty
    • 2026年 5月 30日

    「国を変えたい」じゃ、中国人AI技術者が米国に嬉々として、永住するみたいなタイトルな件w。
    「祖国を変えたい」とか「カナダを変えたい」なら誤解のしようがないが。

    4
    •  
    • 2026年 5月 31日

    これは完全に個人的な意見なんですが、第6世代戦闘機の定義は有人/無人を選択可能または無人で、第5世代機に比して安価で、消耗に耐え、高度な自律機能を有する…だと思うのでハイエンド戦の領域でも消耗可能という評価軸はある程度必要なのかなと

    2
    • エニグマ軍曹
    • 2026年 5月 31日

    この無人戦闘機(CCA)のベンチャーと戦闘機開発未経験の国のタッグ、ドミニオンに限らず、失敗フラグが立ったように見えるのは自分だけですかね?

    成功する兵器開発とそうでないものの決定的な違いに「ドクトリンの有無」があると思うのですが (例:アーレイ・バーク系 vs ズムウォルト、F-35 vs F-111、CVR(T) vs 後継車計画)、CCAを手にした空軍がそれをどう扱うかについて一切の公言がないのが気になります。

    1
    • kitty
    • 2026年 6月 01日

    こんなニュースがありました。

    テラドローン、固定翼型迎撃ドローン「Terra A2」がウクライナで実運用開始 ~WinnyLab LLCを通じ広域防空向け固定翼迎撃ドローンを実戦環境に納品~

    「お客様の声」まで載ってて草。
    日本の既存の防衛企業にはない姿勢。

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