カナダ国営放送のCBCは「ポーランドを訪問したカーニー首相の発言は国防支出に関して両国間の違いを浮き彫りにするものだった」「我々は安全保障と防衛を社会保障や教育より優先するポーランドの考え方に学ぶ必要があり、これを実行するには国内合意の形成が不可欠だ」と報じた。
参考:How, and at what cost, could Canada catch up to Poland’s defence spending?
西側諸国の選択肢は「将来のリスクを問題と認識して行動するか」「将来のリスクから目を反らし様子を見続けるか」のどちらかしかない
オランダで開催されたNATO首脳会談で32ヶ国の首脳らは「2035年までに毎年GDPの5%を防衛分野と防衛・安全保障関連に投資することを約束する」と正式に発表、この5%は「直接的な軍事力に結びつく防衛分野への投資=3.5%」と「重要インフラの保護、ネットワークの防衛、民間防衛や回復力の確保、イノベーションの促進、防衛産業基盤への投資=1.5%」で構成され、カナダのカーニー首相も「10年以内の総額5%達成」を支持し、カナダメディアや世論も国防支出の増加を概ね支持している。

出典:Anita Anand
カナダのToronto Starは6月29日「我々は2035年までに5%の約束を果たせるだろう。但し、目標達成に完璧な解決策はなくトレードオフがあるだけだ」と指摘していたが、国営放送のCBCも31日「カーニー首相がポーランドを訪問してトゥスク首相と会談した際、特に印象的な瞬間があった。カーニー首相は『トゥスク首相やポーランド政府から多くのことを学んでいる』『NATO加盟国として自国の責任を全うすることの重要性もその一つだ』と述べた」「この発言は事前のシナリオにないもので国防支出に関してカナダとポーランドの間にある違いを浮き彫りにするものだった」と報じた。
“ポーランドは2025年度にGDPの4.7%を国防支出に配分しているが、この域に到達するため何を犠牲にしているのか、そしてポーランドモデルにカナダは学ぶ点があるのだろうか。自由党は国防力と防衛産業の再建を約束しているものの、総額5%の達成には年1,500億加ドル=約16兆円もの費用が必要で、これを達成する方法や財源については何も提示しておらず、新たな調達機関が発足するまで答えを先延ばししている”

出典:gov.pl
“カーニー首相のポーランド訪問中、東欧諸国の再軍備努力についてカナダの駐ポーランド大使は「我々とポーランドでは再軍備に対する出発地点が異なる」「ポーランドはカリーニングラードやベラルーシと接しているため支出に関して意識的な政治的選択、つまりポーランドにとって安全保障と防衛は社会保障や教育よりも優先される」「このような考え方はカナダでは到底理解されないため国防支出の議論はポーランドとは異なるものになるだずだ」「それでも安全保障と防衛を優先するという考えに学ぶ必要があり、これと同じことを実行するには国内合意の形成が不可欠だ」と述べた”
“カナダ国民は概ね国防支出の増加を支持している。カーニー首相も国防省を除く全省庁に15%の予算削減を命じているが、未だに政府は国防支出増と引き換えになる犠牲を明確にしていない。カーニー首相は国内の防衛産業を構築し「国防支出の増加が国内産業、雇用、経済に恩恵をもたらす」と訴え、経済を成長軌道に乗せて「3年以内に予算運営を均衡させる」と約束しているが、秋に予定されている予算編成が国防支出の転換点になる可能性が高く、国民は厳しい選択を受け入れるよう求められるかもしれない。マクギンティ国防相も「国民は我々を取り巻く環境と地政学が変化していることを認識していると思う」と述べている”

出典:Canadian Army
冷戦終結による平和の配当はロシアのウクライナ侵攻で終焉を迎え、誰もが「将来の安全保障環境に問題が生じている」「もう安全保障分野への負担からは逃げられないだろう」「その財源は社会保障の削減と増税しかない」と知っているため、西側諸国の選択肢は「将来のリスクを問題と認識して行動するか」「将来のリスクから目を反らし様子を見続けるか」のどちらかしかない。
因みにカーニー首相とトゥスク首相は会談後「ウクライナへの共同支援」「NATOの強化」「未来世代の安全保障に対する投資」を強調した戦略的パートナーシップを発表した。
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※アイキャッチ画像の出典:gov.pl





















安全保障が、社会保障よりも優先されるのはいいことですね。
古くからの夜警国家からみても、安全保障がまず国家の基盤であり、社会保障は国家が提供する追加サービスにすぎません。
社会保障は、現役世代からの搾取に依存して、老人が受益者です(日本は特に顕著です)。
安全保障は、現役世代~老人まで、幅広い世代が安全である恩恵を得られることに繋がります。
英仏がも、社会保障費が膨張していくなか国防費増加を掲げていますが、10年物・30年物国債金利が上昇していて財政が警戒されていますね。
日本も社会保障費は削るべき所は徹底して削らないとならないのは理解していても選挙負けるからなかなか難しいのと利権も絡むでしょうから抵抗勢力も大きく、削るべき所はどこだ論争になっても価値観の違いも大きい問題も多いでしょうから前に進まないでしょうね。
弱者に手厚くサポートしていくというのは素晴らしいことで反論の仕様も無い尊いことだと思うけど色々と思う所は多いにありますね。
選挙対策は、本当に仰る通りですね。
『分断』という言葉が一人歩きしていましたが、あまりにも負担者=受益者の差がでているので、支持政党が割れているのは健全化してるなと感じています。
社会保障費に100兆円単位の資金投下しても、仰るような利権が生まれるだけだなあと…
世界に戦える競争力のある新規産業は生まれていないうえに、既存産業の競争力も低下しているのは悲しい現実だなと感じています。
製薬業界ガー・医療機器業界ガーなんて言われてましたが、社会保障費あれだけ資金投下しても、どちらも海外トップ企業との差が開き続けているんですよね…。
社会保障といっても何を削るかによって国内の治安状況が悪化する懸念はありますね。
高齢者の特権(医療費負担など)の是正とか、湿布などの不必要な処方薬の保険適用除外など、生活とは関係ないところから徐々に削減していくといいかもしれません。
年金、障害年金、生活保護などは生き死にに直結する部分でもあるので、そのあたりの予算を削るのは怖いですね。
北極海を挟んでロシアと向かい合ってる以上いたし方あるまい
それはそうと最重要の戦闘機の更新はまーだかかりそうですかね?(死にかけのCF-18
カナダは陸続きの国が軍事的脅威になってしまったので安全保障の独立性と強化は火急の急務だろう。
海軍の強化は絶望的だろうけど、陸軍と空軍の改革はそれなりに進むだろうけど。
社会保障<安全保障
80代くらいのお爺さん(他人)に「日本は税金を取るばかりで何もしてくれない。アメリカを見習ってほしい」と言われたワイ、激しく同意
バターを捨てて大砲を集めるのか
嫌な時代になったもんだ
ポーランドとの違いは自立した防衛費で無駄に失う金と米帝の子飼いとなって失うプライドを選べる点か
まあ立地的にアイルランドやニュージーランドの様に我関せずは無理だとしても結局北米のエリアディフェンスに組み込まれるんだから程々で妥協だな
個人的には北極海沿岸国で組んでくれると面白くなるのになと
露さんが欧州と中国に圧力をかけた方が世界が安定すると思ってる派なんで
米さんは強敵がいないと真面目に頑張れないからなあ
(ロシアにそれだけの国力が)ないです
トレードオフの合意形成が必要って、そりゃカナダとポーランドは違う
いくらアメリカに対するカナダ国民の評価が「信用ならない国」になった所で、国民の感覚をロシアに対するポーランドと同じにはならない
この先ずっと次の大統領がトランプ路線を引き継ぐと予想してるなら別だが
社会保障は若者搾取だというのは結果的には事実だが
誰かがそう仕組んだとは言い難いので陰謀論ではないんだよね。
人口が増え続ける、という19世紀からの基本的トレンドに乗って
考えれば若者から徴収して老人に配るスキームは何の問題もない。
自分が老人になったら確実にもっともらえるはずだからね。
年金も医療も要するに若者→老人の所得移転だけど、昔はこれで
何の問題もないので、比較的議論なく決定されてしまった…
で少子高齢化の現代に至って、結果的に最悪の世代分断政策に
変身してしまったと。
どこの国でも、この補正は確実に来ると思う、でその切欠は国家が
他のことに支出する必要が出たタイミングになり、今の国際環境
だとまあ結果的に防衛費増額になるでしょうね。
でも「戦争に社会保障を奪われた」のではなく、もともと持続不可能
だったという点は見過ごしてはいけません。
その社会保障で食ってる職業人です。窓口負担があまりに安すぎです。数百人とか数千人を雇用して、客が1日何百~数千人来てる。窓口負担がこれほど少なくてよいのか?と考える能力が日本人は低すぎです。
アメリカの政府関係者が「日本人の甘やかされた考え方が嫌だ」と公言していましたが、まさにそう思います、田中角栄あたりから肥大化したと思います。
東北上越新幹線を採算無視で建設したのが一番響いたことと、国鉄分割民営化で宮城県出身の三塚博の案で処理したことが一番の原因と思います。結局、これが東北と新潟の人口激減の原因になっているのです。
米国を仮想敵とするなら、ポーランド以上の軍事費が必要になるのだがカナダにその覚悟はあるのだろうか