ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は8月30日「クピャンスク市がはほぼ完全に封鎖された」と発表したが、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「達成もしていない成功を報告することは裏目に出る可能性が高い」と指摘し、ロシア軍は美しい報告書で何回恥をかけば気が済むのだろうか?
参考:Минобороны России
参考:Герасимов: Купянск почти полностью заблокирован российскими войсками
参考:ВС России берут Купянск в окружение, сообщил Ганчев
参考:Марочко рассказал, насколько российские войска продвинулись в Купянске
参考:Туманы Заосколья Обстановка на Купянском направлении по состоянию на 1 сентября
参考:Два майора
何回やれば気が済むのか、今年2月に解放できていない「トレツク解放」を発表したことから何も学んでいない
ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は8月30日、2025年春に始まった夏季攻勢の結果について総括を行い「ロシア軍によってクピャンスク市がはほぼ完全に封鎖されている」と、ロシア側のハルキウ州知事も国営メディア=RIAノーボスチの取材に「ロシア軍がクピャンスク市を包囲している」と、ロシア人軍事アナリストのアンドレイ・マロチコ氏も「クピャンスク方向でロシア軍の突撃部隊(歩兵部隊のこと)はソボリフカ北東部、モスコフカ南東部、クチェリョフカとペトロパブリフカに進軍し、クピャンスク市内では先遣隊がコムソモール公園に到達した」と述べたが、この美しい報告を鵜呑みにするロシア人は多くない。
ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは30日「ウクライナ軍がソボリフカ方向に伸びたロシア軍の突出部を切り落とした」「ウクライナ軍がモスコフカ集落の支配をほぼとり戻した」「ウクライナ軍がクピャンスク郊外からロシア軍を押し戻した」と報告し、ソボリフカ郊外の広大な森林地帯に取りつかれるリスク、P-07やP-79の物理的遮断を回避したと主張。
ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも1日「クピャンスクをオスキル西岸から包囲すること自体は理に叶っており、防衛側の補給ルートを遮断して包囲するロシア軍の戦略にも合致している。しかしウクライナ軍もロシア軍の狙いの阻止に力を尽くしている。視覚的にもウクライナ軍がモスコフカ周辺に存在すると確認されているにも関わらず、クピャンスクの包囲に成功したと上層部に報告することは裏目に出る可能性が高い」と指摘した。
“ロシア国防省は6月20日「ロシア軍がモスコフカを占領した」と、7月6日「ロシア軍がソボリフカを占領した」と発表したため、ロシア軍はクピャンスクを半包囲する状況を作り出すはずだったが、ウクライナ軍やジャーナリストらは先週「ウクライナ軍部隊がモスコフカ集落の中心部に存在する映像」「モスコフカ集落のウクライナ軍陣地に対する攻撃の様子=Ⓐ」を公開した。この映像は2ヶ月前に撮影された可能性があるものの、ロシア国防省も2ヶ月以上前にモスコフカ占領を発表しているため同集落の状況に関して疑問を抱かざるを得ない”
“敵が公開した映像には編集の痕跡が見られ、もしウクライナ軍がモスコフカ集落を完全に掌握しているなら編集は必要なかったはずだが、一方のロシア軍はモスコフカ集落を支配しているという明確な証拠すら提示していない。さらにクピャンスク市内では「ウクライナ軍が水道局の南にある住宅街を攻撃している映像」が登場し、ロシア軍が市内郊外に限定的な足場を確保した可能性を示唆しているものの、ロシア軍がクピャンスク市内の北郊外を支配しているという報告は非常に疑わしい”
“さらに8月31日にはドローンによってテレビ塔に引っ掛けられた国旗の映像が登場し、一部の情報筋はテレビ塔周辺をロシア軍が支配していると主張している。クピャンスクをオスキル西岸から包囲すること自体は理に叶っており、防衛側の補給ルートを遮断して包囲するロシア軍の戦略にも合致している。しかしウクライナ軍もロシア軍の狙いの阻止に力を尽くしている。視覚的にもウクライナ軍がモスコフカ周辺に存在すると確認されているにも関わらず、クピャンスクの包囲に成功したと上層部に報告することは裏目に出る可能性が高い”
“モスコフカ周辺には広大なグレーゾーンが広がっている可能性が高く、ソボリフカ方向へのロシア軍前進は非常に疑わしい。なぜならソボリフカの東側にはクピャンスクが存在し、西にはコヴァリフカとネチヴォロディフカが存在する。そしてコヴァリフカとネチヴォロディフカではロシア軍の存在が確認されていない。この方向の相対的な二次性、両軍が形成する前線ラインの疎さ、ドローンの数、そしてウクライナ軍がクピャンスクを中心に強力な防衛拠点を築いていることを加味するとクピャンスク周辺の状況は「膠着状態」というのが正解で、短期間で迅速かつ大規模な突破や包囲の可能性はない”
RYBAR以外のロシア人ミルブロガーも「ロシア軍がモスコフカとソボリフカを占領した痕跡が見つからない」と再三指摘しているが、もう公に発表してしまったため後戻りすることが出来ず、ゲラシモフ参謀総長は美しい報告書(もしくは成功の前借り)に基づいて「ロシア軍によってクピャンスク市がはほぼ完全に封鎖されている」「オスキル川西岸地域におけるロシア軍支配地域の先端はクプヤンシク・ヴズロヴィイから西に伸びる線路沿いに到達している」と発表してしまい、ほぼ完全にクピャンスク市を封鎖したというのは「P-79の移動をほぼ遮断した」という意味だ。
実際にはモスコフカすら制圧できていない可能性が高く、今年2月に解放できていない「トレツク解放」を発表したことから何も学んでいないようだ。
追記:ロシア人ミルブロガーのДва майораはゲラシモフ参謀総長による夏季攻勢の総括について「この報告は腐敗したショイグ前国防相体制の遺産と戦っていることを示したが、同時に報告の一部についてミルブロガーや有志から批判を受けることになった。なぜなら控えめに言っても現実とかけ離れ、美化された情報(クピャンスク包囲やポクロウシク包囲のこと)が含まれていたからだ。言うまでもなく国防省自体に自浄能力はないため別レベルの政治的意思が必要だ」と述べた。
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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России

























「何も学んでいない」のでは無く「学ぶ必要すら無い」、「成功の前借り」では無く“予言”だと考えているとしたら空恐ろしい事ですが…。大本営発表をスルー出来る一定数のロシア国民の存在も、80年前の大日本帝国やソ連時代よりは相対的に自由になったからなのか、情報化社会の恩恵か、“勝者”の余裕なのか、或いはその総てなのか…色々考えさせられます。
しかし、「これからこんな作戦やるからよろしく」と予告されたようなもので、防御する側は結局失うことになっても抵抗の計画を立てやすくなり、攻撃側の犠牲も増えます。作戦計画の漏洩なんて大変なわけで。
もっともよほどの余裕があって、予告した作戦から考えられる防御計画を前提にさらに撃滅できるのならそれも一案でしょうけど。そこまでやっているならロシア側観測者が成功の前借りをああも批判しないと思っています。
自分が見に行く戦況図の人は、ここの反撃の為に
ポクロウシクの防御が弱まったといってます
数の少ないウクライナはロシアの成果を潰す為に
陽動まがいな動きをさせられたら犠牲が増えるだけだと思いますが?
これが虚々実々で別方面を実は優先してるとかなら理解できるのですが、そういう情報戦でもないからロシア側ミリブロガーが批判するのでしょうね
確かに、ロシアの焦りと苦境が以前より深まっているのは確実そうです。
>“勝者”の余裕なのか
今のロシアのどこに「勝者の余裕」なんかあるんだ?まあ、ロシア国民はそういう妄想に浸ってるのかもしれないけど
なんかいよいよ大本営発表と化して来たよね。
大きくて美しい報告書
まったく…ロシアもウクライナも美しい報告なんて辞めて正確な情報を発表しろよ…。今の時代にそんな美しい報告で騙される人なんておらんぞ
騙される奴がいないなら公表する意味も無いでしょうよ。露宇が嘘情報で痛い目に遭うなら勝手にしてろで良いんじゃいの?嘘の代償を自国内でしっかりとケリ付けてねだけど。
結局戦況を見てる人は騙されませんが、そんなのはごく一部なので。
軍事的に悪手でも騙される人向けの情報発信なのでしょう。
まあSCOに参加する国の人たち向けの今の発表なのかなと思いますね。
まだ太平洋戦争時の大本営発表の方が理解出来る。なんで勝ってる方が、こういうことをブチ上げるのか。
実際には継戦厭戦層が意外と厚いのか。
ゲラシモフはそろそろ定年だしマジで辞めてくれねえかなあ。この地図の他の支配地域もオカシイからゲラシモフは嘘と分かりながら報告してるはず。トップが嘘を許容すれば部下も嘘をつくようになる。 ショイグと並んでウクライナ英雄勲章に値する人物だわ。
>ショイグと並んでウクライナ英雄勲章に値する人物だわ。
だとしたら、もうしばらく踏ん張ってもらいたいところですね。
「成功の前借り」のツケを、ロシア兵の血で払ってもらうために。
※当然、ウクライナ側にも損失が出るでしょうが、来るとわかってりゃ少しは減らせるか……いや、ウクライナ内部もそれなりに腐ってるしな……
横合いから失礼しました。
後の記事を見て確信が深まったけどロシア軍の駄目な所はゲラシモフ関連の人事だわ。
ポクロウシク方面の海兵隊が駄目なのも155旅団だからだろう。アフメドフ将軍が率いてるらしい。
で無能エピソードを多数持ってる彼が今もクビにならないのはゲラシモフ参謀総長との親密に関連していると。
ただ総司令官のゲラシモフを大々的に批判するのはロシアのミルブロガーも腰が引けてる感じがするな・・・
ロシア経済も大分くたびれて来ていて、悪い数値も目立ち始めているので、戦意高揚を図らないといけないんでしょうね。
ファシズム国家といえど、民意に注意を払わないとならないのは、民主主義国家と一緒だなって。
確かに、RYBERの指摘は純軍事的には圧倒的に正しく、この種のニセ勝利情報は自軍にとって百害あって一利も無いのは間違い無いでしょう。
しかしながら、軍事ではなく政治的観点から見れば、これには相応の意味や効果があります。明日には中国の抗日戦争勝利記念式典の軍事パレードを控え、中国軍が、名実ともに最強となったその堂々たる威容を全世界に発信します。非米側国家の指導者が並び立ち、「もはやアメリカと西側の軍事的優位は過去の遺物となった」ことを、高らかに宣言するわけです。
この際、ウクライナ如きに大国ロシアが苦戦しているとあっては、そのムードに水を差すことにもなりかねない。戦術レベルでも前進し続ける成果、勝利が必要なわけです。
軍事より政治を優先することは純軍事的観点からは途方もなく愚かな事だと思われがちですが、勝っている場合においてはその限りでは無く、政治的効用が軍事的副作用より大きい状況では、有効な手法だと私は考えますね。
最も、負けている側がこれをやりだすとその副作用により、負け方が加速度的になってしまうのは、本邦の過去を見ても明らかですが。
あんまり同意できませんね。
別に中国の為にロシアの嘘が必要な理由はないでしょう。
中国人はとっくにロシアを見下しきっています。
自分たちのガソリンスタンドに過ぎない、と。
これは中傷ではなく単なる事実であり、もはやロシアが中国と
対等だと考える方が異常です。
ロシアが苦戦しているのは準大国、もしくは少し大きい中小国が
さらに下位の小国に苦戦していると捉える方が妥当です。
どうですかね。
大本営発表だって報道時点では主観的には負けが確定しているわけでなし、勝利の前借りぐらいに思ってた人もいただろうから本質的に同じことなのでは。
そもそも、勝っている側の公式報道だろうと確信的にフェイクを混ぜてくるのであれば信用されなくなるのは変わらないですよ。
それに、負けが込んでくるとフェイクが混ざる割合が大きくなるのは体制の違いに関わらず一般的な現象と思いますがね。
なんというか未だにポクロウシクを占領できていなかったりしてロシア軍も焦っているのかな。それか情報戦のつもりで美しい報告をしているのか…今の所相手よりも自分達の方がデメリットをくらっているけど。
勝利の前借りをすることによって敵の目を引き付け、その隙に全然違う戦線を攻撃するという高度な情報戦の一貫なのでは??(ちょっと無理のあるロシア擁護)
ウクライナ兵士は全員DEEPSTATE(とRYBER)を見てるらしいから無理じゃないかな
ロシア国営放送はネットを使えないロシアの人ぐらいしか信じないよ…
制服組トップがプロパガンダで言ってるのか、正しい情報が上がってないのか、どっちなんでしょうね。
会社もそうですが、トップが大言壮語を言った時に、現場は辻褄合わせのために余分な汗をかかなければならないので大変だろうなと。
例の破壊工作部隊DRGが進出したエリアがこれなのかもしれませんね
本体が制圧して定着したわけじゃないからウクライナが本腰入れればすぐに追い返せてしまうのかも。
仰る点、有り得そうですね。
どこに、守備の重点を置いていくのかも難しい所だろうなと。
> 制服組トップがプロパガンダで言ってるのか、正しい情報が上がってないのか、どっちなんでしょうね。
これがわからないから何とも言えないね
ウクライナも突破されたポクロウシク北方で一時は景気の良い発表してたけど
ISWですら未だにドブロピリアの近くでドンパチやってるって評価に落ち着いてるしな
だから8月○日の戦況図って小さく隅に書いてあれば、この上なく正確な戦況図である可能性もある
そもそもクピャンスクはもはやドローンで兵站を遮断しているか物理的にしているか程度の差異しかないわけで
大規模な増援を送って解囲しない限り壊滅するだろう
言うほど現状にそぐわない報告でもないんだよな(以前のシヴェルシクと比較すれば明らかに)
仰る通りなんですよね。
加えて、外交による停戦交渉・和平交渉が視野に入っていたわけですから、政治的な主張と合わせる必要性があったのかもしれないですし。
どういった組織の論理かは不明ですが、両国ともに複数OSINTサイトがこういう時に機能しているのは、非常に重要だなと感じています(日本だと、おそらく無理でしょう)。
ショイグゥ! ゲラシモフ! 包囲部隊はどこだ!!
これはまた『正義の行進』が必要かな?(なおそんな勇者はいない)
追記:<ロシア側のハルキウ州知事
これはもっとツッコまれて良いと思うの。やっぱり領土目的も多分に有るんじゃないか!
この美しい報告書についてはょっと面白いなと思います
ゲラシモフが、クピャンスクとポクロフスクという重要拠点について言ったことです。
そしてゲラシモフが既に耄碌していたり、あるいはただのキャンペーンとかプロパガンダのためにこう言うような事を言うだろうかと俺は思うんですね。
一度思う事を書いてみたのですが、滅茶苦茶長くなったので消しましたw
そして、簡単に言うと「ある意味で包囲は既に出来ているのではないか?」と言うのと、「なんならクピャンスクやポクロフスクに更に防衛部隊をウクライナは突っ込んできてもよい」と言うのの似てんじゃないかなと。そしてもう一つあるとしたら、「我々の言葉を信じるウクライナの兵隊や一般人は今のうちに逃げろ」です。
どちらもこのまま戦闘が継続するならロシアにしてみると確保するしかない場所です。それは動かないはずです。だから、「これからやるよ」と表明してもいいとは言えます。何時やるかは別に言っていないわけで。すぐやるかもしれないし、そうでないかもしれない。
ロシア側はまだウクライナ人達を「西側諸国によって騙され操られている可哀想な(元)同胞」と見なしている色はあるのではないかと思います。
もっともそれはそれとして、これだけ被害が大きく、国土は取られ、死傷者も多いのではもう昔のようにはならない事は特にウクライナ側は確実です。
ロシア側に避難したウクライナ人と西側に避難したあるいは止まったウクライナ人の間の確執も凄いものになるでしょう。
この二国関係は本当に今後本当にどうなるのだろうと思いますね。
一度書いたものを削って削ってこんな感じです。