ロシア国防省は「ドネツク州のビロホリウカ、セレブリャンカ、フリホリフカ、ヴェルフノカミャンスケを占領した」と発表したが、RYBARなどロシア人ミルブロガーらは「事実ではない」と否定、査察によって現地司令部の嘘報告が発覚し、第3軍団司令官は解任、第7旅団司令官は拘束、同大隊指揮官も解任されたらしい。
参考:Позывной《OSETIN》
参考:Круговорот вранья из-под Северска: финал (?)
ウクライナ人にとって「無能なロシア人司令官の退場」は残念なニュース
ドネツク州シヴェルシク方面で10月上旬「ロシア軍兵士がフリホリフカ集落の家屋=Ⓐに国旗を掲げる様子」「ロシア軍がヴェルフノカミャンスケ集落の家屋=Ⓑで国旗を掲げる様子」が登場、これに基づいて「ロシア軍がフリホリフカ集落の東半分とヴェルフノカミャンスケを占領した」という主張が出回り、米国の戦争研究所も「ロシア軍がヴェルフノカミャンスケを占領した(現在もISWは同拠点をロシア軍占領地域として扱っている)」と報告したが、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「これは事実ではない」と否定。
RYBARは「ビロホリウカ郊外の取水施設から数人の兵士がドネツ川に沿ってフリホリフカに移動し、郊外の家屋で国旗を掲げて帰っただけでロシア軍は集落を支配していない」「ロシア軍がヴェルフノカミャンスケ集落の家屋にドローンで国旗を設置しただけで集落を支配していない」「この映像に含まれるロシア軍兵士が国旗を掲げる様子はヒルニク・クラホヴォ方面のゼランヌ・ペルシェで撮影されたもので、質の低い従軍記者やジャーナリストが嘘つきの利益のため現実とかけ離れた映像を作成しただけ」と指摘。
この件について他の従軍記者やミルブロガーも「RYBARの指摘は正しい」と報告り、あるロシア人従軍記者(Позывной Брюс)も「知り合いに確認してみたが現地指揮官が上級司令部に報告しているほど現地の状況はバラ色ではない」「信頼できない報告のせいで指導者らは誤った判断を下す」「存在しない勝利は部下の命を危険に晒すだけ」「この報告に現実を追いつかせるため現場の兵士らは無謀な攻撃を強いられる」「そして上層部は存在しない勝利を根拠に次の攻撃計画を策定する」と批判したが、ロシア国防省は10月23日「セレブリャンカを解放した」と発表。
RYBARは26日夜「アフマト部隊公開の映像に基づけば自然公園の川沿いでウクライナ軍が大きな拠点を占領しており、フリホリフカ占領も事実ではないため、ロシア国防省が発表したセレブリャンカ制圧など到底不可能だ」「書類上でのみ解放されたヴェルフノカミャンスケでパターン化された攻撃が再び確認され相当量の人員と装備を失った。この攻撃は別の突撃部隊の兵士も死に至らしめた。ヴェルフノカミャンスケの北に位置する標高が高い要塞が前進を阻んでいる現状で集落占領は現実的ではない」と報告していたが、遂にロシア軍上層部がシヴェルシク方面の嘘に気づいたらしい。
ロシア人ミルブロガーのПозывной《OSETIN》は16日「РыбаремやПодолякойの報告によってシヴェルシク方面司令部の不正確な報告や理解不能な攻撃指示の実態が明るみになった。その結果、第3軍団の司令官は解任され、第7独立自動車化狙撃旅団の司令官は逮捕され同旅団の大隊指揮官も解任された。この方面に配備されている第6、第123旅団でも査察が実施されている。つまり嘘の報告を行った司令部要員が全員交代したのだ。これは非常に良い結果で、後任の司令官が同じ過ちを犯さないことを願っている」と報告。
RYBARも「シヴェルシク方面の偽装占領に関連して非常に珍しいニュースが飛び込んできた。現地に赴いたロシア軍上層部は「解放」を発表したセレブリャンカやフリホリフカの後方に位置するビロホリウカ(ここもロシア国防省が何度も解放を発表)を訪問しようとして報告の嘘に気づき、この方面の上級指揮官らは解任、拘束・逮捕、停職、降格、移動の処分が下された」と述べ、ヴェルフノカミャンスケについても以下にように指摘している。
“従軍記者らは陣地に招待され「存在しない集落占領」を誇らしげに語る兵士らを取材し伝説を作り上げた。ネット上では「幾つのか敵陣地を奪うことは出来た」「敵の反撃で奪った陣地の放棄を余儀なくされた」という意見もあるが、現実的には当時も現在もヴェルフノカミャンスケを占領したという事実はない”
ロシア人にとっては「無駄にしていた戦力の効果的な運用」に期待できるため朗報かもしれないが、ロシア国防省にとっては「発表してしまったビロホリウカ、セレブリャンカ、フリホリフカ、ヴェルフノカミャンスケの占領をどうするのか=現地司令部の嘘報告を公にするのか」という問題に頭を悩ませるはずで、ウクライナ人にとっても「無能なロシア人司令官の退場」は残念なニュースと言える。
因みにウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは「ロシア軍によるビロホリウカ、セレブリャンカ、フリホリフカ、ヴェルフノカミャンスケの占領」を当時から一切認めてこなった。
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※アイキャッチ画像の出典:IZ.RU
ロシア自浄作用が働き結果を出せない嘘報告する無能な人間を纏めて更迭するという当然の行動が、ロシアとウクライナの嘘とプロパガンダばかり見ている中だと傑出した行動に見えてしまうが、戦争勝ちたいなら当然の処置行っただけか。後任はこういった場合は叩き上げの有能な人間当てること多いだろうから担当の戦線で動き出てくるかも知れないですね。
おお、あのどうしようもないロシア軍の指揮官はクビになりましたか。ロシアにとって良いニュースでしょうね。ロシア軍は腐敗まみれと言われますが、査察によって無能がクビになるのはウクライナ軍よりも健全かも知れません。
それにしても、非常に能力の低下したウクライナ軍がこの地域においてロシア軍の前進を概ね阻止しているのは驚くべきことです。もちろんロシア軍の指揮官が無能だったのも大きいのでしょうが。以前Tatarigami氏が「2024年にウクライナがどうやってロシアに抵抗できるのかを知りたければ、ベロゴロフカ(ビロホリウカ)という集落を見てみよう」という優れた論考を書いていたのを思い出しました。まあウクライナ軍は3月に公開されたこの論考の内容を活かせなかったのですが…
しかし、その一方で暗澹たる気分にさせられるのはこの地域の破壊です。GoogleEarthにおいても、ベロゴロフカ村が圧倒的な破壊を被っているのが確認でき興味深いですね。しかも、2022年7月時点では健全な状態であったのに対し、同年8月には完全に焦土と化しています。衛星画像はここで終わっていますが現在はさらに悲惨な状態でしょう。一時的とはいえ、ロシア軍兵士がこの地域に旗を立て占領を主張することができたのも、ここが破壊によってノーマンズランドに近い状態になっていることがあると考えます。
戦争は大体の場合華々しい攻勢だったり、その攻勢を阻止した防御だったりに焦点が置かれて、持て囃されますが、
実は戦争の殆どを占めるのは日頃の地道な消耗戦なんですよねえ。
日頃の消耗戦で優位に立てれば、敵は戦力を集積できず、攻勢に移ることがそもそも難しくなります。
ウクライナ軍の南部攻勢およびクルスク攻勢への兵力転用、ウクライナ東南部地区劣勢箇所への援軍派遣で戦力的に劣勢になりつつあるにも関わらず、最小限の犠牲で最大限の損失を与えるこの地域のウクライナ軍は、防衛戦争の理想と言えそうです。
嘘でごまかす無能な指揮官や嘘をつく倫理的な問題というより、
その嘘による間違った情報で、無駄な損害が出たり作戦に失敗するのが問題なんでしょうね。
一旦、国民や第三者に発表した公式報道を訂正するのは、今のロシア軍は官僚的といっても幾分かは柔軟性はあるように思います。
シヴェルシク方面、やらかし続けてた、無能な司令官ですかね?
ウクライナにとって悲報と言うのは確かにそうかもしれません、軍事ブロガー・OSINTサイトによってガバナンスが働くのは興味深いですね。
私がずっと不思議に思っているのが双方の憲兵不在による問題点です。
ウクライナ軍に憲兵は存在せず、軍事法廷も開かれないためSBUが捜査拘束し検事総局に送検して地方裁判所で裁かれるというルーチンで
脱走兵の裁判順番待ちが1万件を超えてしまい、仕方なく最高議会で1回目の脱走は不問(無罪)とするので十分な休息を取ったら自主的に部隊復帰せよ、という法案が通り今に至ってます。
露軍側の軍法はよくわかりませんがまともに軍規が守られているとも思えません。
そこで双方ともに”督戦隊”なる存在が勝手に想像上で作られ特に露軍囚人兵が一歩でも引いたら撃たれる、のようなソースゼロの噂話が一人歩きするようになってしまいました。
日本では悪いイメージがあるかもしれませんが、100万を超える軍には規律を守らせる(表面上でも)憲兵は必要と思う。
前線の部隊視察等で貧弱な装備や訓練不足はすぐさま見抜き是正勧告までは出せるはずですし、無能な司令、部隊指揮官に対する強力な監視機構になるはずです。
これはブトゥソフやDeep state が言及している嘘報告を減らす方向へ有効な対策にもなります。
ソ連というのはそもそもロシア内戦の中から発生した極めて軍事的な性質を持つ組織であり、その指導者たちは軍部を管理下に置く権限を得るため暗闘を繰り返してきた歴史があります
その権限の源泉は軍警察としての任務であり、それを担っていたのはNKVDやKGBなどチェーカーを源流とする秘密警察でした
大粛清でエジョフやベリヤが軍部の将校を吊り上げまくった事例は有名ですね
NKVDにしろKGBにしろ時の権力の移り変わりと共にあり、時に庇護され時に解体が議論されと変遷もありつつチェーカー以来の命脈を保ち、現在もその後継組織たるFSBやSBUが同様に軍警察の任務を担っています
この非効率性についてはご指摘の通りで、NKVDがとんでもない規模の権力と捜査力を持っていた大祖国戦争の時代にはあまり問題になりませんでしたが、現在のウクライナ戦争ではやはりこの事例に見られるように対応力が飽和してしまっています
権力闘争の結果によって生じた現実に求められる能力との乖離についてはロシア内部でも認識があったようで、セルジュコフ改革の一環として軍部内に諸外国と同様の権限を持ついわゆる憲兵を創設する動きがありましたが、結局今ある権限の喪失を恐れたFSBの反発によって頓挫してしまい、セルジュコフの解任理由にもなりました
一応その名残としてロシア国防省内に軍警察を名乗る部署は出来ましたが結局その権限はごく限られたものにすぎず、軍内部の捜査権については変わらずFSBが保持しており、またトップにFSB出身者が充てられて動きを監視されています
やはり指揮系統を異にする政治将校は必要なんですね。
警察が最も優れた国であっても犯罪の発生を完全に阻止することはできない。どれだけの事件を早期に阻止することに成功したかは無視されがちだが、ミスの事例だけが注目されている
すべての交差点にすべての路地に巡査を配置することで、犯罪率を極限まで下げることができるだろうが、財政的にはまったく不可能だ
憲兵も似たような状況だろう
あなたは何も知らないならせめて無知を自覚して調べましょう
ロシアやウクライナに軍部内の捜査権を持つ憲兵は存在しません
その権限を持つのはNKVD、KGB、FSBといった軍部外の秘密警察組織です
逮捕とか降格、更迭とか甘くないだろ?
粛清か戦死か行方不明になるとしか…
最近はウクライナ側の嘘報告が目立ってたから、今回のニュースは対比が鮮明に映るわ。でもまさかあのロシア軍首脳部が粛清という決断に至れたのは、2022年、いや数ヶ月前でも想像出来なかったかもしれない。やはりこういった動きを見ると余裕さが少し見えるわね。
ウクライナ軍から見れば悲報ですね。上層部交代のゴタゴタ時間で守りを固められれば良いのですが。
ビロホリウカ、セベロドネツクや石油施設といったロシア軍の拠点から10キロもないんですが未だに保持出来ているの凄いですよね。北側を川が流れていて、川の向こうは森林地帯ですから、北から機甲部隊が来にくいのかもしれません。
ロシア軍は無能な働き者を更迭出来る自浄作用が働いてますね
それにドローン等の効率的な運用や有効な戦法をローテーションをしながら軍内で情報共有しているようですし色々と学ぶべき所が多いように思います
ウクライナ軍はまさに反面教師な要素ばかりですが・・・
>第3軍団の司令官は解任され、第7独立自動車化狙撃旅団の司令官は逮捕され同旅団の大隊指揮官も解任された。この方面に配備されている第6、第123旅団でも査察が実施されている。つまり嘘の報告を行った司令部要員が全員交代したのだ
よろしい、ならばシベリア送りだ!
しかしこれほどまでに長い間、嘘報告がバレなかったというのもすごい話だと思いますね
シベリア送りなら良いですが、突撃兵にされるかも。
シヴェルスクに新たに着任する司令官も続けて無能ならありがたいんだがな…まあそうは行かんよね
クルスクのほうでも占領済みと聞いてそのまま呑気に移動してたらウクライナ軍がそのままいて攻撃して壊滅したとかいう笑えない話があるみたいだね。
かなり上からどやされたのかも知れませんね。お前らが私を騙そうとしていたのか、お前らも騙されていたのかハッキリしろと。で、尻尾切りという感じかな。
そもそも前々から言われていた様にかなり無理のある進捗スケジュールを課せられていたというのが指摘されていて、また衛星や航空撮影や物資の手配等からある程度分かった上でいくつかは見逃されてた可能性も指摘されていたんだよね。
もっとも、勝った勝ったと言いたいだけの層にはどうでも良かった様で、今度はこれでロシアが改善されたグッドニュースみたいなよくわからない反応になってる様だけども…
当然ながら、今回だけという様な話ではないだろう。そもそも、こういう話って前にもあったよね…更迭されても繰り返されるんですよ。そもそも、ノルマに現実が追いつかないとやらざるを得ないという代物なので。現実を追いつかせるべく突撃を繰り返させはしても、そう簡単に机上の予定に追いつくという訳にはいかないので。
あっという間にドネツク州完全掌握しそうな勢いであれこれ言われてるけど、いつ実現するんだ?という話なのでそりゃ上はキレ散らかすでしょう。敵は守りも出来ずに押せば押す程進めるんじゃなかったのかと。