ロシア関連

ロシア、シングルエンジンの第5世代戦闘機開発はスホーイ設計局が担当か

ロシアの国営企業「ロステック(英:Rostec / 露:Ростех)」がシングルエンジンの第5世代戦闘機の開発に取り組んでいると昨年末に発表して注目を集めていたが、どうやらSu-57を開発したスホーイ設計局が開発を担当しているらしい。

参考:Single-engine hypersonic stealth plane under development in Russia

ロシア初となるシングルエンジンの第5世代戦闘機はF-16に近いサイズで推力偏向タイプのエンジンを搭載予定

ロシアの国営企業「ロステック(英:Rostec / 露:Ростех)」は軍事産業だけでなく自動車、電機、製薬などの国家戦略上において欠かせない工業製品の開発や輸出を目的に2007年に設立され、約700社の関連企業で構成されたロシアきっての巨大複合企業(2018年実績:売上約260億ドル(約2.7兆円)/純利益約20億ドル(約2,080億円))で同社のCEOを務めるセルゲイ・チェメゾフ氏が昨年末「小型もしくは中型サイズでシングルエンジンの第5世代戦闘機開発に取り組んでいる」と明らかにした。

出典:Anna Zvereva / CC BY-SA 2.0 ロシア初の第5世代戦闘機Su-57はツインエンジン

チェメゾフ氏によればシングルエンジンの第5世代戦闘機は有人機と無人機に発展することを視野に入れたユニバーサルプラットフォームになる可能性を秘めており、現在は同機のコンセプトや技術的要件を取りまとめを行なっていると明かしたが、同機の開発はロシア国防省からの発注ではなくロステック単独の事業でチェメゾフ氏は「将来有望な航空機だと信じており海外パートナーとの協力などを含めた様々なオプションを検討中だ」と語っていたが問題は誰が実際の開発を担当するのかという点だ。

この謎についてロシアのイタルタス通信(Tass)が非常に有力な情報を報じており、26日付けの報道内容を要約すると「スホーイ設計局はロシア初となるシングルエンジンの第5世代戦闘機を開発中で最大離陸重量18トン/最高速度マッハ2.0+、搭載されるエンジンは推力偏向タイプ(推力重量比は1を超えるらしい)で操縦性や離陸性能を向上させるのに役立つ」と言っている。

出典:Public Domain 推力偏向ノズルを備えたロシア製のエンジンAL-41F1

スホーイ(Sukhoi)やミグ(MiG)と言った国内主要な航空機メーカーを傘下に収める「統一航空機製造会社(UAC)」の主要株主はロシア政府(連邦国家資産管理局が92.31%の株式を保有)だったのだが、航空機開発の効率化やサプライヤーとの緊密な協力を進めるため多数の航空機産業に関連する企業を傘下に収めていたロステックへのUAC統合が2018年に持ち上がり、政府が保有するUACの株式を2021年までにロステックが取得しているのでスホーイ設計局が開発中の戦闘機はロステックが言及していたシングルエンジンの第5世代戦闘機でほぼ間違いない。

因みにUACは独自資金でMiG-29やMiG-35を更新してSu-57をサポートする第5世代の軽戦闘機「LMFS/ЛМФС(ミグ設計局主導)」の開発を2010年代に進めていたがロシア軍はSu-57の開発や量産を優先するためLMFSに興味を示さず、2027年までの国家計画にもLMFSは含まれていなかったため計画は頓挫したと見られていた。

出典:Carlos Menendez San Juan / CC BY-SA 2.0 MiG-35

しかしUACは長い沈黙を破って2020年4月にミグ設計局が軽量の第5世代戦闘機(双発の可能性が高い)の研究を再開したと発表していたのでロステックの言及した計画は、これをシングルエンジンの第5世代機開発に衣替えしたものだろうと管理人は勝手に妄想していたのだが、スホーイ設計局が開発を担当しているので再開されたミグ設計局のプログラムとは全くの別プログラムなのかもしれない。

果たしてスホーイ設計局が開発を進めている第5世代機はどのようなデザインなのか非常に興味を惹かれるが、仮に同機が実用化されればスホーイ設計局にとってもSu-17以来(約50年ぶり)のシングルエンジン機となるため感慨深いものがある。

関連記事:ロシア、企業主導でシングルエンジンの第5世代戦闘機を開発
関連記事:ロシア、7月の航空ショーでシングルエンジンの第5世代戦闘機を発表か

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※アイキャッチ画像の出典:Geektrooper2 / CC BY-SA 4.0 2015年に公開された軽戦闘機「LMFS/ЛМФС」の風洞モデル

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    これで安く第5世代機を数揃えられたら厄介だなあ

    17
      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      Su-57の時点で単価自体は安く設定してるのにもっと安くなるのか
      ただ露機はプリンターインク商法だから全体的な価格はどうだろう

      13
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        先進各国が開発に苦慮してる推力20tクラスのしかも推力偏向エンジンでプリンターインク商法とか豪快な話でんなあ

        10
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        単発機に搭載しても問題がないレベルまでエンジンの信頼性(寿命)が向上したってことでしょ

        8
          • 匿名
          • 2021年 5月 27日

          そう解釈したいところだけれど寿命が向上したって話ではないと思う。
          一朝一夕で解決できる問題じゃないので。

          6
          • 匿名
          • 2021年 5月 27日

          最近、新型機の登場も多いしデジタルセンチュリーっていう存在もあるから、世代交代の事も考えるとエンジンの寿命はそんなに気にしないでもいいんじゃないかって考えかもしれない。ロシア的には、西側は(エンジン含めて)機体寿命が無駄に長すぎるんじゃないか、と思ってる可能性もあるし

          9
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    ソ連邦崩壊後ロシアは作戦機は双発という方針を定めたと聞いてましたが現在はどうなんでしょう。
    信頼性向上でエンジンに起因する事故率が大幅に低下してるんでしょうかね。
    個人的には無人型のほうにより興味が湧きます。

    14
      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      今のロシアでこの規模の機体は珍しいよね
      上の木主の言う通り数を揃えられる機体なら相手する国は大変だな

      14
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    最大離陸重量18tだとF-16くらいってことになるけど、航続距離か内部兵装の量を諦めることになるんじゃ?
    武装は基本的に随伴無人機に頼るとかの方針なんだろうか

    というか、そうでもなければかなり微妙なことになりそう

    7
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    海外パートナーって、有力はやはりインドなのだろうか

    1
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    自社で研究してる段階だから眉に唾して聞く話だぞ
    ただでさえロシアは吹かし話多いんだから

    18
      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      眉唾だとかふかしだと言うなら日本も同じだろ。永久に研究だけで実物が出てこない事例の数では日本も相当だよ。

      33
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        何の件を言っています?
        どういう成果物の形で発注されるかでしかないと思いますが、研究だけで終わるPJが全体の何割だと「ふかし」ってことになりますか?
        エビデンスとまでは言いませんが多少納得できるデータは欲しいですね。

        4
          • 匿名
          • 2021年 5月 27日

          それを言うんだったら「ただでさえロシアは吹かし話多い」なんて感覚で言ったらダメだよね。

          10
            • 匿名
            • 2021年 5月 27日

            つーかそもそも研究開発段階のモノを眉唾どうのと言っている奴はミリオタ辞めた方がいいと思うわw

            12
            • 匿名
            • 2021年 5月 27日

            そ、同じ意味で言ってる。
            両方とも消えてどうぞ。

            2
      • 匿名
      • 2021年 7月 30日

      機体公開されたが?

    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    無人機は消耗前提だからコストが安い方が正義
    そこそこの性能で数で勝負といったところでしょうか?

      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      無人機は用途によって色々で、例えば日本がF-Xの将来アセットとして計画している随伴戦闘型UAVはF-Xとの所謂クラウド・シューティングを構想されており、有人機以上の運動性を求められるなど高機能で消耗品扱いとは思えません。
      ロステックの計画する単発ステルス機も有人型/無人型への発展を企画してるとのことで、消耗品前提の機体規模ではないでしょう。
      イギリスもF-35やテンペストと連携する少数の戦闘/攻撃型UAV、それとは別に消耗前提のセンサー/デコイ用途と想像される多数の小型UAVを統合的に連携運用する構想を公表しています。

      7
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        それなら生存性を顧慮して無人機でも双発にしてくるんじゃね?

          • 匿名
          • 2021年 5月 27日

          損耗前提と一定の損耗を許容できるとの違いがあると思います。
          帰投能力を持つUAVは基本的に後者でしょう。
          双発にするか単発にするかはコストも勘案した運用構想上の許容度(平時の事故被害への懸念等を含む)によるのでは。

          11
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        F-Xの随伴無人機は有人機以上の運動性能を求められていますが、何のためなのでしょうかね?
        ドッグファイトでもやらせるつもりなんでしょうか?

          • 匿名
          • 2021年 5月 28日

          「将来無人装備に関する研究開発ビジョン」の中「10 取り組むべき主な技術課題(航空無人機)」に高アジリティ飛行技術の適用効果として「無人機特有の高い敏捷性実現、残存性を向上」と説明されています。
          つまりミサイル回避能力を高め生残性を高めるということでしょう。

          1
          • 匿名
          • 2021年 5月 28日

          「遠隔操作型支援機技術の研究」では、検証用の単発プロペラ実験機に「空対空戦闘固有の戦術機動が可能なこと」との条件を設けています。
          ドッグファイトする気がありそうですね。

      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      有人機にチーミングする無人機と、対地攻撃用の無人機は分けた方が良いよね。
      前者は高価になるけど、パイロットの生存と変態飛行を可能にする。
      後者は嫌がらせのため、なるだけ安く。

      14
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    ロシアの戦闘機って綺麗だったりするから好きだわ
    Fー3も素敵な見た目になるといいなあ

    10
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    アメリカのデジタルセンチュリーはもとより、インドも暫定主力兼輸出テジャスMK1A、主力量産テジャスMK2、艦上TEDBF、ステルスAMCAで分けるみたいだし、下手にマルチロールにして開発統合するよるより、目的ごとに機体開発分ける方向に戻ってきているのかな。

    2
      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      そもそもF-35がなんとか形になっただけで計画自体は無茶があるから他国は真似の出来ないしアメリカも痛い目見たから二度としない

      9
        • 匿名
        • 2021年 5月 27日

        MBT-70「せやろか?」
        F-111「せやろか?」
        EF-2000「せやろか?」

        10
          • 匿名
          • 2021年 5月 27日

          ラファール「ワイもおるで」

          1
            • 匿名
            • 2021年 5月 27日

            あんたは違うだろ…

            6
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    ロシアって複数の開発計画を並行して進めるけどいっつも頓挫して共倒れを繰り返してるよね
    開発計画統合しないんか?

      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      「統合」と言うのもある意味死亡フラグなので…

      2
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    もしかしてSu-57も予算面で炎上してるのかな
    表に出ないだけで

    11
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    性能的にはどうなるかわからないけれど、ロシア機ならではの美しさを持つ機体が出てきそうな気がする

    4
    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    ヤコブレフ201に日の目を見る日が来るのか

    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    なんとなくFAF味のある機体だ・・・。雪風とフリップナイトシステムがもうすぐ・・・くるといいなぁ。

    1
      • 匿名
      • 2021年 5月 27日

      ノーマルシルフすこ😍

    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    アイキャッチ画像を見て、クラッシャージョーのミネルバを連想しちゃいました。
    改めて画像を検索すると、翼端とか全然違ったけど。

    • 匿名
    • 2021年 5月 27日

    ロステック…ロシアにこんな国営財閥あったんだな

    プーチンの宮殿もここの利益で作られたんやろうか?

    • 匿名
    • 2021年 5月 28日

    このネタの以前の記事で「設計はMiG担当かな?」と書いたら「ロステックとUACは別グループだ!」と指摘されたが、やっぱり傘下企業で良かったじゃん…

    一応後でソースも提示したのに全くの無視だったけどさ

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