ロシア関連

キューバ危機の再現? 交渉が不調ならキューバやベネズエラにロシア軍配備か

新しい安全保障協定の交渉で妥協点が見つけられないロシアは「キューバとベネズエラにロシア軍を派遣する可能性について肯定も否定できない」と語り注目を集めている。

参考:Russia won’t rule out military deployment to Cuba, Venezuela

ロシアが持ち出してきた新たな交渉カードは米国からの妥協を引き出す可能性がある

米国とNATOはロシアが要求する新しい安全保障協定について交渉をスタートさせたが、NATOの東方拡大停止、ロシアと国境を接する東欧諸国からのNATO戦力引き上げ、ウクライナへのミサイル配備禁止といったプーチン大統領の要求の大半は受け入れられないと主張、特に米国は「戦力配備に関するロシア側の要求に応じるなら双方が譲歩すべき=東欧諸国からのNATO戦力引き上げるならロシアも戦力を国境に近い地域から後方に移動させるべき」と要求したものの「ロシア領内のどこに軍を配備するかを決定するのは我々の自由だ」とロシア側は拒否した。

出典:Wendy R. Sherman ジュネーブで会談した米国とロシアの代表

プーチン大統領はモスクワまで5分程度で到達する極超音速ミサイルのウクライナ配備を懸念しており、米国との交渉にあたるロシアのリャブコフ外務副大臣は「協議が失敗に終わりロシアへの軍事的圧力が高まればキューバとベネズエラにロシア軍を派遣する可能性について「肯定も否定できない」とメディアに語り注目を集めている。

つまり米国とNATOがロシアの要求に応じないならキューバやベネズエラに核兵器を搭載可能なTu-160を駐留させたり、まだ米国が対称兵器の実用化に成功していない極超音速ミサイル「ジルコン」搭載のフリゲートや原潜を大西洋上の公海に展開させてモスクワが晒される軍事的脅威と同じレベルのものを米国に突きつけると脅しているのだ。

出典:Mil.ru / CC BY 4.0 アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート

1962年のキューバ危機で米ソは互いにトルコとキューバに配備した準中距離弾道ミサイル撤去で合意した過去があるので、ロシアが持ち出してきた新たな交渉カードは米国からの妥協を引き出す可能性がある。

果たしてキューバやベネズエラへのロシア軍配備の可能性に米国はどのように反応するのだろうか?

関連記事:米シンクタンク、米国が提供する核の傘で韓国を安心させるのはやめよう
関連記事:実戦配備への通過点、 ロシアが極超音速ミサイル「ジルコン」の連続量産を開始

 

※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru / CC BY 4.0

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コメント

    • 匿名さん
    • 2022年 1月 14日

    >特に米国は「戦力配備に関するロシア側の要求に応じるなら双方が譲歩すべき=東欧諸国からのNATO戦力引き上げるならロシアも戦力を国境に近い地域から後方に移動させるべき」と要求したものの「ロシア領内のどこに軍を配備するかを決定するのは我々の自由だ」とロシア側は拒否した。

    こんなことを言い争ってるのか?
    バイデン政権に交渉する気がないのは明白だし、それがどういう結果になるのかも承知しているんだろう。
    NATOは内部分裂状態(東側・西側・米英)だから、まとまって合意することは不可能なんだろうけど、だからロシアはアメリカに保障を要求しているわけだが・・・
    この外交オンチっぷりが、米民主党って感じだな。呆れるわ。

    19
      • 匿名
      • 2022年 1月 14日

      ロシアが国内のどこに軍を置くのかは主権国家ロシアの自由だが、同様にポーランドやバルト三国に軍を配備するのはNATOの自由なんで、同じことを要求し返すのは当然。軍事力で恫喝されて一方的な譲歩をするなどありえない。
      自国の主権を尊重して欲しければ、ウクライナを始めとする他国の主権を尊重しなければならない。この当たり前のことが何故ロシアには理解できないのか。
      これがロシア流交渉術なのかもしれないが、「脅しに屈した」という形になるので余計に交渉の余地がなくなった。
      米国がキューバやベネズエラを封鎖するのは容易であり脅しにもならないが…

      とはいっても世界大戦は西側も望んでおらず、回避するには現時点でNATO非加盟のウクライナ侵攻は見逃すしかないが、兵器供給などの間接介入はエスカレートするだろうし、ジョージア、スウェーデン、フィンランドは一斉にNATO加盟交渉を開始するだろう。ポーランドを筆頭に軍拡がエスカレートすれば、先に音を上げるのは経済力で圧倒的に劣るロシアのほうだ。

      それにしても、現時点で可能性は殆どないと思うが、米露間に戦争が勃発し、戦域が欧州に限定されない事態となれば、当然「第二戦線=シベリア出兵」も視野に入るな。ということは、日本が出兵するかは別として、米軍の拠点となる以上は参戦は避けられないということになる。

      7
        • 匿名さん
        • 2022年 1月 15日

        >ロシアが国内のどこに軍を置くのかは主権国家ロシアの自由だが、同様にポーランドやバルト三国に軍を配備するのはNATOの自由なんで、同じことを要求し返すのは当然。軍事力で恫喝されて一方的な譲歩をするなどありえない。

        NATOの軍事的脅威がモスクワ近くに存在することを、ロシアは安全保障上容認できないという主張に対して、モスクワ周辺の軍配備を減らせと言い返してるようなもの。相手が納得する訳ないと思いますよ。

        >ジョージア、スウェーデン、フィンランドは一斉にNATO加盟交渉を開始するだろう。ポーランドを筆頭に軍拡がエスカレートすれば、先に音を上げるのは経済力で圧倒的に劣るロシアのほうだ。

        そうなれば、中ロ相手に2正面作戦を強いられるアメリカのほうが劣勢に感じますね。それに、NATOがさらに東部に拡大すれば、自らNATO崩壊を早めている気もします。NATO拡大を望んでいるのはアメリカでしょうが、他のNATO主要国であるドイツやフランス・イギリスが望んでいるのかどうか。

        3
    • 334
    • 2022年 1月 14日

    21世紀になってだいぶ経つのに未だに冷戦ごっこが卒業出来んのか

    4
      • 戦略眼
      • 2022年 1月 14日

      プーチンがいる間だけ。
      何れ、中華に喰われて消える。
      問題は、その後。

      13
        • 無無
        • 2022年 1月 14日

        そんなに単純には終わらないね、ロシア人のメンタリティーは敗けっぱなし認めないし、領土の取り合いでは引かない
        互いに本気を出したくない核大国同士でごたついてくれたら、日本にも漁夫の利はあるだろうが、
        その頃日本がどうなっているかこそ心配

        23
    • 幽霊
    • 2022年 1月 14日

    キューバは一時期歴史的和解が起きるかと思いましたが結局決裂しましたしね。

    4
    • 無無
    • 2022年 1月 14日

    すでに米中対決の時代なのに、米ソ対立の冷戦時代を懐かしむロシアの都合に世界がつき合わされてる感じ
    だいたい、キューバやベネズエラも本音では米国と上手くやっていきたいのに、ロシア軍が入って来たら緊張が高まってさらなる制裁の巻き添えを受けかねない
    ロシアだって海外に軍を送ると、相手国への見返りだの維持費だの支出は小さくないが、大ロシア復活という本人以外誰も期待してない見栄はりのために苦しむことになるのか
    それソ連が崩壊したルートに似てるんだが

    35
      • 成層圏
      • 2022年 1月 14日

      そうだよね。ロシアは超大国ではなく、地域大国に格落ちしたんだから以前のようにはいかないよね。(だだし、核兵器満載の軍事大国だけど。)
      米中対立は冷戦と違ってイデオロギーがないから、敵味方の考えがちょっと難しいね。
      ロシア、中国、イラン、北朝鮮、トルコどの国も共通のイデオロギーが無いから、結束するのかどうか不明だよね。
      きっと打算で動くと思うから逆に怖いね。

      19
        • 匿名
        • 2022年 1月 14日

        民主主義対権威主義が新冷戦のイデオロギー対立ではないでしょうか。
        少なくとも米国はそういう方向に動いています。

        あまり盛り上がりませんでしたが、先月の民主主義サミットの招待国からはサウジアラビア等のアラブ諸国が外され(絶対王政と軍事政権ばかりだから本来は当然なのだが)、サウジアラビアは中国から弾道ミサイルを買おうとしている。

        権威主義国は結束が難しいと言うか、ユーラシアのランドパワーばかりなんで本来は利害が衝突するんですよね
        中国がかつての清帝国の版図を取り返したいならいずれはロシアと正面からぶつかることになりますし、トルコとロシアも仲が悪い。
        アメリカとロシアが潰し合うのが中国には一番都合がいい。展開次第ではロシアが崩壊し、シベリアの資源がまるごと手元に転がり込む。

        4
    • 幽霊
    • 2022年 1月 14日

    アメリカはキューバとの国交正常化に成功していたらロシア軍が来る可能性も低かったんだろうけど、現状は再度関係悪化しているので可能性は高そうですね。

    3
    • 半蔵
    • 2022年 1月 14日

    アメリカ政府の外交政策のポンコツ化がにじみ出てきてるように感じる。別にロシアが冬を前に軍を集結させて軍上層部も寒いから帰任圧力受けて解散したのを見てて舐めてるのならロシア人がキューバなら常夏じゃん余裕喜んでやるってのを理解しないと。
    名前とメアド必須になったのいいね。

    10
    • ブルーピーコック
    • 2022年 1月 14日

    前に中国海軍の艦船をキューバに常駐させる話があったが、いつの間にやらお流れになったね。キューバが撤回したらしいが。まあ、また渡航制限やら経済制裁やらされたら困るからだろうけど。

    この段階ではまだ「ロシアがそう言っている」だけで、キューバもベネズエラも何も言っていないから、両国の反応待ちかな。ロシア的には中南米に影響力を強める良い戦略だけど、巻き込まれる側がどう思っているかはまだ分からないな

    この記事では触れてないだけで、両国とももうノリノリで声明出してたりするんかね

    2
    • 折口
    • 2022年 1月 14日

    米キューバの関係は62年当時ほど敵対一色ではなく、むしろキューバは出口の見えない経済危機に助け舟を出せる唯一の地域パートナーとして米国の助けを求めている状態なんですよね。対する米国も内政状況や優先度の関係で先延ばしになってますが、前政権で再開されてしまった対キューバ制裁の解除や外交チャンネル再開は政権公約でもあります。現状どっちの側も和解を切り出せないのはそれなりにハードルがあるからなんですが、少なくともキューバには米国との関係が必要で、米国はキューバと関係を再開する義理があります。
    ロシア軍駐留を受け入れてしまうと、和解に向けたこの10年の筋道が全部ご破算になるのは当然として、またフィデル・カストロ時代の経済制裁か、最悪の場合もっと酷い包囲を敷かれてしまう可能性があります(62年の危機では米国は全面海上封鎖までやりました)。

    ロシアがキューバ経済を支援するという可能性もありますが、自立できない計画経済にいくらか補助金を入れたところで根本的な解決にはならないことはキューバ人が一番分かっているはずです。キューバが望んでいるのは計画経済の枠組みで米国を含む自由市場に参入することで、同じく西側から制裁されているロシア人の経済カルテルに入ることではないでしょう。
    恐らくこの辺の微妙な空気感をロシアは理解しておらず、「米国の敵はロシアの友」くらいの勘定で話を進めているのかもしれないですが、時代錯誤も甚だしいと思います。

    14
      • TT
      • 2022年 1月 15日

      キューバも革命当時ちゃんと柔軟な対応が出来ればソ連側に行かなかったと思うんですけどね。
      アメリカが当時と違い柔軟性を発揮できるかというと、正直難しい気はします。

      4
    • DEEPBLUE
    • 2022年 1月 14日

    これ拡大解釈したらポーランドやドイツからも米軍は出ていけで幾らでも言えますよね

    2
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