ロシア関連

ロシア軍にクピャンスクへの突破を許した理由、ローテションと人員不足

ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは「どうしてロシア軍にクピャンスク東市内への突破を許したのか謎だ」と述べていたが、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは21日「敵のローテションを狙った攻撃だった」「人員不足が状況を悪化させた」と報告した。

参考:Купянско-Сватовское направление: прорыв обороны ВСУ к западу Петропавловки и штурм Купянска обстановка по состоянию на 17:00 21 ноября 2024 года 

ウクライナ軍が来年もクピャンスク東市内~クプヤンシク・ヴズロヴィイ~フルシキフカの範囲を維持しているとは考えにくい状況だ

DEEP STATEはクピャンスク方面オスキル川沿いについて13日夜「ロシア軍が線路沿いにクピャンスク方向へ前進した」「グレーゾーンがクピャンスク市内に伸びた」と報告、視覚的にもウクライナ軍がクピャンスク市内=に侵入したロシア軍の装甲部隊を攻撃する様子が登場。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

これに基づいてDEEP STATEは「ロシア軍の装甲部隊が13日午後にライマン・パーシイからクピャンスクに前進してきた。最初の装甲部隊は戦車1輌、歩兵戦闘車1輌、兵員輸送車2輌で構成され、2番目の装甲部隊は夜になって前進したため正確な構成は不明だ。兵員輸送車1輌は森の中で破壊されたものの、もう1輌は何の抵抗も受けないままクピャンスク市内の工場地帯まで辿り着き、攻撃を受けてから歩兵を降車させ周囲の建物に取り付いた。第116旅団、第14旅団のおかげで敵部隊の一部は破壊された。この成功を受けてロシア軍は増援を送り込もうとしたが阻止された」と言及。

これまでも少数のロシア軍兵士がクピャンスク郊外まで到達したことはあったものの、今回は「複数の装甲車輌で構成された部隊」がクピャンスク市内に侵入しており、DEEP STATEも「なぜロシア軍が市内まで突破できたのか謎だ」と述べていたが、RYBARは21日「敵のローテションを狙った攻撃だった」と言及し、クピャンスク方面オスキル川沿いについて以下のように述べている。

出典:DEEP STATE

“ロシア軍は11月中旬、ペトロパブリフカ北西に設定されていたウクライナ軍の防衛ラインを突破することに成功した。この攻勢は敵のローテションを狙ったものだったが、ウクライナ軍は人員不足のため組織的な防衛や速やかな予備戦力の投入が出来なかった。そのためシンキフカ周辺の森林地帯とクラギフカ駅を制圧することに成功し、クピャンスク市内に前進するための足がかりを確保した。さらにロシア軍は敵の混乱と地形の高低差を活かして線路沿いに攻勢を開始し、先遣部隊がクピャンスク東市内まで前進して定着することにも成功した”

“この方向におけるロシア軍の主要目標はクピャンスク東郊外にあるウクライナ軍の拠点=飼料工場の制圧だった。ここを確保すればクピャンスクからペトロパブリフカまでのP-07区間を火力管制下に置くことが出来る上、工場の東側が泥炭地なのでペトロパブリフカ方向からの反撃も受けにくい。これと並行してロシア軍は大きな抵抗を受けることなく缶詰工場や製糖工場に向かって前進を開始し、敵も予備戦力をここに移動させたため初めて大規模な衝突が起きた。ウクライナ軍は何とか状況を安定させたが、双方とも製糖工場一帯を安定的に支配していない”

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

“ウクライナ側はクピャンスク方向に対する突破の影響を最小化するため関連映像の公開を遅らせており、ロシア側も情報公開を控えて作戦に集中しているため、今のところクピャンスク方向の前線位置を正確に把握するのは不可能だ”

この話はRYBAR=ロシア側視点のもので、DEEP STATE=ウクライナ側視点が欠けているため何とも言いようがないが、RYBARの説明が事実なら「オチェレティネ方向の突破」や「ニューヨーク方向の突破」と同じ「ローテション時期を狙われた」という意味で、しかも人員不足で対応が遅れたためクピャンスク東郊外から東市内まで大きな抵抗を受けることなく前進され、もし製糖工場付近に前線があるなら飼料工場や周辺の森林地帯に足場を築かれている可能性が高い。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

因みにRYBARはクピャンスク方面オスキル川沿い全体について「ロシア軍はコリズニキフカの森林地帯からウクライナ軍を追い払い集落郊外まで到達した。この方向の成功でロシア軍はペトロパブリフカとノボシノベの間でウクライナ軍を包囲することができ、クプヤンシク・ヴズロヴィイに向かうことも出来るようになる」「この方面におけるロシア軍司令部の主な目標はクルフリャフカ方向に打ち込んだ楔を拡大することで、最終的にボロバ攻撃のための条件を作り出すことだろう」と述べている。

クピャンスクとボロバの両方を同時に攻撃するのは不可能だと思われるが、オスキル川東岸地域=クピャンスク東市内~クプヤンシク・ヴズロヴィイ~フルシキフカまでの範囲は非常に危険で、正直なところ2025年末までウクライナ軍が維持しているとは考えにくい状況だ。

関連記事:侵攻1000日目、南ドネツクにおけるウクライナ軍の防衛状況は最悪
関連記事:ウクライナ軍の嘘報告、DEEP STATEは状況を悪化させるだけと苦言
関連記事:侵攻995日目、ロシア軍の装甲車輌部隊がクピャンスク市内に侵入

 

※アイキャッチ画像の出典:30 окрема механізована бригада ім. князя Костянтина Острозького

SS-20の再来、中距離弾道ミサイルによる模擬攻撃はNATOへの警告前のページ

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コメント

    • マンゴー
    • 2024年 11月 22日

    人員不足という一番どうにもならない事が原因で突破されたのが、相当末期感ある
    要塞都市ですらこれだから、このラインを抜かれると本当に一気に地図を塗り替えられる可能性はある(無論補給の都合あり)

    29
      • 2024年 11月 22日

      ローテーションとは言ってますが、このタイミングでのローテーションとは実質的に、主力部隊の撤退に伴う戦力の(不十分な)補填に過ぎないのかもしれませんね

      つまり、実質的にクピャンスクからは主力部隊の段階的な撤退が始まっており、ロシア軍は順当にその間隙を突いたということかもしれません

      23
    • gyuteho
    • 2024年 11月 22日

    クルスク方面でウ軍の締め出し活動が始まった今、ウクライナ内の防衛とクルスクの維持の両立は正直かなり無理があるよな。やっぱり前線を拡大しすぎた感は否めないけど、これを今言っても仕方がないし、ロシア軍の攻勢限界を待つしかないのかな。

    10
      • toto
      • 2024年 11月 22日

      ロシアの攻勢限界よりも、ウクライナの守勢限界が先に来て、陣地や都市を失うケースが圧倒的に多いので、無理かと。
      「今言っても仕方ない」のならば、やるべきは「戦線整理の決断」であって、伸びきった前線をダラダラと維持しようとして全てを失うのは最悪の結末。“待つしかない”と考える指示待ち族は、上司としても中間管理職としても最も無能で現場が困るパターンですし。その雰囲気を前線兵士は感じ取って、持ち場放棄や脱走に繋がってしまう。

      43
      • kasugi
      • 2024年 11月 22日

      攻勢限界は奥に進むほど補給線が伸びて攻撃の手が弱まり、一方で敵の補給線は縮まって反撃が強固になるという古代の戦争に基づいた概念ですので

      現代戦では「戦争の原則」に従い前線にリソースを結集して後方は最低限というのが定石ですから、奥に行けば行くほど反撃は弱まってしまいます
      明確な意図を持って遅滞戦闘を行わなければ敵に攻勢限界を迎えさせることは叶いません

      15
      • 現実
      • 2024年 11月 22日

      ウクライナの国土はロシアに対して
      楔形に食い込んだ形をしてるし
      鉄道や道路も元々ソ連の物なので
      ロシアはウクライナ東部を侵食すればするほど
      前線が短くなって補給も安定する

      19
    • 1.44スキー
    • 2024年 11月 22日

    これは…。
    人員不足にローテーション不足…。
    25年に入ったらどこまで地図上の勢力域書き換えられるんだろうかな。

    21
      • toto
      • 2024年 11月 22日

      願わくば、武力による勢力域の書き換えの年から、外交による領土策定の交渉開始の年になってほしい。正直、絶望的状況下で戦わせられるウクライナ兵が気の毒だし、何の成果にも繋がらないのでは死が報われない。勝った側は戦果を誇りにできるが、負けた側は「早めに停戦すべきだった」と後悔しか残らない。(満州から追い出された日本兵だった私の祖父が似たようなことを言ってた)

      39
      •     
      • 2024年 11月 24日

      ローテーションの方に「不足」は付いてませんよ
      定期的な?ローテーションのタイミングがバレて空き巣的に奪われたという話で。

      1
    • ろみ
    • 2024年 11月 22日

    ローテの間隙を狙って強襲はつまりいつものという事ですね
    やはり問題なのは突破された後に市街地に定着された可能性が高い事です
    一度市街地に橋頭堡を築かれてから反撃で排除に成功した例はあるにはありますが結局それらの都市は数カ月後に陥落しています
    ロシア軍が都市に橋頭堡を築ける状況=都市に直接兵力を送れる盤面自体がウクライナ軍からすればほぼ詰みです

    24
    • あばばばば
    • 2024年 11月 22日

    ロシアにウクライナに対する信頼が残ってないからできない公算が大きいが、クルスク撤退はもちろんとしてポルタバに流れる川Vorskla River?まで引き上げる名目で休戦するべき。
    ウクライナがロシア軍にやってきた事を考えれば結構無理筋だが。

    このブログの戦況図だけだとわかりずらいけど、今戦ってる場所はハルキウ州のまだ東の端っこだから、あまりにもトリミングが大きいといわれるかもしれないが、どうせ維持できないし……

    8
    • ポレ
    • 2024年 11月 22日

    ウクライナ兵が持ってる小銃
    AR15系の物ですよね

    小銃弾まで西側依存になってる状態で
    ミサイルの自国生産なんか出来るのかね
    そら、突破もされるわな

    12
      • kasugi
      • 2024年 11月 22日

      ウクライナ国内でもAR-15と5.56mm弾はたくさん作ってますのでこれだけじゃわかりませんね

      5
      • kitty
      • 2024年 11月 22日

      どういうタイミングのどういう感情なんだろう?

      「20連STNAGマガジンすぐ弾切れちゃうイヤー!1」

      とかボケての大喜利

      2
      • 小岩井
      • 2024年 11月 22日

      マガジン上部をみるとこの銃は電動ガンに見えるのだけど訓練中の写真なのかな

      4
    • 七資産
    • 2024年 11月 22日

    ここでローテーションできるのか??
    橋落とされて孤立してるとこだよね?

    12
    • たむごん
    • 2024年 11月 22日

    オスキル川は流域、水利権が絡んできそうですからね。

    ロシアが両岸を支配すれば、都市機能には水が不可欠ですから、ロシア占領地の都市機能・各種産業を安定させることに繋がるでしょう(ウクライナ側は不安定化)。

    10
    • Poles
    • 2024年 11月 22日

    知ってた速報

    6
    • クリンキ…
    • 2024年 11月 23日

    常々思うのですが、ドニエプル渡河作戦の為に用意したゴムボートなり、架設橋なりをオスキル側方面に投入する気はないんですかね。
    橋がないから補給が辛いのは分かりますが、撤退を許さないのなら出来る限りの支援するのが司令部の務めじゃないのですか?

    1
    • ローテーション
    • 2024年 11月 23日

    ロシア軍が森を抜けて市街地に迫ってきた以上、おいそれとローテーションするとまたロシア装甲軍によるピストン攻撃がありうるから、また前線兵士の負担が増える。
    そろそろローテーションのやり方変えないと不味いんでは?

    1
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