ロシア関連

ロシア、第5世代戦闘機「Su-57」の製造ラインにAR技術を採用か

ロシアが第5世代戦闘機「Su-57」の大規模量産に拡張現実(AR)技術を取り入れている様子を示す動画が公開され注目を集めている。

参考:Russia Is Using Augmented Reality To Produce Its Su-57 Fighter

戦闘機の製造ラインにAR技術を取り入れ始めているロシア

ロシアの第5世代戦闘機「Su-57」はハバロフスク地方にあるスホーイの「Yu.A.ガガーリン記念コムソモーリスク・ナ・アムーレ航空機工場」で製造されており、現在はロシア空軍向けの76機(初期生産型:第一段階/ファーストステージ)量産が進められている最中だ。

今回公開された動画の撮影日は2020年3月のものだが公開されたのは今月10日で、Su-57の組み立て作業に拡張現実(AR)技術を取り入れている様子を示しているため注目を集めている。

作業員は装着したARに対応したヘッドセットを通じて視認した現実空間にSu-57の各組み立て工程や手順などが投影され、どの部品を何処に取り付けるのかを紙のマニュアルやモニターで確認する必要がなくなり作業の正確性と効率性が向上するという仕組みだ。この仕組を呼び出すために利用されているのがQRコードで、このような手法はF-35の組み立て工程にも採用されているがARによる情報の投影までは行われていない。

ただ公開された動画を見る限り現実にARの情報を重ね合わせる精度に誤差が生じているシーンもあるが、これはAR対応ヘッドセットに情報を投影するためのカメラのキャリブレーションが上手く行われていないためで、恐らく今回公開された動画はAR技術を取りれた製造ラインのデバック作業を撮影したものではないかと推測されており、まだSu-57の製造ラインに本格導入されていないのではないか言われている。

しかし調整や問題を解決したAR技術が近い将来Su-57の製造ラインに取り入れられると同機の製造効率が向上して最終的には製造コストの削減に繋がるはずだ。

このようなAR技術を製造ラインに取り入れる取り組みは何も軍事産業だけに限った話ではなく、フォルクスワーゲンは2022年に操業を開始する予定の米工場にAR技術を採用する予定でトヨタも製造現場で作業書や手順所を呼び出すためのAR技術を取り入れ始めており、今後の大規模製造工程に不可欠な技術なのだろう。

ただ現時点で戦闘機の製造ラインにAR技術を取り入れている国は恐らくロシアが初めてで、ロシア空軍にステルスをもたらしたSu-57は製造現場にもAR技術という革新をもたらそうとしている。

余談だがSu-57の国内向け価格は3,500万ドルに設定されているが、輸出向けのSu-57Eの価格は1億3,000万ドルに設定(真実なのかは不明)されておりアルジェリアが既に発注済(いつ引き渡されるのか謎)だ。

 

※アイキャッチ画像の出典: Объединённая авиастроительная корпорация

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    社員教育にARを用いる企業も出てきてるし、人手不足・教育コスト削減のための方策として期待出来るね

    ただ、こう言う新しい取り組みが真っ先に取り入れられるのが軍事ってあたり、ロシアにおいて新規投資できる産業がいかに限られたものなのかが透けて見える

    7
      • 匿名
      • 2020年 12月 17日

      カスペルスキーにはお世話になってます

      1
        • 匿名
        • 2020年 12月 17日

        バックドアで有名な
        なんちゃてセキュリティソフトね

        3
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    使ってるのはMSのホロレンズらしい
    リンク

    2
    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 17日

    AR技術ってそんなに難しいものなのか

    6
      • 匿名
      • 2020年 12月 18日

      腕に覚えのある職人の多い我が国は、逆にそれが壁になってARに遅れをとるかもよ
      高度な作業を、誰にでもできるという段階に引き下げるテクノロジーは逆に言えば生半可なもんじゃない

      2
        • にわかミリオタ
        • 2020年 12月 19日

        確かに

        1
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    全く関係ないけどフレーム状態の戦闘機みると、ここから仕上がっていくんだなぁと興奮するわ

    5
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    先進技術を導入するのはいいですが10年で年産一桁の低率生産を改善すべきでは。

    4
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    さすがにエリツィン時代の金ないロシアの印象を忘れないとな、
    一時的に経済が沈んでも、エネルギーから鉱物資源、食糧までほぼ自給自足の大国が破綻するとかないから

    8
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    輸出向け高すぎない?

    9
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    どの部品をどこにどのように取り付ければいいかってのを分かりやすく指示してくれれば素人でも組み立てできるよね
    そりゃ生産効率あがるわな

    5
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    AR技術を使えば、いざという時に熟練作業員が死んでも戦闘機の組立が出来る
    WW2の時はT-34を女性と子供のソビエト勤労奉仕団で組み立ててたし、こういう危機意識の高さみたいなのは素直にロシアスゲーなと思うな

    12
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    電脳コイルみたいだ。今は公衆の面前でARメガネをかけるのオタクっぽくてダサいけど、工場とかで普及したらかつてのジーンズみたいに逆にかっこいいカジュアルファッションとして受け入れられるようになって、みんな街角でもメガネをかけるようになるかも。

    5
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    自家製はお安く、売り物は高くの精神

    1
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    国内向けSu-57価格は3,500万ドルで輸出向けSu-57Eの価格は1億3,000万ドルってあるけど
    国内向けはエンジン・電子機器別のほぼドンガラだけとかいう落ちじゃないの?

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 17日

      実際なんで高いんだろうな?
      この国内向けは初期生産分で輸出用のE型は噂の性能向上版のM型ベースだからとか?

      3
      • 匿名
      • 2020年 12月 17日

      国内版は機体だけの値段で、輸出価格は予備パーツや訓練などこみこみ価格じゃないの?
      詳細がわからないので何とも言えないけど

      3
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    本邦の次期戦闘機開発でもこういう技術使って行かないとね

    1
    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    今度はこいつが領空侵犯してくるのか
    やめてくれよ・・・

    4
      • 匿名
      • 2020年 12月 18日

      ステルス性で領空侵犯に気づいてもらえなかったら笑う

      2
        • 匿名
        • 2020年 12月 18日

        こちらに気づかれてしまうと、ステルスがヘタレだとバレてそれも痛かろうロシアw

    • 匿名
    • 2020年 12月 17日

    昔ヒコーキ作ってたが今どきはすげーな
    もはや下手くそ以外ミス起きないじゃないか

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