ロシア関連

ロシア、企業主導でシングルエンジンの第5世代戦闘機を開発

ロシアの国営企業「ロステック(英:Rostec / 露:Ростех)」は7日、シングルエンジンの第5世代戦闘機の開発に取り組んでいると明らかにして注目を集めている。

参考:Russian tech firm working on concept of advanced single-engine combat plane

ロシア企業が政府出資なしでシングルエンジンを搭載した第5世代戦闘機の開発を発表

ロステックは軍事産業だけでなく自動車、電機、製薬などの国家戦略上において欠かせない工業製品の開発や輸出を目的に2007年に設立され国営企業で、約700社の関連企業で構成されたロシアきっての巨大複合企業(2018年実績:売上約260億ドル(約2.7兆円)/純利益約20億ドル(約2,080億円))だ。

このロステックのCEOを務めるセルゲイ・チェメゾフ氏が7日、小型もしくは中型サイズでシングルエンジンの第5世代戦闘機開発に取り組んでいると明らかにして注目を集めている。

チェメゾフ氏によればシングルエンジンの第5世代戦闘機は有人機と無人機に発展することを視野に入れたユニバーサルプラットフォームになる可能性を秘めており、現在は同機のコンセプトや技術的要件を取りまとめを行なっていると明かしたが、同機の開発はロシア国防省からの発注ではなくロステック単独の事業でチェメゾフ氏は「将来有望な航空機だと信じており海外パートナーとの協力などを含めた様々なオプションを検討中だ」と語った。

出典:US Air Force / Photo by: Staff Sgt. Kate Thornton 実用化されているシングルエンジンの第5世代戦闘機はF-35のみ

さらにチェメゾフ氏はロステックの自己資金でシングルエンジンの第5世代戦闘機を開発した場合「ロステックは政府の規制に左右されることなく開発した第5世代戦闘機を海外市場に供給することができる」と語り、海外パートナー(国ではなく企業でも可能)との共同開発で同機を開発した場合でも政府の資金が入っていないため「開発過程で確立された技術を海外パートナーに移転することができる」と主張しており、この様な形態での戦闘機開発は海外輸出の観点から「非常に斬新な取り組みだ」と言っている。

上記の内容をまとめると以下の通りになる。

  • 小型or中型サイズのシングルエンジンを搭載した第5世代戦闘機を開発
  • この第5世代戦闘機は有人機と無人機のベースとなる
  • この計画にはロシア政府の資金が入っていない
  • この第5世代戦闘機は政府の規制を受けることなく輸出可能
  • この計画に参加する海外パートナーへの技術移転が可能
  • この第5世代戦闘機はロシア軍が購入する可能性もある

もし上記の話が本当なら世界初の企業主導による第5世代戦闘機の開発ということになり、チェメゾフ氏が主張した通り非常に斬新な取り組みだと評価することができる。

引用:BAE Systems テンペスト

ただロステックは国営の国策企業なのでロシア政府の意向に囚われない決定や輸出が本当に可能なのか、逆に国策企業のロステックが新しいアプローチで第5世代戦闘機の開発を立ち上げたのはロシア政府の意向とも受け取れるため額面通りに受け取るのは危険だが、英国のテンペストも新しいアプローチによる戦闘機開発にチャレンジしており、ロシアも新しい戦闘機開発のアプローチを模索しているのだろう。

関連記事:国家主導VS企業主導、異なるアプローチで挑む欧州の第6世代戦闘機開発

どちらにしてもロステックのシングルエンジンを搭載した第5世代戦闘機開発が実現すれば、同じシングルエンジンのF-35と競合するため興味深い動きであることには間違いない。

余談だがロシア関連の情報があと2つほどある。

1つ目はロシア第5世代戦闘機Su-57についてで、ロシアは電波吸収材料で製造されたグレーティングをSu-57のエアインテークに取り付けることによって、エンジンファンが反射する電波を大幅にカットすることに成功したと報じられており、これまで正面方向からのステルス性能を妨げていた問題が一つ解決したことになる。

2つ目はロシアの次世代潜水艦についてで、ロシアは次期潜水艦としてハスキー級(ライカ級)原潜の開発を進めているのだがハスキー級の次にあたる次世代潜水艦についてルビーン海洋工学中央設計局が研究を始めたと報じられており、次世代潜水艦の動力は原子力ではないと言っている。

 

※アイキャッチ画像の出典:Alex Beltyukov / CC BY-SA 3.0

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    乗っかるのは旧ソ連諸国、あとイランにシリア
    お仲間狙い、お仲間だからこそ

    11
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    兵器はみんなそうかもしれないが、政治的判断でロシア製を選んでいる国々が、これに参加するだろうね。

    9
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    ロシアの航空機メーカーって統一航空機製造会社に全部まとめられてなかったか?
    ロステックって航空機開発能力あんのか?

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      いざとなればスホーイにも協力させるよ、国策的な国益企業だもん
      これは輸出を主眼としたプランで、真の目的はロシアグループを確定し強化することにあるから

      7
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    F-35の当て馬でもあり、第6世代機完成までの中継ぎでもある? 続報に期待したい。

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      F-35のP&W・F-135
      ミリタリー推力 28,000 lbf(128.1 kN)
      みたいなエンジンはロシアは持っていない。 F-135の開発は2000年よりもっと前、今無いなら無理。
      もっと違う戦闘機でしょう

      1
        • 匿名
        • 2020年 12月 09日

        多分su57に搭載予定の新型エンジンを流用するんじゃない? どうせ量産するんだから機能も限定して小型化すると思う。

        4
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    企業主体の開発はアメリカも推してたよね。かなりアメリカを意識した計画に思える。

    4
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    あんまり大っぴらにロシアが手を貸せないorロシアの手を借りれない国に
    戦闘機売るための「窓口」ってだけだろ?
    「開発予算をロシアは出してない」ってだけで企業自体は国営なんだし
    どーせ開発陣もほとんどが統一空廠の人間だろう。
    顧客としては例えばどこぞの半島の南の国家なんかはピッタリだ。

    13
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      まあ既にS-300のコピーミサイルやら色々移転されてますからね。

      4
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    企業主体と謳っているけど裏では政府が絡んでるんではないだろうか
    昔からの付き合いの会社の技術吸収、何かの違いで西の企業も参加したらラッキー的な考えかもしれない
    それはそれとして、ロシア特有の流麗なデザインの単発エンジンのステルス機がどのような形になるのか非常に気になる

    7
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    面の皮の厚いトルコが参加しそうな予感
    F-35の部品調達で将来的に外されるのは目に見えてるから
    しれっと参加してバイラクタルステルスバージョンの開発に活用しそう

    8
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    近年欧米や中国に完全に奪われていた軽量戦闘機商戦に再び返り咲く事はできるかな?

    1
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    あのロシアで、

    「この第5世代戦闘機は政府の規制を受けることなく輸出可能」

    これを信じる国は普通ありませんね。政府が表立って出てこないだけに過ぎません。この情報化社会で、このような放言をすることは確かに斬新です。

    この白々しい言い分に何の意味があるのかと思いましたが、単にF-35に代わるステルス戦闘機が欲しいトルコに対し言い訳を提供しただけでしょうね。この計画はトルコの野望に直結していると思います。

    14
      • 匿名
      • 2020年 12月 10日

      なうほどトルコですか。
      当初はチェメゾフ氏って方の頭を疑いましたがそう意味なんですね。
      ところでTFXとはバッティングしないのでしょうか。
      TFXは双発機ではありますが。

    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 09日

    ロシアの単発第5世代機か。F35と勝負になるのか

    3
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      後発だからなんとかなるかも
      F35は三軍の統合機だから開発に難航したがシンプルにステルス機能を付与した機体ならそこまで難しいないと思う

      3
        • にわかミリオタ
        • 2020年 12月 09日

        たしかにシンプルに作るのなら、ロシアにとっては難しくないかも

        2
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      F-35はセンサ情報共有とシステム統合がウリのある意味チートですからね。
      しばらくはまともに勝てる相手は出てこないのでは?
      1対1ならそりゃF-35も危ういでしょうがね。

      4
        • にわかミリオタ
        • 2020年 12月 09日

        なるほど

        1
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    技術移転の一文で韓国の名前がチラつく
    あそこ、ステルス機の技術そこまで高くなかったよな
    今までの行動のせいでやりかねないと思ってしまう

    5
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    政府と絡んでると考えるのが当然でしょうね
    メリットは計画が失敗した場合、容赦なく計画を中止できること
    まんまj31だね

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    ユニバーサルプラットフォームと言うのは非常に興味深いし、エンジン単発である点を考慮すると色々な機種・用途が考えれる。第五世代戦闘機と明言されているが、需要によっては新型練習機や民間向けの単発ジェット機も有り得る。
    有人・無人機でステルスの有無まで考慮すれば色々な機種が派生しそうだけど、実際は先鋭化して別物になったりして。

    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    F-16以上の性能(ステルス)持っててお値段安けりゃ需要ありそうだなぁ

    2
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      高いステルス機が買えなく、ソ連製戦闘機を使っていて、現在F16を使っている小国から需要を奪う気かも

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