ロシア関連

S-500の廉価モデル? ロシアが新しい防空システム「S-550」の存在に初めて言及

ロシアのショイグ国防相は9日、量産型の引き渡しが始まったばかりの防空システムS-500とは異なる「S-550」の存在に初めて言及して注目を集めている。

参考:Russian Minister Discloses S-550 Missile Defense System
参考:Everything known about the NEW S-550 air defense system

S-550が宇宙空間における弾道ミサイル迎撃や極超音速兵器の脅威にも対応できるS-500の廉価モデル?

ロシアが新たに開発したS-500はS-400の後継バージョンではなく、どちらかと言うと弾道ミサイル、地球低軌道上の衛星、極超音速兵器、戦線よりも後方に位置する早期警戒機や空中給油機といった価値の高い空中目標を迎撃するのに特化した防空システム(最大600km~800kmの範囲で作動)でS-400を補完する存在=パトリオットとサードの関係に似ていると言われており、一部の専門家の間では「宇宙空間における弾道ミサイルの迎撃や極超音速兵器に対応できる第1世代の防空システムだ」と指摘されているが、肝心のS-500に関する詳細なデータほとんど公表されていないので事実かどうかは分からない。

ただ一つだけ確実だろうと思われるのはS-500とS-400と組み合わせることで完成する多層防空システム=ロシア版「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」は今まで以上に強固な防衛シールドとして機能するだろうという点だが、このS-500とは異なる「S-550」の存在にロシアのショイグ国防相が初めて言及して注目を集めている。

ショイグ国防相は9日、国防省の公式動画の中で「プーチン大統領が防空システムS-350、S-500、S-550を軍に供給するための重要性を説いた」と語ったが現時点でS-550という防空システムは確認されておらず、多くの海外メディアが「S-550とは如何なる防空システムなのか?」について想像を巡らしており、露メディアは専門家の話を引用して「S-550は基本機能を絞ったS-500の廉価モデルではないか」と報じているのが興味深い。

出典:Zumlik / CC BY-SA 3.0 S350

Homeland Arsenalの編集長を務めるヴィクトル・ムラホフスキー氏(軍産複合体委員会専門家会議の元メンバー)は「S-500とS-550の違いはS-350とS-400の違いとほぼ同じだ」と考えており、同時期に開発されたS-350(短距離の目標迎撃に機能を絞ったS-400の廉価モデル)とS-400(長距離の目標迎撃にも対応したフルスペックモデル)は異なる正確の任務に対応しているので「S-550はS-500よりも交戦範囲が限定された安価なオプションだ」と指摘しているのだが、勿論これはムラホフスキー氏の予想なので事実かどうかは不明だ。

どちらにしてもロシア連邦軍事技術協力局長のシュガエフ氏が「十分な量が国軍に行き渡れば中国やインドなどのパートナー国(トルコ?)にもS-500を供給することを検討している」と語り、海外メディアが「初めてS-500の海外輸出についてロシアが公式に言及した」と大きく報道していた中で「S-550」が登場したため大きく注目されているのだろう。

仮にS-550が宇宙空間における弾道ミサイル迎撃や極超音速兵器の脅威にも対応できるS-500の廉価モデルで輸出に対応していた場合、どれぐらいの国が興味を示すのだろうか?

関連記事:翻弄されるバイデン政権、ロシアが中国やインドに防空システム「S-500」を輸出する可能性に言及

 

※アイキャッチ画像の出典:vitaly kuzmin / CC BY-SA 4.0

ロールス・ロイス、テンペスト向けエンジンが実現する発電能力はタイフーンの10倍以上前のページ

米企業、小型衛星を無動力で宇宙に打ち上げる加速器のデモンストレーションに成功次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    ロシア、トラブルが解消した主力戦車「T-14」の大規模量産を開始

    ロシア国営のタス通信は3日、次期主力戦車「T-14」と次期歩兵戦闘車「…

  2. ロシア関連

    粋なサプライズ演出? ロシア航空ショーに伝説の戦闘機「SU-47」が登場

    ロシアは現在開催中の「MAKS国際航空ショー」に、伝説の戦闘機「SU-…

  3. ロシア関連

    露ワグネルとロシア軍が交戦、酩酊状態の司令官が個人的な敵意から発砲?

    露ワグネルは「バフムートから離れる際にロシア軍陣地から攻撃を受けた」と…

  4. ロシア関連

    MI6元長官、2023年までにプーチンは医療施設に閉じ込め姿を消す

    英諜報機関(MI6)の長官を務めたリチャード・ディアラヴ卿は「2023…

  5. ロシア関連

    ドンバス解放の失敗原因はプーチン、部隊レベルの意思決定に干渉するため

    英国のTimes紙やGuardian紙は16日、ロシア軍の作戦が行き詰…

  6. ロシア関連

    ロシア、第5世代戦闘機「チェックメイト」の海外デビューに合わせて新しい情報を解禁

    今年7月に発表されたロシアの第5世代戦闘機「チェックメイト」は間もなく…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    ベトナムとかが興味持ちそうだな

    8
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    射程400-500kmのSAMなんて大抵の国では持て余すでしょうし輸出用で機能を限定するのは正解でしょうね。

    17
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    正直最近はアメリカが中露に負けた分野が多過ぎる
    20年も対テロ戦に夢中になってるからだ

    10
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      負けたっていうか、中露がいまだ圧倒的なアメリカの付け入る隙を探して全集中しただけじゃね
      冷戦期に航空機による核搬送能力で負けてたからロシアはロケットの開発に総力を挙げたみたいな感じで、たとえF-22やF-35を検知できなくても後続の早期警戒機や空中給油機を叩き落とせるまで長射程化してゲームチェンジを狙うみたいな

      23
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    日本ももうちょっとSAMに力入れるべきだと思う。
    接近阻止・領域拒否(A2/AD)とか自衛隊のドクトリンそのものじゃん

    24
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      同意です。
      差し当たって、中SAM改ベースで開発中の新艦対空誘導弾がSM-6並みの射程を獲得できるのなら、それを基に更に中SAM改の能力向を目指すとか。
      対艦誘導弾のようにファミリー化していければよいのかなと。

      あと、S-350がS-400の廉価版なら、S-500の廉価版はS-450じゃないのか、と思ったのは私だけではないはず。

      18
        • 匿名
        • 2021年 11月 11日

        そもそも中SAMレベルでSM-6並の射程達成できるなら輸出考えた方がいいよマジで。サイズとか重量全く違うのになんでそんな無茶ぶりするの。

        2
          • 匿名
          • 2021年 11月 11日

          無茶振りと言われてしまうと何も言えなくなるのですが…
          私は所詮素人です。
          JSFさんの記事やですがなどを見て、新艦対空誘導弾がSM-6並みの射程を目指しているような話を目にしたので、ある意味妄想というか願望で語っていますので。
          それに、新艦対空誘導弾は射程を延長するためブースターを追加していますし、寸法や重量が拡大する方向になるのは自明でしょう。
          中SAMのサイズ感そのままにSM-6並みの長射程を実現できるとは思っていませんよ。

          9
            • 匿名
            • 2021年 11月 12日

            道交法、弾頭重量、破片効果、他国ミサイルとTEL、重装輪回収車、ポンチ絵からのブースターサイズ・・・色々見たけど、SM-6並の射程を目指すのに何をトレードオフして作るべきか結論でなかったから特に回答は無しで。

            サイズ敵に空自関係ないから、ファミリー化しても海自と陸自のシェアでしかないし元々03式がパトリオットよりは安いのに高価格で配備が進まずに(改)を作った経緯があるのにコスト高の要因しかないから逆行かと言うのはある。それに恐らくだが03式改ベースなら今の重装輪への搭載は工夫なのか諦めるかの話でしかない、そこにも当然コストという話が出てくる。後、超射程をいかすだけの性能を持っているのかってのもあって、対空ミサイルは単に飛べば良いって訳でもないのでそこは考えて欲しいかな。

      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      日本は空自にPAC3MSE対応ペトリオット28個中隊と、陸自に03中SAM16個+更に03中SAM改14個の整備中で、整備計画では計58個中隊にまで増える予定。
      日本の中長距離SAMは世界的に見てかなり充実してるぞ。

      力を入れるとしたらセンサーノードの方を充実させるべき。
      結局、探知出来なければ射撃も出来ないので。

      12
        • 匿名
        • 2021年 11月 11日

        日本の防空システムは拠点用の低層防空がガラ空きなんだよね、、、

        6
        • 匿名
        • 2021年 11月 11日

        少なくともJ/FPS-2やJ/FPS-20は早急にJ/FPS-7などの新型に切り替えて欲しい。本当に。

        5
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    S-450じゃないんだ

    9
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    市場のニーズにこたえる姿勢は素晴らしいですな

    2
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    射程距離が数百キロに達するのは理解できるが
    目標を探知してミサイルを命中させるまでが信用できない
    しかも、弾道ミサイルから極超音速ミサイルまで対応出来るとかいいことづくめで
    出来すぎている、うさんくさい

    6
    • 匿名
    • 2021年 11月 11日

    SM3の弾道ミサイル迎撃試験の話は聞くけどS500はそういう話を聞かんね。
    成功してるならセールスのためにアピールしそうなんだがな。

    3
      • 匿名
      • 2021年 11月 11日

      S-500は情報自体あまりないしな。まあ、そこはスタンスの違いもあるとは思う。
      少なくとも、試験や訓練ですら命中しないような兵器を喜んで配備する軍は無い。

      3
        • 匿名
        • 2021年 11月 11日

        少なくとも配備した国が文句言ってないってことはそれなり以上の性能があるってことだよね
        弾道ミサイルの検知・撃墜を試した国はないだろうけど

      • 匿名
      • 2021年 11月 13日

      S-500自体は割と迎撃実験してるみたいですよ。
      今年も夏ごろに高速弾道ミサイルの迎撃に成功したと発表してましたし。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  2. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP