ロシア関連

イスラエルのUAVを撃墜か? ロシア、戦車T-14に続きレーザー兵器まで実戦投入

ロシアが開発した自走式レーザーシステム「ペレスヴェート(Peresvet)」を使用してイスラエル軍の偵察用無人航空機(UAV)を撃墜したと報じられている。

参考:Россия испытала в Сирии боевой лазер “Пересвет” – первый беспилотник уже сбит

徐々に戦場に顔を出し始めたレーザー兵器、ただし戦場の主役になるには解決すべき問題が多い

ロシアとってシリアは格好の兵器試験場になっており、過去には第5世代戦闘機Su-57や次期主力戦車T-14もシリアに運ばれて実戦を伴うテストを行ってきたのだが、今度は自走式レーザーシステム「ペレスヴェート(Peresvet)」を持ち込んで実戦テストを行っているとロシア系メディアが報じている。

報道された内容によればロシア軍は自走式レーザーシステム「ペレスヴェート」をシリア南西部に持ち込み、ゴラン高原空域を飛行していたイスラエル軍の偵察用無人航空機(UAV)を撃墜しらしい。

しかし、この件についてロシア国防省は何のコメントも出していないため本当にロシア軍のレーザーシステムで撃墜されたのか確証はないのだが、イスラエル軍のよればゴラン高原空域を飛行する無人航空機はシリア軍の対空ミサイルや対空砲の迎撃を頻繁に受けるのだが、当時墜落した偵察用無人航空機のカメラはシリア軍の対空ミサイルや対空砲の発射(発砲)を捉えておらず、恐らくロシア軍がテストのために持ち込んだレーザーシステムの攻撃を受けて撃墜された可能性が高いと結論づけているのだ。

果たしてロシア軍の自走式レーザーシステム「ペレスヴェート」が実戦で有効性を証明することができたのかは謎だが、このレーザーシステムは米海軍が開発したソリッドステートレーザー(固体レーザー)方式のAN/SEQ-3に似ていると言われており、同じ技術を採用した米海軍の新型レーザーシステム「LWSD Mk.2 Mod.0」は今年太平洋上で無人航空機の迎撃試験を成功させている。

ロシアはペレスヴェートに採用したソリッドステートレーザー技術をベースに新たな戦術レーザーシステムの開発や、車両や航空機に搭載されたセンサー類(監視装置や照準装置等)を無力化するレーザーベースの妨害装置を開発中で数年以内に実用化するらしい。

ただレーザーベースの兵器は大気中の状況(霧や煙や粉塵等)によっては効果が大きく減少するため、今の所は複合式の近距離対空防御システムと合わせて使用しなければ対無人航空機に対する安定したエアーカバーを提供するのは難しい状況なので、この複合式の近距離対空防御システムは海外市場で大きな注目を浴びている。

出典: Vitaly V. Kuzmin / CC BY-SA 4.0 96K6 パーンツィリ-S1(NATOコードネーム:SA-22)

この兵器は機関砲と短距離の対空ミサイルを組み合わせた自走式の対空車両で、ロシアが開発した複合式の近距離対空防御システム「パーンツィリ-S1」は車両にレーダーと赤外線探知システムが統合されているため、低空を飛行する小型の無人航空機を捕捉するのに有利で対UAV対策として非常に効果的だと言われているが、決して最新技術が多様されている先端兵器ではない。

欧米にも類似した近距離対空防御システムがあるのだが冷戦時代に開発されたものが多く新規で入手可能なものがないため、西側で複合式の近距離対空防御システムを開発して生産ラインが稼働している=調達可能なのは韓国が開発したK-30 SAMしかないのが現状だ。

昨年、サウジアラビアの石油施設が巡航ミサイルや無人航空機の攻撃を受けて破壊された際、配備されていた米国製の防空システム「パトリオット」は何故攻撃を防ぐことが出来なかったのか話題になったが、イスラエルのミサイル防衛機構の元局長によればパトリオットシステムのレーダーは地平線よりも下を移動する目標を「検知」して「捕捉」することが不得意=不可能に近いと指摘しており、今回のように地表を這うような小型兵器による攻撃に対しはまるで効果がないと語っていた。

そのためサウジアラビが急遽、韓国に複合式の近距離対空防御システム「K-30 SAM」購入を打診(しただけで終わった可能性が高い)したのはロシア製を購入すれば米国が煩いので韓国製しか選択肢がなかったからだろう。

現在、米陸軍はレーザーシステムベースの近距離対空防御システムを開発中なのだが直ぐに実用化は難しいため、装輪装甲車ストライカーに短距離地対空ミサイル「スティンガー」+対戦車攻撃用の「ロングボウ・ヘルファイア」とアパッチに搭載していた30mmチェーンガン+7.62mm機銃を搭載した暫定的な機動短距離防空システム(M-SHORAD)を導入する予定だ。

将来的にはレーザーシステムベースの近距離対空防御システムに取って代わられることになるのだろうが、まだ技術的な問題点が多く残されているため実弾ベースの近距離対空防御システムがもう暫く戦場を支配することになるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Mil.ru / CC BY 4.0 自走式レーザーシステム「ペレスヴェート(Peresvet)」

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 6月 04日

    当面はレーザーと実弾の複合対空砲が今後の主力になりそうな予感。
    個人的には直撃しないと効果ないレーザーより広域ジャミングが無人機潰しには効率良さそうだがこれも複合して使うのだろう

    • 匿名
    • 2020年 6月 05日

    最近のロシアの兵器開発は、シリアで実戦投入し貴重な実戦データを得ているようですね。
    ペレスヴェートしかり、Su-57しかり

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