ロシア関連

ロシア、TB2キラーと名付けられた無人航空機「オリオン-E」の海外売り込みを開始

海外市場で人気を集めるトルコ製UAV「バイラクタルTB2」に強力なライバルが登場、ロシアが武装が可能なオリオンUAVの海外売り込みを開始したと報じられている。

参考:Россия выводит на рынок “убийцу” “Байрактара”, сообщил источник

現地メディアが「TB2キラー」だと名付けたオリオンUAVの武装バージョンの売り込みを開始したロシア

ロシアの無人航空機開発は小型機と大型機に集中してきたため米国のMQ-1やMQ-9、イスラエルのヘロンTP、中国の翼竜シリーズや彩虹シリーズ、トルコのバイラクタルTB2やバイラクタルAkınciに相当する武装可能で中高度を長時間飛行可能なUAVが欠けているのが弱点で、このギャップを埋めるためロシアは「Orion/オリオン」と呼ばれる無人航空機を開発した。

このオリオンUAV(無印は偵察・監視バージョンでE型は武装が可能なバージョン)は戦場の偵察・監視用にEO/IRセンサーを搭載して7,000m付近の中高度を24時間以上飛ぶことが可能で、約200kgまでの精密誘導兵器やロケット弾を携行することが出来るためロシア側は米国のMQ-1に相当する機体だと説明しているがUAV専用弾として開発されたレーザー誘導爆弾KAB-20L、GPSと慣性航法を追加したKAB-20Sなど(他にも50kgや100kgクラスのUAV専用兵器も実用化済み)を開発して統合しているため同機の開発思想はトルコの無人航空機から大きく影響を受けていることが伺える。

しかもオリオンUAVは地上通信アンテナを利用した見通し通信で制御(運用範囲250km程度)されるため正にロシア版のバイラクタルTB2という表現がぴったりなのだが、ロシア製防衛機器の輸出を担当する国営企業「ロソボロネクスポルト/ROSOBORONEXPORT」は海外市場にオリオンUAVの武装可能バージョン売り込みを開始、幾つかの国から前向きな回答が得られたと現地メディアに語ったらしい。

出典:Savunma Sanayii Başkanlığı トルコの無人航空機「バイラクタルTB2」

因みにオリオンUAVを開発したロシアの防衛産業企業クロンシュタットは同機を大量生産するため建設中だった工場が完成、量産機の出荷が年末から来年初頭に始まると関係者が明かしているので海外市場へのオリオンUAV供給体制は間もなく整う見込みが、同機は輸出専用機ではなくロシア軍にも採用され北方艦隊管轄のコラ半島と太平洋艦隊管轄のカムチャッカ半島に配備される予定になっている。

果たしてロシアメディアが「TB2キラー」だと名付けたオリオンUAVの武装バージョンを幾らで海外市場に供給するのかは不明だが、関連費用込みで1機あたりの調達コストが1,000万ドル前後なら十分TB2に対抗できるかもしれない。

出典:Kronshtadt Group オリオンUAV

しかしTB2の売り手は武器販売の手続きが複雑で制約の多い米国ではなく、共同生産や技術移転にも積極的で武器輸出に関するポリシーも緩やかなトルコなのでTB2から人気を奪うには大規模な紛争でオリオンUAVが活躍する実績が必要なのかもしれない。

関連記事:ロシア軍の無人航空機「オリオン」が量産化、露UAVの脅威が北海道に届くのも時間の問題

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※アイキャッチ画像の出典:Kronshtadt Group オリオンUAV

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    バイラクタルTB2ってか翼竜の対抗馬に見える。導入するところの政治的な立場も考えると。

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      翼竜は衛星通信できるし、やっぱり違うのでは?

      5
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    性能はともかくトルコのがまだ政治的に買いやすいかな
    実戦データありなのも大きい
    とっとと2、3機買ってくれば良いのに

    13
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      実際に使ってみて過不足調べたり運用ノウハウ学ぶだけでも今後のUAV開発に活かせるだろうにな
      アメリカのプレデターはお高いが、もっと前から購入できた
      アメリカの同盟諸国も運用実績積んできたし

      9
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      ロシア軍も採用となると、まだ機密度が高そうだからお得意のモンキーモデルの心配はあるんだけど
      ロシア人は悪人ではないが日本人ほどお人好しでもないしね

      4
        • 匿名
        • 2021年 6月 30日

        悪人じゃないとか言ってるからお人好しって言われるんじゃないか

        6
          • 匿名
          • 2021年 7月 01日

          ロシア人から、日本人はズルいって言われて肯定するかね?
          そういう話だよ

          1
          • 匿名
          • 2021年 7月 01日

          国民としてのロシア人は気のいい奴が多いが、国としてのロシアはアメリカとイギリスの悪いところを足して二で割らない感じだもんな
          最近悪目立ちしてないのは単に国が傾いて力がないだけで、国としてはまあ普通に悪い国に文句なしに分類されるわ

          10
            • 匿名
            • 2021年 7月 01日

            ロシアは単なる山賊で、悪代官と越後屋は米英だと思うけどなw

              • 匿名
              • 2021年 7月 01日

              平気で種籾まで奪う山賊だけどな。

              3
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      研究だけなら別に買うまでもないのでは
      というより、研究用で買うには高価すぎる
      スペックは分かってるんだから机上での研究以上の何かをやる必要性があるとは思えない

      逆にガッツリ調達して北海道と九州に配備するとかいうならまだもう少し理解できるけど

      2
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    こういうのに防空識別圏徘徊されたらかなり厄介だけどそのあたりの対策って考えてるのかな
    領空ではないから撃墜するわけにもいかないしだからって放置しとくわけにもいかないし
    無人ゆえにパイロットの疲労で帰還したりもしないからかなり面倒でしょう
    24時間以上飛べるできるってことは似たようなものを中国が導入すれば尖閣周辺に20時間近く居座ったりできるということだよね

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      お船で監視するしか無さげ

      1
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      尖閣付近遊弋させようと思ったら衛星通信と高度な自立判断能力が必要で安価なモデル使えないでしょ
      中国は出来るならとっくにやってると思うよ
      時間の問題だろうから対策しなきゃなんだろうけど実際飛んでくるまで何も出来んだろうなぁ…
       
      てことで中国相手に泥縄になるよりロシアが先にこういうの飛ばして来てくれると
      政府も対策に本腰入れるだろうしいい予行演習になるんで
      北方領土付近で飛ばしてみないか?ロシアさんよ

      5
        • 匿名
        • 2021年 6月 30日

        船舶から射出可能な無人機も中国は開発中だか実際にあるから

        1
      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      消耗を考えれば、同じ無人機で警戒・対応するのがいいんでしょうね。
      そのためには、こちらも無人機を常時飛ばしておく必要があるかも。
      その場合、無人機同士ではいつもの無線「警告」が用を成さないので、
      別のかたちで警告する必要が出てくるかな。

      3
    • トルコ人
    • 2021年 6月 30日

    トルコ人として、日本とトルコが防衛分野においてもっと協力していけば嬉しいです。防衛省自衛隊のTwitterで5月17日に「日トルコ間の防衛協力・交流を進めてゆきます」という書き込みがありましたので、期待しています。

    21
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    Su-27の美しさと同じものを感じる。

    8
      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      オレは胴長のTu旅客機の遺伝子を感じるけどな 
      あくまで個人の意見です

      8
      • A
      • 2021年 7月 01日

      一見華奢なところが似てるね。

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    アゼル紛争後に自衛隊へアゼル側から情報共有されたとかここでも言及されてたような。

    4
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      SAMは囮で狩られるし、後方には戦闘機(トルコ)が控えているし。
      陸続きだと実に厄介

      1
        • 匿名
        • 2021年 6月 30日

        とはいえ、アゼルバイジャン軍の損害も実はかなり大きかったことが戦後判明してきていて
        「ドローンの活躍により一方的にアルメニアが敗退した」
        というのは、アゼルバイジャン(トルコ?)の流したプロパガンダだったというオチが見えつつあるっていう

        まあ、隙間を埋めるちょうど良い兵器でもちろん有用なんだろうけど、巷で騒がれてる具合からは5割から7割引で見るべきだと個人的には思ってる

        12
          • 匿名
          • 2021年 7月 01日

          いまさらもう声を大にしてドローン、UAVは不要って言えない悲哀に充ちてるけど

            • 匿名
            • 2021年 7月 01日

            逆に不要と断言する人もそんなにいないでしょ
            騒がれてるほど戦場を変えたわけではないが、適切に使えば相応の戦果は出せることは証明された
            くらいの感じ。

            4
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    衛星通信用のパラボラを付ける必要がないとこんなに機首スッキリするんですね。

    3
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    自衛隊装備だと中SAMクラスでないと届かんな。
    ミサイル速度をマッハ1程度に落とす代わりに、射程は300kmまで伸びる。
    とか調整できないもんかね?

    1
      • 匿名
      • 2021年 6月 30日

      ここまで大きな機体が飛んでる時点で空自のスクランブル対象
      これが飛んできて中SAMもないと航空優勢も放棄してる状態だから陸自は撤退を考え始めなければならない

      4
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    こういったUAVは防空識別圏に侵入したら、スクランブルに上がった機体が無線で警告した後で返事がなかったら撃墜する。
    あるいは機体後方から戦闘機がマッハで通過する、衝撃波で落ちるのは仕方がない。

    1
      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      戦争状態になり「防衛出動」が発令されていない限り「領空侵犯措置」では「「正当防衛」か「緊急避難」事態が生起しない限り「撃墜」は法的根拠が無くできないことになっている。これに有人機か無人機かの区別はありません。
      現状では「強制着陸」か「退去」を強制できるが、その方法は通信による「警告」と「信号射撃」と称される威嚇射撃に限られている。
      信じられない話ですよね。対処法より先ずは法整備です。

      5
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    キラー#とは?

      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      これ
      小型の空対空ミサイルでも積むのかと思った

      1
        • 匿名
        • 2021年 7月 01日

        俺も思ったけど、強力なライバルを示唆する修飾語でも別に間違っちゃいないから別に良いんちゃうか

        2
        • A
        • 2021年 7月 01日

        バイラクタルTB2狩用が出来たのかと思ったよ。

      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      自律型の無人機同士でドッグファイトとか、将来は無くもないだろう

      1
    • 匿名
    • 2021年 6月 30日

    絶対に買う国がひとつある

    ア  ル  メ  ニ  ア

    11
      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      第二次(三次?)ナゴルノカラバフ紛争で、前線でUAV同士がかち合うのか・・・
      ぼちぼち、敵ドローンを狩ることを主目的にしたドローンがでてくるかな

      3
      • 匿名
      • 2021年 7月 01日

      弾道ミサイルにいちゃもん付けて、ロシアに使うミサイル資格無いって怒られてなかったっけ?
      あと導入前に人員も施設も用意しなきゃならんから、そんなに安い買い物ではないと思うけど

        • 匿名
        • 2021年 7月 01日

        ロシアとしては軍事援助の形でいくらかサービスするのでは
        アルメニアは放置しとくとアメリカに接近しかねない関係を持ってるしね、ここは宗主国の貫禄を見せてほしい

        1
    • 匿名
    • 2021年 7月 01日

    あらためて翼竜が無人機として攻撃してくると考えると有人無人問わず航空機も艦船も数が足らないんだよな日本の防空識別圏護るのに お互い洋上艦は沈められやすくて出しにくいようにしないと 今は日本の潜水艦が効いてるんだろうけど本格的に無人機(船舶でも)用意して対艦ミサイル対空ミサイル積めるとかなり違うんだけど

    • 匿名
    • 2021年 7月 02日

    カタカナはオライオンじゃなくてオリオンでいいんですか?

      • 匿名
      • 2021年 7月 02日

      オリオンは日本語になってるし良いんじゃないかと。ロシア機だし敢えて英語読み表記する必然はない。
      ちなみにロシア語の発音だと「アリオン」が近い。

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