ロシア関連

ロシア軍、ウクライナとの戦いに投入した新型戦車T-90Mを失う

ロシア軍はウクライナ東部に近いクルスク州にT-90M/Proryv-3を移動させるのが2月17日に確認されていたが、遂にハルキウ州でT-90Mの破壊が報告され注目を集めている。

参考:Russia Just Lost Its Most Advanced Operational Tank In Ukraine

T-90Mの喪失も「強力なロシア製戦車」というイメージを失墜させるのに一役買うはずだ

ロシア陸軍の中で最も新しいT-90M/Proryv-3はT-14向けに開発された主砲、自動装填装置、アクティブ防護システム(APS)などをT-90に統合したモデルで、まだ生産量が限られているため西部軍管区の精鋭部隊「第1親衛戦車旅団」にしか配備されておらず、20輌以上のT-90Mが鉄道車輌に積み込まれクルスク州郊外を走っている様子が2月17日にネットにアップされ注目を集めていたが、これまでT-90Mの破壊が視覚的に確認されたことはなかった。

しかしキーウ・インディペンデント紙の記者が4日、ハルキウ州北部のどこかで破壊されたT-90Mの残骸らしき画像を公開して注目を集めている。

黒海を支配する象徴的な巡洋艦モスクワの喪失、キーウ近郊で40マイルもの長さに達した地上部隊の大渋滞、次々と撃ち落とされる最新の作戦機(Su-34、Su-35、Ka-52)といった負のイメージによって「強力なロシア軍」という幻想は完全に崩壊、今回確認されたT-90Mの喪失も「強力なロシア製戦車」というイメージを失墜させるのに一役買うはずだ。

出典:Минобороны Россииが公開したYouTube動画のスクリーンショット

勿論、ロシア軍が大きく評価を下げた要因の大半は兵器のスペックではなく運用能力=統合された大規模作戦能力が欧米よりも格段に劣るという部分に起因するのだが、やはり「敗者側が使用した兵器」という負のイメージがつくと海外市場で人気が落ちるためロシアの防衛産業企業は湾岸戦争以上のダメージを被ることになるだろう。

関連記事:ロシア陸軍の最新鋭T-90M、ウクライナと国境を接するクルスク地域に配備
関連記事:ロシア陸軍、主力戦車T-90の最新バージョン「T-90M Proryv」を実戦部隊に配備

 

※アイキャッチ画像の出典:Illia Ponomarenko

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

M109A6を製造するBAE、台湾に予定通りパラディン供給が可能と主張前のページ

ベラルーシ大統領、ここまでロシアの作戦が長引くと思っていなかった次のページ

関連記事

  1. ロシア関連

    サンシェードの実用バージョン? ウクライナ周辺で特殊な保護装置を装着したT-80が登場

    ウクライナ侵攻の可能性が高まるクリミア半島方面で不思議な保護装置を取り…

  2. ロシア関連

    ロシア軍をナゴルノ・カラバフ地域に派遣? ラブロフ露外相が平和維持軍に言及

    ロシアのラブロフ外相はナゴルノ・カラバフ紛争の人道的停戦を維持・制御す…

  3. ロシア関連

    泥の沼にハマるロシア軍、ウクライナ国境に近くで10輌以上のT-72を救出中

    ロシア軍はウクライナに面したロストフ州で演習を行っている最中、10輌以…

  4. ロシア関連

    ロシア軍のT-90Mを攻撃した際の動画が登場、カールグスタフで破壊か

    ロシア陸軍がウクライナに持ち込んだ戦車の中で最も新しいT-90M/Pr…

  5. ロシア関連

    ロシアの新型戦闘機「LTS」はステルスと安価な運用コストを両立したマルチロール機

    ロシアのプーチン大統領はMAKS国際航空ショーの会場を訪れ、スホーイ設…

  6. ロシア関連

    露調査メディア、DMG MORIの露法人は軍需産業に製品を売り続けている

    独立系の露調査メディア「Агентство」は27日、DMG MORI…

コメント

    • STIH
    • 2022年 5月 05日

    そしたら残るはT14だな。パレードが終わったらウクライナ投入か?

    25
      • ぺぺ
      • 2022年 5月 05日

      プーチンのお気に入りらしいので首都に留め置かせているという説もあり

      8
      • ポン
      • 2022年 5月 05日

      数は全然無い状態で、実戦で使えるのかは疑問ではあります

      29
        • NHG
        • 2022年 5月 05日

        >2015年モスクワ戦勝記念日パレード(英語版)において初めて公開された[11]。2017-18年に量産を開始予定で[12]、2020年までにロシア軍はT-14を2,300輌取得する計画である

        wikipediaよりコピペ
        Su-57もだけど予定どおり量産されてたらと思うと恐ろしいものがある
        そしてお金には不自由してない中国は、次世代機をちゃんと量産してきそうだからなお恐ろしい

        38
          • DEEPBLUE
          • 2022年 5月 06日

          お金よりむしろ西側制裁の方が大きいらしいですよ

          7
            • NHG
            • 2022年 5月 06日

            たしかに制裁で最先端分野の部品確保に難儀してるとは何かで読んだことがあるような
            しかし制裁の影響でこの体たらくになったなら、クリミア以後の制裁はなんだかんだ言ってバッチリ効いてたってことか

            1
      • 名無し
      • 2022年 5月 05日

      アルマータシリーズまでやられたらロシアの防衛産業もう終わりなんじゃないですかね……。

      36
        • STIH
        • 2022年 5月 05日

        もう終わってるからセーフ。
        いや単純な性能もさることながら、結局西側の部品•技術にだいぶ依存していることが今回の制裁でバレたから、ロシア製を買うメリットの半分以上が無くなったんじゃないかな。
        これからは脱西側を進めた中国製兵器が躍進するんじゃないですかね。

        28
          • 匿名
          • 2022年 5月 05日

          >脱西側を進めた中国製兵器

          ロシアと西側の「パクリを自製できるようになる」←これを超える成果が良く分からないです

          3
            • STIH
            • 2022年 5月 06日

            ちょっとした揉め事でも、西側の部品って供給止められるじゃないですか。韓国のFA-50もアルゼンチンに売れなかったわけですし。
            しかし中国製兵器は中国の機嫌さえ損なわなければ供給継続するイメージなんですね。西側嫌いの国にとっては魅了的だと思いますが。
            まあ半導体関係でアメリカの特許に引っかからず生産するのは相当難しいですが。

            22
      • や、やめろー
      • 2022年 5月 05日

      これでT14も撃破されたら、ロシアの防衛産業が死ぬのでプーチンもそれは避けたいかと。

      16
    • きっど
    • 2022年 5月 05日

    即墜ち2コマ

    29
    • 名無し
    • 2022年 5月 05日

    APSついてんのにやられたのか。なにで撃破したんだろ。

    5
      • tofu
      • 2022年 5月 05日

      搭載されてたAPSはサーブのLEDS-150で、仰角65°までの対応だそうだから
      トップアタック式には対応できなかったのかも?

      あるいは普通に戦車砲の攻撃を喰らったのかもしれないし、航空機からの空爆かもしれないし実際のところわからんけども

      30
        • 穴に鱒
        • 2022年 5月 05日

        この写真だけでどういう兵器もしくは攻撃でやられたかまで分かる強者居ませんかね?

        8
          • かしあげ
          • 2022年 5月 05日

          ハッチが焦げずに残ってるので撃破されたのではなく処分したのではないでしょうか?
          詳しい事は分かりませんが…

          3
            • ななし
            • 2022年 5月 05日

            被弾したが破壊されなかったものの、乗員が退避したとかですかね

              • 匿名
              • 2022年 5月 05日

              写真を見ると車体から煙りが上がっている様なので、
              火災が何処かで燻っている雰囲気ですね。

          • 四凶
          • 2022年 5月 06日

           ウクライナDoD発表だとジャベリンらしいけどね、見つけられなかったけど。撃破された時のUAV画像と言われる物を見た感じジャベリン食らったような感じには見えたが。

           そもそも碌な情報がない外野がAPSの能力が低いのかキャパオーバー狙ったのかも分るはずがないから無理、想像しか出来ない。
           実際はこいつ撃破するのに正面以外の所から同時にジャベリン5発位使いましたとかの話が出てきたら恐ロシアなんだけども。

          3
          • ネコ歩き
          • 2022年 5月 06日

          トーションバー・サスが左右ともへったってるぽいすね。
          内部火災が起きた場合に有りがちですが、上の方がおっしゃるように開放された砲塔ハッチにそれさしき痕跡がありませんので何とも・・・。

          3
        • 四凶
        • 2022年 5月 06日

         それ搭載してるのインドのライセンス品の方じゃないの?

          • 名無し
          • 2022年 5月 06日

          インドに売ってるビーシュマと勘違いしてない?
          改良型は同じくT-90Mだけれども。

    • んあ
    • 2022年 5月 05日

    俺達のロシア連邦軍が…

    10
    • no war in UA
    • 2022年 5月 05日

    1日に1~2BTG分の戦車と歩兵戦闘車が溶けてましたからね…
    この子も例外ではなかったようで

    18
  1. どれだけ優れた兵器、テクノロジー
    でもその時その場の使い方について
    考慮しないとだめですね。

    昔のマンガ、バトルオーバー北海道でも
    すぐれた戦士はすぐれた兵器に
    勝るといってましたっけ

    わが社としてはロシア製兵器の
    株が下がるのは歓迎できますが
    人のふりみて我がふり直せるよう
    気をつけたいです。

    何にせよこれ以上の悲劇が
    避けられますように。

    16
      • 匿名
      • 2022年 5月 05日

      わが社?
      どこかの競合戦車メーカーさん?

      7
    • 2022年 5月 05日

    とはいってもT-90(無印)はT-72をベースにT-80U級にアップグレードしただけの車両でしかないわけで、基本は大きく変わるわけではないから、弱点はそのまま引き継いでいるだろうし、そういう面では驚くほどの話でもないだろうな。

    31
    • 折口
    • 2022年 5月 05日

    早い…
    主砲やAPSや電子装置が近代化されてるとはいえトップアタック式の対戦車ミサイルには無防備とは最初から言われてましたが、投入一週間やそこらで骸を晒すことになろうとは。まぁこればっかりは性能云々の問題じゃなく、高価なミサイルを雨のように撃ってくるウクライナ側の体制のせいなのでどうしようもないですが…

    ウクライナ侵攻以前だと戦車につける対空防御システム(APSからCIWSまで)をメーカーが提案してもまともに取り合う国皆無でしたが、こういう戦訓が出来てしまうと色々変わってくるのかもしれないですね。

    45
    • 戦略眼
    • 2022年 5月 05日

    移動中のT-90Mが、画面右からATM攻撃を喰らって機関部が炎上、乗員は脱出、放棄された感じかな。
    画面左の地面に炎上した跡があるので、車体後部にドラム缶を積んでいて、そこに喰らったのかな?
    更に奥にBMP-2も擱座しているような。

    6
      • ナニガシ
      • 2022年 5月 05日

      これ無人砲塔のはず。
      なんで砲塔のハッチしか開いてないのか?

        • 匿名
        • 2022年 5月 06日

        T-90系を無人砲塔にしたら、操縦・砲撃・状況判断等々、全て一人ですることになりそう。

        2
    • びっくり箱
    • 2022年 5月 05日

    この写真では砲塔が吹っ飛んでいないからT72からは進化してるんでは?

    14
      • 戦略眼
      • 2022年 5月 05日

      新型砲塔を積んでいるけどね、
      今回は、当たり所が良かったのでしょう。

      3
        • 匿名
        • 2022年 5月 07日

        予備弾薬庫を砲塔後部に移してるのが効いてるかも。
        ここの誘爆は、砲塔を吹き飛ばす方向には働かないと思うので。

    • ブルーピーコック
    • 2022年 5月 05日

    モンキーモデルという言い訳は今回は通用しないから、西側兵器に替えのないS-300・S-400みたいな兵器以外は軒並み評価下がるだろうな。(UAEみたく韓国の天弓2を買うって国もあるだろうが)

    ただ、何で撃破されたのか元記事を翻訳しても分からなかったのが気になる。ジャベリンなのかバイラクタルのような無人機か。西側諸国の戦車も他人事ではないし。

    16
    • FORTE10
    • 2022年 5月 05日

    >やはり「敗者側が使用した兵器」という負のイメージがつくと海外市場で人気が落ちるためロシアの防衛産業企業は湾岸戦争以上のダメージを被ることになるだろう。

    湾岸戦争でのT-72の惨敗を受けて、負のイメージを挽回・近代化をすべくT-90、T-90Mと改良を重ねたモデルが撃破され、露軍上層部は少なからずショックを受けていることと察します。
    T-90のロシアでの愛称は「ヴラジーミル/ウラジーミル」なので受けるショックは余りあるかと。

    39
      • hoge
      • 2022年 5月 06日

      T-90(T-72BU)は80年代から計画されていた車両なので、湾岸戦争は関係ないはず。

      2
        • 匿名
        • 2022年 5月 07日

        Object 188の開発は1980年代だけど、財政難で当初は採用見送りしていた上に、元々は﹙指摘されているように﹚『T-72BU』な型番を予定。
        それが『T-90』として量産されたのは、湾岸戦争の負のイメージからの脱却が要因では?
        「湾岸戦争は関係ない」は言い過ぎの様に思えます。
        開発の動機としては、仰る通り「湾岸戦争は関係ない」ですが。

        7
    • 月虹
    • 2022年 5月 05日

    エジプトは当初、Su-35をロシアから購入予定だったがウクライナ侵攻後にアメリカが圧力をかけてボーイングからF-15EXを取得する方向で調整が進んでいるという。同様に戦車もM1A2エイブラムスに代わりT-90MSを500両ライセンス生産する契約をロシアと結んでいたが、こちらも頓挫する可能性が高い。

    韓国がK9自走砲と合わせてK2戦車も積極的に売り込んでいたから意外とT-90の代わりにK2を取得というのもあり得るかもしれない(ちなみに製造は韓国お得意の現地でのライセンス生産でエジプトがエイブラムスを製造していたラインが空いているのでそこを利用するらしい)。

    リンク

    25
      • STIH
      • 2022年 5月 05日

      K2は悪いアイディアじゃないですけど、パワーパックはどうするのでしょう。やはりトルコと同じく韓国産ですかね。

      2
        • 月虹
        • 2022年 5月 07日

        K2のパワーパックはドイツ製のユーロパワーパック(MTU社製エンジン+Renk社製トランスミッション)から国産エンジン(斗山インフラコア社製)+国産トランスミッション(S&T重工業製)に変更予定だったがトランスミッションの不具合を解決することができず、二次量産車からは国産エンジン+ドイツ製トランスミッションという折衷方式でのパワーパックを搭載することになった。

        現在ノルウェーの次期主力戦車選定事業でK2はドイツのレオパルト2A7と共に評価中であるが導入国の希望に柔軟に応じる(ライセンス生産や技術移転など)韓国側の姿勢を見るとパワーパックに関しても韓国製かユーロパワーパックかをユーザーが選べるようにしていると思う。

        4
    • 2022年 5月 05日

    MiG-41もチェックメイトも死産でロシア軍需産業はチェックメイトか
    悲しいなぁ

    17
      • 万能科学調味料ポロニウム
      • 2022年 5月 05日

      見た目とか性能にロマンがあるからちょっと悲しい。

      2
      • r
      • 2022年 5月 06日

      プーチンが退任したら、いい感じに技術者だけ中国に引き継がれそうな気もする。

      8
    • h4
    • 2022年 5月 05日

    作戦能力や運用能力の面とは言っても、まともな通信索敵や指揮管制装置が付いていないからそうなると言う面もあるわけで、「負のイメージ」は決して風評被害と言うだけでは無いとは思います。

    10
    • ガテマヌ
    • 2022年 5月 05日

    ロシアに制裁の抜け道があっても以前ほど兵器の生産できず、買い増しはともかく新規契約は絶望的にみえる

    5
    • 慕華館
    • 2022年 5月 06日

    画像の林道?舗装道路じゃなくて砂利道みたいですね。
    やっぱりインフラが貧弱だと、通れる場所も限られてくるんですね(-_-;)

    1
    • 半分の防衛費の国から
    • 2022年 5月 07日

    資料が無いので良く判りませんが、どうやらT-90ⅯはAPS非搭載で搭載されてるのは2025年頃に出て来る予定らしい・・
    オタクちゃんの26分間考察動画より(T-90MとM1A2SEPV3-詳細な比較)
    リンク
    予備弾薬の搭載位置変更によりビックリ箱(弾薬誘爆)になりにくいという解説も有ります。古い型は被弾後1秒以内に脱出出来ないと死亡確定らしいので進化はしている様です。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP