ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは16日「どうしてウクライナで結果を残したShahed-136がイスラエルに対して無力なのか」という疑問に「イランはロシアから貴重な経験を学ぶ機会があったに独自の道を選択肢した」「その結果がどうなったかは最近の攻撃を見れば一目瞭然だ」と指摘した。
参考:Почему «Шахеды» оказались бесполезны против Израиля?
参考:Андрей Медведев
イランは武器システムを完成させ量産させることは出来たが、戦場での課題や敵の進化に適応することを怠り、そのためイランは罰を受けている最中
ロシア軍はウクライナへの攻撃にイラン製無人機=Shahed-136(独自バージョンのGeran-2を含む)を使用して結果を残しているが、イランもイスラエルへの攻撃にShahed-136を投入しているものの効果はさっぱりで、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも16日「なぜShahedはイスラエルに対して無力なのか」と自問している。
Iran sent more than 100 UAVs at Israel. We intercepted them.
Here’s some footage: pic.twitter.com/0OB7OI1wJq
— Israel Defense Forces (@IDF) June 15, 2025
“イスラエルメディアは2日連続でレバノンとイランから発射された無人機迎撃の様子を公開しており、この映像には攻撃ヘリによる無人機迎撃の様子が映っている。撃墜された無人機の中には比較的低高度を飛行するShahed-136も含まれていた。この無人機は特別軍事作戦地域で我々の象徴的存在となった機体(我々はGeran-2と呼んでいる)で、イスラエルはいとも簡単にこれを撃墜している。本当に何の困難もなく。そうなると「なぜ特別軍事作戦で高い作戦効率を示した無人機がイスラエル上空で無力なのか」という疑問が生じる”
“イスラエルの防空シールドは何重もの多層式で綿密に構成され、アイアンドームも他のミサイル防衛システムと航空戦力で補完され、さらに米国とヨルダンが攻撃阻止に協力したことで防空シールドの強度はより一層強化されている。2023年にキーウ上空を閉鎖した際も、ウクライナ軍はオリジナルのGeran=Shahed-136による突破を許さなかった。2つ目の要素はイスラエルの防空シールドが完全な戦闘状態にあった点で、システムの故障もなく、ランチャーには迎撃弾がフル装填され、攻撃に対する反応も即座だった”

出典:Israel Ministry of Defense
“3つ目の要素は経験だ。イスラエルがShahed-136を含むイラン製無人機と交戦するのは今回が初めてではない。イスラエルはレバノン、シリア、イエメンの親イラン武装勢力が発射する(技術的にはイラン製と同種の)ドローン攻撃に晒され続け、この間にイスラエルは無人機の特性や戦術を研究し、効果的な迎撃方法を確立してしまった。要するにイスラエルにとってShahed-136は未知の脅威ではなく「研究済みの標的」であり、これがイスラエルに対して無力だったのは「性能が劣るため」ではなく「対処方法を習得済み」だったからだ”
“特にイエメンのフーシ派は無計画な攻撃にパレスチナ2といったミサイルを使用し、イスラエルに有益な経験を積ませてしまった。これらの攻撃はイスラエルにとって良い演習になり、イランの弾道ミサイルに対する適応を加速させてしまった。最も重要なのは2023年に経験交換の一環としてイスラエルは電子戦の専門家をウクライナに派遣し、イラン製無人機の運用戦術を研究させた点だろう。ロシア軍の戦場の進化に適応したが、イスラエル軍も相当な経験を積んだはずだ”

出典:Повітряні Сили ЗС України
“但し、Shahed-136とGeran-2は同じではないことも覚えておかなければならない。ロシア化されたGeran-2はShahed-136のただのライセンス生産機ではなく、実戦を通じて得られた経験が反映された独自バージョンだ。この機体は現代戦の現実に対応するため様々な改良が加えられている。機体制御のファームウェアやエンジンが変更され、ナビゲーションシステムが改良され、電子戦からの保護要素が追加されている。つまりGeran-2の最新バージョンは戦闘条件下での継続的な改良を経た産物なのだ。それに対してオリジナルのShahed-136にはアンチスプーフィング対策すら施されていない”
“つまりShahed-136とGeran-2の有効性を同一視するのは適切ではなく、イランが期待していた大規模な防空シールドの突破も実現しなかった。イランはロシアから貴重な経験を問題解決の手法を学ぶ機会があったにも関わらず独自の道を選択してしまった。その結果がどうなったかは最近の攻撃を見れば一目瞭然だ”

出典:Fars News Agency
要するにイランはガザ地区のハマス、レバノンのヒズボラ、イラクの親イラン武装勢力、イエメンのフーシ派にミサイル技術やドローン技術を移転し、その技術を元にして製造された武器システムを広範囲に使用したため「対策を講じる契機」になった上、ウクライナとの戦いを通じてロシアがShahed-136を改善し続けたのに「独自の道を選択=オリジナルに手を加えなかった」ため、Geran-2がウクライナに対して挙げている効果とは似ても似つかない結果を招いたという意味だ。
さらにロシア人ジャーナルリストのアンドレーエヴィチ氏もRYBARの投稿を受けて「イランは過去のある時期においてドローン分野のトップティアに属していた」「私達は2022年のあの瞬間を覚えているだろう」「これほど効果的なドローンを制裁下のイランに製造できると点が本当に驚きだった」「正直に言えばShahed-136の供給がなければロシアはもっと困難な状況に直面していただろう」と述べて、イランの問題を以下のように指摘している。

出典:dalکاخ/CC BY-SA 4.0
“イランは効果的な自爆型無人機を完成させたが、ウクライナの戦いを通じて何の教訓も得ようとせず、無人機部隊を独立した兵種として編成もせず、無人機の使用に関する戦術や戦略も分析していないかった。イランはシリアでの影響力を失ったため、現在のイスラエルに対して無人機を最大効果で活用するのは困難かもしれない。それでもイスラム革命防衛隊はレバノン領内で活動することが出来るし、ヒズボラも弱体化したとは言えレバノン南部の一部を保持し続けている”
“だからレバノンを利用したイスラエルへの無人機攻撃は可能だったはずだ。これにレバノン政府が憤慨しても何の影響力もない。レバノン政府はヒズボラに対処することができないし、レバノンを一致団結させてヒズボラを追い出せるような指導者もいない。つまり適切なアプローチさえあればイスラム革命防衛隊は無人機を使用してイスラエルに最も大きな問題を生じさせることが出来たと思う。問題は先進的だった無人機分野の取り組みの前進を止めてしまったことで、特に適切な時期に無人機部隊を独立した兵種として再編しなかったため、イランの無人機運用能力は停滞してしまった”

出典:IMA Media
“これはイランが抱える問題の一角に過ぎず、ミサイルシステムの状況も同じだ。イランは比較的高性能な弾道ミサイルを開発して備蓄していたものの、戦術や運用方法を研究しておらず、どうやって敵の防空シールドを貫通させるか計算していなかった。但し、他人の教訓を学ばないことは「自分達で学ぶ機会を逃すことになる」という教訓が得られる”
本当に意外な結果だが、イランの弾道ミサイルや自爆型無人機による複合攻撃はイスラエルの防空シールドをほぼ貫通出来ておらず、RYBARですら「イスラエルは住宅地に対する映像配信に重点を置いて、軍事目標となり得る場所への攻撃結果について厳しく情報を制限している(これはロシアも同じ)」と前置きした上で「それでもイスラエルの防空システムはイランの攻撃をほぼ迎撃することに成功している」「僅かにすり抜けた攻撃も有効打になるとは思えない」と述べており、イランの作戦運用の不味さが浮き彫りになっている。
結局のところイランは武器システムを完成させ量産させることは出来たが、戦場での課題や敵の進化に適応することを怠り、イランが支援する武装勢力の攻撃に晒され続けてきたイスラエルは適応に汗をかいたため、その差がイランに罰を与えているのだろう。
関連記事:ロシアのShahed生産は1年前なら月300機程度、現在は同数を3日以内で出荷
関連記事:Shahedを使用した攻撃方法の巧妙化、一部の機体は光に反応する
関連記事:イスラエルがテヘラン攻撃を予告、米大統領は核兵器保有を諦めろと呼びかけ
関連記事:イランが予告していた最大かつ最も激しい攻撃、実際には最も小規模な攻撃
関連記事:イスラエルがテヘラン上空を支配、イランは核交渉譲歩と引き換えに停戦を模索
関連記事:イスラエル国防軍、イラン首都上空の制空権を完全に確立したと発表
関連記事:イスラエルとイランが繰り広げる情報戦、両者のアプローチは対照的
関連記事:従来とは異なる戦い、イスラエルがイラン上空の制空権を手に入れる可能性
関連記事:イランの報復攻撃は100発未満、大半の弾道ミサイルは目標に届かず
関連記事:イランが本格的な報復を開始、イスラエルに100発規模の弾道ミサイルを発射
関連記事:イスラエル、ヒズボラに10日間かかったことをイランでは10分で達成した
関連記事:イスラエル、敵領内に持ち込んだドローンやミサイルでイラン軍を無力化
関連記事:イスラエルがイランの核開発能力を空爆、イランもドローンで報復攻撃を開始
関連記事:フーシ派に対するトランプ大統領の勝利宣言、実際には軍事的勝利から程い
※アイキャッチ画像の出典:IMA Media
結局いつものアレだな、戦争は戦場の戦いだけじゃないってやつ
この三年間変化し続けていたロシアが言うと説得力ありますね
学ぶのを止める(慢心する)と終わるという教訓でした
本当に仰る通りです。
本邦では色々言われてきましたが、ロシア=ウクライナともに変化を続けながら、とんでもない戦争を続けていて説得力を感じます。
イランの軍事力は世界14位(ミリタリーバランス2024)とされていましたが、これだけ被害を受けてるんですよね。
日本も上位にランクインしているわけですが、ウクライナ戦争から学べているのかを考えると、何だか耳の痛い教訓に感じています…
実際にNATOと対露戦があれば、ロシアはイランみたいになりそうだな
NATOはド本命の航空戦力をほぼ投射していない上に元々ロシア側は欧州諸国よりも戦力で劣っている上に欧州は絶賛大軍拡中なので軍拡した欧州諸国が立ちはだかるわけだし
ロシア核保有のため、NATO第5条+全会一致の原則が成立するのか。
自国が核攻撃のリスクを背負って、他国をわざわざ助ける事を、NATO全加盟国が本当に介入を決断できるのかという話しがありまして。
管理人様が過去記事でも触れられていましたが、ラトビア・エストニアあたりが警戒して慌てている理由でもあるんですよね。
少なくともハンガリーは反対票を入れるでしょうし、ドイツ・フランス辺りもいざその時にどう転ぶかなんて判ったもんじゃないですし…🙄
改良したロシア側のシャヘドでも突破が難しい状況で臨戦体制で勤勉なイスラエルには効果出ないのは納得できる内容です
正面装備入れても、放置した挙句に他所の戦訓取り入れずに陳腐化させるのは旧軍時代からの伝統とはいえ本邦も耳が痛いですわ
それでも、太平洋戦争の真っ最中に開発・設計変更された兵器の数には驚きますけどね。
結局間に合わなかったのも含めて。
ミルブロガーさんの仰る通りなのですが、イランを比較しても仕方ない面があると思っていまして。
イランの対イスラエル戦は、レバノン・シリア・ガザ・イエメンなど前哨戦・緩衝地帯での戦闘が想定だったのかもしれませんね。
ウクライナ戦争は世界最強レベルの戦争であり、ウクライナ=ロシアともに、世界最強レベルの地上戦を繰り広げているため比較するのは酷かなと。
イラン無人機運用の観点から見れば、コンテナ船改造空母シャヒド・バフマン・バゲリを就役させたことが、話題になっていました。
対イスラエル・対アメリカを想定するのであれば、ペルシャ湾・ペルシャ湾外でまともに使える可能性は極めて低いわけですから、無人機運用の方向性・リソースの使い方を間違えていたのかもしれませんね…
ほぼ地上戦ばかりやってるといざ対欧州で航空戦になると一気に劣勢を強いられそうだな
欧州軍からの空爆でロシアは初手で徹底的なSAM狩りと空軍基地攻撃受けてボコボコにされてイランのようになりそうな予感
そこで核兵器なんですよね…
>初手で徹底的なSAM狩りと空軍基地攻撃
これが現実的じゃないからイスラエルは現地での破壊活動を大規模に行ったのですよ
イスラエル並みの勝利を狙うならもっと諜報に力入れた方が良いんでは?
ロシアの兵器枯渇を何度も外すポンコツ諜報能力を誇示した後に、イラン中枢の事を知り尽くしていたイスラエルに自分達を擬えるのはちょっと…
寧ろ会戦1日目に首脳、軍中枢が軒並み消滅なんて悲劇は起こさんで下さいよ。
状況的にロシアへの戦争協力の立場を明らかにしたら巻き添えで制裁食らうのもあったのでは
イスラエルはイスラエルの優位な事しか言わないし、イランはイランで優位な事しか言わない(AI生成やゲームのキャプチャみたいな証拠しかださない)から、どちらの言い分も信じてはいないが。
安いドローンや古いミサイルで高価な迎撃ミサイルや戦闘機の稼働を浪費させられるなら、それはそれで戦略ではないか。
アメリカがいる分イスラエルの方が優位には違いないが、迎撃ミサイルの貯蔵は十分か?
コスパ的には迎撃側が不利ですからねー
発射する側(在庫や生産設備)が空爆でどれだけ狩られているかがキモで、迎撃される分には失敗を意味しないんですよね
生産ラインが生きているなら、相手が弾切れになるまで迎撃させてその後は素通しというゴリ押しが可能
対空ミサイルよりも多くシャヘドを打てば
当たりそうだけども電子妨害の突破率次第かな
キーウが炎上したニュースが出てたけど
相手国の携帯電波を逆用するような開発は戦争で追い込まれないとやらない気がする
シャヘドドローンは戦闘ヘリでも撃墜できる+何もない砂漠を2000kmも飛行しないとイスラエルに届かないんで今回の戦場では難しいですね
遠ければ近場の武装勢力から打てばよいし、
ヘリで全て撃墜できるわけでもないでしょうから
決めつけ過ぎにも感じますが
それならイスラエル側もドローン使うのでしょうね
イスラエルにあってウクライナに無いのは圧倒的な航空優勢、あとは距離だねイラク、シリア、ヨルダンはイスラエル空軍の庭みたいなものだから
だからこそ5年前の2020年頃から空軍の増強計画を立てていたわけでな
結果的に戦時に機種転換をやる羽目になってしまったが
いずれ増強を終えたらイスラエル空軍に倣って防空システム、空軍基地をボコボコに叩く作戦くらいはやるかもしれん
特にF-16は米空軍がSAM狩りしまくってたし
>ウクライナ空軍は2035年までに全面改修を目指す
ウクライナ軍によれば、急速に老朽化し弱体化する空軍力の刷新に、今後15年間で総額120億ドルを費やす必要がある。開発構想は
総額120億ドル。これは、急速に老朽化し弱体化しつつある空軍力を刷新するために、ウクライナが今後15年間で支出すべき金額だ、と軍は述べている。
ウクライナ空軍(UAF)が5月20日に発表した2035年までの開発構想は、旧ソ連時代の航空機を段階的に廃止し、最新の多用途戦闘機と輸送機の最新鋭機群を導入することを目指している。
新たなビジョンでは、無人航空システムの役割の拡大も支持しており、高密度の無線電気戦闘手段のグリッドでサポートされた殺人ドローンの群れを配備することも想定している。
空軍は時間を無駄にできないと述べ、今後数年のうちに海外、特にNATO諸国から即戦力となる航空機を多数購入することに将来性を見込んでいる。
こうしたロードマップは、ウクライナをゼロから世界最強の空軍大国の仲間入りさせるという野心的な目標を掲げている。ただし、同国の防衛費がこれほど大規模な再軍備計画に充てられるかどうかは未解決の問題だ。
shahed136みたいなタイプって要するに、低速低威力な代わりに安価な巡航ミサイルなんだから直接的な戦果が出にくいのは、そりゃそうでしょ以外の感想が無い
ウクライナでだって、囮を大量に投入してルートも工夫して、あの広い国土から非軍事目標も標的にして、それでも突破率1桁%なことも珍しくないんだし
迎撃に攻撃よりも遥かにコストが掛かる、みたいな”ある種の戦果”の話ならともかくねぇ
そもそもドローン攻撃で戦果を挙げようとしたにしては、射出数が少なくない?って言う疑問はありますよね。
もちろんランチャーが破壊され、攻撃能力を初日に喪失したからなのでしょうが、元々ドローン自体が既存のアセットで簡単に撃墜される存在なわけで、ウクライナよりも面積が狭く、防空能力に優れたイスラエルに使うのであれば、せめて四桁は発射しないとならなかったんだろうなって。
それと弾道ミサイルと巡航ミサイルとデコイも混ぜて飽和攻撃だよな
ルートも黒海上空やベラルーシ方面から迂回したり、またはウクライナ上空をグルグル回ったり
対応を難しくする努力もしてますよね
イランは色々な面で独自路線を採用し過ぎたんじゃないですかね
シャヘドの代金の支払いに当初はSu-35やS-400を導入するのではと思われていたものの結局は金での支払いだったと言われています。
それ以外にも兵器の生産もシャヘドや弾道ミサイルなどの優秀な物もありつつも、戦闘機などあらゆる兵器の自国開発や旧式兵器の維持に莫大な資金を費やしてきた事も敗因の一つでしょう
まぁ仮にS-400を数システム導入しても近距離からロケランで潰されるなら何も変わらないとは思いますが、、
貧者の兵器・ドローンも正規兵器なみの徹底したシステム/ロジックで動かさないと、それ以上の効果を得ることはできないってことかな?
ウクライナ戦を通じてのドローンの機体や戦術での劇的進化は、何というか、WW2での独ソ線で両軍の戦車が他の国々を突き放してとんでもない速さで進化していったのを思い起こさせるなぁ