ウクライナ軍南部司令部は9日、ヘルソン州のロシア軍がウクライナ軍の反撃方向に予備戦力を増強していると明かし「組織的な攻撃が強化されつつある」と示唆した。
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ヘルソン州を巡る戦いは結果は政治的にも軍事的にも非常に重要だ
ウクライナ軍南部司令部の説明によるとロシア軍は接触線地域で航空戦力、多連装ロケットランチャー、迫撃砲を動員して組織的な攻撃、S-300システムの迎撃弾、ミサイル、カミカゼドローン(徘徊型弾薬)を使用した後方地域への攻撃、反撃方向への地雷埋設、予備戦力の増強などでウクライナ軍の前進を阻止しようと試みているらしい。
ウクライナ軍はアントノフスキー橋や水力発電所とノーバ・カホフカと接続する橋をHIMARSで攻撃することで敵の補給を妨害しているが、ロシア軍はドニエプル川に3ヶ所以上のフェリーポイントを運営しているためドニエプル川北岸地域への補給は維持されている。
HIMARSが使用するGMLRS弾(GPS+INS誘導のロケット弾)は固定目標を精密に攻撃することが可能だが、ドニエプル川を航行するフェリー(渡河機材を流用したもの)=移動目標を攻撃するのは難しく、移動目標の攻撃に最適なSwitchblade300(重量2.5kg/滞空時間15分/飛行距離10km)などの徘徊型弾薬では「威力」と「飛行距離」が足りないため、今のところフェリーポイントの無力化は難しいのだろう。
さらに水力発電所とノーバ・カホフカと接続する橋は破壊されたものの、上記部分をロシア軍が埋め立てたため力発電所経由による輸送は可能だと見られており、ドニエプル川北岸地域のロシア軍は補給を完全に遮断された訳ではない。
つまりドニエプル川沿いに南下するウクライナ軍がマイラブ周辺の防衛ラインを突破して、ノーバ・カホフカに迫れば迫るほどロシア軍のフェリーポイントを監視下に捉えることができるため、このあたりの攻防もドニエプル川北岸地域の戦いを左右する要素の一つだ。
ウクライナ軍がヘルソン奪還を成し遂げれば西側諸国は「ロシアに勝てる」という認識を更に強くするだろうし、ロシア軍がヘルソンを死守すればクレムリンは失いかけている自信を取り戻すかもしれないので、政治的にも軍事的にもヘルソンを巡る戦いは重要度が高く、ノーバ・カホフカ周辺を確保した方がこの戦いの勝者になるのではないかと管理人は勝手に思っている。
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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России
>補給を完全に遮断された訳ではない。
むしろそれが分かっているからこそクリミア大橋攻撃を決行した可能性がありますね。
更に極悪デバフをかけていこうという算段で。
なかなか一気に決着がつかないね。
時間が経てば回避法を編み出すことも可能だ、というのもあると思います。
私が考えるだけでも2~3種類は補給をつなぐ方法が思いつきますし。9月中にもフロートで自力渡河可能な重装備を送ったりしています。カホフカのダムの埋め立ては水を通す機能を完全に遮断しないように、隙間の多いコンクリートのガラを入れてるらしいですが、その分重量物は通しにくそうではあり、その点はフェリーも同様であるのでまだリードはあると思いますが。
ある程度まで押し込めば渡しをドローン偵察して狙い撃ちすることも可能になると思いますし、日本含む支援諸国もこれを機に民生品の組み合わせで観測手段を増やす対策などしていきたいところです。
海洋国家の人間としては、地図見てると黒海からの艦艇による攻撃が使えるようにしたくてたまらなくなるな
あと、インガレット川ってのを、真っ直ぐに治水工事したくなるw
案外マイラブで粘ってるんですね。
押し込んだ直後はすぐに瓦解するのかと思ってましたが、
衛星写真で見たら小さな市街地の手前に入江だか小川の河口部だかが天然の水堀の様で、
纏った数は北側から迂回しなければ迫れない様な地形で、
防御陣地や地雷原を短時間で集中的に用意しやすかったんでしょうか。
ここを抜けてもマイラブのすぐ西側に雨季に川になる様な地形が見えますし、
マイラブ以降を川沿にサクサク進むのは難しそうに見えますね。
やっぱり無理攻めは避けて、南下中の味方と連携が整うまでじっくり進むつもりなのか。
急いではないのだとしたら、東部と違って南部のこの辺りは冬でも動き回れるんでしょかね?
混成化が進んだ東部戦線と違って、ヘルソンでは(混成化の兆候が見られるものの)正規軍が指揮権を主導しているようで、組織的な動きが可能らしい、といことのようです。
大河を有する地域の戦闘は難しいよなぁ。
ウクライナの勢いは凄まじいものがあるけど、それでも一朝一夕とはいかないのが恐ろしい。
ここが分水嶺としたら、何とかウクライナには取って欲しいね。
こういう時に自立型の無人潜水艦があれば、フェリーの妨害できるのかな
もしかしたら、どこかが今突貫で作っているかも
流石にこちらはうまく撤退して防衛戦を轢いているんですね。たしか東部戦線で戦っていた比較的主力がこっちにいたような。いずれにしても一筋縄ではいかないんじゃないでしょうか。東部戦線も徐々にペースが落ちてますから、ここらで再び膠着ですかね。
ロシア軍が後退の結果として密度が上がってるので、揃ってない通信網でも指揮系統を維持できてるのかも
あと大規模撤退するようなルートが無いので、実質的に背水の陣ですかね
占領地域で略奪・殺人してないロシア兵を探したような状態でしょうし、色々必死なんでしょう
ヘルソンのロシア軍はかなり手強いですね
司令官が有能なんでしょうか
でも独裁者国家は有能な人間がよく消えるので…
これで橋を落としたかいがあったというもの。
でもウクライナはここじゃなくて別の手を準備してる気がするか。
予備戦力って訓練も無ければ軍服もないただの民衆が来るだけでは?
逆に弱体化しそう
今の補給ルートだと後方から送り込めるのは兵士+軽装備ぐらいでしょうけど
負ける気じゃなければ、さすがに動員兵を送り込んでないでしょう
フェリー対策か。上流から即席でGPSを付けた係維機雷を流す、GPSで指定された所で繋維器落として設置。水力発電所のそばの渡し船は狙えるか。
それ、面白そうですね。
普段なら面白がる様な事じやないけど、
今この辺りで民間の船は居なくて掛かるのは全てロシア軍だとすれば、
本気で採用されそうな…。
確かクリヴィー·リフだったかの町の自動車整備工場とかで、
DIYで兵器を自作してる人達のニュースを見ましたが、
既に作り始めてたりして。
問題があるとしたら、水深とか流れの具合で目的地に着く前に引っ掛かったり、
現場付近で水深が浅いせいですぐに2発目以降が処理されるとかかな…?
素人考えで恐縮ですが、ドニプロ川北西岸の露軍制圧は、可能な限り引き延ばした方がウクライナ側にとって良いのではないでしょうか。2月開戦後獲得した唯一の州都という政治的理由により、露は兵站維持負荷の高いこの地に多くの兵を配している。露側は占拠を続けるために人員、物資の逐次投入を続けざるを得ず、ドンバス地方等他戦線への負荷が増大している。占領地奪還は他戦線に委ね、ヘルソン戦線は露軍消耗に最適な狩場として圧を掛けつつ、じっくりと攻略すべきと浅慮致しております。
おっしゃる通りだと思います。
特にマイラブ周辺は東岸からロシア軍の補給線の通った砲撃が行われないはずがなく、精度、速度を無視すれば急造の砲兵でも、無視できない脅威になる可能性があると感じます。
ここよりも戦力交換比がウクライナ有利の場所は、そうそうなさそうなので、ここでロシアの最後の精兵をすり潰してもらいたいものです。
ただ様々な政治的事情により、ウクライナがそれをやりづらい理由があるのかも知れませんね。
ウクライナ軍がドニエプル川に架かる橋をハイマースで砲撃し、一部破壊したとしても、応急修理は可能であるとか、大型でなくても自動車の通行は可能であるとか、ハシケのような架橋機材をボートで引っ張って車両を渡河させることは可能であるとか、ドニエプル川の東岸からでも、西岸のウクライナ軍を砲撃可能であるとかいうことは、いずれも以前から予想できたことでした。
また移動可能なハシケをハイマースで長距離砲撃するのが難しいことも前から予想できたことでした。クリミア大橋にしても応急修理をすることは決して不可能ではありません。
灌漑用の農業用水路が天然の水濠となっているのも、攻撃するウクライナ軍にとって不利な地形であり、地雷、多連装ロケット砲や迫撃砲による砲撃、S-300による対地攻撃、爆撃・・、とくれば攻撃するウクライナ軍の消耗も非常に大きいでしょうし、下手をすると攻撃を続けるウクライナ軍の方がロシア軍よりも先に壊滅してしまうかもしれません。
ハイマースの弾薬にも限りはあるでしょうし、いつまでハイマースによる攻撃を続けられるかもよくわかりません。
マイラブってノーバカホフカから直線距離でちょうど40キロ、エクスカリバーの射程限界なんですね。
マイラブさえ抜ければノーバカホフカまで行かなくても、ロシアが埋め立てたとかいうヘルソンの兵站の主力を無力化できるということでしょうか。まぁ、だからロシア軍もマイラブにラインを引いたんでしょうが。