トルコが現在開発中の第5世代戦闘機「TFX」について、ロシアは開発の支援を申し出た。
参考:Russia Offers Support For Turkish TF-X Lightweight Stealth Fighter Program
ロシアは、トルコに有利な条件を飲んでまでTFXを支援するのか?
トルコは現在、第5世代戦闘機「TFX」を国内で開発中で、トルコ空軍が運用中のF-16C/Dの後継機需要と海外輸出を狙っている。
このプロジェクトの支援企業には、英国のBAEが選ばれ、機体設計やシステム開発をサポートし、エンジンに関しては当初、英国のロールス・ロイスがEJ200の技術を移転し、TFXのための新しいエンジンをトルコと共同で研究・開発を進めていたが知的財産権の問題が発生。
開発されたエンジンの知的財産権を全てトルコ側へ譲渡しろ言い始めたので、ロールス・ロイスがそれを拒否し、その後、交渉でも溝は埋まらず決裂し、ロールス・ロイスはTFXプロジェクトから完全に手を引いた状態だ。
そのため、トルコはTFXに搭載するエンジンを、どこからか調達するか、共同開発してくれる企業を見つける必要がある。
ロシアの軍需企業ロステックの子会社、「ユナイテッドエンジン」が、TFXのエンジン開発について「技術提供が可能」だとアプローチしているが、TFXの試作機には、米国のGE製F110を搭載することに決定したと、トルコ国内のメディアが報道した。
![](https://grandfleet.info/wp-content/uploads/2019/03/1024px-Turkish_Air_Force_F-16C_Falcon.jpg)
出典:public domain トルコ空軍のF-16C/D
これはトルコがF-16C/Dを導入する際、ノックダウン生産から、徐々にトルコ国内で生産された部品の採用比率を高め、最終的には完全なライセンス生産に切り替わり、F-16C/Dに搭載されているエンジン「F110」も、トルコ国内でライセンス生産を行っていたので、今回、TFXの試作機に「とりあえず」F110を搭載することにしたのだろうが、量産機に搭載するエンジンはまだ見つかってない。
最近、フランスのパリで開催された「パリ航空ショー」でトルコは「TFX」のフルスケールモックアップを公開し、このプレジェクトを諦める気はないという意思を見せつけた。
トルコのエルドアン大統領は、8月27日から開催されている「MAKS国際航空ショー」を訪れ、プーチン大統領と共にロシアが開発した第5世代ステルス戦闘機「SU-57」を視察したが、同会場でロシア連邦軍事技術協力局のドミトリー・シュガエフ局長は「ロシアはトルコの第5世代戦闘機TFX開発を助ける事ができるかもしれない」と語り、航空機に搭載されるアビオニクスやエンジン開発について支援の可能性を示唆した。
📌Rusya Devlet başkanı Putin ile Cumhurbaşkanı Erdoğan’ın #SU57 incelemesinden görüntüler.pic.twitter.com/jMEgsSJIG9
— International Relations Organization • IRO (@IroTurkey) August 27, 2019
トルコにとってロシアの申し出は非常に有り難いだろうが問題は条件だ。
トルコの国防衛産業庁長官、イスマイル・デミル氏は、国内で開発している第5世代戦闘機「TFX」プロジェクトへ参加を考えている、海外のジェットエンジン企業に対し扉は開かれていると話したが、同時に参加条件として「開発するエンジンに対し、輸出に制限がなく、全ての技術がトルコに帰属し、トルコが全ての権利を所有すること」を挙げた。
果たしてロシアは、この条件を飲んでまでトルコのTFXを支援するだろうか?
通常ならあり得ないだろうが、TFX開発の支援を行うことで、トルコをNATOから離脱させロシア陣営に取り込めるなら、政治的にはお釣りが来るレベルだ。
エルドアン大統領も、その辺りの事情は承知の上でたち振る舞っているだろうし、ロシア接近の最大の目的は、米国やNATOからクルド人問題から譲歩を引き出すのが目的なので、本気でロシアと組むつもりは無いだろうが、このような振る舞いは、S-400導入によってF-35プログラムから追放されたトルコを、さらに追い詰めればNATOからの離脱を招きかねないという印象を米国やNATOに与えるだろう。
どちらにせよエルドアン大統領の思惑通り米国やロシアが踊らされるのか、プーチン大統領が仕掛けて、トルコと米国の間に決定的な亀裂を作って、ミイラ取りをミイラにしてしまうのか、非常に興味深い。
※アイキャッチ画像の出典:Attribution: JohnNewton8 / CC BY-SA 4.0 TFXモックアップ
T-FXとK-FXのレースは俄然熱を帯びてきました、今のところT-FXがやや有利か・・・。
競馬中継ならこういわれるところ。
下手すると青組から押し出された韓国も、K-FXにロシア製のエンジンを載せたりする可能性もありそう。
しかし韓国とトルコって戦車、戦闘機、潜水艦と甲乙つけがたい最高のライバルだな(褒めてません。
構造的な赤字体質に手を付けず、国内の矛盾を放置したまま、拡張政策をすすめ、周辺国と軋轢を抱えるなかで、通貨危機を起こすところも、よく似てます。
違いといえば、トルコ料理は世界三大料理と称され、世界の人々から認められているのに対し、あちらは…ですから。
中東のコリアと化したトルコ…
正直損切りされてもおかしくないレベルだわ
ただ、米国から見ると韓国とトルコは、立場的に大違いな所があるよ。
韓国は切っても米国と日本・豪州・インド+台湾の連携で対中国戦略はカバー出来るのに対して、トルコは地中海と黒海を結ぶ「ボスポラス海峡」を人質に取れるので、もしも本当にトルコがロシア側へ行ってしまうと、ロシア黒海艦隊が地中海へ大手を振って出て来るから、米国とNATOはトルコを簡単には損切り出来ないと思う。
その意味では、文在寅よりもエルドアンの方が100倍賢いんじゃないかな。
ロシアが地中海に大手を振って出てきたところで早晩どうかなるわけでもないですから、切る時は切ると思いますよ。F35の対応を見ても分かりますが、先ず第一に経済は直ぐにでも締め上げ始めるでしょう。ロシアから戦闘機やミサイルを買ったところで、維持させなければ良いだけですから。
>「開発するエンジンに対し、輸出に制限がなく、全ての技術がトルコに帰属し、トルコが全ての権利を所有すること」
こんなこと承知する企業は少なくとも西側にはないと思うけど。政治と軍事が密接な国でエンジン技術を持っているロシアか中国しか応諾する国はないのでは? 企業のデメリットを国が補償しなければならないわけですし、1回飲んだら2回目を要求されるでしょ。
でも、そのロシアと中国もSu-27の導入と中国側の「パクリ」問題ですったもんだしましたからね…ジャイアニズム丸出しの要求だから、恐らく交渉の途中で譲歩する為のカードにするつもりでは(震え声)。
EUのトルコに対する扱いがちょっと酷すぎて、その辺はトルコ国民に同情するけど、にしてもエルドアン政権の行動は軽いと言わざるを得ない。
グローバル化だの何だのと言っている主要な連中も、土壇場には歴史や宗教に拘って手のひらを返す。
中露はその葛藤を利用して安保体制の組み換えを狙ってるけど、どちら側についても結局はついてまわる葛藤でしかないことをトルコは分かっているのだろうか。利用しているロシアですらその葛藤に縛られているというのに。
こう言う動きを眺めていると、冷戦構造に回帰するのが一番安定するのではないかと思うしかない。